今野大力
1904.02.05 〜 1935.06.19
著者としての作品一覧
秋吹く風(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
カラカラカラ 風が吹く ポプラのはっぱが吹かれてる 風は面白そうに走ってく 四辻に風は迷ってぐるぐるまわり あの人をそよと尋ぬてためしして ぷっと口吻け逃げてゆく …
読書目安時間:約1分
カラカラカラ 風が吹く ポプラのはっぱが吹かれてる 風は面白そうに走ってく 四辻に風は迷ってぐるぐるまわり あの人をそよと尋ぬてためしして ぷっと口吻け逃げてゆく …
新らしいスローガンについて(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
太平洋の島国へ一つの智恵が送られてきた 智恵をあふるるばかりにくまなく抱く本が送られてきた 智恵はまもなく人々のものとなりかけた しかしこの国の人々はその智恵をいろいろに受けとった …
読書目安時間:約1分
太平洋の島国へ一つの智恵が送られてきた 智恵をあふるるばかりにくまなく抱く本が送られてきた 智恵はまもなく人々のものとなりかけた しかしこの国の人々はその智恵をいろいろに受けとった …
姉へ(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
蒔付時に子を生んで あせって起きて働いて 足腰立たなくなったという 姉よ何たる不幸ぞや 病気をした時 神主に拝んでもらって 紙っ切れを水でのまされて それでなおらば、 お安いけれど …
読書目安時間:約2分
蒔付時に子を生んで あせって起きて働いて 足腰立たなくなったという 姉よ何たる不幸ぞや 病気をした時 神主に拝んでもらって 紙っ切れを水でのまされて それでなおらば、 お安いけれど …
亜米利加(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
アメリカは正義人道を看板にして 非道な国際を売ってしまった 排日は夢の日本に対するしくみだ、あなどりだ 夢も幻ももたない トラウベル、ホイットマンを理想の詩人に祭りあげたアメリカ人 …
読書目安時間:約1分
アメリカは正義人道を看板にして 非道な国際を売ってしまった 排日は夢の日本に対するしくみだ、あなどりだ 夢も幻ももたない トラウベル、ホイットマンを理想の詩人に祭りあげたアメリカ人 …
ある時(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
「未曾有のキキン」 「大水害」 「餓死の年」 遠いほんとうに遠い 父と息子の住んで居る土地は 時代をとりちがえて生きて居るようにほんとうに遠い 手紙の封筒は ほご紙を飯粒のりでこさ …
読書目安時間:約1分
「未曾有のキキン」 「大水害」 「餓死の年」 遠いほんとうに遠い 父と息子の住んで居る土地は 時代をとりちがえて生きて居るようにほんとうに遠い 手紙の封筒は ほご紙を飯粒のりでこさ …
ある夜、ある宵(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
ある夜は くらやみの中に 妻をよびよせて 話すことすべて狂人の如く * 来年の三月に死ぬと 自分のいのちを予言して 今日すいみん剤を多量にのんだと いい、胸の苦るしさを訴えて 妻を …
読書目安時間:約1分
ある夜は くらやみの中に 妻をよびよせて 話すことすべて狂人の如く * 来年の三月に死ぬと 自分のいのちを予言して 今日すいみん剤を多量にのんだと いい、胸の苦るしさを訴えて 妻を …
ある歴史に就て(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
星が一つ 森林の中の 忘れられた静かな湖水へ降りて来て 暫く思案にくれていた (それを知っていたものは誰もいない天空にいる星達さえも存じなかった) 星にも厭世があるのかしら? 星は …
読書目安時間:約1分
星が一つ 森林の中の 忘れられた静かな湖水へ降りて来て 暫く思案にくれていた (それを知っていたものは誰もいない天空にいる星達さえも存じなかった) 星にも厭世があるのかしら? 星は …
伊豆の伊東へ(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
地図を見ればここは伊豆 伊豆の温泉、伊東の町 熱海より五里余 汽車もなければ そびえ立つ岩肌を穿ち堀りけずり 辛くも自動車の往来する これこそ羊腸の道 怪異の岩礁出でて 緑の松腰を …
読書目安時間:約2分
地図を見ればここは伊豆 伊豆の温泉、伊東の町 熱海より五里余 汽車もなければ そびえ立つ岩肌を穿ち堀りけずり 辛くも自動車の往来する これこそ羊腸の道 怪異の岩礁出でて 緑の松腰を …
一疋の昆虫(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
一疋の足の細長い昆虫が明るい南の窓から入ってきた 昆虫の目指すは北薄暗い北 病室のよごれひびわれたコンクリートの部厚い壁、 この病室には北側にドアーがありいつも南よりはずっと暗い …
読書目安時間:約1分
一疋の足の細長い昆虫が明るい南の窓から入ってきた 昆虫の目指すは北薄暗い北 病室のよごれひびわれたコンクリートの部厚い壁、 この病室には北側にドアーがありいつも南よりはずっと暗い …
飢えたる百姓達(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
稲の穂先へ米が幾粒実ったとても それが生活への打撃の少ないものはいい 一粒の種から一粒の穂先が首を天上へ—— 野は早くも荒涼 寒冷に夜はあける 稲ハセは痩せて鳥の飢えたる鳴き声に …
読書目安時間:約4分
稲の穂先へ米が幾粒実ったとても それが生活への打撃の少ないものはいい 一粒の種から一粒の穂先が首を天上へ—— 野は早くも荒涼 寒冷に夜はあける 稲ハセは痩せて鳥の飢えたる鳴き声に …
埋れた幻想(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
慰める様なぬるい南風に衣を なびかせなびかせ 大地の精が臥している 小高い丘の殺風景な(けれども希望に輝いた)処で 大地の精はつぶやいている ああ古風な幻想よ 大地は忍従の革命家 …
読書目安時間:約1分
慰める様なぬるい南風に衣を なびかせなびかせ 大地の精が臥している 小高い丘の殺風景な(けれども希望に輝いた)処で 大地の精はつぶやいている ああ古風な幻想よ 大地は忍従の革命家 …
有髪の僧(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
私もいつかは有髪の僧となって 僧院の夕べ 極まりもない苦悩の魂を抱いて独り銀杏の下にいこう身となりました (何と言うかなしい事実でありましょう、人間の子の青春は、かくして奪い奪われ …
読書目安時間:約1分
私もいつかは有髪の僧となって 僧院の夕べ 極まりもない苦悩の魂を抱いて独り銀杏の下にいこう身となりました (何と言うかなしい事実でありましょう、人間の子の青春は、かくして奪い奪われ …
奪われてなるものか:――施療病院にて――(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
君はおれの肩を叩いてきいてくれる 君は親しげなまざしでおれを見る おお君はいつもおれの同志 おれたちの力強い同志 しかしおれには今 君の呼びかけたらしい言葉がきこえない 君はどんな …
読書目安時間:約2分
君はおれの肩を叩いてきいてくれる 君は親しげなまざしでおれを見る おお君はいつもおれの同志 おれたちの力強い同志 しかしおれには今 君の呼びかけたらしい言葉がきこえない 君はどんな …
海の誘惑(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
打ち返し泡立ち 再び寄せ盛り上り岩を打つ 波濤の歴史の永遠の力は 時としてあの不可解な死への誘惑を感ぜしめる 波に乗り暴風雨を経て 大洋の航路にある旅客船は 絶えず地球の経緯を計っ …
