有島武郎
1878.03.04 〜 1923.06.09
“有島武郎”に特徴的な語句
嵩
闇
良人
優
息気
中
親身
境界
漕
行
何所
何時
面
凡
衣嚢
据
内儀
這入
苦
目論見
爪
一言
忙
堆積
基督
怒
埒
埋
酬
袂
鬢
間
抑
呪
隅
笑顔
仰有
膳
方
肘
耽
刺戟
分
暫
傘
素直
靴
躊躇
華車
塵
著者としての作品一覧
秋(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
霜にうたれたポプラの葉が、しほたれながらもなほ枝を離れずに、あるかないかの風にも臆病らしくそよいでゐる。苅入れを終つた燕麥畑の畦に添うて、すく/\と丈け高く立ちならんでゐるその木並 …
読書目安時間:約6分
霜にうたれたポプラの葉が、しほたれながらもなほ枝を離れずに、あるかないかの風にも臆病らしくそよいでゐる。苅入れを終つた燕麥畑の畦に添うて、すく/\と丈け高く立ちならんでゐるその木並 …
或る女:1(前編)(新字新仮名)
読書目安時間:約5時間1分
新橋を渡る時、発車を知らせる二番目の鈴が、霧とまではいえない九月の朝の、煙った空気に包まれて聞こえて来た。葉子は平気でそれを聞いたが、車夫は宙を飛んだ。そして車が、鶴屋という町のか …
読書目安時間:約5時間1分
新橋を渡る時、発車を知らせる二番目の鈴が、霧とまではいえない九月の朝の、煙った空気に包まれて聞こえて来た。葉子は平気でそれを聞いたが、車夫は宙を飛んだ。そして車が、鶴屋という町のか …
或る女:2(後編)(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間53分
どこかから菊の香がかすかに通って来たように思って葉子は快い眠りから目をさました。自分のそばには、倉地が頭からすっぽりとふとんをかぶって、いびきも立てずに熟睡していた。料理屋を兼ねた …
読書目安時間:約6時間53分
どこかから菊の香がかすかに通って来たように思って葉子は快い眠りから目をさました。自分のそばには、倉地が頭からすっぽりとふとんをかぶって、いびきも立てずに熟睡していた。料理屋を兼ねた …
An Incident(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
彼はとう/\始末に困じて、傍に寝てゐる妻をゆり起した。妻は夢心地に先程から子供のやんちやとそれをなだめあぐんだ良人の声とを意識してゐたが、夜着に彼の手を感ずると、警鐘を聞いた消防夫 …
読書目安時間:約13分
彼はとう/\始末に困じて、傍に寝てゐる妻をゆり起した。妻は夢心地に先程から子供のやんちやとそれをなだめあぐんだ良人の声とを意識してゐたが、夜着に彼の手を感ずると、警鐘を聞いた消防夫 …
生まれいずる悩み(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間42分
私は自分の仕事を神聖なものにしようとしていた。ねじ曲がろうとする自分の心をひっぱたいて、できるだけ伸び伸びしたまっすぐな明るい世界に出て、そこに自分の芸術の宮殿を築き上げようともが …
読書目安時間:約1時間42分
私は自分の仕事を神聖なものにしようとしていた。ねじ曲がろうとする自分の心をひっぱたいて、できるだけ伸び伸びしたまっすぐな明るい世界に出て、そこに自分の芸術の宮殿を築き上げようともが …
運命と人(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
○ 運命は現象を支配する、丁度物体が影を支配するやうに。現象によつて暗示される運命の目論見は「死」だ。何となればあらゆる現象の窮極する所は死滅だからである。 我等の世界に於て物と物 …
読書目安時間:約8分
○ 運命は現象を支配する、丁度物体が影を支配するやうに。現象によつて暗示される運命の目論見は「死」だ。何となればあらゆる現象の窮極する所は死滅だからである。 我等の世界に於て物と物 …
描かれた花(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
