なず)” の例文
旧字:
皆敬い、なずいていたが、日もたず目を煩って久しくえないので、英書をけみし、数字を書くことが出来なくなったので、弟子は皆断った。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
威を畏れ徳になずき、静を買い安を求めざるなし、高麗命をふせぎ、天討再び加う。伝世百一朝にして殄滅す。に逆天の咎徴、衝大の明鑒に非ずや。
岷山の隠士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
色仕掛けで若い田舎娘を手なずけさせようと企てたのであるが、いくらおとなしい良次郎でもたびたび他人ひとのあやつり人形になることを承知しなかった。
半七捕物帳:20 向島の寮 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この際英領インド政府がうまい方略を執って、チベット人を充分なずけるようにしたならば、あるいは今日チベットは鎖国の運命を見なかったかも知れぬ。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
顔淵曰く、願わくは善にほこることなく、労をおおいにすること無からんと。子路曰く、願わくは子の志を聞かんと。子曰く、老者は之を安んじ、朋友は之を信じ、少者は之をなずけんと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
人をなずけようとする心底は面白くないから、今度来たなら此方から名告りかけて白状させてやろうと待もうけてるとは知らず、幸兵衛は女房お柳といずれかへ遊山にまいった帰りがけと見えて
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
弱虫の意気地なしが、徳とやらをもって人をなずける。雪の中を草鞋わらじ穿いて、みの着て揖譲おじぎするなんざ、惚気のろけて鍋焼をおごるより、資本もとでのかからぬ演劇しばいだもの。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ですから法王それ自身の考えとしてもシナ政府にはることが出来ず、また英国の主義というものはうまく人をなずけてその国を奪うのが主義であると聞いて居るので
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
もっとああいう半開人をなずけ、あるいは外交上樽爼そんその間に我に従わしむるには、彼のうらみを買うことはごく損な事で、なるべく威圧してもそのうらみを買わぬ方針を執るのが得策でしょう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)