読書目安時間:約1分
打ち返し泡立ち 再び寄せ盛り上り岩を打つ 波濤の歴史の永遠の力は 時としてあの不可解な死への誘惑を感ぜしめる 波に乗り暴風雨を経て 大洋の航路にある旅客船は 絶えず地球の経緯を計っ …
S療養所点景(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
療養所の看護婦はいつも 廊下をみがいている ドアーのハンドルをみがいている いくらみがいてもピカピカ光る程 この療養所の建物は新らしくない それでも毎日 看護婦は廊下をみがきハンド …
読書目安時間:約1分
療養所の看護婦はいつも 廊下をみがいている ドアーのハンドルをみがいている いくらみがいてもピカピカ光る程 この療養所の建物は新らしくない それでも毎日 看護婦は廊下をみがきハンド …
豌豆畑(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
豆畑を越えて 聞えて来る睦ましそうな話を 私はねころんで聞いていた よくは聞きとれないけれども ほんとうに睦ましそうな話 すげ笠の蔭にかくれて 父も母も余念なく草を取りつつ 何をか …
読書目安時間:約1分
豆畑を越えて 聞えて来る睦ましそうな話を 私はねころんで聞いていた よくは聞きとれないけれども ほんとうに睦ましそうな話 すげ笠の蔭にかくれて 父も母も余念なく草を取りつつ 何をか …
幼な子チビコ(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
チビコは今年三つになりました、 チビコのお父さんは肺病でねています、 チビコのお母さんは又稼ぎに行くと言っています、 稼がなければ喰べられないから チビコはある晩ばあちゃんに抱かれ …
読書目安時間:約1分
チビコは今年三つになりました、 チビコのお父さんは肺病でねています、 チビコのお母さんは又稼ぎに行くと言っています、 稼がなければ喰べられないから チビコはある晩ばあちゃんに抱かれ …
俺達の農民組合(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
たとえ豊作であろうとなかろうと たとえ凶作であろうとなかろうと 彼達の為めに 地主達が共謀してこさえているブルジョア政府には どれだけのどんな対策があるか。 ジリジリと太陽の直下に …
読書目安時間:約2分
たとえ豊作であろうとなかろうと たとえ凶作であろうとなかろうと 彼達の為めに 地主達が共謀してこさえているブルジョア政府には どれだけのどんな対策があるか。 ジリジリと太陽の直下に …
学校(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
教壇もない 机もない 椅子もない 教師の握る鞭もない この学校には粗末なベットがあり ベットは二十幾つも並んで ベットの上には 自分の肺をくさらせた青年がねている 一九三四年の日本 …
読書目安時間:約1分
教壇もない 机もない 椅子もない 教師の握る鞭もない この学校には粗末なベットがあり ベットは二十幾つも並んで ベットの上には 自分の肺をくさらせた青年がねている 一九三四年の日本 …
虐殺の記念日:――カール・ローザ十週年――(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
砂時計はさらさらと流れる 民衆の赤き血は流された 到る処に銃火と剣戟がひらめいた 到る処に窮乏と犯罪が増加した 新聞紙はもっと恐しい話を捏造する 伯林ではパリーの革命を報道する フ …
読書目安時間:約3分
砂時計はさらさらと流れる 民衆の赤き血は流された 到る処に銃火と剣戟がひらめいた 到る処に窮乏と犯罪が増加した 新聞紙はもっと恐しい話を捏造する 伯林ではパリーの革命を報道する フ …
狂人と鏡(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
友よ わが一人の愚かなる人間の為めに 秘かに鏡を用意して呉れ給い そこに一人の狂人がいる 彼は真紅の夢を胎むことによって 恋をする愚かな狂おしい男である 彼の室は赤 壁の地図も赤 …
読書目安時間:約1分
友よ わが一人の愚かなる人間の為めに 秘かに鏡を用意して呉れ給い そこに一人の狂人がいる 彼は真紅の夢を胎むことによって 恋をする愚かな狂おしい男である 彼の室は赤 壁の地図も赤 …
郷土(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
草深い放牧地よ北海の高原に群がれる人々を養える郷土よ北海道よ未開地よ ここには名もなき小花も咲くであろう 未だ人手に触れない谷間の姫百合も咲くであろう 春ともなれば黄金の福寿草も咲 …
読書目安時間:約2分
草深い放牧地よ北海の高原に群がれる人々を養える郷土よ北海道よ未開地よ ここには名もなき小花も咲くであろう 未だ人手に触れない谷間の姫百合も咲くであろう 春ともなれば黄金の福寿草も咲 …
金属女工の彼女(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
小がらで元気がみちみち 眼と口と顔の据えられた位置が やや水平の彼方の空に向い 希望の、言葉ではなし、文章ではなし、絵でもなし ただ五尺たらずのからだに みちみてる熱意ある要求の表 …
読書目安時間:約1分
小がらで元気がみちみち 眼と口と顔の据えられた位置が やや水平の彼方の空に向い 希望の、言葉ではなし、文章ではなし、絵でもなし ただ五尺たらずのからだに みちみてる熱意ある要求の表 …
屈辱:――市電の一労働者に代って――(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
この一本のレール この一本のリベット この一本の枕木 この掘割、この盛り土 このコンクリート その上を平穏に走って行く機関車 機関車は一つの鋲から 一つのネジ 一つの管から、一つの …
読書目安時間:約2分
この一本のレール この一本のリベット この一本の枕木 この掘割、この盛り土 このコンクリート その上を平穏に走って行く機関車 機関車は一つの鋲から 一つのネジ 一つの管から、一つの …
軍服を着た百姓源造の除隊(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
「おお源造よ帰って来たか」 つまごをはき、雪路を踏んで、馬橇の上で別れて行ったあの日、 「俺あクジ逃れだ、俺には只一人のお母がいる、お母はおいぼれ……」 「でも源造よ、お上はお前や …
読書目安時間:約3分
「おお源造よ帰って来たか」 つまごをはき、雪路を踏んで、馬橇の上で別れて行ったあの日、 「俺あクジ逃れだ、俺には只一人のお母がいる、お母はおいぼれ……」 「でも源造よ、お上はお前や …
形象の献辞(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
生命形象の末路にこそ われは華やかなる讃美を贈らんかな 生長に太りゆく肉体と自然 それら皆空々無色の透明体となり 精霊のみあれよ 而して無用なる形態一切は 生れ出でし日の永劫記念に …
読書目安時間:約1分
生命形象の末路にこそ われは華やかなる讃美を贈らんかな 生長に太りゆく肉体と自然 それら皆空々無色の透明体となり 精霊のみあれよ 而して無用なる形態一切は 生れ出でし日の永劫記念に …
航海(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
大いなる家鴨の姿に似たる 連絡船の三等船室にて不愉快な動揺を感じ 軽い頭痛に悩まされ 渡り行く島の奥地に痛み悩む母への哀切に泣きつつ ひとりし寝転べば 出稼人夫等の行く先々の未だ見 …
読書目安時間:約1分
大いなる家鴨の姿に似たる 連絡船の三等船室にて不愉快な動揺を感じ 軽い頭痛に悩まされ 渡り行く島の奥地に痛み悩む母への哀切に泣きつつ ひとりし寝転べば 出稼人夫等の行く先々の未だ見 …
