堀辰雄
1904.12.28 〜 1953.05.28
“堀辰雄”に特徴的な語句
漸
唯
儘
娵
簾
山麓
著
薔薇色
識
殆
恰好
訊
眺
若
知
或
醒
寧
殆
異
却
怺
匂
出
込
不為合
他
煖炉
恰
開
頷
否
脣
真面目
苛
藁屋根
几帳
烈
其処
漸
怯
何処
裡
啼
雑
樅
空
真似
窓硝子
痩
著者としての作品一覧
あいびき(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
……一つの小径が生い茂った花と草とに掩われて殆ど消えそうになっていたが、それでもどうやら僅かにその跡らしいものだけを残して、曲りながらその空家へと人を導くのである。もう人が住まなく …
読書目安時間:約5分
……一つの小径が生い茂った花と草とに掩われて殆ど消えそうになっていたが、それでもどうやら僅かにその跡らしいものだけを残して、曲りながらその空家へと人を導くのである。もう人が住まなく …
あひびき(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
……一つの小徑が生ひ茂つた花と草とに掩はれて殆ど消えさうになつてゐたが、それでもどうやら僅かにその跡らしいものだけを殘して、曲りながらその空家へと人を導くのである。もう人が住まなく …
読書目安時間:約5分
……一つの小徑が生ひ茂つた花と草とに掩はれて殆ど消えさうになつてゐたが、それでもどうやら僅かにその跡らしいものだけを殘して、曲りながらその空家へと人を導くのである。もう人が住まなく …
Ein Zwei Drei(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
本輯に「栗鼠娘」を書いてゐる野村英夫は、僕の「雉子日記」などに屡〻出てくる往年の野村少年である。冬になるとよく病氣をしてゐたが、そのころはいかにも牧童なんぞになつたら似合ひさうな少 …
読書目安時間:約5分
本輯に「栗鼠娘」を書いてゐる野村英夫は、僕の「雉子日記」などに屡〻出てくる往年の野村少年である。冬になるとよく病氣をしてゐたが、そのころはいかにも牧童なんぞになつたら似合ひさうな少 …
「青猫」について(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
私は萩原朔太郎さんのことを考へると、いつも何處かの町角の、午後の、まだぱあつと日のあたつてゐる、閑靜なビヤホオルかなんぞで二人きりで話し合つてゐるやうな記憶が一番はつきりと浮んでく …
読書目安時間:約7分
私は萩原朔太郎さんのことを考へると、いつも何處かの町角の、午後の、まだぱあつと日のあたつてゐる、閑靜なビヤホオルかなんぞで二人きりで話し合つてゐるやうな記憶が一番はつきりと浮んでく …
(芥川竜之介の書翰に就いて)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
僕はこの頃、芥川龍之介書翰集(全集第七卷)を讀みかへした。そしてちよつと氣のついたことがあるから、それを喋舌つて見たい。 芥川さんは brilliant な座談家だつたさうである。 …
読書目安時間:約4分
僕はこの頃、芥川龍之介書翰集(全集第七卷)を讀みかへした。そしてちよつと氣のついたことがあるから、それを喋舌つて見たい。 芥川さんは brilliant な座談家だつたさうである。 …
芥川竜之介論:――芸術家としての彼を論ず――(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間11分
芥川龍之介を論ずるのは僕にとつて困難であります。それは彼が僕の中に深く根を下ろしてゐるからであります。彼を冷靜に見るためには僕自身をも冷靜に見なければなりません。自分自身を冷靜に見 …
読書目安時間:約1時間11分
芥川龍之介を論ずるのは僕にとつて困難であります。それは彼が僕の中に深く根を下ろしてゐるからであります。彼を冷靜に見るためには僕自身をも冷靜に見なければなりません。自分自身を冷靜に見 …
曠野(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
忘れぬる君はなかなかつらからで いままで生ける身をぞ恨むる 拾遺集 そのころ西の京の六条のほとりに中務大輔なにがしという人が住まっていた。昔気質の人で、世の中からは忘れられてしまっ …
読書目安時間:約21分
忘れぬる君はなかなかつらからで いままで生ける身をぞ恨むる 拾遺集 そのころ西の京の六条のほとりに中務大輔なにがしという人が住まっていた。昔気質の人で、世の中からは忘れられてしまっ …
或外国の公園で(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
「……伊太利は好い效果を與へてくれましたけれど、こんどは私には北方が、空間が、風が必要になつたやうな氣がいたします……」と、一九〇四年四月二十九日、當時羅馬に滯在してキエルケゴオル …
読書目安時間:約4分
「……伊太利は好い效果を與へてくれましたけれど、こんどは私には北方が、空間が、風が必要になつたやうな氣がいたします……」と、一九〇四年四月二十九日、當時羅馬に滯在してキエルケゴオル …
(アンデルゼンの「即興詩人」)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
又四五日前から寢込んでゐる。どうも春先きになるといけない。いつもきつと得體の知れない熱が出るのである。 ⁂ 僕は本箱から鴎外の「即興詩人」を引つぱり出して見た。病氣をするとこの本を …
読書目安時間:約4分
又四五日前から寢込んでゐる。どうも春先きになるといけない。いつもきつと得體の知れない熱が出るのである。 ⁂ 僕は本箱から鴎外の「即興詩人」を引つぱり出して見た。病氣をするとこの本を …
伊勢物語など(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
今夜、伊勢物語を披いて居りました。そのうちふいと御誌からのお訊ねを思ひ出しましたので、とりあへずペンを取つて、只今、考へてをるがままに書いて見ることにします。 僕がこのペンを取るま …
読書目安時間:約8分
今夜、伊勢物語を披いて居りました。そのうちふいと御誌からのお訊ねを思ひ出しましたので、とりあへずペンを取つて、只今、考へてをるがままに書いて見ることにします。 僕がこのペンを取るま …
一挿話(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
一九〇八年の春、伊太利のカプリ島に友人に聘せられて再遊し、その冬獨逸で發した宿痾を暫く療養して居つたリルケは、漸くそれから恢復するや、前年來の仕事を續けるために、五月、四たび巴里に …
読書目安時間:約6分
一九〇八年の春、伊太利のカプリ島に友人に聘せられて再遊し、その冬獨逸で發した宿痾を暫く療養して居つたリルケは、漸くそれから恢復するや、前年來の仕事を續けるために、五月、四たび巴里に …
色褪せた書簡箋に(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
まだ發表しないでそのまま何處かへ藏ひ込んでしまつたアポリネエルの飜譯が二三あつたのを思ひ出して、僕は數日前、ごちやごちやになつた手文庫の中を丹念に搜してゐたら、「贋救世主アンフィオ …
読書目安時間:約7分
まだ發表しないでそのまま何處かへ藏ひ込んでしまつたアポリネエルの飜譯が二三あつたのを思ひ出して、僕は數日前、ごちやごちやになつた手文庫の中を丹念に搜してゐたら、「贋救世主アンフィオ …
ヴェランダにて(旧字旧仮名)
読書目安時間:約14分
一九三五年晩秋。或高原のサナトリウムのヴェランダ。二人の患者の對話。 A君はよくさうやつて本ばかり讀んでゐられるなあ。 Bうん。どうも書くことを禁ぜられてゐると、本でも讀んでゐるよ …
読書目安時間:約14分
一九三五年晩秋。或高原のサナトリウムのヴェランダ。二人の患者の對話。 A君はよくさうやつて本ばかり讀んでゐられるなあ。 Bうん。どうも書くことを禁ぜられてゐると、本でも讀んでゐるよ …
雨後(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
これでもう山小屋に雨に降りこめられてゐること一週間。——「雨の輕井澤もまたいいです」などと友達に手紙を書いてゐた女房も、きのふあたりから少し氣が變になつてゐはしないかと思ふ位。 — …
読書目安時間:約2分
これでもう山小屋に雨に降りこめられてゐること一週間。——「雨の輕井澤もまたいいです」などと友達に手紙を書いてゐた女房も、きのふあたりから少し氣が變になつてゐはしないかと思ふ位。 — …
美しい村(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間26分
天の灝気の薄明に優しく会釈をしようとして、 命の脈が又新しく活溌に打っている。 こら。下界。お前はゆうべも職を曠うしなかった。 そしてけさ疲が直って、己の足の下で息をしている。 も …
読書目安時間:約1時間26分
天の灝気の薄明に優しく会釈をしようとして、 命の脈が又新しく活溌に打っている。 こら。下界。お前はゆうべも職を曠うしなかった。 そしてけさ疲が直って、己の足の下で息をしている。 も …
「美しかれ、悲しかれ」:窪川稲子さんに(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
十月六日、鎌倉にて お手紙うれしく拝読いたしました。半年ぶりで軽井沢から鎌倉に戻ってきたばかりで、まだ何か気もちも落ちつかないままにお返事を遅らせておって申訳ありません。 丁度軽井 …
読書目安時間:約9分
十月六日、鎌倉にて お手紙うれしく拝読いたしました。半年ぶりで軽井沢から鎌倉に戻ってきたばかりで、まだ何か気もちも落ちつかないままにお返事を遅らせておって申訳ありません。 丁度軽井 …
X氏の手帳(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
或る夜、或る酒場から一人の青年がふらふらしながら出て來た。彼は非常に泥醉してゐるやうに見えた。タクシイ!と彼は聲高に叫んだ。 一臺の汚らしいタクシイが止つた。彼はふらふらしながらそ …
読書目安時間:約4分
或る夜、或る酒場から一人の青年がふらふらしながら出て來た。彼は非常に泥醉してゐるやうに見えた。タクシイ!と彼は聲高に叫んだ。 一臺の汚らしいタクシイが止つた。彼はふらふらしながらそ …
エトランジェ(旧字旧仮名)
読書目安時間:約20分
夕方だのに汽車は大へん混んでゐた。大部分は輕井澤へ行く人たちらしい。私の前には「天國新聞」といふのを束にしてかかへてゐる牧師さんがひとり。向隣りの席には、洋裝をした十九ぐらゐのお孃 …
読書目安時間:約20分
夕方だのに汽車は大へん混んでゐた。大部分は輕井澤へ行く人たちらしい。私の前には「天國新聞」といふのを束にしてかかへてゐる牧師さんがひとり。向隣りの席には、洋裝をした十九ぐらゐのお孃 …
絵はがき(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
一九三〇年八月十七日、K村にて 僕がホテルのベッドに横になつて、讀書をしてゐたら、窓から、向日葵の奴がしきりにそれをのぞきこむのだ。 どうもうるさくつてしかたがない。 そこで僕は立 …
読書目安時間:約4分
一九三〇年八月十七日、K村にて 僕がホテルのベッドに横になつて、讀書をしてゐたら、窓から、向日葵の奴がしきりにそれをのぞきこむのだ。 どうもうるさくつてしかたがない。 そこで僕は立 …
「絵本」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
もう十數年前のことである。小林秀雄と永井龍男とがはじめて出合つた時の話である。 小林が先づ永井に「君は志賀直哉を讀むか?」と聞いた。「うん、好きだ」と永井は即座に答へた。「ぢや、佐 …
