“懐”のいろいろな読み方と例文
旧字:
読み方(ふりがな)割合
ふところ38.6%
なつ17.4%
いだ15.7%
なつか14.0%
おも6.1%
ふとこ2.9%
なず0.8%
0.6%
なつかし0.6%
おもい0.5%
(他:24)2.8%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
“懐”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語15.4%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)4.9%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆2.6%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
されども今夜ふところにせる百金は、尋常一様の千万金にあたいするものにして、渠が半身の精血ともっつべきなり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自白すると、私の財産は自分がふところにして家を出た若干の公債と、あとからこの友人に送ってもらった金だけなのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
父を知らず、母を知らずと言った児は、父と母とを一緒にしたよりも強いなつかしさでこの太った男に抱きついてしまいました。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私に縁故の深いこの町の名は、あまり聞き慣れて育ったせいか、ちっとも私の過去を誘い出すなつかしい響を私に与えてくれない。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何時もは、此の二人の令嬢を、世の中で最も幸福な女の子だと思って居た譲吉は、今日は全く反対の考をいだかねばならなかった。
大島が出来る話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ここで少しく筆路が脱線するが、私にこうした、考えをいだかせた支那の文献について、一瞥を投じて見たいと思うのである。
獅子舞雑考 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
作者はその少年時代によく見馴みなれたこれら人物に対していかなる愛情となつかしさとを持っているかは言うをたぬ。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
流石さすがに、勝気なおあいも、この日は心から泣いて、死んでしまった叔母を今更ながらなつかしく、悲しく思って泣いた。
凍える女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
過去半年はんねん良人をつとおもふ為に痩せ細つた自分は、欧洲へ来て更に母として衰へるのであらうとさへ想はれる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
世間の親たちよ、うぐいす摺餌すりえを作る事が非常にむずかしきものと知らば小児の食物は一層大切なる事をおもえ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
平次は井戸端で手を洗って、手軽に着換えました。麻裏あさうらを穿いて、白磨しろみがきの十手をふところに落します。
ナンバワン級の女給のうわさなどが娯楽雑誌や新聞をにぎわせ、何か花々しい近代色がふところの暖かい連中を泳がせていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
なずいていたが、日もたず目を煩って久しくえないので、英書をけみし、数字を書くことが出来なくなったので
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この際英領インド政府がうまい方略を執って、チベット人を充分なずけるようにしたならば、あるいは今日チベットは鎖国の運命を見なかったかも知れぬ。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
此様こんな女の人は、多勢の中ですもの、幾人もあったでしょうが、其あかさんをいて御居での方が、妙に私の心を動かしたのでした。
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
我々があらゆる感情、例えば怒り、憎しみ、または愛にもせよ、すべての感激、冒険といったようなものは、人生及び自然から生起してくる刺戟である。
囚われたる現文壇 (新字新仮名) / 小川未明(著)
余計に私なんざなつかしくって、(あやちゃんお遊びな)が言えないから、合図の石をかちかち叩いては、その家の前を通ったもんでした。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼はその少女をなつかしげに抱えると、又ベットに帰り始めたのであった。私は思わず椅子から腰を浮かせた。
蝕眠譜 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
彼の刑に就かんがために江都こうと檻送かんそうせらるるや、彼自からおもいして曰く
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
魂飛び心浮かれてあとになりさきになりしていて往くと、女の方から声をかけたので、じぶんの家へれて来て和歌をみあっておもいを述べ
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と、人なつこい声で云いました。其の声が濁りのある山田先生とちがっているので、其の顔を見ると、顔ははっきりとしませんが、白い顔で、薄い口髯がありました。
薬指の曲り (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