光箭(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
視よ、暁と呼ぶ 東方の王子 我等が上に君臨まします 白日の御幸は今日もある由なり さてこそ王子は己れが光りの箭を数多なる郎党も召従えず 絶えず燦々と放たしむ 箭は放たれたり 地上は …
読書目安時間:約1分
視よ、暁と呼ぶ 東方の王子 我等が上に君臨まします 白日の御幸は今日もある由なり さてこそ王子は己れが光りの箭を数多なる郎党も召従えず 絶えず燦々と放たしむ 箭は放たれたり 地上は …
幸福を(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
おお我胸の苦しさよ 幸福は失われた おおそうだ、幸福は 輝き渡るかなたの山より 朝日の出づると共に 潮のように寄せて来た 然し幸福は私の手元にいる事を拒んだ、又引潮のように 夕べに …
読書目安時間:約1分
おお我胸の苦しさよ 幸福は失われた おおそうだ、幸福は 輝き渡るかなたの山より 朝日の出づると共に 潮のように寄せて来た 然し幸福は私の手元にいる事を拒んだ、又引潮のように 夕べに …
高峯の頌(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
荒蕪の平原に野を耕し 草を食み、木の実を喰える 人類生存の現象は 高峯の麓にありて あまりにはかなき生命…… 盛夏白熱頂点に達せんとするも 未だに消ゆるなき 雪原の輝きは 天地創造 …
読書目安時間:約1分
荒蕪の平原に野を耕し 草を食み、木の実を喰える 人類生存の現象は 高峯の麓にありて あまりにはかなき生命…… 盛夏白熱頂点に達せんとするも 未だに消ゆるなき 雪原の輝きは 天地創造 …
故郷断想(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
* 小川は濁っている ヤマメ、イワナのようなうまい小魚はもうそこへはのぼって来ない 淀みにはどぶ臭い雑魚が居り 廿年の昔の清冷な流れの面影がない * 連なる丘陵は ただ禿山であり …
読書目安時間:約1分
* 小川は濁っている ヤマメ、イワナのようなうまい小魚はもうそこへはのぼって来ない 淀みにはどぶ臭い雑魚が居り 廿年の昔の清冷な流れの面影がない * 連なる丘陵は ただ禿山であり …
小林虐殺一周忌 二月二十日(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
小樽から来た小林が 殺されたんだと 親に教えた俺だった やられたか やりやがったか 一日も二日も三日もねむられぬ 憎っくい下手人 ××の手先 小林が元気な頃は 又逢えるつもりでいた …
読書目安時間:約1分
小樽から来た小林が 殺されたんだと 親に教えた俺だった やられたか やりやがったか 一日も二日も三日もねむられぬ 憎っくい下手人 ××の手先 小林が元気な頃は 又逢えるつもりでいた …
三月の自然(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
トッ—トッ—トッ—トッ ポチョ—ポチョ—ポチョ 解かれゆく雪の絶え間もなき 点滴……点滴…… 三月の空灰色に消された空 うす青く曇れるはかの密林の峯々 高きに登りて見渡す街の 煙の …
読書目安時間:約1分
トッ—トッ—トッ—トッ ポチョ—ポチョ—ポチョ 解かれゆく雪の絶え間もなき 点滴……点滴…… 三月の空灰色に消された空 うす青く曇れるはかの密林の峯々 高きに登りて見渡す街の 煙の …
残冬(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
空はにごれる白亜の色 北国の——悩ましき擾乱 大地ははっちを閉じている ……… 地平の彼方——友等処女等 同じくなやめ同胞達 ……… 北極の襲い来れる、白鵞の万毛 風をよび、吹きな …
読書目安時間:約1分
空はにごれる白亜の色 北国の——悩ましき擾乱 大地ははっちを閉じている ……… 地平の彼方——友等処女等 同じくなやめ同胞達 ……… 北極の襲い来れる、白鵞の万毛 風をよび、吹きな …
寺院の右にて(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
古典の縁起を語れる大楼門の右にて感ずるは 極めてあわれなる庶民等が心中ぞ土に生くるものの幸を忘れて自己等が建つるこの寺院に拠り魂のざんげをせん人々のかなしさぞ * 鳥けものの屍土に …
読書目安時間:約1分
古典の縁起を語れる大楼門の右にて感ずるは 極めてあわれなる庶民等が心中ぞ土に生くるものの幸を忘れて自己等が建つるこの寺院に拠り魂のざんげをせん人々のかなしさぞ * 鳥けものの屍土に …
色彩(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
色彩なければ我ら生はあらざらむ 春宵の薄暮 わが双眼の全き視神経は麻痺して 宇宙は皆灰一色となり 感ずべき何ものもなし 心ただ焦燥して 形なく踊れども みたすべき何ものもなし ああ …
読書目安時間:約1分
色彩なければ我ら生はあらざらむ 春宵の薄暮 わが双眼の全き視神経は麻痺して 宇宙は皆灰一色となり 感ずべき何ものもなし 心ただ焦燥して 形なく踊れども みたすべき何ものもなし ああ …
自然教徒(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
こんな静かな晩、外は全くの闇である 星はわずかに下界を雲間にのぞいている * ああ下界は午後十一時 俺は今夜も自然教徒なる故に 黒き衣を身に着けて 静かに彼方の小高い丘へ歩んでゆく …
読書目安時間:約1分
こんな静かな晩、外は全くの闇である 星はわずかに下界を雲間にのぞいている * ああ下界は午後十一時 俺は今夜も自然教徒なる故に 黒き衣を身に着けて 静かに彼方の小高い丘へ歩んでゆく …
写真(北満の土産)その一(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
どれもこれも貧しくけだもののように虐げられふけた表情をもった北満の農民の ズラリと並んだ十人の子供達 五つ位の女の子はハデなよごれた花模様のズボンと上衣をきて 支那曲芸に出てくるよ …
読書目安時間:約2分
どれもこれも貧しくけだもののように虐げられふけた表情をもった北満の農民の ズラリと並んだ十人の子供達 五つ位の女の子はハデなよごれた花模様のズボンと上衣をきて 支那曲芸に出てくるよ …
写真(北満の土産)その二(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
貴族の表情をこさえるために ハルピンの白系露人の女は ジーッと物を見すえてうっかり動揺の見にくさを見せまえとし、古い宝石の腕輪や首かざりやピンに品物以上を物語らせようとし、 窮屈な …
読書目安時間:約1分
貴族の表情をこさえるために ハルピンの白系露人の女は ジーッと物を見すえてうっかり動揺の見にくさを見せまえとし、古い宝石の腕輪や首かざりやピンに品物以上を物語らせようとし、 窮屈な …
醜面女人(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
人間美学の深奥に いときらびやかなる女人の像は久遠である されど 醜面 白日のうちにさらけし 卑しき女人の相を見る こはこれけもののみにくさにあらず みにくしとも 蛇の如き呪いも見 …
読書目安時間:約1分
人間美学の深奥に いときらびやかなる女人の像は久遠である されど 醜面 白日のうちにさらけし 卑しき女人の相を見る こはこれけもののみにくさにあらず みにくしとも 蛇の如き呪いも見 …
少女受胎(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
少女子を孕めるという 太りたる腹はみにくくかわいらし 少女子を孕めるという 十月なる日を算えては頬笑める 孕めるは何の摂理ぞ 夜深く何を悩める 人の世に明日あり今日あり さて遠く夢 …