読書目安時間:約5分
もう十數年前のことである。小林秀雄と永井龍男とがはじめて出合つた時の話である。 小林が先づ永井に「君は志賀直哉を讀むか?」と聞いた。「うん、好きだ」と永井は即座に答へた。「ぢや、佐 …
エマオの旅びと(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
「我々はエマオの旅びとたちのやうに我々の心を燃え上らせるクリストを求めずにはゐられないのであらう。」これは芥川さんの絶筆「續西方の人」の最後の言葉である。「我らと共に留れ、時夕に及 …
読書目安時間:約2分
「我々はエマオの旅びとたちのやうに我々の心を燃え上らせるクリストを求めずにはゐられないのであらう。」これは芥川さんの絶筆「續西方の人」の最後の言葉である。「我らと共に留れ、時夕に及 …
「エル・ハヂ」など(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
「羅馬を後にして、カンパニヤの野邊を横り、アルバノの山の東を走り、險しき山の崖、石多き川の谷を過ぎ、いつしかカッシノに著けば、近くモンテ・カッシノ山の聳ゆるあり、僧院の建物見ゆ。」 …
読書目安時間:約3分
「羅馬を後にして、カンパニヤの野邊を横り、アルバノの山の東を走り、險しき山の崖、石多き川の谷を過ぎ、いつしかカッシノに著けば、近くモンテ・カッシノ山の聳ゆるあり、僧院の建物見ゆ。」 …
姨捨(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
わが心なぐさめかねつさらしなや をばすて山にてる月をみて よみ人しらず 上総の守だった父に伴なわれて、姉や継母などと一しょに東に下っていた少女が、京に帰って来たのは、まだ十三の秋だ …
読書目安時間:約21分
わが心なぐさめかねつさらしなや をばすて山にてる月をみて よみ人しらず 上総の守だった父に伴なわれて、姉や継母などと一しょに東に下っていた少女が、京に帰って来たのは、まだ十三の秋だ …
姨捨記(旧字旧仮名)
読書目安時間:約14分
「更級日記」は私の少年の日からの愛讀書であつた。いまだ夢多くして、異國の文學にのみ心を奪はれて居つたその頃の私に、或日この古い押し花のにほひのするやうな奧ゆかしい日記の話をしてくだ …
読書目安時間:約14分
「更級日記」は私の少年の日からの愛讀書であつた。いまだ夢多くして、異國の文學にのみ心を奪はれて居つたその頃の私に、或日この古い押し花のにほひのするやうな奧ゆかしい日記の話をしてくだ …
おもかげ(旧字旧仮名)
読書目安時間:約16分
アトリエとその中庭は、節子の死後、全く手入れもせずに放つておかれたので、彼女が繪に描くために丹精して育てられてゐた、さまざまな珍らしい植木は、丁度それらの多くがいま花をさかせる季節 …
読書目安時間:約16分
アトリエとその中庭は、節子の死後、全く手入れもせずに放つておかれたので、彼女が繪に描くために丹精して育てられてゐた、さまざまな珍らしい植木は、丁度それらの多くがいま花をさかせる季節 …
「オルジェル伯爵の舞踏会」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
これはレイモン・ラジィゲの小説だ。私はこの小説について語る前に、まづ作者ラジィゲについて一言したい。ラジィゲは一九二三年に二十で死んだ詩人だ。今生きてゐても私より一つ年上なだけであ …
読書目安時間:約10分
これはレイモン・ラジィゲの小説だ。私はこの小説について語る前に、まづ作者ラジィゲについて一言したい。ラジィゲは一九二三年に二十で死んだ詩人だ。今生きてゐても私より一つ年上なだけであ …
Ombra di Venezia(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
きのふからギイ・ド・プウルタレスの「伊太利に在りし日のニイチェ」といふ本を讀み出してゐる。忠實な傳記ではないかも知れないけれど、なかなか面白い。いま讀んでゐるところは、ニイチェが三 …
読書目安時間:約5分
きのふからギイ・ド・プウルタレスの「伊太利に在りし日のニイチェ」といふ本を讀み出してゐる。忠實な傳記ではないかも知れないけれど、なかなか面白い。いま讀んでゐるところは、ニイチェが三 …
「貝の穴に河童がゐる」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
僕は讀んでゐるうちに何かしら氣味惡くなつてくるやうな作品が好きだ。そんな作品はめつたにあるものではないが。—— 去年のいま頃である。 僕は「古東多万」第一號に載つた泉鏡花の「貝の穴 …
読書目安時間:約2分
僕は讀んでゐるうちに何かしら氣味惡くなつてくるやうな作品が好きだ。そんな作品はめつたにあるものではないが。—— 去年のいま頃である。 僕は「古東多万」第一號に載つた泉鏡花の「貝の穴 …
恢復期(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
第一部 彼はすやすやと眠っているように見えた。——それは夜ふけの寝台車のなかであった。…… 突然、そういう彼が片目だけを無気味に開けた。 そうして自分の枕もとの懐中時計を取ろうとし …
読書目安時間:約33分
第一部 彼はすやすやと眠っているように見えた。——それは夜ふけの寝台車のなかであった。…… 突然、そういう彼が片目だけを無気味に開けた。 そうして自分の枕もとの懐中時計を取ろうとし …
恢復期(旧字旧仮名)
読書目安時間:約33分
彼はすやすやと眠つてゐるやうに見えた。——それは夜ふけの寢臺車のなかであつた。…… 突然、さういふ彼が片目だけを無氣味に開けた。 さうして自分の枕もとの懷中時計を取らうとして、しき …
読書目安時間:約33分
彼はすやすやと眠つてゐるやうに見えた。——それは夜ふけの寢臺車のなかであつた。…… 突然、さういふ彼が片目だけを無氣味に開けた。 さうして自分の枕もとの懷中時計を取らうとして、しき …
顔(旧字旧仮名)
読書目安時間:約24分
路易はすぐ顏をぱあつと赤くした。 自分でもいやな癖だと思つてゐたけれど、どうしやうもないのであつた。何でもないのに「そら、また……」といふ氣がひよいとする。が、その時はもう遲い。見 …
読書目安時間:約24分
路易はすぐ顏をぱあつと赤くした。 自分でもいやな癖だと思つてゐたけれど、どうしやうもないのであつた。何でもないのに「そら、また……」といふ氣がひよいとする。が、その時はもう遲い。見 …
かげろうの日記(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間2分
なほ物はかなきを思へば、あるかなきかの心地する かげろふの日記といふべし。 蜻蛉日記 半生も既に過ぎてしまって、もはやこの世に何んのなす事もなく生きながらえている自分だが、——一た …
読書目安時間:約1時間2分
なほ物はかなきを思へば、あるかなきかの心地する かげろふの日記といふべし。 蜻蛉日記 半生も既に過ぎてしまって、もはやこの世に何んのなす事もなく生きながらえている自分だが、——一た …
我思古人(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
この夏も末になつてから漸つと「晩夏」が校了になり、ほつと一息ついてゐたら、甲鳥書林から何だか部厚い小包が屆いた。何かと思つたら、一束の檢印紙だつた。ひどく凝つた檢印紙で、一枚々々丁 …
読書目安時間:約6分
この夏も末になつてから漸つと「晩夏」が校了になり、ほつと一息ついてゐたら、甲鳥書林から何だか部厚い小包が屆いた。何かと思つたら、一束の檢印紙だつた。ひどく凝つた檢印紙で、一枚々々丁 …
風立ちぬ(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間50分
Le vent se lève, il faut tenter de vivre. PAUL VALÉRY それらの夏の日々、一面に薄の生い茂った草原の中で、お前が立ったまま熱心に …
読書目安時間:約1時間50分
Le vent se lève, il faut tenter de vivre. PAUL VALÉRY それらの夏の日々、一面に薄の生い茂った草原の中で、お前が立ったまま熱心に …
「神々のへど」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
室生さんのこの頃のお仕事ぶりは、私などのやうなずつと昔からの側近者にとつても、本當に驚嘆の他はありませぬ。立派なお仕事が次から次へとお出來になる、——その何と云ひますか、製作力の旺 …
読書目安時間:約5分
室生さんのこの頃のお仕事ぶりは、私などのやうなずつと昔からの側近者にとつても、本當に驚嘆の他はありませぬ。立派なお仕事が次から次へとお出來になる、——その何と云ひますか、製作力の旺 …
嘉村さん(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
嘉村礒多さんとは三遍ばかりお會ひしました。 去年の四月頃、或る用事があつて、はじめて私が南榎町のお家をお訪ねしましたら、何處かお體が惡くて寝ていらしつたらしい嘉村さんは、寢卷のまん …
読書目安時間:約3分
嘉村礒多さんとは三遍ばかりお會ひしました。 去年の四月頃、或る用事があつて、はじめて私が南榎町のお家をお訪ねしましたら、何處かお體が惡くて寝ていらしつたらしい嘉村さんは、寢卷のまん …
CARTE POSTALE(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
夕暮である。僕はフランス波止場をぶらりぶらりと歩いてゐる。しやれた煉瓦建てがある。何だらうと思つて、近づいて見ると、中にはほとんど人氣がない。入口のところにも、何も書いてない。そし …
読書目安時間:約4分
夕暮である。僕はフランス波止場をぶらりぶらりと歩いてゐる。しやれた煉瓦建てがある。何だらうと思つて、近づいて見ると、中にはほとんど人氣がない。入口のところにも、何も書いてない。そし …
雉子日記(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
去年の暮にすこし本なんぞを買込みに二三日上京したが、すぐ元日にこちらに引っ返して来た。汽車がひどく混んで、私はスキイの連中や、犬なんぞと一しょに貨物車に乗せられてきたが、嫌いなステ …
読書目安時間:約16分
去年の暮にすこし本なんぞを買込みに二三日上京したが、すぐ元日にこちらに引っ返して来た。汽車がひどく混んで、私はスキイの連中や、犬なんぞと一しょに貨物車に乗せられてきたが、嫌いなステ …
狐の手套〈小序〉(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
昔からよく隨筆の題にはその筆者の好む花の名などが用ひられてゐる。あれは何んとなく氣もちの好いものである。いま、ここにすこし隨筆めいたものを集めたついでに、ひとつその眞似をしてやらう …
読書目安時間:約1分
昔からよく隨筆の題にはその筆者の好む花の名などが用ひられてゐる。あれは何んとなく氣もちの好いものである。いま、ここにすこし隨筆めいたものを集めたついでに、ひとつその眞似をしてやらう …
(きのふプルウストの……)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
きのふプルウストの小説を讀んでゐましたら小説家のベルゴットの死を描いた一節に逢着しました。もうすつかり病氣の重くなつてゐたベルゴットが或る日ルウヴルに和蘭派のフェルメエルの繪を見に …
読書目安時間:約1分
きのふプルウストの小説を讀んでゐましたら小説家のベルゴットの死を描いた一節に逢着しました。もうすつかり病氣の重くなつてゐたベルゴットが或る日ルウヴルに和蘭派のフェルメエルの繪を見に …
