行く春の記ゆくはるのき
三月のはじめから又僕は病氣でねてゐました。漸つと快方に向ひ、この頃は庭に出られるやうになりました。もう春もだいぶ深く、牡丹の蕾が目に立つてふくらんで來てゐます。去年の春はその牡丹が咲き揃つてゐる間中、僕はよくその前で一人で長いこと怠けてばか …