読書目安時間:約1分
少女子を孕めるという 太りたる腹はみにくくかわいらし 少女子を孕めるという 十月なる日を算えては頬笑める 孕めるは何の摂理ぞ 夜深く何を悩める 人の世に明日あり今日あり さて遠く夢 …
所有(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
あらゆる所有の王国に呪いあれ * 万民平等なる母体の胎児たりし時 卿等に所有の観念の兆せしや否や 我古代より現代に至る 社会の変遷による人々の苦悩は 個人があやまれる自由の曲訳によ …
読書目安時間:約1分
あらゆる所有の王国に呪いあれ * 万民平等なる母体の胎児たりし時 卿等に所有の観念の兆せしや否や 我古代より現代に至る 社会の変遷による人々の苦悩は 個人があやまれる自由の曲訳によ …
信疑の魔女(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
自分の室で自分の演じていた舞台で 自分を取巻き 或は隙見し 或は踊っていた一人の魔女 「此世の一切は信疑の魔女の領分です 勿論人間は私の兵卒よ あなた何を惑っているの? それよりわ …
読書目安時間:約1分
自分の室で自分の演じていた舞台で 自分を取巻き 或は隙見し 或は踊っていた一人の魔女 「此世の一切は信疑の魔女の領分です 勿論人間は私の兵卒よ あなた何を惑っているの? それよりわ …
新世紀への伴奏(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
行け!私達自然の教徒よ 高く高く燃え燃ゆる自然の精霊の上へ 人間の生命の魂を 燃えべくして燃えざりし炬火を 天日の情熱に投げこんで 紅蓮の焔を眺めつつ 歌え、歌え、輝かせよ (大地 …
読書目安時間:約1分
行け!私達自然の教徒よ 高く高く燃え燃ゆる自然の精霊の上へ 人間の生命の魂を 燃えべくして燃えざりし炬火を 天日の情熱に投げこんで 紅蓮の焔を眺めつつ 歌え、歌え、輝かせよ (大地 …
死んだ妹に寄せて(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
私の妹が死んだ、 妹は十四年この世に生きていて死んだ 私はそれを施療病院のベットの上できいた 涙も出なかった、そして 泣くよりも切ない気持で一人の幼き者の死を追慕した 死なせたくは …
読書目安時間:約3分
私の妹が死んだ、 妹は十四年この世に生きていて死んだ 私はそれを施療病院のベットの上できいた 涙も出なかった、そして 泣くよりも切ない気持で一人の幼き者の死を追慕した 死なせたくは …
人面凝視(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
ふとして眺むれば 彼処に笑めるは一人の不可解なる精霊の所有者である われは今その面を見つつ想う 唇…… おおそは紅の渕に囲われし底知れぬ沼である 鼻…… おおそはまろみあるエジプト …
読書目安時間:約1分
ふとして眺むれば 彼処に笑めるは一人の不可解なる精霊の所有者である われは今その面を見つつ想う 唇…… おおそは紅の渕に囲われし底知れぬ沼である 鼻…… おおそはまろみあるエジプト …
星座(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
今宵夜はふけたり 闇夜の天空高く 一陣の星座を見る こは天に懸かる我十字架なり この夜魂は 単調なる鼓動に倦み 七重の塁壁を超えて至り そが前に静座し 礼讃し祈祷す …
読書目安時間:約1分
今宵夜はふけたり 闇夜の天空高く 一陣の星座を見る こは天に懸かる我十字架なり この夜魂は 単調なる鼓動に倦み 七重の塁壁を超えて至り そが前に静座し 礼讃し祈祷す …
聖堂の近くを過ぐる(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
ポプラの梢の空高く大空を指さして 厳かな聖き自然の力を表わす 幹はだの荒くれた並木の下に ヘブライ文化の主流である キリスト教の教会堂が建っている 私は毎日その近くを過ぎる そして …
読書目安時間:約1分
ポプラの梢の空高く大空を指さして 厳かな聖き自然の力を表わす 幹はだの荒くれた並木の下に ヘブライ文化の主流である キリスト教の教会堂が建っている 私は毎日その近くを過ぎる そして …
静夜昇天(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
柱時計のけだるきリズムに 眠たげなる洋燈の光りに 深々と沈みゆく我らが生 九時を聞き十時を聞き すべては眠りを欲りするの時 みな底の吐息は泡となり ほそぼそき昇天の心は 我生の魂と …
読書目安時間:約1分
柱時計のけだるきリズムに 眠たげなる洋燈の光りに 深々と沈みゆく我らが生 九時を聞き十時を聞き すべては眠りを欲りするの時 みな底の吐息は泡となり ほそぼそき昇天の心は 我生の魂と …
組織された力(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
どこからか捲き起された風 渦になり、平になり、縦になり 吹きまくってゆく、突風!疾風! 屋根柾が矢のように走ってゆく 塗炭板がぐうおうと引ぺがされて 空をうなりながら飛んでゆく ぐ …
読書目安時間:約1分
どこからか捲き起された風 渦になり、平になり、縦になり 吹きまくってゆく、突風!疾風! 屋根柾が矢のように走ってゆく 塗炭板がぐうおうと引ぺがされて 空をうなりながら飛んでゆく ぐ …
天の海(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
始皇よ 長城の如けん うねうねと連らなる山脈 駅路より駅路へ 人は人をたよりて 母を父を子を友を同胞を 旅するものの心つたえて 赤き逓送車のまわりゆくまで 極みなき地平の物語り出る …
読書目安時間:約1分
始皇よ 長城の如けん うねうねと連らなる山脈 駅路より駅路へ 人は人をたよりて 母を父を子を友を同胞を 旅するものの心つたえて 赤き逓送車のまわりゆくまで 極みなき地平の物語り出る …
高窓に見える青空:……(ブタ箱にて)……(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
小さな高窓 高窓に見える青空 この青空に走っている無数のラジオの声 ブル共はそのラジオで 相場の上下を語り 奴隷の歌をうたわせながら 満洲パルチザンの活動に驚愕のニュースを飛ばし …
読書目安時間:約1分
小さな高窓 高窓に見える青空 この青空に走っている無数のラジオの声 ブル共はそのラジオで 相場の上下を語り 奴隷の歌をうたわせながら 満洲パルチザンの活動に驚愕のニュースを飛ばし …
たたかいの中に(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
母を飢えさせ 妻子を飢えさせ 幼き弟を稼がせて どうやら俺のいない家が保たれている 「飢死の自由」は九尺二間の長屋を占領し 共同井戸の水さえくさってまずい 芋を煮て 仏壇に捧げよう …
読書目安時間:約1分
母を飢えさせ 妻子を飢えさせ 幼き弟を稼がせて どうやら俺のいない家が保たれている 「飢死の自由」は九尺二間の長屋を占領し 共同井戸の水さえくさってまずい 芋を煮て 仏壇に捧げよう …
立すくむ(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
私はいろいろな過去の日記や書きちらしや、あちこちの新聞雑誌へ発表したものや、その折々の切抜や、自分を育ててゆくための材料を古い家に置きっきりだった、転々と私は歩いた、私はそれらに目 …
読書目安時間:約1分
私はいろいろな過去の日記や書きちらしや、あちこちの新聞雑誌へ発表したものや、その折々の切抜や、自分を育ててゆくための材料を古い家に置きっきりだった、転々と私は歩いた、私はそれらに目 …