木の十字架(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
「こちらで冬を過すのは、この土地のものではない私共には、なかなか難儀ですが、この御堂が本当に好きですので、こうして雪の深いなかに一人でそのお守りをしているのもなかなか愉しい気もちが …
読書目安時間:約14分
「こちらで冬を過すのは、この土地のものではない私共には、なかなか難儀ですが、この御堂が本当に好きですので、こうして雪の深いなかに一人でそのお守りをしているのもなかなか愉しい気もちが …
近況(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
神西君が僕のことを山のぼりなどしたやうに書いたものだから、みんながもつと身體に氣をつけて、あんまり無茶をしないやうにといつてよこす。この五月の末ごろの或る温かい日、家のものたちと裏 …
読書目安時間:約2分
神西君が僕のことを山のぼりなどしたやうに書いたものだから、みんながもつと身體に氣をつけて、あんまり無茶をしないやうにといつてよこす。この五月の末ごろの或る温かい日、家のものたちと裏 …
クロオデルの「能」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
ポオル・クロオデルが日本に滯在中に書いた「日のもとの黒鳥」(LOiseau Noir dans le Soleil Levant)といふ本も、ときどき取り出して見てゐる本の一つであ …
読書目安時間:約6分
ポオル・クロオデルが日本に滯在中に書いた「日のもとの黒鳥」(LOiseau Noir dans le Soleil Levant)といふ本も、ときどき取り出して見てゐる本の一つであ …
「鉄集」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
たしかシングであつたと思ふ。その詩集の序文中で、自分の詩が少數の仲間に讀まれるのみならず、丈夫や盜賊や、坊主どもにも讀まれて欲しいと云ふやうなことを云つてゐた。 この「鐡集」の詩人 …
読書目安時間:約2分
たしかシングであつたと思ふ。その詩集の序文中で、自分の詩が少數の仲間に讀まれるのみならず、丈夫や盜賊や、坊主どもにも讀まれて欲しいと云ふやうなことを云つてゐた。 この「鐡集」の詩人 …
黒髪山(旧字旧仮名)
読書目安時間:約9分
源氏物語の「總角」の卷で、長患ひのために「かひななどもいとほそうなりて影のやうによわげに」、衾のなかに雛かなんぞの伏せられたやうになつたきり、「御髮はいとこちたうもあらぬほどにうち …
読書目安時間:約9分
源氏物語の「總角」の卷で、長患ひのために「かひななどもいとほそうなりて影のやうによわげに」、衾のなかに雛かなんぞの伏せられたやうになつたきり、「御髮はいとこちたうもあらぬほどにうち …
ゲエテの「冬のハルツに旅す」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
ゲエテの「冬のハルツに旅す」の斷章にブラアムスが附曲したアルト・ラプソディを、一週間ばかり前からレコオドでをりをり聽いてゐるが、どうもそれを唱つたオネエギンといふ女のひとの、すこし …
読書目安時間:約5分
ゲエテの「冬のハルツに旅す」の斷章にブラアムスが附曲したアルト・ラプソディを、一週間ばかり前からレコオドでをりをり聽いてゐるが、どうもそれを唱つたオネエギンといふ女のひとの、すこし …
高原にて(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
昨日の夕方、輕井澤から中山道を自動車で沓掛、古宿、借宿、それから追分と、私の滯在してゐる村まで歸つてきたが、その古宿と借宿との間には高原のまん中にぽつんぽつんと半ばこはれかかつた氷 …
読書目安時間:約4分
昨日の夕方、輕井澤から中山道を自動車で沓掛、古宿、借宿、それから追分と、私の滯在してゐる村まで歸つてきたが、その古宿と借宿との間には高原のまん中にぽつんぽつんと半ばこはれかかつた氷 …
心の仕事を:或未知の友への手紙(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
御手紙拜見しました。 ドゥイノの悲歌に就いての御質問の事、只今生憎手許に充分本がありませんので、御滿足の行くやうには御返事が出來かねますが、——第十の悲歌のあの冒頭の部分は、此の最 …
読書目安時間:約3分
御手紙拜見しました。 ドゥイノの悲歌に就いての御質問の事、只今生憎手許に充分本がありませんので、御滿足の行くやうには御返事が出來かねますが、——第十の悲歌のあの冒頭の部分は、此の最 …
「古代感愛集」読後(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
お寒くなりましたしかしそれ以上に寒ざむしい世の中の變り果てた有樣のやうでございますねときどき東京に行つて歸つてきた友人などに東京の話を聞くたびに、先生などいかがお暮らしかと、心の痛 …
読書目安時間:約4分
お寒くなりましたしかしそれ以上に寒ざむしい世の中の變り果てた有樣のやうでございますねときどき東京に行つて歸つてきた友人などに東京の話を聞くたびに、先生などいかがお暮らしかと、心の痛 …
辛夷の花(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
「春の奈良へいつて、馬酔木の花ざかりを見ようとおもつて、途中、木曾路をまはつてきたら、おもひがけず吹雪に遭ひました。……」 僕は木曾の宿屋で貰つた絵はがきにそんなことを書きながら、 …
読書目安時間:約7分
「春の奈良へいつて、馬酔木の花ざかりを見ようとおもつて、途中、木曾路をまはつてきたら、おもひがけず吹雪に遭ひました。……」 僕は木曾の宿屋で貰つた絵はがきにそんなことを書きながら、 …
更級日記など(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
御質問にお答へするほど、日本の古典をよく讀んでゐませんので大變困りましたが、 一、僅かに讀んだものの中では、「更級日記」などが隨分好きです。理由と云つても別にありませんが、彼女の小 …
読書目安時間:約4分
御質問にお答へするほど、日本の古典をよく讀んでゐませんので大變困りましたが、 一、僅かに讀んだものの中では、「更級日記」などが隨分好きです。理由と云つても別にありませんが、彼女の小 …
詩集「窓」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約9分
私はいま自分の前に「窓」といふ、插繪入りの、薄い、クワルト判の佛蘭西語の詩集をひろげてゐる。その表題の示すごとく、ことごとく、窓を主題にした十篇の詩を集めたもので、そのおのおのに一 …
読書目安時間:約9分
私はいま自分の前に「窓」といふ、插繪入りの、薄い、クワルト判の佛蘭西語の詩集をひろげてゐる。その表題の示すごとく、ことごとく、窓を主題にした十篇の詩を集めたもので、そのおのおのに一 …
詩人も計算する(旧字旧仮名)
読書目安時間:約12分
「吾人の賞美する建築は、その建築家が目的によく副ふやうな手段を用ひて、その柱が、エレクションの麗はしき人像柱の如く、上にかかる重みを苦もなく輕々と支へてゐるやうな建築である。」 ア …
読書目安時間:約12分
「吾人の賞美する建築は、その建築家が目的によく副ふやうな手段を用ひて、その柱が、エレクションの麗はしき人像柱の如く、上にかかる重みを苦もなく輕々と支へてゐるやうな建築である。」 ア …
死の素描(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
僕は、ベツドのかたはらの天使に向つて云つた。 「蓄音機をかけてくれませんか?」 この天使は、僕がここに入院中、僕を受持つてゐるのだ。彼女は白い看護婦の制服をつけてゐる。 「何をかけ …
読書目安時間:約8分
僕は、ベツドのかたはらの天使に向つて云つた。 「蓄音機をかけてくれませんか?」 この天使は、僕がここに入院中、僕を受持つてゐるのだ。彼女は白い看護婦の制服をつけてゐる。 「何をかけ …
春日遅々(旧字旧仮名)
読書目安時間:約11分
四月十七日追分にて ホフマンスタアルの「文集」を讀み續ける。嘗つてビアンキイ女史がこの詩人のことをリルケと竝べて論じてゐた本を讀んだ折、既に物故したこの詩人のパセティックな、眞の姿 …
読書目安時間:約11分
四月十七日追分にて ホフマンスタアルの「文集」を讀み續ける。嘗つてビアンキイ女史がこの詩人のことをリルケと竝べて論じてゐた本を讀んだ折、既に物故したこの詩人のパセティックな、眞の姿 …
小説のことなど(旧字旧仮名)
読書目安時間:約15分
この頃私は逢ふ人ごとにモオリアックの小説論の話をしてゐる位だ。 私はつい最近、彼の小説論を二册ばかりと、「癩者への接吻」といふ小説を一つ、立て續けに讀んだところなのだ。彼の小説論は …
読書目安時間:約15分
この頃私は逢ふ人ごとにモオリアックの小説論の話をしてゐる位だ。 私はつい最近、彼の小説論を二册ばかりと、「癩者への接吻」といふ小説を一つ、立て續けに讀んだところなのだ。彼の小説論は …
初秋の浅間(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
この山麓では、九月はたいへん雲が多い。しかし、夏の近づく頃の雲の不活溌な動きとは異つて、白い、乾燥した、動きのいちじるしい雲の塊りが不連續的に通り過ぎる度毎に、何かがそれらの雲とと …
読書目安時間:約6分
この山麓では、九月はたいへん雲が多い。しかし、夏の近づく頃の雲の不活溌な動きとは異つて、白い、乾燥した、動きのいちじるしい雲の塊りが不連續的に通り過ぎる度毎に、何かがそれらの雲とと …
新人紹介(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
一、履歴、僕は千九百四年十二月東京に生れた。 芥川龍之介は僕の最もよき先生だつた。彼の死くらゐ僕を感動させたものはない。 彼の死後、まもなく、僕はひどい肺炎にかかり、長いあひだ生と …
読書目安時間:約1分
一、履歴、僕は千九百四年十二月東京に生れた。 芥川龍之介は僕の最もよき先生だつた。彼の死くらゐ僕を感動させたものはない。 彼の死後、まもなく、僕はひどい肺炎にかかり、長いあひだ生と …
水族館(旧字旧仮名)
読書目安時間:約25分
私は諸君に、このなんとも説明のしやうのない淺草公園の魅力を、出來るだけ完全に理解させるためには、私の知つてゐるかぎりの淺草についての千個の事實を以てするより、私の空想の中に生れた一 …
読書目安時間:約25分
私は諸君に、このなんとも説明のしやうのない淺草公園の魅力を、出來るだけ完全に理解させるためには、私の知つてゐるかぎりの淺草についての千個の事實を以てするより、私の空想の中に生れた一 …
「スタヴロギンの告白」の訳者に(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
リルケの「M・L・ブリッゲの手記」を譯してゐると、神西清がきて、いきなり今晩中に何でもいいから自分宛に手紙を書いてくれと言ふのだ。何にするんだと訊いたら、それでもつて「スタヴロギン …
読書目安時間:約4分
リルケの「M・L・ブリッゲの手記」を譯してゐると、神西清がきて、いきなり今晩中に何でもいいから自分宛に手紙を書いてくれと言ふのだ。何にするんだと訊いたら、それでもつて「スタヴロギン …
巣立ち(旧字旧仮名)
読書目安時間:約21分
彼女は窓をあけた、さうすると、まるでさういふ彼女を待つてゐたかのやうに、小屋のすぐ傍らの大きな樅の木から、アカハラが一羽、うれしさうに啼きながら飛び下りてきて、その窓の下で餌をあさ …
読書目安時間:約21分