* 色彩について繊細極まる感覚を持つた一人の青年が現はれた。彼れは普通の写真を見て、黒白の濃淡を凝視することによつて、写された物体の色彩が何んであつたかを易々と見分けるといふことで …
読書目安時間:約10分
* 色彩について繊細極まる感覚を持つた一人の青年が現はれた。彼れは普通の写真を見て、黒白の濃淡を凝視することによつて、写された物体の色彩が何んであつたかを易々と見分けるといふことで …
遠友夜学校校歌(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
沢なすこの世の楽しみの 楽しき極みは何なるぞ 北斗を支ふる富を得て 黄金を数へん其時か オー否否否 楽しき極みはなほあらん。 二 剣はきらめき弾はとび かばねは山なし血は流る 戦の …
読書目安時間:約2分
沢なすこの世の楽しみの 楽しき極みは何なるぞ 北斗を支ふる富を得て 黄金を数へん其時か オー否否否 楽しき極みはなほあらん。 二 剣はきらめき弾はとび かばねは山なし血は流る 戦の …
惜みなく愛は奪う(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間39分
Sometimes with one I love, I fill myself with rage, for fear I effuse unreturnd love; But …
読書目安時間:約2時間39分
Sometimes with one I love, I fill myself with rage, for fear I effuse unreturnd love; But …
お末の死(新字旧仮名)
読書目安時間:約35分
お末はその頃誰から習ひ覚えたともなく、不景気と云ふ言葉を云ひ/\した。 「何しろ不景気だから、兄さんも困つてるんだよ。おまけに四月から九月までにお葬式を四つも出したんだもの」 お末 …
読書目安時間:約35分
お末はその頃誰から習ひ覚えたともなく、不景気と云ふ言葉を云ひ/\した。 「何しろ不景気だから、兄さんも困つてるんだよ。おまけに四月から九月までにお葬式を四つも出したんだもの」 お末 …
溺れかけた兄妹(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
土用波という高い波が風もないのに海岸に打寄せる頃になると、海水浴に来ている都の人たちも段々別荘をしめて帰ってゆくようになります。今までは海岸の砂の上にも水の中にも、朝から晩まで、沢 …
読書目安時間:約13分
土用波という高い波が風もないのに海岸に打寄せる頃になると、海水浴に来ている都の人たちも段々別荘をしめて帰ってゆくようになります。今までは海岸の砂の上にも水の中にも、朝から晩まで、沢 …
親子(新字新仮名)
読書目安時間:約42分
彼は、秋になり切った空の様子をガラス窓越しに眺めていた。 みずみずしくふくらみ、はっきりした輪廓を描いて白く光るあの夏の雲の姿はもう見られなかった。薄濁った形のくずれたのが、狂うよ …
読書目安時間:約42分
彼は、秋になり切った空の様子をガラス窓越しに眺めていた。 みずみずしくふくらみ、はっきりした輪廓を描いて白く光るあの夏の雲の姿はもう見られなかった。薄濁った形のくずれたのが、狂うよ …
カインの末裔(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間5分
長い影を地にひいて、痩馬の手綱を取りながら、彼れは黙りこくって歩いた。大きな汚い風呂敷包と一緒に、章魚のように頭ばかり大きい赤坊をおぶった彼れの妻は、少し跛脚をひきながら三、四間も …
読書目安時間:約1時間5分
長い影を地にひいて、痩馬の手綱を取りながら、彼れは黙りこくって歩いた。大きな汚い風呂敷包と一緒に、章魚のように頭ばかり大きい赤坊をおぶった彼れの妻は、少し跛脚をひきながら三、四間も …
火事とポチ(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
