京都所司代の番士のお長屋の、茶色の土塀へ墨黒々と、楽書きをしている女があった。 照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものはなしと、歌人によって詠ぜられた、それは弥生の春の夜のことで、京の町々は霞こめて、紗を巻いたように朧であった。 寝 …
著者 | 国枝史郎 |
ジャンル | 文学 > 日本文学 > 小説 物語 |
初出 | 「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日 |
文字種別 | 新字新仮名 |
読書目安時間 | 約8時間53分(500文字/分) |
朗読目安時間 | 約14時間48分(300文字/分) |