“おもい”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
64.2%
8.3%
6.9%
思念2.5%
2.0%
思想1.5%
空想1.5%
念慮1.0%
1.0%
情緒1.0%
想念1.0%
意思0.5%
重井0.5%
思考0.5%
予想0.5%
心胸0.5%
念想0.5%
思情0.5%
恋情0.5%
情想0.5%
情感0.5%
0.5%
意志0.5%
0.5%
感情0.5%
感懐0.5%
欝懐0.5%
苦悩0.5%
苦慮0.5%
追懐0.5%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
七曲ななまがりの険をおかして、やっとのおもいで、ここまで来たものを、そうむやみに俗界に引きずりおろされては、飄然ひょうぜんと家を出た甲斐かいがない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何じゃの、おらが嬢様におもいかかって煩悩ぼんのうが起きたのじゃの。うんにゃ、かくさっしゃるな、おらが目は赤くッても、白いか黒いかはちゃんと見える。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは「雨ふれど音の聞えず、しぶきのみ露とぞ置く」コンクリート建築に慊焉けんえんたる結果、さわやかな雨の音におもいせられたものであろう。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
それはどくであったが、うしてそなたのぬことが、わたくしほうつうじなかったのであろう……。普通ふつうなら臨終りんじゅう思念おもいかんじてないはずはないとおもうが……。
じぶんの家へれて来て和歌をみあっておもいを述べ、それから観眤かんじを極めると云うほとんど追字訳ついじやくのような処もあって、原話げんわからすこしも発達していないが
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ああ諸人が究極において、持ちたきものは『純粋性』でござる! もろもろの思想おもい、もろもろの学、さまざまの生活くらし、無数の経験! 学び、考え、触れ、行なうの、究極の目的はそれ一つでござる。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さっきから無言に落ちて、あらぬ空想おもいに身をまかせていたお艶が、怒りと悲しみに思わず眼を上げて薄明のあたりを見まわすと
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
求めようとするよりほかにはもう何等の念慮おもいをも持たなかった。
ある女の生涯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
別れたる、離れたる親子、兄弟、夫婦、朋友、恋人の仲間あいだの、逢いたきおもいとは全然まるちがっている、「縁あらばこの世で今一度会いたい」との願いの深い哀しみは常に大友の心に潜んでいたのである。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
浪路の情緒おもいは、唆り立てられ、煽り立てられ、沸き立たせられる——彼女の全身は、いかなる炎よりも熱く燃えて、殆んど焼け死ぬかと思われるばかりだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
名づけようを知らぬ一種の想念おもいに心を満たしていた。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まえにものべたとおり、こちらの世界せかいつくりつけの現界げんかいとはことなり、場所ばしょも、家屋かおくも、また姿すがたも、みな意思おもいのままにどのようにもかえられる。
ははは、ぬるまえに、ちちわたくしゆめたとってりましたが、もちろんそれはただのゆめではないのです。つまり私達わたくしたち意思おもいゆめ形式かたちで、病床びょうしょうははつうじたものでございましょう……。
窮厄きゅうやくにおりながら、いわゆる喉元のどもと過ぎて、熱さを忘るるのならい、たてや血気の壮士は言うもさらなり、重井おもい葉石はいし新井あらい稲垣いながきの諸氏までも
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
重井おもい葉石はいし古井ふるいらの諸氏が名古屋より到着のはずなりければ、さきに着阪ちゃくはんせる同志と共に停車場ステーションまで出迎えしに、間もなく到着して妾らより贈れる花束を受け
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
渓流たにがわの音が遠く聞ゆるけれど、二人の耳には入らない。ひとりの心は書中しょちゅうに奪われ、ひとりは何事か深く思考おもいに沈んでいる。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
思考おもいに沈んでいたひとりが静かに問うた。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
仇心あだごころなき身ながらも。その様子の高尚なると。学術のほどのしたわれて。われしらず鼻じろむなるべし。勤もかねて聞き伝え。こうもやなど思いつる予想おもいのほかのおとなしさ。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
その中に、彼は今まで節子にひろげて見せたことの無い自分の心胸おもいを打明けた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
茫々ぼうぼう暗路やみじに物をさぐるごとく念想おもいを空に漂わすことやや久しきところへ、例の怜悧りこうげな小僧こぼうずいで来たりて、方丈さまの召しますほどにこちらへおいでなされまし、と先に立って案内すれば
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
自棄やけに笑った。が、よいもさめ行く、おもての色とともに澄切った瞳すずしく、深く思情おもいを沈めたうちに、高き哲人の風格がある。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女はその晩、すっかり張三ちょうさん(文遠)に魅されてしまった。色の黒い黒宋公こくそうこう旦那が、色白な張三の肉付きに見くらべられては、よけい虫が好かなくなった。恋情おもいは別れ際の眼もとにあふれていたろう。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてこの情想おもいに耽る時は人間の浅間しサから我知らず脱れ出ずるような心持になる。あたかも野辺にさすらいて秋の月のさやかに照るをしみじみと眺め入る心持と或は似通えるか。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
大友の心にはこの二三年前来ぜんらい、どうか此世に於て今一度、お正さんに会いたいものだという一念がわだかまっていたのである、この女のことを思うと、悲しい、懐しい情感おもいに堪え得ないことがある。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
喜ぶとおもいの外、彼女はその招待状を食卓の上に投げつけた。そして、如何にも蔑すんだ様子を面にあらわして
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
敬神の意志おもいに充ち充ちた荒らくれた武士が数千人声を揃えて唄う祈り! 山に響き谷に籠り、雪の地上をい廻わり、夜の蒼天に昇って行く時、もしその声を聞いたなら
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まして定基の妻からは、それこそえたる者が人の美饌を享くるを見るおもいがしたろうことは自然であって、余計にもしゃくしゃが募ったろうことは測り知られる。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
無かった縁にまよいはかぬつもりで、今日に満足して平穏へいおんに日を送っている。ただ往時むかし感情おもいのこした余影かげが太郎坊のたたえる酒の上に時々浮ぶというばかりだ。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかるに今は、どんな感懐おもいが彼の心を占めているのか。
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
また私自身にしても、そんなことを思ってみるさえ堪えられない焦躁もどかしさに責めさいなまれるので、そんな悩ましい欝懐おもいをばなるべくそのままそっと脇へ押しやっておくようにしておいたのであった。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
のっそりだけで済ましていたらばこのように残念な苦悩おもいもすまいものを、分際忘れたおれが悪かった、ああ我が悪い、我が悪い、けれども、ええ、けれども、ええ、思うまい思うまい
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
源太胸には苦慮おもいあれども幾らかこれに慰められて、猪口ちょくりさまに二三杯、後一杯をゆるく飲んで、きさまれと与うれば、お吉一口、つけて、置き、焼きかけの海苔のり畳み折って
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
森も岡も牧場も水車小屋も、辛い追懐おもいの種ばかり、見るに苦しい景色ではあるけれど、これも別離と言えばまた新しい執着を覚える。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)