彼女は窓をあけた、さうすると、まるでさういふ彼女を待つてゐたかのやうに、小屋のすぐ傍らの大きな樅の木から、アカハラが一羽、うれしさうに啼きながら飛び下りてきて、その窓の下で餌をあさ …
聖家族(新字新仮名)
読書目安時間:約32分
死があたかも一つの季節を開いたかのようだった。 死人の家への道には、自動車の混雑が次第に増加して行った。そしてそれは、その道幅が狭いために、各々の車は動いている間よりも、停止してい …
読書目安時間:約32分
死があたかも一つの季節を開いたかのようだった。 死人の家への道には、自動車の混雑が次第に増加して行った。そしてそれは、その道幅が狭いために、各々の車は動いている間よりも、停止してい …
聖家族(旧字旧仮名)
読書目安時間:約32分
死があたかも一つの季節を開いたかのやうだつた。 死人の家への道には、自動車の混雜が次第に増加して行つた。そしてそれは、その道幅が狹いために、各々の車は動いてゐる間よりも、停止してゐ …
読書目安時間:約32分
死があたかも一つの季節を開いたかのやうだつた。 死人の家への道には、自動車の混雜が次第に増加して行つた。そしてそれは、その道幅が狹いために、各々の車は動いてゐる間よりも、停止してゐ …
生者と死者(旧字旧仮名)
読書目安時間:約26分
或る夏、一つのさるすべりの木が私を魅してゐた。ホテルの二階の窓から、私は最初その木を認めた。其處からは、丁度物置かなんぞらしい板屋根ごしにその梢だけが少し見えてゐたので、私はそれを …
読書目安時間:約26分
或る夏、一つのさるすべりの木が私を魅してゐた。ホテルの二階の窓から、私は最初その木を認めた。其處からは、丁度物置かなんぞらしい板屋根ごしにその梢だけが少し見えてゐたので、私はそれを …
尖端人は語る(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
私は書かうと思つてもどうしても書けないやうな時がある。 さういふとき私はへとへとに疲れ、そして書くことは何と馬鹿馬鹿しいことだらうなどと考へながら、私は公園へ散歩に出かけてしまふの …
読書目安時間:約2分
私は書かうと思つてもどうしても書けないやうな時がある。 さういふとき私はへとへとに疲れ、そして書くことは何と馬鹿馬鹿しいことだらうなどと考へながら、私は公園へ散歩に出かけてしまふの …
続プルウスト雑記(旧字旧仮名)
読書目安時間:約21分
プルウストに關する三つの手紙を神西清に宛てて書いてから數ヶ月が過ぎた。 その間、私は心にもなく、プルウストの本を殆ど手離してゐた。 唯、ときたま、ガボリイのプルウスト論の中で見つけ …
読書目安時間:約21分
プルウストに關する三つの手紙を神西清に宛てて書いてから數ヶ月が過ぎた。 その間、私は心にもなく、プルウストの本を殆ど手離してゐた。 唯、ときたま、ガボリイのプルウスト論の中で見つけ …
旅の絵(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
……なんだかごたごたした苦しい夢を見たあとで、やっと目がさめた。目をさましながら、私は自分の寝ている見知らない部屋の中を見まわした。見たこともないような大きな鏡ばかりの衣裳戸棚、剥 …
読書目安時間:約27分
……なんだかごたごたした苦しい夢を見たあとで、やっと目がさめた。目をさましながら、私は自分の寝ている見知らない部屋の中を見まわした。見たこともないような大きな鏡ばかりの衣裳戸棚、剥 …
旅の絵(旧字旧仮名)
読書目安時間:約27分
竹中郁に ……なんだかごたごたした苦しい夢を見たあとで、やつと目がさめた。目をさましながら、私は自分の寢てゐる見知らない部屋の中を見まはした。見たこともないやうな大きな鏡ばかりの衣 …
読書目安時間:約27分
竹中郁に ……なんだかごたごたした苦しい夢を見たあとで、やつと目がさめた。目をさましながら、私は自分の寢てゐる見知らない部屋の中を見まはした。見たこともないやうな大きな鏡ばかりの衣 …
辻野久憲君(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
辻野君のこと、大へん悲しい。仕事の上でも惜しいことをしたと思ひます。辻野君のした仕事の大半は、飜譯だつたけれど、所謂飜譯家にありがちのよそよそしいところがちつとも無くて、いつも熱を …
読書目安時間:約3分
辻野君のこと、大へん悲しい。仕事の上でも惜しいことをしたと思ひます。辻野君のした仕事の大半は、飜譯だつたけれど、所謂飜譯家にありがちのよそよそしいところがちつとも無くて、いつも熱を …
手紙(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
野田君 また惡いさうだね。だから言はないこつちやない。ぢつと寢てゐたまへ。病氣はこつちで辛抱強く馴らしてやるがいいんだ。一度馴れてしまつたら、こんなに可愛い奴はない。 池谷さんが死 …
読書目安時間:約4分
野田君 また惡いさうだね。だから言はないこつちやない。ぢつと寢てゐたまへ。病氣はこつちで辛抱強く馴らしてやるがいいんだ。一度馴れてしまつたら、こんなに可愛い奴はない。 池谷さんが死 …
手紙:(「美しい村」ノオト)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約13分
一九三三年六月二十日、K村にて こつちへ來てから、もう二十日になる。それだのに、まだ何も仕事をしないで、散歩ばかりしてゐる。この頃の散歩道としては、あのM病院の向うの、小川に沿つた …
読書目安時間:約13分
一九三三年六月二十日、K村にて こつちへ來てから、もう二十日になる。それだのに、まだ何も仕事をしないで、散歩ばかりしてゐる。この頃の散歩道としては、あのM病院の向うの、小川に沿つた …
鳥料理(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
前口上 昔タルティーニと云う作曲家が Trillo del Diavoloと云うソナータを 夢の中で作曲したと云う話は 大層有名な話である故、 読者諸君も大方御存知だろうが、 一寸 …
読書目安時間:約15分
前口上 昔タルティーニと云う作曲家が Trillo del Diavoloと云うソナータを 夢の中で作曲したと云う話は 大層有名な話である故、 読者諸君も大方御存知だろうが、 一寸 …
鳥料理:A Parody(旧字旧仮名)
読書目安時間:約15分
昔タルテイーニと云ふ作曲家が Trillo del Diavolo と云ふソナータを 夢の中で作曲したといふ話は 大層有名な話である故、 讀者諸君も大方御存知だらうが 一寸私の手許 …
読書目安時間:約15分
昔タルテイーニと云ふ作曲家が Trillo del Diavolo と云ふソナータを 夢の中で作曲したといふ話は 大層有名な話である故、 讀者諸君も大方御存知だらうが 一寸私の手許 …
菜穂子(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間58分
一九二六年九月七日、O村にて 菜穂子、 私はこの日記をお前にいつか読んで貰うために書いておこうと思う。私が死んでから何年か立って、どうしたのかこの頃ちっとも私と口を利こうとはしない …
読書目安時間:約2時間58分
一九二六年九月七日、O村にて 菜穂子、 私はこの日記をお前にいつか読んで貰うために書いておこうと思う。私が死んでから何年か立って、どうしたのかこの頃ちっとも私と口を利こうとはしない …
夏の手紙:立原道造に(旧字旧仮名)
読書目安時間:約11分
七月二十五日、信濃追分にて この前の土曜日にこちらに來るかと思つてゐたが、とうとう來られなかつたね。君のゐる大森の室生さんの留守宅の方へ手紙を出すと、どうも郵便物はみんな輕井澤の別 …
読書目安時間:約11分
七月二十五日、信濃追分にて この前の土曜日にこちらに來るかと思つてゐたが、とうとう來られなかつたね。君のゐる大森の室生さんの留守宅の方へ手紙を出すと、どうも郵便物はみんな輕井澤の別 …
七つの手紙:或女友達に(旧字旧仮名)
読書目安時間:約23分
一九三七年九月十一日、追分にて お手紙を難有う。私達の仲間のものはもう殆ど此村から引き上げて行きました。さうしてこれからは、この小さな村の何もかも、みんな私が一人占めです。 夏の間 …
読書目安時間:約23分
一九三七年九月十一日、追分にて お手紙を難有う。私達の仲間のものはもう殆ど此村から引き上げて行きました。さうしてこれからは、この小さな村の何もかも、みんな私が一人占めです。 夏の間 …
二三の追憶(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
一高の頃のことを考へると、いまでもときをり逢ふことのある友達のことよりか、もうお逢ひできさうもない先生方のことがひとしほなつかしく思ひ出される。…… ⁂ 私になつかしい先生の一人は …
読書目安時間:約6分
一高の頃のことを考へると、いまでもときをり逢ふことのある友達のことよりか、もうお逢ひできさうもない先生方のことがひとしほなつかしく思ひ出される。…… ⁂ 私になつかしい先生の一人は …
楡の家(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間3分
第一部 一九二六年九月七日、O村にて 菜穂子、 私はこの日記をお前にいつか読んで貰うために書いておこうと思う。私が死んでから何年か立って、どうしたのかこの頃ちっとも私と口を利こうと …
読書目安時間:約1時間3分
第一部 一九二六年九月七日、O村にて 菜穂子、 私はこの日記をお前にいつか読んで貰うために書いておこうと思う。私が死んでから何年か立って、どうしたのかこの頃ちっとも私と口を利こうと …
鼠(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
彼等は鼠のやうに遊んだ。 彼等はある空家の物置小屋の中に、どこから見つけてきたのか、數枚の古疊を運んできて、それを一枚一枚天井の梁の上に敷きつめた。するとそのおかげで、そこには—— …
読書目安時間:約7分
彼等は鼠のやうに遊んだ。 彼等はある空家の物置小屋の中に、どこから見つけてきたのか、數枚の古疊を運んできて、それを一枚一枚天井の梁の上に敷きつめた。するとそのおかげで、そこには—— …
眠れる人(旧字旧仮名)
読書目安時間:約17分
その女が僕を見てあんまり親しげに微笑したので、僕はその女について行かずにゐられなかつた。もうすべてのものは眠つてゐた。ただ風だけが眼ざめてゐた。が、それとても、町中に散らばつてゐる …
読書目安時間:約17分
その女が僕を見てあんまり親しげに微笑したので、僕はその女について行かずにゐられなかつた。もうすべてのものは眠つてゐた。ただ風だけが眼ざめてゐた。が、それとても、町中に散らばつてゐる …
ノオト(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
この「窓」(Les Fenêtres)一卷は、ライネル・マリア・リルケがその晩年餘技として佛蘭西語で試みたいくつかの小さな詩集のうちの一つである。その死後、詩人の女友達の一人だつた …
読書目安時間:約2分
この「窓」(Les Fenêtres)一卷は、ライネル・マリア・リルケがその晩年餘技として佛蘭西語で試みたいくつかの小さな詩集のうちの一つである。その死後、詩人の女友達の一人だつた …
ノワイユ伯爵夫人(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
ノワイユ伯爵夫人(Anna-Elisabeth Bassaraba de Brancovan, Comtesse Mathieu de Noailles)は一八七六年十一月十五日巴 …
読書目安時間:約5分
ノワイユ伯爵夫人(Anna-Elisabeth Bassaraba de Brancovan, Comtesse Mathieu de Noailles)は一八七六年十一月十五日巴 …
