“な”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:
語句割合
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(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
鼻を鳴らしてまつわりつく犬をいたわりながら、鉄瓶てつびんの湯気などの暖かくこもった茶の間へ、二人は冷たい頬をでながら通った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
叩いた袖がフワリと宙に浮いて、柔かい娘の腕だけが、八五郎の首筋に觸ると、サラサラとほゝでる洗ひ髮が、八五郎の胸をときつかせます。
ソコデ私の見る所で、新政府人の挙動はすべて儒教の糟粕そうはくめ、古学の固陋ころう主義より割出して空威張からいばりするのみ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
幸四郎はそれを聞くと、急に気難しい顔をした。そして弟子のふざけた振には見向きもしないで、ちびりちびりさかづきふちめてゐた。
「どのとりだってれればおなじさ。しかし子飼こがいいでないと、なかなかこんなにならないそうだね。」と、にいさんがいいました。
山へ帰ったやまがら (新字新仮名) / 小川未明(著)
「大丈夫。だって私よりも若い人が子供うんでるもの。私は子供好きですもの、ほんとに大丈夫と思う。どこの赤ちゃんでもすぐつくんだもの。」
一つ身の着物 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
梢から梢へ、姿を見せぬ小鳥たちが互いにかわしながら移動して行くらしく、また遠くで野生の鶏がするどい声でつづけざまにいた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
そして、令弟の家の門口をくぐろうとして、何気なく屋根の上へ眼をやったところで、其処に一匹の黒猫がいて、それが糸のような声でいていた。
屋根の上の黒猫 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その前日には太子の正妃膳大刀自かしわのおおとじくなられ、前年の暮には母后が崩御されたのであるから、上宮一家の悲嘆は申すまでもない。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
(注意そのものの性質や発達はここには述べません)私が先年倫敦ロンドンにおった時、この間くなられた浅井先生と市中を歩いた事があります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人が、臨終の時にす信頼は、基督正教カトリックの信徒が、死際しにぎわ懺悔ざんげと同じように、神聖な重大なものに違いないと思った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
『神戸の夷人ゐじんさんとこ。委しい事は阿母さんなんかに被仰おつしやらないけれど、日本で初めて博覧会と云ふものをさるんだつて。』
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
る、かれはランプをして寐室ねべやった。が、どうしても睡眠ねむりくことは出来できぬのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すると、たちまち、ガチョウもニワトリも、ニールスのほうをりむきました。そうして、みんなは、ものすごいいきおいできたてました。
焼き魚は骨までしゃぶったし、歯にはさまった小骨は、口へ指を突っ込んでほじり出し、ちゃぶ台の上へこすりつけ、その指を平気でぺろっとめた。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「急がぬものじゃ。今宵からめようとシャブろうと、そなたが思いのままに出来るよう取り計らってつかわそうぞ。ほら、繩目を切ってつかわすわ」
はるかの北上きたかみあおい野原は、今きやんだようにまぶしくわらい、むこうのくりの木は、青い後光をはなちました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
主人は目で細君をせいす。勝手かってで子どもがきたったので細君はった。花前もつづいて立ちかけたのをふたたびになおって、
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
なにとしてにとせば松野まつのこゝろまよひもめ、竹村たけむらきみ潔白けつぱくをもあかされん
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
市「知りません、其様そんな事どうして、只の字せえ知らねえで習わねえに英語なぞに知る訳がねえ、それは外国人げえこくじんのいうことだ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
秀吉ひできちは、いったから流行歌りゅうこうか楽譜がくふや、歌手かしゅまえをおぼえるのに一苦労ひとくろうでした。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
實際じつさいかれ驛員えきゐんごゑに、停車場ステイシヨンいて心得こゝろえたので。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『よろしい、まいりませう。』と琵琶びはてゝ、一番いちばんたゝかつたが、たちまちウンとねぢたをされた。