ポチの鳴き声でぼくは目がさめた。 ねむたくてたまらなかったから、うるさいなとその鳴き声をおこっているまもなく、真赤な火が目に映ったので、おどろいて両方の目をしっかり開いて見たら、戸 …
読書目安時間:約20分
ポチの鳴き声でぼくは目がさめた。 ねむたくてたまらなかったから、うるさいなとその鳴き声をおこっているまもなく、真赤な火が目に映ったので、おどろいて両方の目をしっかり開いて見たら、戸 …
潮霧(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
南洋に醗酵して本州の東海岸を洗ひながら北に走る黒潮が、津輕の鼻から方向を變へて東に流れて行く。樺太の氷に閉されてゐた海の水が、寒い重々しい一脈の流れとなつて、根室釧路の沖をかすめて …
読書目安時間:約8分
南洋に醗酵して本州の東海岸を洗ひながら北に走る黒潮が、津輕の鼻から方向を變へて東に流れて行く。樺太の氷に閉されてゐた海の水が、寒い重々しい一脈の流れとなつて、根室釧路の沖をかすめて …
かたわ者(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
昔トゥロンというフランスのある町に、二人のかたわ者がいました。一人はめくらで一人はちんばでした。この町はなかなか大きな町で、ずいぶんたくさんのかたわ者がいましたけれども、この二人の …
読書目安時間:約10分
昔トゥロンというフランスのある町に、二人のかたわ者がいました。一人はめくらで一人はちんばでした。この町はなかなか大きな町で、ずいぶんたくさんのかたわ者がいましたけれども、この二人の …
狩太農場の解放(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
それは自己の良心の満足を得る 已む可らざる行為 私が胆振国狩太農場四百数十町歩を小作人の為に解放して数ヶ月になりますが、其儘小作人諸君の前に前記の土地を自由裁量に委ねる事は私が彼の …
読書目安時間:約6分
それは自己の良心の満足を得る 已む可らざる行為 私が胆振国狩太農場四百数十町歩を小作人の為に解放して数ヶ月になりますが、其儘小作人諸君の前に前記の土地を自由裁量に委ねる事は私が彼の …
かんかん虫(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
ドゥニパー湾の水は、照り続く八月の熱で煮え立って、総ての濁った複色の彩は影を潜め、モネーの画に見る様な、強烈な単色ばかりが、海と空と船と人とを、めまぐるしい迄にあざやかに染めて、其 …
読書目安時間:約23分
ドゥニパー湾の水は、照り続く八月の熱で煮え立って、総ての濁った複色の彩は影を潜め、モネーの画に見る様な、強烈な単色ばかりが、海と空と船と人とを、めまぐるしい迄にあざやかに染めて、其 …
クララの出家(新字新仮名)
読書目安時間:約28分
○ これも正しく人間生活史の中に起った実際の出来事の一つである。 ○ また夢に襲われてクララは暗い中に眼をさました。妹のアグネスは同じ床の中で、姉の胸によりそってすやすやと静かに眠 …
読書目安時間:約28分
○ これも正しく人間生活史の中に起った実際の出来事の一つである。 ○ また夢に襲われてクララは暗い中に眼をさました。妹のアグネスは同じ床の中で、姉の胸によりそってすやすやと静かに眠 …
幻想(旧字旧仮名)
読書目安時間:約9分
彼れはある大望を持つてゐた。 生れてから十三四年の無醒覺な時代を除いては、春秋を迎へ送つてゐる中に、その不思議な心の誘惑は、元來人なつこく出來た彼れを引きずつて、段々思ひもよらぬ孤 …
読書目安時間:約9分
彼れはある大望を持つてゐた。 生れてから十三四年の無醒覺な時代を除いては、春秋を迎へ送つてゐる中に、その不思議な心の誘惑は、元來人なつこく出來た彼れを引きずつて、段々思ひもよらぬ孤 …
碁石を呑んだ八っちゃん(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