ハイネが何処かで(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
ハイネが何處かで、自分は獨逸人の頑固なのは大嫌ひだが、獨逸語は大好きだ、詩の言葉としては世界中で一番美しいだらうといふやうな意味の事を言つてゐたと記憶する。 この頃、僕も獨逸語がす …
読書目安時間:約6分
ハイネが何處かで、自分は獨逸人の頑固なのは大嫌ひだが、獨逸語は大好きだ、詩の言葉としては世界中で一番美しいだらうといふやうな意味の事を言つてゐたと記憶する。 この頃、僕も獨逸語がす …
パイプについての雑談(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
この二三日、咽喉が痛くてしかたがない。どうも煙草の飮み過ぎらしいのだ。 それで、愛用のパイプを口にくはへることも我慢してゐる。 ——だからといふのではないがひとつ、僕の古馴染みのパ …
読書目安時間:約4分
この二三日、咽喉が痛くてしかたがない。どうも煙草の飮み過ぎらしいのだ。 それで、愛用のパイプを口にくはへることも我慢してゐる。 ——だからといふのではないがひとつ、僕の古馴染みのパ …
端書(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
何か書きたいと思つて、いろいろ考へてゐるのだけれど、つい怠けて——怠けてゐるくらゐ僕の健康にいいことはないので——なかなか思ひ立つて書けないのです。まあ、一つ小説が書けたらその後で …
読書目安時間:約3分
何か書きたいと思つて、いろいろ考へてゐるのだけれど、つい怠けて——怠けてゐるくらゐ僕の健康にいいことはないので——なかなか思ひ立つて書けないのです。まあ、一つ小説が書けたらその後で …
萩の花(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
萩の花については、私は二三の小さな思ひ出しか持つてゐない。そのいづれもがみな輕井澤で出遇つたことばかりである。その花の咲く頃、私は大抵この村にゐるからであらう。 ⁂ いつの夏の末だ …
読書目安時間:約4分
萩の花については、私は二三の小さな思ひ出しか持つてゐない。そのいづれもがみな輕井澤で出遇つたことばかりである。その花の咲く頃、私は大抵この村にゐるからであらう。 ⁂ いつの夏の末だ …
萩原朔太郎(旧字旧仮名)
読書目安時間:約22分
萩原朔太郎は明治十九年十一月一日、上州赤城山の麓、利根川のほとりの小さき都會である前橋市に生れた。 *彼はいつも自ら明治二十一年生れと記してゐたが、それは誤つてゐたのである。しかし …
読書目安時間:約22分
萩原朔太郎は明治十九年十一月一日、上州赤城山の麓、利根川のほとりの小さき都會である前橋市に生れた。 *彼はいつも自ら明治二十一年生れと記してゐたが、それは誤つてゐたのである。しかし …
葉桜日記(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
——私は、中野重治の譯したハイネの手紙の寫しが以前から私の手許にあるので、それを私の雜誌に載せたいと思つてゐるが、二三個處意味不明のところがある。が、いま、中野には會ふことが出來な …
読書目安時間:約4分
——私は、中野重治の譯したハイネの手紙の寫しが以前から私の手許にあるので、それを私の雜誌に載せたいと思つてゐるが、二三個處意味不明のところがある。が、いま、中野には會ふことが出來な …
「馬車」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
「馬車」は横光利一さんのもつとも特異な作品の一つである。横光さんの作品の基底には、いつも humain なものと surhumain なものとがふしぎに交錯してゐるが、それがどちら …
読書目安時間:約1分
「馬車」は横光利一さんのもつとも特異な作品の一つである。横光さんの作品の基底には、いつも humain なものと surhumain なものとがふしぎに交錯してゐるが、それがどちら …
馬車を待つ間(旧字旧仮名)
読書目安時間:約18分
「やあ綺麗だなあ……」 埃りまみれの靴の紐をほどきながら、ひよいと顏を上げた私は、さう思はずひとりごとを言つた。 崖ばらに一かたまり、何んの花だか、赤やら白やら咲きみだれてゐるのが …
読書目安時間:約18分
「やあ綺麗だなあ……」 埃りまみれの靴の紐をほどきながら、ひよいと顏を上げた私は、さう思はずひとりごとを言つた。 崖ばらに一かたまり、何んの花だか、赤やら白やら咲きみだれてゐるのが …
花を持てる女(新字新仮名)
読書目安時間:約37分
私はその日はじめて妻をつれて亡き母の墓まいりに往った。 円通寺というその古い寺のある請地町は、向島の私たちのうちからそう離れてもいないし、それにそこいらの場末の町々は私の小さい時か …
読書目安時間:約37分
私はその日はじめて妻をつれて亡き母の墓まいりに往った。 円通寺というその古い寺のある請地町は、向島の私たちのうちからそう離れてもいないし、それにそこいらの場末の町々は私の小さい時か …
花を持てる女(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
私がまだ子供の時である。 私はよく手文庫の中から私の家族の寫眞を取り出しては、これはお父さんの、これはお母さんの、これは押上の伯父さんのなどと、皆の前で一つづつ得意さうに説明をする …
読書目安時間:約3分
私がまだ子供の時である。 私はよく手文庫の中から私の家族の寫眞を取り出しては、これはお父さんの、これはお母さんの、これは押上の伯父さんのなどと、皆の前で一つづつ得意さうに説明をする …
羽ばたき:Ein Marchen(旧字旧仮名)
読書目安時間:約18分
丘の上のU塔には、千羽の鳩が棲んでゐた。それらの鳩がいちどきに飛翔すると、空は眞暗になつた。そしてしばらくそれらの羽音がU塔を神々しく支配した。それらの羽ばたきは何となく天使の羽ば …
読書目安時間:約18分
丘の上のU塔には、千羽の鳩が棲んでゐた。それらの鳩がいちどきに飛翔すると、空は眞暗になつた。そしてしばらくそれらの羽音がU塔を神々しく支配した。それらの羽ばたきは何となく天使の羽ば …
春浅き日に(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
二三日前の或る温かなぽかぽかするやうな午後、僕はうかうかと三宅坂から赤坂見付まで歩いてしまつた。あそこの通りは前から好きだつたが、そんな風にぶらぶら歩いたのは實に何年ぶりかだつた。 …
読書目安時間:約4分
二三日前の或る温かなぽかぽかするやうな午後、僕はうかうかと三宅坂から赤坂見付まで歩いてしまつた。あそこの通りは前から好きだつたが、そんな風にぶらぶら歩いたのは實に何年ぶりかだつた。 …
晩夏(新字新仮名)
読書目安時間:約27分
けさ急に思い立って、軽井沢の山小屋を閉めて、野尻湖に来た。 実は——きのうひさしぶりで町へ下りて菓子でも買って帰ろうとしたら、何処の店ももう大概引き上げたあとで、漸っと町はずれのア …
読書目安時間:約27分
けさ急に思い立って、軽井沢の山小屋を閉めて、野尻湖に来た。 実は——きのうひさしぶりで町へ下りて菓子でも買って帰ろうとしたら、何処の店ももう大概引き上げたあとで、漸っと町はずれのア …
日付のない日記(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
今朝も七時ごろに目が覺める。 それから一時間ばかり、私は寢床の上で、新聞を讀みながら、日光浴をやる。この頃は、丁度おあつらへ向きに、その時分になるともう朝日が一ぱい寢床の上にあたり …
読書目安時間:約5分
今朝も七時ごろに目が覺める。 それから一時間ばかり、私は寢床の上で、新聞を讀みながら、日光浴をやる。この頃は、丁度おあつらへ向きに、その時分になるともう朝日が一ぱい寢床の上にあたり …
日時計の天使(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
一九〇六年一月二十五日、ライネル・マリア・リルケはロダン夫妻と同行して、シャアトルの本寺を見物に行つた。そのシャアトル行の状況は、リルケがその妻クララに宛てて其日のうちにシャアトル …
読書目安時間:約8分
一九〇六年一月二十五日、ライネル・マリア・リルケはロダン夫妻と同行して、シャアトルの本寺を見物に行つた。そのシャアトル行の状況は、リルケがその妻クララに宛てて其日のうちにシャアトル …
風景(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
波止場の附近はいつものやうに、ぷんぷん酒臭い水夫や、忙しさうに陸揚してゐる人夫どもで一ぱいだつた。僕はさういふさなかを窮窟さうに歩くといふよりも、むしろ人氣のなささうなところを、と …
読書目安時間:約7分
波止場の附近はいつものやうに、ぷんぷん酒臭い水夫や、忙しさうに陸揚してゐる人夫どもで一ぱいだつた。僕はさういふさなかを窮窟さうに歩くといふよりも、むしろ人氣のなささうなところを、と …
不器用な天使(旧字旧仮名)
読書目安時間:約28分
カフエ・シヤノアルは客で一ぱいだ。硝子戸を押して中へ入つても僕は友人たちをすぐ見つけることが出來ない。僕はすこし立止つてゐる。ジヤズが僕の感覺の上に生まの肉を投げつける。その時、僕 …
読書目安時間:約28分
カフエ・シヤノアルは客で一ぱいだ。硝子戸を押して中へ入つても僕は友人たちをすぐ見つけることが出來ない。僕はすこし立止つてゐる。ジヤズが僕の感覺の上に生まの肉を投げつける。その時、僕 …
二人の友(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
それからもう數年になるのである。 ある日のこと、僕が田端の室生さんのところへ行つたら、室生さんは「昨日は面白い男がきたよ」と云つた。その男は自分は五十位になつたらいい抒情詩が書けさ …
読書目安時間:約7分
それからもう數年になるのである。 ある日のこと、僕が田端の室生さんのところへ行つたら、室生さんは「昨日は面白い男がきたよ」と云つた。その男は自分は五十位になつたらいい抒情詩が書けさ …
プルウスト雑記:神西清に(旧字旧仮名)
読書目安時間:約29分
一九三二年七月七日 今朝、僕はこんな夢を見た。 僕はひとりで活動小屋にはひつた。僕はうつかり眼鏡を忘れてきたことに氣がついた。いつもなら活動小屋の一番後の席に坐るのだが、しやうがな …
読書目安時間:約29分
一九三二年七月七日 今朝、僕はこんな夢を見た。 僕はひとりで活動小屋にはひつた。僕はうつかり眼鏡を忘れてきたことに氣がついた。いつもなら活動小屋の一番後の席に坐るのだが、しやうがな …
プルウストの文体について(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
散文の本質といふものは、自分の考へをどんな風にでも構はずに表現してしまふところにある、と言つてもいいやうであります。スタンダァルにしろ、バルザックにしろ、さういふ意味での、本當の散 …
読書目安時間:約10分
散文の本質といふものは、自分の考へをどんな風にでも構はずに表現してしまふところにある、と言つてもいいやうであります。スタンダァルにしろ、バルザックにしろ、さういふ意味での、本當の散 …
ふるさとびと(旧字旧仮名)
読書目安時間:約25分
おえふがまだ二十かそこいらで、もう夫と離別し、幼兒をひとりかかへて、生みの親たちと一しよに住むことになつた分去れの村は、その頃、みるかげもない寒村になつてゐた。 淺間根腰の宿場の一 …
読書目安時間:約25分
おえふがまだ二十かそこいらで、もう夫と離別し、幼兒をひとりかかへて、生みの親たちと一しよに住むことになつた分去れの村は、その頃、みるかげもない寒村になつてゐた。 淺間根腰の宿場の一 …