立待岬にいたりて(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
露西亜の船の沈んだ片身に残したと聞く石を抱いて われは又ある日のざんげをするか 函館山は高く 要塞地として秘密を冠る おごそかな 壮大なる岩礁の牢たる屹立は 東方に面して 何をひそ …
読書目安時間:約1分
露西亜の船の沈んだ片身に残したと聞く石を抱いて われは又ある日のざんげをするか 函館山は高く 要塞地として秘密を冠る おごそかな 壮大なる岩礁の牢たる屹立は 東方に面して 何をひそ …
楽しい会合(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
叔母に伯父 山の人々 尋ね来て 語り合う久方の話 さても又十年前の物語 内地のこと その山その川その家すべて 今ならば夢か知らね 柿の木も桑の木も 背戸の林も表の山も 美しい思い出 …
読書目安時間:約1分
叔母に伯父 山の人々 尋ね来て 語り合う久方の話 さても又十年前の物語 内地のこと その山その川その家すべて 今ならば夢か知らね 柿の木も桑の木も 背戸の林も表の山も 美しい思い出 …
土(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
ギリシャ古典の趾せる物語りをも 空理としてさげすむ勿れ 吾等生命は土深く埋もれし精霊なりき 神によりてつくられし形態をこそ讃美せる 女人像の豊満なる肉体美をこそ讃美せよ 曲線美なだ …
読書目安時間:約1分
ギリシャ古典の趾せる物語りをも 空理としてさげすむ勿れ 吾等生命は土深く埋もれし精霊なりき 神によりてつくられし形態をこそ讃美せる 女人像の豊満なる肉体美をこそ讃美せよ 曲線美なだ …
土の上で:――私が私自身に言う言葉――(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
おまえはまだ立っているか 力強く立っていようとするか 風は吹いても地はゆらいでも おまえはまだ立っていようと願いるか * 久し振りで地に親しむ事の出来た 土へのおまえの愛は まこと …
読書目安時間:約1分
おまえはまだ立っているか 力強く立っていようとするか 風は吹いても地はゆらいでも おまえはまだ立っていようと願いるか * 久し振りで地に親しむ事の出来た 土へのおまえの愛は まこと …
碇泊船(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
船腹の色のはげ落ちた惨さは 遠く波濤とたたかって来た 今は疲労になやんで ぐったりと体を伸べたような いたわりの心を感ずる 廃船のようではないか 英蘭の旗を船尾に立てて 見れば船員 …
読書目安時間:約1分
船腹の色のはげ落ちた惨さは 遠く波濤とたたかって来た 今は疲労になやんで ぐったりと体を伸べたような いたわりの心を感ずる 廃船のようではないか 英蘭の旗を船尾に立てて 見れば船員 …
東郷大将と彼(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
彼のアジトには 東郷大将の肖像が壁にはられていた それからあの 「皇国の興廃此一戦に在り 各員一層奮励努力せよ」 という同じ東郷大将の筆蹟もあった 彼の家に二度三度 サーベルがやっ …
読書目安時間:約1分
彼のアジトには 東郷大将の肖像が壁にはられていた それからあの 「皇国の興廃此一戦に在り 各員一層奮励努力せよ」 という同じ東郷大将の筆蹟もあった 彼の家に二度三度 サーベルがやっ …
闘士の恋の歌(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
この腕で木刀をうけとめ この肋骨で拷問にこたえ この眼で奴らをねめかえし この歯で奴等に喰いつき この脚で敵の包囲を蹴破った この私のからだは お前のもの、そして一緒に階級のもの …
読書目安時間:約1分
この腕で木刀をうけとめ この肋骨で拷問にこたえ この眼で奴らをねめかえし この歯で奴等に喰いつき この脚で敵の包囲を蹴破った この私のからだは お前のもの、そして一緒に階級のもの …
凍土を噛む(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
土に噛りついても故国は遠い 負いつ負われつ おれもおまえも負傷した兵士 おまえが先か おれが先か おれもおまえも知らない おれたちは故国へ帰ろう おれたちは同じ仲間のものだ お前を …
読書目安時間:約2分
土に噛りついても故国は遠い 負いつ負われつ おれもおまえも負傷した兵士 おまえが先か おれが先か おれもおまえも知らない おれたちは故国へ帰ろう おれたちは同じ仲間のものだ お前を …
東方の窓辺にて(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
私のいる家の東方に窓があった 私は農家の二階に間借りして幾十日かを過す身であった 私は自分の起居に不自由の身をそこに運び、 ひたすら、健康の日を恋していたのである、 かがやく健康の …
読書目安時間:約1分
私のいる家の東方に窓があった 私は農家の二階に間借りして幾十日かを過す身であった 私は自分の起居に不自由の身をそこに運び、 ひたすら、健康の日を恋していたのである、 かがやく健康の …
徒弟(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
いち早く冬の来る北方の街頭に 寒い空ッ風が吹きまくる 或る朝 理髪師の徒弟は店先を掃いていた 店先に一本の街路樹があった 落葉は風になぶられてあちこちに吹きたまる 正直な徒弟は幾度 …
読書目安時間:約1分
いち早く冬の来る北方の街頭に 寒い空ッ風が吹きまくる 或る朝 理髪師の徒弟は店先を掃いていた 店先に一本の街路樹があった 落葉は風になぶられてあちこちに吹きたまる 正直な徒弟は幾度 …
友と二人の夜(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
遠い野中の家より 私を慕うて呉れる友は 今夜も十時がなって帰った 夜露を分けて来て呉れても あたたかいもてなしさえ 貧しい私達にはゆるされず ひとえの着物のはじを 幾度か合せ乍ら …
読書目安時間:約1分
遠い野中の家より 私を慕うて呉れる友は 今夜も十時がなって帰った 夜露を分けて来て呉れても あたたかいもてなしさえ 貧しい私達にはゆるされず ひとえの着物のはじを 幾度か合せ乍ら …
トンカトントンカッタカッタ(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
トンカトンカトントンカトンカトン これは隣りのシャフトから樋を通って来るベルトが樋板を叩いている音だ。 女工の一人はその音が可笑しいと言って側の女工と顔を見合せてウフフ、ウフフと唇 …
読書目安時間:約3分
トンカトンカトントンカトンカトン これは隣りのシャフトから樋を通って来るベルトが樋板を叩いている音だ。 女工の一人はその音が可笑しいと言って側の女工と顔を見合せてウフフ、ウフフと唇 …
泣きながら眠った子(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
何て騒々しい声だろう この場合の人間の泣声は決して同情に価しない あれはちいちゃい四つの女の子の泣声だが可愛そうにも考えられない ただうるさい 騒々しい 泣かないでくれればいい も …
読書目安時間:約1分
何て騒々しい声だろう この場合の人間の泣声は決して同情に価しない あれはちいちゃい四つの女の子の泣声だが可愛そうにも考えられない ただうるさい 騒々しい 泣かないでくれればいい も …
ヌタプカムシペ山脈の畔り(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
色づく木々の丘の上の林へ 今日一日私は出かけた めずらしい晴天である 葡萄の葉と楡と、楢と栓とそれらみんな色づいて来た 最早すべて葉を落したものもある つたをたぐって丘に登る時 私 …