青年は羞み家であるが、その癖人一倍、人なつこい性格を持つてゐるらしかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
そして何ともいえないゆかしさを感じて、『ここだ、おれの生まれたのはここだ、おれの死ぬのもここだ、ああうれしいうれしい、安心した』という心持ちが心の底からわいて来て、何となく、今までの長い間の辛苦艱難かんなんが皮のむけたように自分を離れた心地がした。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
山家の時雨は我国でも和歌の題にまでなっているが、広い、広い、野末から野末へと林を越え、もりを越え、田を横ぎり、また林を越えて、しのびやかに通りく時雨の音のいかにもしずかで、また鷹揚おうような趣きがあって、やさしくゆかしいのは、じつに武蔵野の時雨の特色であろう。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
珍らしからぬ冬野のさま、取り出でゝ云ふべくはあらねども、折からの我がおもひに合ふところあり。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
殿はこの失望の極放肆ほうし遊惰のうちいささおもひり、一具の写真機に千金をなげうちて、これに嬉戯すること少児しようにの如く
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
老母をわすれ、妻子をしたわぬにてはなけれど、武士のぎりに命をすつる道、ぜひに及ばぬところと合点して、深くなげき給うべからず。
桃の花片そこに散る、貝に真珠の心があって、ひいなしたう風情かな。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、明は優しく、人つこい。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
教会が一層つかしくて——彼人あのかたの影が見えるとたゞ嬉しく、如何どうかして御来会おいでなさらぬ時には、非常な寂寞せきばくを感じましてネ、私始めは何のこととも気がつかなかつたのですが、或夜
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「悪徒の友なるいとしきは狼の歩みしづかかに共犯人かたうどの如く進み来りぬ。いと広き寝屋ねやの如くに、空おもむろとざさるれば心焦立いらだつ人はたちまち野獣の如くにぞなる……」と。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかし善直と京水とが同人ではあるまいか、京水が玄俊の子でなくて、初代瑞仙の子ではあるまいかといううたがいが、今にいたるまでいまだ全くわたくしのかいを去らない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
市街に住まっているものの不平は、郊外がドシドシつぶされて、人家や製造場などが建つことである、建つのは構わぬが、ユトリだとか、くつろぎだとかいう気分が、くなって、堪まらないほど窮屈になる、たとえやにこくても
菜の花 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
今まで私によそよそしかった野生の花が、その名前を私が知っただけで、急に向うから私になづいてくるように、その少女たちも、その名前を私が知りさえすれば、向うから進んで、私に近づいて来たがりでもするかのように。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
あわてて捜して見なさって、「来てた、来てた、ええ塩梅あんばいにまだ誰アれも見えへなんでん」いいなさって、その新聞ほところに入れて
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そないいうて綿貫は、「僕と姉ちゃんと証文換えことしてたこと、あんたかて薄々知ってたやろが、もうあんなもん反古ほうぐになったさかい、証拠のために今橋い預けて来た。ここに預り証書ある」いうて、ほところから出して見せて
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「オホオホオホほんとにサ、仲々小悪戯こいたずらをしたもんだけれども、このはズーたいばかり大くッても一向しきなおぽっぽだもんだから、それで何時まで経ッても世話ばッかり焼けてなりゃアしないんだヨ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
およそ偶然にむねに浮んだ事は、月足らずの水子みずこ思想、まだ完成まとまっていなかろうがどうだろうがそんな事に頓着とんじゃくはない
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
析鈴サクスヾの五十鈴のすゞの 鈴屋の大人の命の……学子マナビコの兄とさしたる 春べ咲く 藤垣内フヂノカキツの本居の其翁(大平)しも、オムがしみ、称へましけるそこをしも、あやに尊み、そこをしもあやにゆかしみ、まな柱 学びの父と
橘曙覧評伝 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
長サ六寸(ばかり)発込ハツコミクハイ剣よりハちいさけれども、人おうつに五十間位へた(ママ)ゞりてハ打殺すことでき申候。
鍛錬せられた晩年のせりふの間にも残つて居た一抹の影、稍うら枯れたやうな鼻にかゝる音色が、あくせんとにかゝる点に顕れて、ふと声調の調和を破らうとして、再元に立ち直る人ナツコい、甘美な情趣を動したものだが、此が昔のどうま声のなごりかと思へば、懐しさを感じさせられたものであつた。
市村羽左衛門論 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
正成は、つらさの余り、知れきッている立場なのに、そう反問した。——窮鳥キユウテウフトコロニ入レバ猟師モ撃タズ——そんな古い言葉も、今の彼には切実だった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の久しくハラんでゐた、溌剌たる処女の誕生であつた。