八っちゃんが黒い石も白い石もみんなひとりで両手でとって、股の下に入れてしまおうとするから、僕は怒ってやったんだ。 「八っちゃんそれは僕んだよ」 といっても、八っちゃんは眼ばかりくり …
読書目安時間:約13分
八っちゃんが黒い石も白い石もみんなひとりで両手でとって、股の下に入れてしまおうとするから、僕は怒ってやったんだ。 「八っちゃんそれは僕んだよ」 といっても、八っちゃんは眼ばかりくり …
小作人への告別(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
八月十七日私は自分の農場の小作人に集会所に集まってもらい、左の告別の言葉を述べた。これはいわば私の私事ではあるけれども、その当時の新聞紙が、それについて多少の報道を公けにしたのであ …
読書目安時間:約7分
八月十七日私は自分の農場の小作人に集会所に集まってもらい、左の告別の言葉を述べた。これはいわば私の私事ではあるけれども、その当時の新聞紙が、それについて多少の報道を公けにしたのであ …
子供の世界(旧字旧仮名)
読書目安時間:約6分
私の父が亡くなる少し前に(お前これから重要な問題となるものはどんな問題だと思ふ?)と一種の眞面目さを以て私に尋ねたことがある。それは父にとつて或種の謎であつた私の將來を、私の返答に …
読書目安時間:約6分
私の父が亡くなる少し前に(お前これから重要な問題となるものはどんな問題だと思ふ?)と一種の眞面目さを以て私に尋ねたことがある。それは父にとつて或種の謎であつた私の將來を、私の返答に …
自然と人(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
人は自然を美しいといふ。然しそれよりも自然は美しい。人は自然を荘厳だといふ。然しそれよりも自然は荘厳だ。如何なる人が味到し色読したよりも以上に自然は美しく荘厳だ。議論としてそれを拒 …
読書目安時間:約1分
人は自然を美しいといふ。然しそれよりも自然は美しい。人は自然を荘厳だといふ。然しそれよりも自然は荘厳だ。如何なる人が味到し色読したよりも以上に自然は美しく荘厳だ。議論としてそれを拒 …
実験室(旧字旧仮名)
読書目安時間:約32分
兄と彼れとは又同じ事を繰返して云ひ合つてゐるのに氣がついて、二人とも申合せたやうに押默つてしまつた。 兄は額際の汗を不愉快さうに拭つて、せはしく扇をつかつた。彼れは顯微鏡のカバーの …
読書目安時間:約32分
兄と彼れとは又同じ事を繰返して云ひ合つてゐるのに氣がついて、二人とも申合せたやうに押默つてしまつた。 兄は額際の汗を不愉快さうに拭つて、せはしく扇をつかつた。彼れは顯微鏡のカバーの …
詩への逸脱(旧字旧仮名)
読書目安時間:約2分
私は嘗て詩を音樂に次ぐ最高位の藝術表現と云つたことがあつた。 凡ての藝術は表現だ。表現の焦點は象徴に於て極まる。象徴とは表現の發火點だ。表現が人間の覺官に依據して訴へ、理智に即迫し …
読書目安時間:約2分
私は嘗て詩を音樂に次ぐ最高位の藝術表現と云つたことがあつた。 凡ての藝術は表現だ。表現の焦點は象徴に於て極まる。象徴とは表現の發火點だ。表現が人間の覺官に依據して訴へ、理智に即迫し …
私有農場から共産農団へ(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
A北海道農場開放に就ての御意見を伺ひたいのですが。殊に、開放されるまでの動機やその方法、今後の処置などに就いてですな。 B承知しました。 A少し横道に這入るやうですが、この頃は切り …
読書目安時間:約10分
A北海道農場開放に就ての御意見を伺ひたいのですが。殊に、開放されるまでの動機やその方法、今後の処置などに就いてですな。 B承知しました。 A少し横道に這入るやうですが、この頃は切り …
星座(新字新仮名)
読書目安時間:約3時間57分
その日も、明けがたまでは雨になるらしく見えた空が、爽やかな秋の朝の光となっていた。 咳の出ない時は仰向けに寝ているのがよかった。そうしたままで清逸は首だけを腰高窓の方に少しふり向け …