フローラとフォーナ(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
プルウストは花を描くことが好きらしい。 彼の小説の中心地であるとさへ言はれてゐるコンブレエといふ田舍などは、まるで花で埋まつてゐるやうに描かれてゐる。山査子だとか、リラだとか、睡蓮 …
読書目安時間:約4分
プルウストは花を描くことが好きらしい。 彼の小説の中心地であるとさへ言はれてゐるコンブレエといふ田舍などは、まるで花で埋まつてゐるやうに描かれてゐる。山査子だとか、リラだとか、睡蓮 …
文学的散歩:プルウストの小説構成(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
私は先頃プルウストについてエッセイを書いた時、プルウストの小説の構成については敢へて觸れようとしなかつた。その時はまだプルウストの小説を切れぎれにしか讀んでゐなかつたから。そして小 …
読書目安時間:約6分
私は先頃プルウストについてエッセイを書いた時、プルウストの小説の構成については敢へて觸れようとしなかつた。その時はまだプルウストの小説を切れぎれにしか讀んでゐなかつたから。そして小 …
「文芸林泉」読後(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
「文藝林泉」は室生さんの最近の隨筆集である。が、讀後、何かしらん一篇の長篇小説を讀んだやうな後味が殘る。「京洛日記」や「馬込林泉記」や「いつを昔の記」などの小品風なものばかりではな …
読書目安時間:約8分
「文藝林泉」は室生さんの最近の隨筆集である。が、讀後、何かしらん一篇の長篇小説を讀んだやうな後味が殘る。「京洛日記」や「馬込林泉記」や「いつを昔の記」などの小品風なものばかりではな …
噴水のほとりで――(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
私達は水族館を出ると、觀音堂の裏をすこしばかり歩いた。大きな樹があつた。噴水があつた。鳩が不器用に飛んでゐた。五月の夕暮だつた。 「乞食つて、君、……」 突然、あちらこちらのベンチ …
読書目安時間:約3分
私達は水族館を出ると、觀音堂の裏をすこしばかり歩いた。大きな樹があつた。噴水があつた。鳩が不器用に飛んでゐた。五月の夕暮だつた。 「乞食つて、君、……」 突然、あちらこちらのベンチ …
噴水のほとりで――(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
私達は水族館を出ると、観音堂の裏をすこしばかり歩いた。大きな樹があつた。噴水があつた。鳩が不器用に飛んでゐた。五月の夕暮だつた。 「乞食つて、君、……」 突然、あちらこちらのベンチ …
読書目安時間:約3分
私達は水族館を出ると、観音堂の裏をすこしばかり歩いた。大きな樹があつた。噴水があつた。鳩が不器用に飛んでゐた。五月の夕暮だつた。 「乞食つて、君、……」 突然、あちらこちらのベンチ …
匈奴の森など(旧字旧仮名)
読書目安時間:約19分
秋になりました。夏の間、A山の向う側にあるいくつかの牧場に預けられてゐた牛どもも、再びこの村に歸つてきました。その背なかの黒い斑は、なんだか私には、さまざまな見知らぬ牧場の地圖のや …
読書目安時間:約19分
秋になりました。夏の間、A山の向う側にあるいくつかの牧場に預けられてゐた牛どもも、再びこの村に歸つてきました。その背なかの黒い斑は、なんだか私には、さまざまな見知らぬ牧場の地圖のや …
朴の咲く頃(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
あたりはしいんとしていて、ときおり谷のもっと奥から山椒喰のかすかな啼き声が絶え絶えに聞えて来るばかりだった。そんな谷あいの山かげに、他の雑木に雑って、何んの木だか、目立って大きな葉 …
読書目安時間:約30分
あたりはしいんとしていて、ときおり谷のもっと奥から山椒喰のかすかな啼き声が絶え絶えに聞えて来るばかりだった。そんな谷あいの山かげに、他の雑木に雑って、何んの木だか、目立って大きな葉 …
(ポオル・モオランの「タンドル・ストック」)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約7分
堀口大學氏が「三人女」と云ふ題名で譯されてゐるポオル・モオランの短篇集の原名は Tendres Stocks と云ふのである。三人の女のことを描き分けたものだから「三人女」と云ふ題 …
読書目安時間:約7分
堀口大學氏が「三人女」と云ふ題名で譯されてゐるポオル・モオランの短篇集の原名は Tendres Stocks と云ふのである。三人の女のことを描き分けたものだから「三人女」と云ふ題 …
牧歌:恩地三保子嬢に(旧字旧仮名)
読書目安時間:約9分
あなたの、お父さんの雜誌に書けといはれた隨筆でも書けたら書かうと思つて、かうやつてけふも森の中へ、例の大きな drawing-book をかかへて、來てゐるのです。僕の住んでゐる屋 …
読書目安時間:約9分
あなたの、お父さんの雜誌に書けといはれた隨筆でも書けたら書かうと思つて、かうやつてけふも森の中へ、例の大きな drawing-book をかかへて、來てゐるのです。僕の住んでゐる屋 …
卜居:津村信夫に(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
この家のすぐ裏がやや深い谿谷になっていて——この頃など夜の明け切らないうちから其処で雉子がけたたましく啼き立てるので、いつも私達はまだ眠いのに目を覚ましてしまう程だが、——それでも …
読書目安時間:約6分
この家のすぐ裏がやや深い谿谷になっていて——この頃など夜の明け切らないうちから其処で雉子がけたたましく啼き立てるので、いつも私達はまだ眠いのに目を覚ましてしまう程だが、——それでも …
ほととぎす(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間1分
われぞげにとけて寐らめやほととぎす ものおもひまさりこゑとなるらん 蜻蛉日記 「昔、殿のお通いになっていらしった源の宰相某とか申された殿の御女の腹に、お美しい女君が一人いらっしゃる …
読書目安時間:約1時間1分
われぞげにとけて寐らめやほととぎす ものおもひまさりこゑとなるらん 蜻蛉日記 「昔、殿のお通いになっていらしった源の宰相某とか申された殿の御女の腹に、お美しい女君が一人いらっしゃる …
本のこと(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
僕は夢の中で見た本のことを話さうと思ふ。 芥川さんに「本の事」と云ふ隨筆がある。その中に矢張り夢の中で見た本のことが書かれてある。その本と云ふのはの Quarto 版の「かげ草」で …
読書目安時間:約5分
僕は夢の中で見た本のことを話さうと思ふ。 芥川さんに「本の事」と云ふ隨筆がある。その中に矢張り夢の中で見た本のことが書かれてある。その本と云ふのはの Quarto 版の「かげ草」で …
窓(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
或る秋の午後、私は、小さな沼がそれを町から完全に隔離している、O夫人の別荘を訪れたのであった。 その別荘に達するには、沼のまわりを迂回している一本の小径によるほかはないので、その建 …
読書目安時間:約8分
或る秋の午後、私は、小さな沼がそれを町から完全に隔離している、O夫人の別荘を訪れたのであった。 その別荘に達するには、沼のまわりを迂回している一本の小径によるほかはないので、その建 …
窓(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
或る秋の午後、私は、小さな沼がそれを町から完全に隔離してゐる、O夫人の別莊を訪れたのであつた。 その別莊に達するには、沼のまはりを迂囘してゐる一本の小徑によるほかはないので、その建 …
読書目安時間:約8分
或る秋の午後、私は、小さな沼がそれを町から完全に隔離してゐる、O夫人の別莊を訪れたのであつた。 その別莊に達するには、沼のまはりを迂囘してゐる一本の小徑によるほかはないので、その建 …
豆自伝(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
私が四歳の五月の節句のとき、隣家から發した火事のために、私の五月幟も五月人形もみんな燒けてしまつた。その火事の恐怖が、私に甚だ強い衝動を與へたため、それまでのすべてのいろいろな記憶 …
読書目安時間:約2分
私が四歳の五月の節句のとき、隣家から發した火事のために、私の五月幟も五月人形もみんな燒けてしまつた。その火事の恐怖が、私に甚だ強い衝動を與へたため、それまでのすべてのいろいろな記憶 …
「マルテの手記」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
丁抹の若い貴族マルテ・ラウリッツ・ブリッゲがその敗殘の身をパリの一隅によせ、其處でうらぶれた人々にまじつて孤獨な生活をはじめる。 第一部の前半は、先づ、マルテをとりかこむパリの怖ろ …
読書目安時間:約2分
丁抹の若い貴族マルテ・ラウリッツ・ブリッゲがその敗殘の身をパリの一隅によせ、其處でうらぶれた人々にまじつて孤獨な生活をはじめる。 第一部の前半は、先づ、マルテをとりかこむパリの怖ろ …
水のほとり(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
私はいま、こんな胸の病氣で、部屋の中に閉ぢ籠つたきり、殆ど外出することなんかないと言つていい位であるが、——いまから數週間前、まだ私の病氣もこんなに重くならなかつた頃のことだ、晝間 …
読書目安時間:約5分
私はいま、こんな胸の病氣で、部屋の中に閉ぢ籠つたきり、殆ど外出することなんかないと言つていい位であるが、——いまから數週間前、まだ私の病氣もこんなに重くならなかつた頃のことだ、晝間 …
三つの挿話(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
墓畔の家 これは私が小学三四年のころの話である。 私の家からその小学校へ通う道筋にあたって、常泉寺(註一)という、かなり大きな、古い寺があった。非常に奥ゆきの深い寺で、その正門から …
読書目安時間:約33分
墓畔の家 これは私が小学三四年のころの話である。 私の家からその小学校へ通う道筋にあたって、常泉寺(註一)という、かなり大きな、古い寺があった。非常に奥ゆきの深い寺で、その正門から …
麦藁帽子(新字新仮名)
読書目安時間:約32分
私は十五だった。そしてお前は十三だった。 私はお前の兄たちと、苜宿の白い花の密生した原っぱで、ベエスボオルの練習をしていた。お前は、その小さな弟と一しょに、遠くの方で、私たちの練習 …
読書目安時間:約32分
私は十五だった。そしてお前は十三だった。 私はお前の兄たちと、苜宿の白い花の密生した原っぱで、ベエスボオルの練習をしていた。お前は、その小さな弟と一しょに、遠くの方で、私たちの練習 …
麦藁帽子(旧字旧仮名)
読書目安時間:約32分
私は十五だつた。そしてお前は十三だつた。 私はお前の兄たちと、苜蓿の白い花の密生した原つぱで、ベエスボオルの練習をしてゐた。お前は、その小さな弟と一しよに、遠くの方で、私たちの練習 …
読書目安時間:約32分
私は十五だつた。そしてお前は十三だつた。 私はお前の兄たちと、苜蓿の白い花の密生した原つぱで、ベエスボオルの練習をしてゐた。お前は、その小さな弟と一しよに、遠くの方で、私たちの練習 …
室生さんへの手紙(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