読書目安時間:約1分
色づく木々の丘の上の林へ 今日一日私は出かけた めずらしい晴天である 葡萄の葉と楡と、楢と栓とそれらみんな色づいて来た 最早すべて葉を落したものもある つたをたぐって丘に登る時 私 …
ねむの花咲く家:――自らペンを取らなかった詩――(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
俺は病室にいる 暗室のような部屋だ。 今俺はあの豚箱で受けた 白テロの傷がもとで 同志にまもられ 病室に送られたのだ 病室の血塗れた俺は 最后の日を覚悟している しかし、そこへ 一 …
読書目安時間:約1分
俺は病室にいる 暗室のような部屋だ。 今俺はあの豚箱で受けた 白テロの傷がもとで 同志にまもられ 病室に送られたのだ 病室の血塗れた俺は 最后の日を覚悟している しかし、そこへ 一 …
農奴の要求(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
雪に埋れ 吹雪に殴られ 山脈の此方に 俺達の部落がある 俺達は侯爵農場の小作人 俺達は真実の水呑百姓 俺達の生活は農奴だ! 俺達はその日 隊伍を組んで 堅雪を渡り 氷橋を蹴って 農 …
読書目安時間:約1分
雪に埋れ 吹雪に殴られ 山脈の此方に 俺達の部落がある 俺達は侯爵農場の小作人 俺達は真実の水呑百姓 俺達の生活は農奴だ! 俺達はその日 隊伍を組んで 堅雪を渡り 氷橋を蹴って 農 …
墓場が用意された!:――×××組合のダラ幹を葬れ――(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
歴史! 「歴史がこうであったから これはこうであるべきだ」 てめい等はまるでブルジョア学者と同じように そこからどんな論理や哲学を引ずり出そうというのだ 歴史がたとえどうあろうと …
読書目安時間:約3分
歴史! 「歴史がこうであったから これはこうであるべきだ」 てめい等はまるでブルジョア学者と同じように そこからどんな論理や哲学を引ずり出そうというのだ 歴史がたとえどうあろうと …
白光礼讃(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
明るい北国の十二月 終日雪は降っていた 一尺、二尺、それは容易な大空の変化のページェント 又軽やかに香う土へのプレゼント * 或日その前夜を名残に、吹雪は綺麗に止んでいた、そして北 …
読書目安時間:約1分
明るい北国の十二月 終日雪は降っていた 一尺、二尺、それは容易な大空の変化のページェント 又軽やかに香う土へのプレゼント * 或日その前夜を名残に、吹雪は綺麗に止んでいた、そして北 …
波濤よ:――人情素描――(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
おおはるけき方より寄せ来る波濤よ 汝が最大の実力と自信を持って 岩礁を打て、万丈のしぶきを上げよ その時、海神は大空に懸る天日をおおいて。 凄惨なる自然の風景を 汝がその雄々しき門 …
読書目安時間:約1分
おおはるけき方より寄せ来る波濤よ 汝が最大の実力と自信を持って 岩礁を打て、万丈のしぶきを上げよ その時、海神は大空に懸る天日をおおいて。 凄惨なる自然の風景を 汝がその雄々しき門 …
花に送られる(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
小金井の桜の堤はどこまでもどこまでもつづく もうあと三四日という蕾の巨きな桜のまわりは きれいに掃除され、葭簀張りののれんにぎやかな臨時の店店は 花見客を待ちこがれているよう 私の …
読書目安時間:約1分
小金井の桜の堤はどこまでもどこまでもつづく もうあと三四日という蕾の巨きな桜のまわりは きれいに掃除され、葭簀張りののれんにぎやかな臨時の店店は 花見客を待ちこがれているよう 私の …
春の土へ(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
早く春になったら、どんなに楽しい事だろう、日向の小高い丘に軟く暖く香高い土があらわれて、蕗の薹が上衣を脱ぎ、水晶の様に澄んだ水が、小川を流れ、小魚がピチピチ泳いでいる。 そして先ず …
読書目安時間:約2分
早く春になったら、どんなに楽しい事だろう、日向の小高い丘に軟く暖く香高い土があらわれて、蕗の薹が上衣を脱ぎ、水晶の様に澄んだ水が、小川を流れ、小魚がピチピチ泳いでいる。 そして先ず …
光よあれ(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
常夜の世界に生命ありて うごめける時 光りは東方より、忍びやかに来りて 輝き初め 万物その己の存在を認め 歓喜の頂点に至れるは いかに至上の盛事なりしか 我等は光りの海に泳げる魚達 …
読書目安時間:約1分
常夜の世界に生命ありて うごめける時 光りは東方より、忍びやかに来りて 輝き初め 万物その己の存在を認め 歓喜の頂点に至れるは いかに至上の盛事なりしか 我等は光りの海に泳げる魚達 …
聖の行くべき道(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
そこはねずみも歩かない 歩くべきではない ひじりの行くべき道である 空は明るく明るく まひるの如くに明るい 一しきり降っていった雪は 野に山に路に庭に 夢見る様に積もっている 雪は …
読書目安時間:約1分
そこはねずみも歩かない 歩くべきではない ひじりの行くべき道である 空は明るく明るく まひるの如くに明るい 一しきり降っていった雪は 野に山に路に庭に 夢見る様に積もっている 雪は …
百姓仁平(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
何つう病気だか知らねいが、 俺家のたけ子奴病気だどって帰って来た 何でも片足だけは血が通わねえんだって そしてくさりこんでさ うみが出てうみが出て、 血の通うところまでぶった切って …
読書目安時間:約2分
何つう病気だか知らねいが、 俺家のたけ子奴病気だどって帰って来た 何でも片足だけは血が通わねえんだって そしてくさりこんでさ うみが出てうみが出て、 血の通うところまでぶった切って …
拾った詩:――或る人に告ぐる――(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
なぜか知ら そぞろ歩みに誘われて 私もお祭りに加わります 誰ひとり街はずれのお宮へなぞゆくものですか みんなはこうして 涼しい夏の夜の風を浴びながら 当どもなく華やかな灯の下を さ …
読書目安時間:約2分
なぜか知ら そぞろ歩みに誘われて 私もお祭りに加わります 誰ひとり街はずれのお宮へなぞゆくものですか みんなはこうして 涼しい夏の夜の風を浴びながら 当どもなく華やかな灯の下を さ …
瘋癲病舎(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
俺はお前の此の喜びはつまらぬと言う訳を知っている お前は現実には適しない お前はあの暗い瘋癲病舎で 白日の中もおもむろに 夢を食って楽しんで生きていればいい男だ …
読書目安時間:約1分
俺はお前の此の喜びはつまらぬと言う訳を知っている お前は現実には適しない お前はあの暗い瘋癲病舎で 白日の中もおもむろに 夢を食って楽しんで生きていればいい男だ …
豚(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
もったいない事である 肺患者の残した 実に多量の食物は惜し気もなく捨てられる 鮭の照焼や筍やうどふきのうま煮なんか 多くの人々にとって 大した御馳走なんだのに 一椀の飯さえ思うよう …
読書目安時間:約1分
もったいない事である 肺患者の残した 実に多量の食物は惜し気もなく捨てられる 鮭の照焼や筍やうどふきのうま煮なんか 多くの人々にとって 大した御馳走なんだのに 一椀の飯さえ思うよう …