読書目安時間:約3時間57分
その日も、明けがたまでは雨になるらしく見えた空が、爽やかな秋の朝の光となっていた。 咳の出ない時は仰向けに寝ているのがよかった。そうしたままで清逸は首だけを腰高窓の方に少しふり向け …
『聖書』の権威(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
私には口はばったい云い分かも知れませんが聖書と云う外はありません。聖書が私を最も感動せしめたのは矢張り私の青年時代であったと思います。人には性の要求と生の疑問とに、圧倒される荷を負 …
読書目安時間:約2分
私には口はばったい云い分かも知れませんが聖書と云う外はありません。聖書が私を最も感動せしめたのは矢張り私の青年時代であったと思います。人には性の要求と生の疑問とに、圧倒される荷を負 …
宣言一つ(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
思想と実生活とが融合した、そこから生ずる現象——その現象はいつでも人間生活の統一を最も純粋な形に持ち来たすものであるが——として最近に日本において、最も注意せらるべきものは、社会問 …
読書目安時間:約10分
思想と実生活とが融合した、そこから生ずる現象——その現象はいつでも人間生活の統一を最も純粋な形に持ち来たすものであるが——として最近に日本において、最も注意せらるべきものは、社会問 …
想片(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
私が改造の正月号に「宣言一つ」を書いてから、諸家が盛んにあの問題について論議した。それはおそらくあの問題が論議せらるべく空中に漂っていたのだろう。そして私の短文がわずかにその口火を …
読書目安時間:約11分
私が改造の正月号に「宣言一つ」を書いてから、諸家が盛んにあの問題について論議した。それはおそらくあの問題が論議せらるべく空中に漂っていたのだろう。そして私の短文がわずかにその口火を …
小さき影(旧字旧仮名)
読書目安時間:約18分
誰にあてるともなくこの私信を書き連らねて見る。 信州の山の上にあるK驛に暑さを避けに來てゐる人は澤山あつた。彼等は思ひ/\に豐な生活の餘裕を樂んでゐるやうに見えた。さはやかな北海道 …
読書目安時間:約18分
誰にあてるともなくこの私信を書き連らねて見る。 信州の山の上にあるK驛に暑さを避けに來てゐる人は澤山あつた。彼等は思ひ/\に豐な生活の餘裕を樂んでゐるやうに見えた。さはやかな北海道 …
小さき者へ(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
お前たちが大きくなって、一人前の人間に育ち上った時、——その時までお前たちのパパは生きているかいないか、それは分らない事だが——父の書き残したものを繰拡げて見る機会があるだろうと思 …
読書目安時間:約21分
お前たちが大きくなって、一人前の人間に育ち上った時、——その時までお前たちのパパは生きているかいないか、それは分らない事だが——父の書き残したものを繰拡げて見る機会があるだろうと思 …
燕と王子(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
燕という鳥は所をさだめず飛びまわる鳥で、暖かい所を見つけておひっこしをいたします。今は日本が暖かいからおもてに出てごらんなさい。羽根がむらさきのような黒でお腹が白で、のどの所に赤い …
読書目安時間:約19分
燕という鳥は所をさだめず飛びまわる鳥で、暖かい所を見つけておひっこしをいたします。今は日本が暖かいからおもてに出てごらんなさい。羽根がむらさきのような黒でお腹が白で、のどの所に赤い …
ドモ又の死(新字新仮名)
読書目安時間:約33分
ドモ又の死 (これはマーク・トウェインの小話から暗示を得て書いたものだ) 人物 花田┐ 沢本(諢名、生蕃)│ 戸部(諢名、ドモ又)├若き画家 瀬古(諢名、若様)│ 青島┘ とも子モ …
読書目安時間:約33分