御高著「室生犀星詩集」(第一書房版)をお送り下さつて有難うございました。 私はいまこの雜誌からあなたに宛てた手紙の形式で何かあなたのことを書けと云はれ、丁度改造社版の「新選室生犀星 …
読書目安時間:約10分
御高著「室生犀星詩集」(第一書房版)をお送り下さつて有難うございました。 私はいまこの雜誌からあなたに宛てた手紙の形式で何かあなたのことを書けと云はれ、丁度改造社版の「新選室生犀星 …
モオリアックのこと(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
現代作家の中で誰が一番好きかと問はれたら、僕は躊躇せずにモオリアックの名を擧げるだらう。去年の夏は病氣で仕事が出來なかつたので、毎日のやうにサナトリウムの裏山へ行つては木蔭に寢ころ …
読書目安時間:約2分
現代作家の中で誰が一番好きかと問はれたら、僕は躊躇せずにモオリアックの名を擧げるだらう。去年の夏は病氣で仕事が出來なかつたので、毎日のやうにサナトリウムの裏山へ行つては木蔭に寢ころ …
モオリス・ド・ゲランと姉ユウジェニイ(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
Maurice de Guérin はラングドックのシャトオ・ド・ケエラに一八一〇年八月五日に生れた。姉の Eugénie はそれより五年前、一八〇五年一月二十九日に生れた。美しい …
読書目安時間:約10分
Maurice de Guérin はラングドックのシャトオ・ド・ケエラに一八一〇年八月五日に生れた。姉の Eugénie はそれより五年前、一八〇五年一月二十九日に生れた。美しい …
燃ゆる頬(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
私は十七になった。そして中学校から高等学校へはいったばかりの時分であった。 私の両親は、私が彼等の許であんまり神経質に育つことを恐れて、私をそこの寄宿舎に入れた。そういう環境の変化 …
読書目安時間:約17分
私は十七になった。そして中学校から高等学校へはいったばかりの時分であった。 私の両親は、私が彼等の許であんまり神経質に育つことを恐れて、私をそこの寄宿舎に入れた。そういう環境の変化 …
燃ゆる頬(旧字旧仮名)
読書目安時間:約17分
私は十七になつた。そして中學校から高等學校へはひつたばかりの時分であつた。 私の兩親は、私が彼等の許であんまり神經質に育つことを恐れて、私をそこの寄宿舍に入れた。さういふ環境の變化 …
読書目安時間:約17分
私は十七になつた。そして中學校から高等學校へはひつたばかりの時分であつた。 私の兩親は、私が彼等の許であんまり神經質に育つことを恐れて、私をそこの寄宿舍に入れた。さういふ環境の變化 …
大和路・信濃路(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間56分
その藁屋根の古い寺の、木ぶかい墓地へゆく小径のかたわらに、一体の小さな苔蒸した石仏が、笹むらのなかに何かしおらしい姿で、ちらちらと木洩れ日に光って見えている。いずれ観音像かなにかだ …
読書目安時間:約1時間56分
その藁屋根の古い寺の、木ぶかい墓地へゆく小径のかたわらに、一体の小さな苔蒸した石仏が、笹むらのなかに何かしおらしい姿で、ちらちらと木洩れ日に光って見えている。いずれ観音像かなにかだ …
山日記その一(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
九月三日 ゆうべ二時頃、杉皮ばかりの天井裏で、何かごそごそと物音がするので、思はず目を覺ました。ちやうど僕の頭の眞上のへん。鼠だらう位に思つて、やがてもう音がしなくなつたので、又す …
読書目安時間:約5分
九月三日 ゆうべ二時頃、杉皮ばかりの天井裏で、何かごそごそと物音がするので、思はず目を覺ました。ちやうど僕の頭の眞上のへん。鼠だらう位に思つて、やがてもう音がしなくなつたので、又す …
山日記その二(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
十月九日 こちらはもう秋が深い。冬までゐられさうなことを言つてゐた川端さんも、これからずつと木曾をまはつて鎌倉へ歸ると、さきをとつひお別れに來られたが、たぶんけふあたりはその木曾を …
読書目安時間:約3分
十月九日 こちらはもう秋が深い。冬までゐられさうなことを言つてゐた川端さんも、これからずつと木曾をまはつて鎌倉へ歸ると、さきをとつひお別れに來られたが、たぶんけふあたりはその木曾を …
雪の上の足跡(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
主やあ、どこへ行ったかと思ったら、雪だらけになって帰って来たね。 学生林の中を歩いて来ました。雑木林の中なぞは随分雪が深いのですね。どうかすると、腰のあたりまで雪の中に埋まってしま …
読書目安時間:約12分
主やあ、どこへ行ったかと思ったら、雪だらけになって帰って来たね。 学生林の中を歩いて来ました。雑木林の中なぞは随分雪が深いのですね。どうかすると、腰のあたりまで雪の中に埋まってしま …
行く春の記(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
三月のはじめから又僕は病氣でねてゐました。漸つと快方に向ひ、この頃は庭に出られるやうになりました。もう春もだいぶ深く、牡丹の蕾が目に立つてふくらんで來てゐます。去年の春はその牡丹が …
読書目安時間:約1分
三月のはじめから又僕は病氣でねてゐました。漸つと快方に向ひ、この頃は庭に出られるやうになりました。もう春もだいぶ深く、牡丹の蕾が目に立つてふくらんで來てゐます。去年の春はその牡丹が …
幼年時代(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間15分
私は自分の幼年時代の思い出の中から、これまで何度も何度もそれを思い出したおかげで、いつか自分の現在の気もちと綯い交ぜになってしまっているようなものばかりを主として、書いてゆくつもり …
読書目安時間:約1時間15分
私は自分の幼年時代の思い出の中から、これまで何度も何度もそれを思い出したおかげで、いつか自分の現在の気もちと綯い交ぜになってしまっているようなものばかりを主として、書いてゆくつもり …
「浴泉記」など(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
温泉のあまり好きでない私に温泉のことを何か書けといふのである。何か書けるだらう位に、高をくくつてゐたが、いざ書かうとすると、何を書いたらいいのか分らないので、なかなか書き出せない。 …
読書目安時間:約5分
温泉のあまり好きでない私に温泉のことを何か書けといふのである。何か書けるだらう位に、高をくくつてゐたが、いざ書かうとすると、何を書いたらいいのか分らないので、なかなか書き出せない。 …
四葉の苜蓿(旧字旧仮名)
読書目安時間:約15分
夏に先立つて、村の會堂の廣場には辛夷の木に眞白い花が咲く。まだ會堂に閉されてゐて、その花の咲いてゐる間、よくその木のまはりで村の子供たちが日曜日など愉しさうに遊んでゐる。その花が散 …
読書目安時間:約15分
夏に先立つて、村の會堂の廣場には辛夷の木に眞白い花が咲く。まだ會堂に閉されてゐて、その花の咲いてゐる間、よくその木のまはりで村の子供たちが日曜日など愉しさうに遊んでゐる。その花が散 …
ランプの下で(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
山にやつて來てから、もう隨分長いこと書かない。去年はほんたうに何も書きたくなかつたので、あつさりと何も書かなかつたが、今年はそんな氣持はかなぐり棄てて、ひとつうんと書いて見るつもり …
読書目安時間:約5分
山にやつて來てから、もう隨分長いこと書かない。去年はほんたうに何も書きたくなかつたので、あつさりと何も書かなかつたが、今年はそんな氣持はかなぐり棄てて、ひとつうんと書いて見るつもり …
緑葉歎(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
青葉頃になると、どうも僕の身體の具合が惡くなるのです。それにやられまいと思つて、隨分用心してゐるのですが、いつのまにかやられてゐます。こんどなども、ちよつと氣分が惡かつたので、二三 …
読書目安時間:約5分
青葉頃になると、どうも僕の身體の具合が惡くなるのです。それにやられまいと思つて、隨分用心してゐるのですが、いつのまにかやられてゐます。こんどなども、ちよつと氣分が惡かつたので、二三 …
リルケ年譜(旧字旧仮名)
読書目安時間:約14分
十二月四日、ボヘミヤの首都プラアグに生る。古き貴族の後裔なりと云ふ。 幼年學校に入學。五年在學の後、退學す。 ミュンヘンに出づ。既に「人生と小曲」(Leben und Lieder …
読書目安時間:約14分
十二月四日、ボヘミヤの首都プラアグに生る。古き貴族の後裔なりと云ふ。 幼年學校に入學。五年在學の後、退學す。 ミュンヘンに出づ。既に「人生と小曲」(Leben und Lieder …
ルウベンスの偽画(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
それは漆黒の自動車であった。 その自動車が軽井沢ステエションの表口まで来て停まると、中から一人のドイツ人らしい娘を降した。 彼はそれがあんまり美しい車だったのでタクシイではあるまい …
読書目安時間:約22分
それは漆黒の自動車であった。 その自動車が軽井沢ステエションの表口まで来て停まると、中から一人のドイツ人らしい娘を降した。 彼はそれがあんまり美しい車だったのでタクシイではあるまい …
ルウベンスの偽画(旧字旧仮名)
読書目安時間:約22分
それは漆黒の自動車であつた。 その自動車が輕井澤ステエシヨンの表口まで來て停まると、中から一人のドイツ人らしい娘を降した。 彼はそれがあんまり美しい車だつたのでタクシイではあるまい …
読書目安時間:約22分
それは漆黒の自動車であつた。 その自動車が輕井澤ステエシヨンの表口まで來て停まると、中から一人のドイツ人らしい娘を降した。 彼はそれがあんまり美しい車だつたのでタクシイではあるまい …
レエモン ラジィゲ(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
「何よりもまづ獨創的であれ。」しばしば發せられるこの忠告は、凡庸な詩人たちのところでのみ役に立つ。凡庸でない詩人たちはそれを必要としないのだ。そして多くの凡庸な詩人たちがダダの亞流 …
読書目安時間:約8分
「何よりもまづ獨創的であれ。」しばしば發せられるこの忠告は、凡庸な詩人たちのところでのみ役に立つ。凡庸でない詩人たちはそれを必要としないのだ。そして多くの凡庸な詩人たちがダダの亞流 …
「鎮魂曲」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
ハイネのロマンツェロなどは、數ヶ月の間に病苦と鬪ひながらも一氣に書き上げて、それをはじめから一卷として世に問うたものらしい。ああいふ慟哭的な詩などは一篇々々引きちぎつて讀まされるよ …
読書目安時間:約6分
ハイネのロマンツェロなどは、數ヶ月の間に病苦と鬪ひながらも一氣に書き上げて、それをはじめから一卷として世に問うたものらしい。ああいふ慟哭的な詩などは一篇々々引きちぎつて讀まされるよ …
炉辺(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
數年まへの春、木曾へ旅したときのこと。落ちつく先は、奈良井にしようか、藪原にしようか、とちよつと氣迷つたのち、——まづ、鳥居峠を越えて、藪原までいつてみた。いい旅籠でもあつたら、と …
読書目安時間:約4分
數年まへの春、木曾へ旅したときのこと。落ちつく先は、奈良井にしようか、藪原にしようか、とちよつと氣迷つたのち、——まづ、鳥居峠を越えて、藪原までいつてみた。いい旅籠でもあつたら、と …