父母達の家(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
住み古した父母達の家に 父母達の顔にきざんだ皺をかぞえることなく 老いたる父母達の苦難な生活の有様を覗い見ることなく 俺の健康な顔を見せ ガッシリとしてきた手を差のべることなく 街 …
読書目安時間:約1分
住み古した父母達の家に 父母達の顔にきざんだ皺をかぞえることなく 老いたる父母達の苦難な生活の有様を覗い見ることなく 俺の健康な顔を見せ ガッシリとしてきた手を差のべることなく 街 …
兵士の綱(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
「引け!」 イチニ、イチニ、イチニ 雨が降る 秋に降る冷たい雨、落葉を叩く 頬を打つ流してはならぬ涙の様 イチニ、イチニ、イチニ 中途でぐうんと引かかる、よろ、よろ、よろ、重たいゆ …
読書目安時間:約2分
「引け!」 イチニ、イチニ、イチニ 雨が降る 秋に降る冷たい雨、落葉を叩く 頬を打つ流してはならぬ涙の様 イチニ、イチニ、イチニ 中途でぐうんと引かかる、よろ、よろ、よろ、重たいゆ …
星と過去(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
星はある夜 緑の灯を輝やかし 仲よく円座で評議する 星はある夜 右手を長くさし伸べて 神秘な事件を信号する 星はある夜 さやさやさや 清水の流れにたわむれる 星はある夜 森林の小枝 …
読書目安時間:約1分
星はある夜 緑の灯を輝やかし 仲よく円座で評議する 星はある夜 右手を長くさし伸べて 神秘な事件を信号する 星はある夜 さやさやさや 清水の流れにたわむれる 星はある夜 森林の小枝 …
北海の夜(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
旗がしきりにゆれている ハタハタと、又ハタハタと 時には風が吹いて来て ゴトンと音を立ててゆく 外はほんとに暗いのだ 自分よ、或る夜の事を思い出せ そしてぞうっと身ぶるえせ 今夜の …
読書目安時間:約1分
旗がしきりにゆれている ハタハタと、又ハタハタと 時には風が吹いて来て ゴトンと音を立ててゆく 外はほんとに暗いのだ 自分よ、或る夜の事を思い出せ そしてぞうっと身ぶるえせ 今夜の …
本土の港を指して(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
津軽の海風は 暮れ行く夕日の彼方へと連絡船を冷たく吹き送る 桟橋に立ち去り兼ねて見送る人々とも別れて 身をマントに包み 頬をうずめて物蔭甲板に佇めば 防波堤に点る明滅の灯火も見えず …
読書目安時間:約1分
津軽の海風は 暮れ行く夕日の彼方へと連絡船を冷たく吹き送る 桟橋に立ち去り兼ねて見送る人々とも別れて 身をマントに包み 頬をうずめて物蔭甲板に佇めば 防波堤に点る明滅の灯火も見えず …
鱒の話(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
濃緑のあかだもの木の下にて 三十を越えた 四十あまりの人の話をきく 二十余年北国の地に流浪して 絶えず山水に親しみながら 生活を続けて来た人の話である 面は陽に赫けている ひげはお …
読書目安時間:約2分
濃緑のあかだもの木の下にて 三十を越えた 四十あまりの人の話をきく 二十余年北国の地に流浪して 絶えず山水に親しみながら 生活を続けて来た人の話である 面は陽に赫けている ひげはお …
街の乞食(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
銀座の通りに畑が出来て 緑青々とした麦畑が出来ようと 空想していた友よ 一きれのパンをむしって乞食の子に与え 慈善をしたつもりの青年があった。 乞食をするものは 楽しみなのである …
読書目安時間:約1分
銀座の通りに畑が出来て 緑青々とした麦畑が出来ようと 空想していた友よ 一きれのパンをむしって乞食の子に与え 慈善をしたつもりの青年があった。 乞食をするものは 楽しみなのである …
街の子等(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
街の子は今日も遊んでいた そしてふと子供の一人が大声で言った 「やあいキョウサントウ!」 いい声だそしていい言葉だ空間は完全にこの声に貫かれた 「やあいキョウサントウ!」 鬼ごっこ …
読書目安時間:約1分
街の子は今日も遊んでいた そしてふと子供の一人が大声で言った 「やあいキョウサントウ!」 いい声だそしていい言葉だ空間は完全にこの声に貫かれた 「やあいキョウサントウ!」 鬼ごっこ …
待っていた一つの風景(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
痩たる土壌をかなしむなく 遠き遍土にあるをかこつなく 春となれば芽をだし 夏となれば緑を盛り花を飾る 貧しく小さくして尚たゆまず ただ一つ 秋、凡ての秋において ただ一つ 種を孕ん …
読書目安時間:約1分
痩たる土壌をかなしむなく 遠き遍土にあるをかこつなく 春となれば芽をだし 夏となれば緑を盛り花を飾る 貧しく小さくして尚たゆまず ただ一つ 秋、凡ての秋において ただ一つ 種を孕ん …
未婚婦人(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
未婚婦人の魅惑に対して私は今日本の未婚婦人へ散文を書送る。 未婚婦人はそが暁近き薔薇色の感情に高揚されて 浪漫主義的な、華やかな悩ましき春宵の恋を夢む おお恋! 彼女等の夢なる恋! …
読書目安時間:約2分
未婚婦人の魅惑に対して私は今日本の未婚婦人へ散文を書送る。 未婚婦人はそが暁近き薔薇色の感情に高揚されて 浪漫主義的な、華やかな悩ましき春宵の恋を夢む おお恋! 彼女等の夢なる恋! …
路は果して何れ(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
生と死の路は今自分の行手にあり 自分はこの全き方向のちがった路の 何れを歩んでいるかを知らない 歩む路は一すじ ただこの一すじが 生命の歓喜へ向っているか また永遠の死へ辿っている …
読書目安時間:約1分
生と死の路は今自分の行手にあり 自分はこの全き方向のちがった路の 何れを歩んでいるかを知らない 歩む路は一すじ ただこの一すじが 生命の歓喜へ向っているか また永遠の死へ辿っている …
麦やきの日(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
人手なき独り者 治兵衛の麦はせに 飛火して燃えうつり 泡を喰った治兵衛は 麦束もて火を叩く 風つのり火はさかり 麦はせは凡て燃え 治兵衛は大火傷 やけどした六十男 治兵衛はわめきつ …
読書目安時間:約1分
人手なき独り者 治兵衛の麦はせに 飛火して燃えうつり 泡を喰った治兵衛は 麦束もて火を叩く 風つのり火はさかり 麦はせは凡て燃え 治兵衛は大火傷 やけどした六十男 治兵衛はわめきつ …
娘(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
お前は俺の子供 おれはお前の父親 おれはお前の親となって六月だ お前は生れた時 この頭がおれの握り拳位だった ずい分と大きくなったな お前の顔がおれに似て居るようだし 今添寝して居 …
読書目安時間:約1分
お前は俺の子供 おれはお前の父親 おれはお前の親となって六月だ お前は生れた時 この頭がおれの握り拳位だった ずい分と大きくなったな お前の顔がおれに似て居るようだし 今添寝して居 …
胸に手を当てて(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
かつて私は 悪事をやった立場に立たされた時 こう憎々しげに吐きつけられたものだ、 「胸に手を当てて、よっく考えて見ろ!」 私は今、胸に手を当てて 静かに激しく想っている。 私は悪事 …
