“懐紙”のいろいろな読み方と例文
旧字:懷紙
読み方割合
かいし52.3%
ふところがみ41.5%
ふところかみ3.1%
かみ1.5%
くわいし1.5%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
一名の武者が懐紙かいしを与えた。善助はそれを揉んで、主人の洟みずを拭った。官兵衛は子どものように鼻の奥にあるのを更にちんといって出した。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
首実検の時に手をふるわせながら、懐紙かいしを口にくわえる仕種しぐさなどをひどく細かく見せて、団十郎式に刀をぬきました。
米国の松王劇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
紫玉は待兼まちかねたやうに懐紙かいしを重ねて、伯爵、を清めながら、森のこみちきましたか、坊主は、といた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
細帯しどけなき寝衣姿ねまきすがたの女が、懐紙かいしを口にくわえて、例のなまめかしい立膝たてひざながらに手水鉢の柄杓から水を汲んで手先を洗っていると
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
よほど急いで認めたものらしく一枚の懐紙かいしに矢立ての墨跡がかすれ走って、字もやさしいそうろうかしくの文……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
お雪は笑いながら、懐紙ふところがみを出してくれました。まことにありきたりの塵紙ちりがみですが、新助の死体の下にあった浅草紙とは違います。
枕元の火鉢に、はかり炭を継いで、目の破れた金網をはすに載せて、お千さんが懐紙ふところがみであおぎながら、豌豆餅えんどうもちを焼いてくれた。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
俯向うつむけに横倒おしになった二つの死骸の斬口きりくちを確かめるかのように、平馬はソロソロと近付いた。それから懐紙ふところがみを出して刀を拭い納めると、
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この歌を紅の紙に、青年らしい書きようにしたためたのを、若君の懐紙ふところがみの中へはさんで行かせるのを、少年は親しみたく思う宮であったから、喜んで御所へ急いだ。
源氏物語:45 紅梅 (新字新仮名) / 紫式部(著)
曙山さんは懐紙ふところがみで顔をあおぎながら立膝たてひざをして、お膳の前の大ざぶとんの上に座り直した。
貴婦人はその無名指むめいしより繍眼児めじろ押競おしくら片截かたきりにせる黄金きんの指環を抜取りて、懐紙ふところかみに包みたるを、
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
といつて掌面てのひらに静かに残して置いた柿のたね懐紙ふところかみに包んだ。
——気のもった優しいまゆの両方を、懐紙かみでひたと隠して、大きなひとみでじっとて、
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あわれ、着たきぬは雪の下なる薄もみじで、はだの雪が、かえって薄もみじを包んだかと思う、深く脱いだ襟脚えりあしを、すらりと引いてき合わすと、ぼっとりとして膝近だった懐紙かみを取って、くるくると丸げて、てのひらいて落としたのが、畳へ白粉おしろいのこぼれるようであった。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巻莨まきたばこ吸殻すいがらつて懐紙くわいしへ——マツチのえさしはして
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)