炉辺(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
数年まへの春、木曾へ旅したときのこと。落ちつく先は、奈良井にしようか、藪原にしようか、とちよつと気迷つたのち、——まづ、鳥居峠を越えて、藪原までいつてみた。いい旅籠でもあつたら、と …
読書目安時間:約4分
数年まへの春、木曾へ旅したときのこと。落ちつく先は、奈良井にしようか、藪原にしようか、とちよつと気迷つたのち、——まづ、鳥居峠を越えて、藪原までいつてみた。いい旅籠でもあつたら、と …
若菜の巻など(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
最近「かげろふの日記」「ほととぎす」それから「姨捨」と續けて平安朝の女たちの日記に主題を求めて短篇を書いてばかりゐますせゐか、屡〻平安朝文學に就いて何か書けなどと言はれますので、ど …
読書目安時間:約8分
最近「かげろふの日記」「ほととぎす」それから「姨捨」と續けて平安朝の女たちの日記に主題を求めて短篇を書いてばかりゐますせゐか、屡〻平安朝文學に就いて何か書けなどと言はれますので、ど …
わぎもこ(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
妻の母方の祖父は、土屋彦六といつて、明治のころ、靜岡で牧師をしてゐた。なんでもその祖先は義士討入で有名な土屋主税だといふ話を、私は妻の母から聞いたことがある。このお正月に、ラヂオで …
読書目安時間:約1分
妻の母方の祖父は、土屋彦六といつて、明治のころ、靜岡で牧師をしてゐた。なんでもその祖先は義士討入で有名な土屋主税だといふ話を、私は妻の母から聞いたことがある。このお正月に、ラヂオで …
翻訳者としての作品一覧
青い眼(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
私は老婦人たちが彼女らの少女だつた時分のことを話すのを聞くのが好きだ。 「私が十二の時でした、私は南佛蘭西の或る修道院に寄宿してをりました。(と記憶のいい老婦人の一人が私に物語るの …
読書目安時間:約6分
私は老婦人たちが彼女らの少女だつた時分のことを話すのを聞くのが好きだ。 「私が十二の時でした、私は南佛蘭西の或る修道院に寄宿してをりました。(と記憶のいい老婦人の一人が私に物語るの …
或女友達への手紙(旧字旧仮名)
読書目安時間:約9分
このリルケの手紙は、彼の死後、程なく、「新佛蘭西評論」(一九二七年二月號)に發表せられたものである。この手紙と共に、J・P(編輯者のジャン・ポオランか?)と署名のある、リルケの死を …
読書目安時間:約9分
このリルケの手紙は、彼の死後、程なく、「新佛蘭西評論」(一九二七年二月號)に發表せられたものである。この手紙と共に、J・P(編輯者のジャン・ポオランか?)と署名のある、リルケの死を …
生けるものと死せるものと(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
汝は生けり。なが面おほへる青空を呑みつつ、 なが笑まひをわれは佳き小麥のごとき糧とす。 われは知らず、汝が心踈ましくなりて、 われを饑ゑ死なしむるはいつの日か。 孤獨に、絶えず脅か …
読書目安時間:約4分
汝は生けり。なが面おほへる青空を呑みつつ、 なが笑まひをわれは佳き小麥のごとき糧とす。 われは知らず、汝が心踈ましくなりて、 われを饑ゑ死なしむるはいつの日か。 孤獨に、絶えず脅か …
旗手クリストフ・リルケ抄(旧字旧仮名)
読書目安時間:約21分
「旗手クリストフ・リルケの愛と死の歌」はリルケの小時の作(一八九九年)である。 詩人は若いころ自分が「森の七つの城のなかで三つの枝の花咲いた」由緒のある貴族の後裔であるといふ追憶を …
読書目安時間:約21分
「旗手クリストフ・リルケの愛と死の歌」はリルケの小時の作(一八九九年)である。 詩人は若いころ自分が「森の七つの城のなかで三つの枝の花咲いた」由緒のある貴族の後裔であるといふ追憶を …
さらにふたたび(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
さらにふたたび、よしや私達が愛の風景ばかりでなく、 いくつも傷ましい名前をもつた小さな墓地をも、 他の人達の死んでいつた恐ろしい沈默の深淵をも 知つてゐようと、さらにふたたび、私達 …
読書目安時間:約1分
さらにふたたび、よしや私達が愛の風景ばかりでなく、 いくつも傷ましい名前をもつた小さな墓地をも、 他の人達の死んでいつた恐ろしい沈默の深淵をも 知つてゐようと、さらにふたたび、私達 …
ジャム、君の家は(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
「マルテの手記」の一節に、巴里の陋巷で苦惱に充ちた生活をしてゐる孤獨なマルテが、或日圖書館で讀んだ一人の田園詩人——山のなかの靜かな古い家で、花や小鳥や書物などを相手にして暮らして …
読書目安時間:約2分
「マルテの手記」の一節に、巴里の陋巷で苦惱に充ちた生活をしてゐる孤獨なマルテが、或日圖書館で讀んだ一人の田園詩人——山のなかの靜かな古い家で、花や小鳥や書物などを相手にして暮らして …
ドゥイノ悲歌(旧字旧仮名)
読書目安時間:約11分
次ぎの手紙の斷片は、リルケの作品をポオランド語に飜譯したヴィトルト・フォン・フレヴィチのさまざまな質疑に答へて詩人が書き與へた返事のうちの「ドゥイノ悲歌」に關する部分である。この手 …
読書目安時間:約11分
次ぎの手紙の斷片は、リルケの作品をポオランド語に飜譯したヴィトルト・フォン・フレヴィチのさまざまな質疑に答へて詩人が書き與へた返事のうちの「ドゥイノ悲歌」に關する部分である。この手 …
トレドの風景(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
一九一二年秋、リルケは一人飄然と西班牙に旅した。この西班牙への旅--殊にトレド一帶の何か不安を帶びた風物——は、詩人にはいたく氣に入つたやうに見える。彼は其處にもつと長く滯在して當 …
読書目安時間:約2分
一九一二年秋、リルケは一人飄然と西班牙に旅した。この西班牙への旅--殊にトレド一帶の何か不安を帶びた風物——は、詩人にはいたく氣に入つたやうに見える。彼は其處にもつと長く滯在して當 …
巴里の手紙(旧字旧仮名)
読書目安時間:約24分
ライネル・マリア・リルケは一九〇二年八月末はじめて巴里に出た。「美術叢書」(Die Kunst)を監修してゐたリカルド・ムウテル教授に囑せられてロダン論を書くためであつた。リルケは …
読書目安時間:約24分
ライネル・マリア・リルケは一九〇二年八月末はじめて巴里に出た。「美術叢書」(Die Kunst)を監修してゐたリカルド・ムウテル教授に囑せられてロダン論を書くためであつた。リルケは …
冬(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
まだすこしもスポオツの流行らなかつた昔の冬の方が私は好きだ。 人は冬をすこし怖がつてゐた、それほど冬は猛烈で手きびしかつた。 人はわが家に歸るために、いささか勇氣を奮つて、 ベツレ …
読書目安時間:約1分
まだすこしもスポオツの流行らなかつた昔の冬の方が私は好きだ。 人は冬をすこし怖がつてゐた、それほど冬は猛烈で手きびしかつた。 人はわが家に歸るために、いささか勇氣を奮つて、 ベツレ …
窓(旧字旧仮名)
読書目安時間:約5分
バルコンの上だとか、 窓枠のなかに、 一人の女がためらつてさへゐれば好い…… 目のあたりに見ながらそれを失はなければならぬ 失意の人間に私達がさせられるには。 が、その女が髮を結は …
読書目安時間:約5分
バルコンの上だとか、 窓枠のなかに、 一人の女がためらつてさへゐれば好い…… 目のあたりに見ながらそれを失はなければならぬ 失意の人間に私達がさせられるには。 が、その女が髮を結は …
「マルテ・ロオリッツ・ブリッゲの手記」から(旧字旧仮名)
読書目安時間:約24分
九月十一日、トゥリエ街にて 一體、此處へは人々は生きるためにやつて來るのだらうか?寧ろ、此處は死場所なのだと思つた方がよくはないのか知らん?私はいま其處から追ひ出されてきた。私はい …
読書目安時間:約24分
九月十一日、トゥリエ街にて 一體、此處へは人々は生きるためにやつて來るのだらうか?寧ろ、此處は死場所なのだと思つた方がよくはないのか知らん?私はいま其處から追ひ出されてきた。私はい …
モオリス・ド・ゲラン:「そしてこの稀有で、偉大で、しかも果敢ないもの、一個の詩人」(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
モオリス・ド・ゲランの作品は、その製作過程においてその效果を考へたやうなところの少しも感ぜられない、稀有なる作品の一つである。彼はその生前には、ただ、ニコラス・ド・フリエに就いての …
読書目安時間:約3分
モオリス・ド・ゲランの作品は、その製作過程においてその效果を考へたやうなところの少しも感ぜられない、稀有なる作品の一つである。彼はその生前には、ただ、ニコラス・ド・フリエに就いての …
夢(旧字旧仮名)
読書目安時間:約4分
私は少女を搜した。いましがた夜の明けたばかりの、狹い、長方形の部屋の中に、私は少女を見出した。彼女は一つの椅子に腰かけ、僅かにそれと分かるくらゐに微笑してゐた。その傍には、一寸離れ …
読書目安時間:約4分
私は少女を搜した。いましがた夜の明けたばかりの、狹い、長方形の部屋の中に、私は少女を見出した。彼女は一つの椅子に腰かけ、僅かにそれと分かるくらゐに微笑してゐた。その傍には、一寸離れ …
リルケ書翰(ロダン宛)(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
一九〇二年の秋、巴里にはじめて出かけて行つて、ロダンに親しく接しつつ、遂にロダン論を書き上げ、伯林の一書肆より上梓せしめた後、やや健康を害したリルケは、伊太利ピサの近くのヴィアレジ …
読書目安時間:約3分
一九〇二年の秋、巴里にはじめて出かけて行つて、ロダンに親しく接しつつ、遂にロダン論を書き上げ、伯林の一書肆より上梓せしめた後、やや健康を害したリルケは、伊太利ピサの近くのヴィアレジ …
“堀辰雄”について
堀 辰雄(ほり たつお、1904年(明治37年)12月28日 - 1953年(昭和28年)5月28日)は、日本の小説家。
それまで私小説的となっていた日本の小説の流れの中に、意識的にフィクションによる「作りもの」としてのロマン(西洋流の小説)という文学形式を確立しようとした。フランス文学の心理主義を積極的に取り入れ、日本の古典や王朝女流文学にも新しい生命を見出し、それらを融合させることによって独自の文学世界を創造した。肺結核を病み、長野県軽井沢に度々療養、当地を舞台にした作品を多く残し、晩年には終の住処とした。
(出典:Wikipedia)
それまで私小説的となっていた日本の小説の流れの中に、意識的にフィクションによる「作りもの」としてのロマン(西洋流の小説)という文学形式を確立しようとした。フランス文学の心理主義を積極的に取り入れ、日本の古典や王朝女流文学にも新しい生命を見出し、それらを融合させることによって独自の文学世界を創造した。肺結核を病み、長野県軽井沢に度々療養、当地を舞台にした作品を多く残し、晩年には終の住処とした。
(出典:Wikipedia)
“堀辰雄”と年代が近い著者
きょうが誕生日(12月14日)
成沢玲川(1877年)
今月で生誕X十年
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今年で生誕X百年
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