読書目安時間:約2分
かつて私は 悪事をやった立場に立たされた時 こう憎々しげに吐きつけられたものだ、 「胸に手を当てて、よっく考えて見ろ!」 私は今、胸に手を当てて 静かに激しく想っている。 私は悪事 …
猛炎(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
魂と魂と放浪の数日の後 あるところを得たるは げによろこぶべき現象ぞよ 白馬天をゆく 碧瑠璃の空に われらが魂の猛炎は 赤きロマンチックの落日を偲ばしめ 舞楽を奏するなり 聞かずや …
読書目安時間:約1分
魂と魂と放浪の数日の後 あるところを得たるは げによろこぶべき現象ぞよ 白馬天をゆく 碧瑠璃の空に われらが魂の猛炎は 赤きロマンチックの落日を偲ばしめ 舞楽を奏するなり 聞かずや …
もうおそい(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
生かさせたいがもうおそい 両肺が全部やられている 猛烈な腸結核で 一日の膿の排出は多量で ちっとも消化力ない胃腸 痔が悪くって腎臓も悪くて 耳が悪くてもう全身 あますところなく悪化 …
読書目安時間:約1分
生かさせたいがもうおそい 両肺が全部やられている 猛烈な腸結核で 一日の膿の排出は多量で ちっとも消化力ない胃腸 痔が悪くって腎臓も悪くて 耳が悪くてもう全身 あますところなく悪化 …
やるせなさ(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
単の着物を羽織りたい ま夏の時季が訪れた けれども私の白い単は 恰も乞食の着物の様によごれている * やるせない心は、私の生立ちの 大切な、又、辛い負いめである 私は荷われた運命の …
読書目安時間:約2分
単の着物を羽織りたい ま夏の時季が訪れた けれども私の白い単は 恰も乞食の着物の様によごれている * やるせない心は、私の生立ちの 大切な、又、辛い負いめである 私は荷われた運命の …
夕ぐれの明るさに憶う(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
夕ぐれのあかるさ パッと室一杯にあふれて 十六燭の電灯のあかるさなど 小さくすぼんでいるようなこころよい明るさ 忽ちに薄暗くなるこの時刻に これは又何といい明るさだ カーテンをすっ …
読書目安時間:約2分
夕ぐれのあかるさ パッと室一杯にあふれて 十六燭の電灯のあかるさなど 小さくすぼんでいるようなこころよい明るさ 忽ちに薄暗くなるこの時刻に これは又何といい明るさだ カーテンをすっ …
夕べの曲(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
街々にけむりさまよう 秋夕べここもかしこも 黄昏れて見分けもつかず 劇場のクラリネットの 高く低く或は長く短く 囃立てる巷の声に相和して 一つなる夕べの曲を 今日もまた ひとりし聞 …
読書目安時間:約1分
街々にけむりさまよう 秋夕べここもかしこも 黄昏れて見分けもつかず 劇場のクラリネットの 高く低く或は長く短く 囃立てる巷の声に相和して 一つなる夕べの曲を 今日もまた ひとりし聞 …
夢と幻を見る家(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
寝室とも書斎とも名附け難い私の室 ここで私は私の好きな事をする 私の家は小さな家である 北国のヌタプカムシペ山脈の畔である 上川平野の隅であるチュウベツを言う アイヌ人種が五十年の …
読書目安時間:約1分
寝室とも書斎とも名附け難い私の室 ここで私は私の好きな事をする 私の家は小さな家である 北国のヌタプカムシペ山脈の畔である 上川平野の隅であるチュウベツを言う アイヌ人種が五十年の …
宵の星(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
あついあつい 夕食後のあつさ のんびりと立って見た やっぱり暑い むっちり蒸される様だ ひたいには汗がこんなににじむ * 弟よ外へ行こう 庭の石に腰をかけて 鈴懸花の香をかいで 青 …
読書目安時間:約1分
あついあつい 夕食後のあつさ のんびりと立って見た やっぱり暑い むっちり蒸される様だ ひたいには汗がこんなににじむ * 弟よ外へ行こう 庭の石に腰をかけて 鈴懸花の香をかいで 青 …
義男さん(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
義男さんよ なぜそんなに考えてるの 一生懸命だね 何を読んでいるの…… ああそうか「死線を越えて」か おもしろいかね いえなあに借りて来て 読んでいるんですよ 此頃は歌はどうです …
読書目安時間:約2分
義男さんよ なぜそんなに考えてるの 一生懸命だね 何を読んでいるの…… ああそうか「死線を越えて」か おもしろいかね いえなあに借りて来て 読んでいるんですよ 此頃は歌はどうです …
老将軍と大学教授(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
相当にぎやかな街の電柱の下のベンチに 素晴らしい将軍が休んでいる 私は写真を見てそう思った が、この老将軍は 前歴が何だかわからない ただぶくぶくした襟毛つきの厚っぽたい外套をきて …
読書目安時間:約1分
相当にぎやかな街の電柱の下のベンチに 素晴らしい将軍が休んでいる 私は写真を見てそう思った が、この老将軍は 前歴が何だかわからない ただぶくぶくした襟毛つきの厚っぽたい外套をきて …
私の母(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
そこにこうかつな野郎がいる そこにあいつの縄工場がある 縄工場で私の母は働いていた 私の母はその工場で 十三年漆黒い髪を真白にし 真赤な血潮を枯らしちまった 私の母はそれでも子供を …
読書目安時間:約2分
そこにこうかつな野郎がいる そこにあいつの縄工場がある 縄工場で私の母は働いていた 私の母はその工場で 十三年漆黒い髪を真白にし 真赤な血潮を枯らしちまった 私の母はそれでも子供を …
私の病室の報告(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
私の病室は十三号の乙 寝台は三つ満員 二人は施療で私は有料 一人は堅山と三十越えた男 三年全くこのベットにへばって暮し るいれきで首の周囲は膿の出た跡赤い肉が盛り上って 此頃も両脇 …
読書目安時間:約1分
私の病室は十三号の乙 寝台は三つ満員 二人は施療で私は有料 一人は堅山と三十越えた男 三年全くこのベットにへばって暮し るいれきで首の周囲は膿の出た跡赤い肉が盛り上って 此頃も両脇 …
我等の春(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
春の丘を超えて歩んで来た息子の母は 慈愛にみち 春の大地のように ふくふくとめぐみにみちていた。 母よ あなたは歩んで来た 夏を超えて 秋を踏んで 冬の野をふみこえて 春の丘へ辿っ …
読書目安時間:約2分
春の丘を超えて歩んで来た息子の母は 慈愛にみち 春の大地のように ふくふくとめぐみにみちていた。 母よ あなたは歩んで来た 夏を超えて 秋を踏んで 冬の野をふみこえて 春の丘へ辿っ …
“今野大力”について
今野 大力(こんの だいりき、1904年2月5日 - 1935年6月19日)は、日本の詩人。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“今野大力”と年代が近い著者
今月で生誕X十年
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
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エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)