ドモ又の死 (これはマーク・トウェインの小話から暗示を得て書いたものだ) 人物 花田┐ 沢本(諢名、生蕃)│ 戸部(諢名、ドモ又)├若き画家 瀬古(諢名、若様)│ 青島┘ とも子モ …
農場開放顛末(新字旧仮名)
読書目安時間:約8分
小樽函館間の鉄道沿線の比羅夫駅の一つ手前に狩太といふのがある。それの東々北には蝦夷富士がありその裾を尻別の美河が流れてゐるが、その川に沿うた高台が私の狩太農場であります。この農場は …
読書目安時間:約8分
小樽函館間の鉄道沿線の比羅夫駅の一つ手前に狩太といふのがある。それの東々北には蝦夷富士がありその裾を尻別の美河が流れてゐるが、その川に沿うた高台が私の狩太農場であります。この農場は …
農民文化といふこと(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
農民文化に就て話せといふことですが、私は文化といふ言葉に就いてさへ、ある疑ひを持つてゐるのでありまして、所謂今日文化と云はれてゐるのは、極く小数の人が享受してゐるに過ぎないのであつ …
読書目安時間:約3分
農民文化に就て話せといふことですが、私は文化といふ言葉に就いてさへ、ある疑ひを持つてゐるのでありまして、所謂今日文化と云はれてゐるのは、極く小数の人が享受してゐるに過ぎないのであつ …
春(旧字旧仮名)
読書目安時間:約9分
春になると北海道の春を思ふ。私は如何いふものか春が嫌ひだ。それは感情的にさうだと云ふよりも寧ろ生理的にさうなのだらう。若い女の人などが、すつかり上氣せ上つて、頬を眞赤にして、眼まで …
読書目安時間:約9分
春になると北海道の春を思ふ。私は如何いふものか春が嫌ひだ。それは感情的にさうだと云ふよりも寧ろ生理的にさうなのだらう。若い女の人などが、すつかり上氣せ上つて、頬を眞赤にして、眼まで …
半日(旧字旧仮名)
読書目安時間:約21分
地には雪、空も雪の樣に白み渡つて家並ばかりが黒く目立つ日曜日の午後晩く相島は玄關にあつた足駄をつツかけて二町計りの所に郵便を入れに行つた。歸り路に曲り角で往來を見渡したがそれらしい …
読書目安時間:約21分
地には雪、空も雪の樣に白み渡つて家並ばかりが黒く目立つ日曜日の午後晩く相島は玄關にあつた足駄をつツかけて二町計りの所に郵便を入れに行つた。歸り路に曲り角で往來を見渡したがそれらしい …
卑怯者(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
青黄ろく澄み渡った夕空の地平近い所に、一つ浮いた旗雲には、入り日の桃色が静かに照り映えていた。山の手町の秋のはじめ。 ひた急ぎに急ぐ彼には、往来を飛びまわる子供たちの群れが小うるさ …
読書目安時間:約11分
青黄ろく澄み渡った夕空の地平近い所に、一つ浮いた旗雲には、入り日の桃色が静かに照り映えていた。山の手町の秋のはじめ。 ひた急ぎに急ぐ彼には、往来を飛びまわる子供たちの群れが小うるさ …
一房の葡萄(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
僕は小さい時に絵を描くことが好きでした。僕の通っていた学校は横浜の山の手という所にありましたが、そこいらは西洋人ばかり住んでいる町で、僕の学校も教師は西洋人ばかりでした。そしてその …
読書目安時間:約13分
僕は小さい時に絵を描くことが好きでした。僕の通っていた学校は横浜の山の手という所にありましたが、そこいらは西洋人ばかり住んでいる町で、僕の学校も教師は西洋人ばかりでした。そしてその …
広津氏に答う(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
私が正月号の改造に発表した「宣言一つ」について、広津和郎氏が時事紙上に意見を発表された。それについて、お答えする。 広津氏は、芸術は超階級的超時代的な要素を持っているもので、よい芸 …
読書目安時間:約11分
私が正月号の改造に発表した「宣言一つ」について、広津和郎氏が時事紙上に意見を発表された。それについて、お答えする。 広津氏は、芸術は超階級的超時代的な要素を持っているもので、よい芸 …
