ジャム、君の家はジャム、きみのいえは
「マルテの手記」の一節に、巴里の陋巷で苦惱に充ちた生活をしてゐる孤獨なマルテが、或日圖書館で讀んだ一人の田園詩人——山のなかの靜かな古い家で、花や小鳥や書物などを相手にして暮らしてゐられるその幸福な詩人のことをひそかに羨望するところがある。 …