二つの道(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
二つの道がある。一つは赤く、一つは青い。すべての人がいろいろの仕方でその上を歩いている。ある者は赤い方をまっしぐらに走っているし、ある者は青い方をおもむろに進んで行くし、またある者 …
読書目安時間:約8分
二つの道がある。一つは赤く、一つは青い。すべての人がいろいろの仕方でその上を歩いている。ある者は赤い方をまっしぐらに走っているし、ある者は青い方をおもむろに進んで行くし、またある者 …
フランセスの顔(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
たけなわな秋のある一夜。 光の綾を織り出した星々の地色は、底光りのする大空の紺青だった。その大空は地の果てから地の果てにまで広がっていた。 淋しく枯れ渡った一叢の黄金色の玉蜀黍、細 …
読書目安時間:約24分
たけなわな秋のある一夜。 光の綾を織り出した星々の地色は、底光りのする大空の紺青だった。その大空は地の果てから地の果てにまで広がっていた。 淋しく枯れ渡った一叢の黄金色の玉蜀黍、細 …
平凡人の手紙(旧字旧仮名)
読書目安時間:約25分
もう一年になつた。早いもんだ。然し待つてくれ給へ。僕はこゝまで何の氣なしに書いて來たが、早いもんだとばかりは簡單に云ひ切る事も出來ないやうな氣がする。僕が僕なりにして來た苦心はこの …
読書目安時間:約25分
もう一年になつた。早いもんだ。然し待つてくれ給へ。僕はこゝまで何の氣なしに書いて來たが、早いもんだとばかりは簡單に云ひ切る事も出來ないやうな氣がする。僕が僕なりにして來た苦心はこの …
片信(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
A兄 近来出遇わなかったひどい寒さもやわらぎはじめたので、兄の蟄伏期も長いことなく終わるだろう。しかし今年の冬はたんと健康を痛めないで結構だった。兄のような健康には、春の来るのがど …
読書目安時間:約18分
A兄 近来出遇わなかったひどい寒さもやわらぎはじめたので、兄の蟄伏期も長いことなく終わるだろう。しかし今年の冬はたんと健康を痛めないで結構だった。兄のような健康には、春の来るのがど …
僕の帽子のお話(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
「僕の帽子はおとうさんが東京から買って来て下さったのです。ねだんは二円八十銭で、かっこうもいいし、らしゃも上等です。おとうさんが大切にしなければいけないと仰有いました。僕もその帽子 …
読書目安時間:約13分
「僕の帽子はおとうさんが東京から買って来て下さったのです。ねだんは二円八十銭で、かっこうもいいし、らしゃも上等です。おとうさんが大切にしなければいけないと仰有いました。僕もその帽子 …
北海道に就いての印象(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
私は前後約十二年北海道で過した。しかも私の生活としては一番大事と思われる時期を、最初の時は十九から二十三までいた。二度目の時は三十から三十七までいた。それだから私の生活は北海道に於 …
読書目安時間:約6分
私は前後約十二年北海道で過した。しかも私の生活としては一番大事と思われる時期を、最初の時は十九から二十三までいた。二度目の時は三十から三十七までいた。それだから私の生活は北海道に於 …
骨(新字旧仮名)
読書目安時間:約28分
たうとう勃凸は四年を終へない中に中学を退学した。退学させられた。学校といふものが彼にはさつぱり理解出来なかつたのだ。教室の中では飛行機を操縦するまねや、活動写真の人殺しのまねばかり …
読書目安時間:約28分
たうとう勃凸は四年を終へない中に中学を退学した。退学させられた。学校といふものが彼にはさつぱり理解出来なかつたのだ。教室の中では飛行機を操縦するまねや、活動写真の人殺しのまねばかり …
水野仙子氏の作品について(旧字旧仮名)
読書目安時間:約10分
仙子氏とはとう/\相見る機會が來ない中に永い別れとなつた。手紙のやりとりが始つたのも、さう久しい前からのことではない。またその作品にも——創作を始めて以來、殊に讀書に懶くなつた私は …
読書目安時間:約10分
仙子氏とはとう/\相見る機會が來ない中に永い別れとなつた。手紙のやりとりが始つたのも、さう久しい前からのことではない。またその作品にも——創作を始めて以來、殊に讀書に懶くなつた私は …
私の父と母(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
私の家は代々薩摩の国に住んでいたので、父は他の血を混えない純粋の薩摩人と言ってよい。私の眼から見ると、父の性格は非常に真正直な、また細心なある意味の執拗な性質をもっていた。そして外 …
読書目安時間:約7分
私の家は代々薩摩の国に住んでいたので、父は他の血を混えない純粋の薩摩人と言ってよい。私の眼から見ると、父の性格は非常に真正直な、また細心なある意味の執拗な性質をもっていた。そして外 …
翻訳者としての作品一覧
真夏の夢(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
北の国も真夏のころは花よめのようなよそおいをこらして、大地は喜びに満ち、小川は走り、牧場の花はまっすぐに延び、小鳥は歌いさえずります。その時一羽の鳩が森のおくから飛んで来て、寝つい …
読書目安時間:約18分
北の国も真夏のころは花よめのようなよそおいをこらして、大地は喜びに満ち、小川は走り、牧場の花はまっすぐに延び、小鳥は歌いさえずります。その時一羽の鳩が森のおくから飛んで来て、寝つい …
“有島武郎”について
有島 武郎(ありしま たけお、1878年(明治11年)3月4日 - 1923年(大正12年)6月9日)は、日本の小説家。
学習院中等科卒業後、農学者を志して北海道の札幌農学校に進学、洗礼を受ける。1903年に渡米。ハバフォード大学大学院を経て、ハーバード大学で1年ほど歴史、経済学を学ぶ。帰国後、志賀直哉や武者小路実篤らと共に同人「白樺」に参加する。1923年、軽井沢の別荘(浄月荘)で波多野秋子と心中した。
代表作に『カインの末裔』『或る女』や、評論『惜しみなく愛は奪ふ』がある。
(出典:Wikipedia)
学習院中等科卒業後、農学者を志して北海道の札幌農学校に進学、洗礼を受ける。1903年に渡米。ハバフォード大学大学院を経て、ハーバード大学で1年ほど歴史、経済学を学ぶ。帰国後、志賀直哉や武者小路実篤らと共に同人「白樺」に参加する。1923年、軽井沢の別荘(浄月荘)で波多野秋子と心中した。
代表作に『カインの末裔』『或る女』や、評論『惜しみなく愛は奪ふ』がある。
(出典:Wikipedia)
“有島武郎”と年代が近い著者
きょうが誕生日(12月9日)
今月で生誕X十年
ラデャード・キプリング(生誕160年)
ライネル・マリア・リルケ(生誕150年)
野口米次郎(生誕150年)
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相馬泰三(生誕140年)
山中峯太郎(生誕140年)
観世左近 二十四世(生誕130年)
平山千代子(生誕100年)
今月で没後X十年
アウグスト・プラーテン(没後190年)
フィオナ・マクラウド(没後120年)
徳永保之助(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)
寺田寅彦(没後90年)
生田葵山(没後80年)
百田宗治(没後70年)
安井曽太郎(没後70年)
米川正夫(没後60年)
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
木下利玄(没後100年)
富永太郎(没後100年)
エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)