一度いちどは、あまりのくるしさに、三國沿岸みくにえんがんで……げて……いや、これだと女性ぢよせいちか
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
而も大将の生命を狙ったものならばあの角度から打つ筈はないのに、弾道は馬上にあった則重の顔と並行して、つまり鼻の隆起面と直角をしていた。
綱吉の“柳沢やなぎさわり”といって、町でも評判な柳沢吉保よしやすのやしきへ出かけた回数も、五十数回という頻繁ひんぱんさだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『けれどおまへことは、みんなむかしはなしで、いまではたゝりくなつたよ。』
ことぼくはひつたころ粗末そまつ平屋ひらやで、教室けうしつかずよついつゝしかかつたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
健吉くんが未亡人とさぬ仲であること、熱烈に恋する女との結婚をきっぱり拒絶されたということは、立派に殺人の動機とすることができます。
愚人の毒 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
おいよ 柿の実ならば、おまえのお寺にも沢山にっているではないか。(疑うようにじっと見て。)ほんとうに柿の実をぬすみに来たのですか。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして夫が滑かな舌で、道理らしい事を言うのを聞いていると、いつかその道理に服するのではなくて、只何がなしにやされてしまうのである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
とても自分などが太刀打たちうちできる相手ではないと思うと、心がえたようになって、何をいうのも覚束おぼつかない気がするのだった。
と言ひ言ひ、何気なくそばにあつた『現代人物帖』を取り上げてみると、その第一頁目にくなつたルウズヴエルト氏の写真がはさんであつた。
次には天気のこと、その次には何かこわれた物やくした物のこと、その次には良心と背骨とから非難を受ける快楽のこと、あるいはまた世事の推移。
新造の親切も、初めは並ならぬくらいであったが、れるに従って、その親切は、千浪の美貌を手馴てなずけようとするあだな野望と変ってきた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奇怪にも友人の細君だった婦人を、れしく、かき抱いてゆく大蘆原軍医は、誰よりも一番恐ろしい、鬼か魔かというべき人物ではあるまいか。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うなづらは、めずらしいぎです。ご渡海には上々な日。島におわせられても、朝夕、み気色けしきうるわしく、お過ごしあらせられますように」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて日がくれて、十八日の午後十時になった。そうすると、今までふいていた北東風が、急にばったりいで、風がまったくなくなってしまった。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
或は臥牛がぎゅうの道に横たわる如く、五色ごしき陸離りくりとして相間あいまじわり、しゅんおおむね大小の斧劈ふへき
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
また高輪より品川に及ぶ半円形の海岸とは水と空とこれに配合する橋と船とによりて広重をして最も容易に最も簡単なる好画図こうがとさしむ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あとで皆々ほっと息をき安心致し、お荷主八右衞門に手当を致しますと、二日程経ちまするうちに大きに口もきけるようになりました。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
政府はほとんど全国の兵をげ、くわうるに文明精巧せいこう兵器へいきを以てして容易よういにこれを鎮圧ちんあつするを得ず
隣りの地内の奥まったあたりで、竹藪たけやぶぎたてるような音がしていたが、そのうちに、よく通る声で、だれかがこちらへ呼びかけた。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
武蔵は、三名のなかへ割って入ると、こうの者を、大刀で一さつの下に断ち伏せ、左側の男を、左手で抜いた脇差で、横にいだ。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊に、そんな楽しい時代には、地上の子供達も、屈託くったくというものにまるでれていなかったので、それをどうしていいか分らなかったのです。
また内地ないちやまにゐるやまねこは家猫いへねこげて、いつのまにかやま生活せいかつれてしまつたものなのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
年を経て、その娘は死んだ。三つの蛟は又あらわれて母の墓所に赴き、幾日も号哭ごうこくして去った。そのく声はいぬのようであった。
「直接、魏公に会ってけ」とばかり取り合わなかった。そして素足のまま引っ立てて、曹操のまえに連れてゆくと、曹操は、はッたと后を睨みつけて、
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
されど又予を目して、万死の狂徒とし、まさしかばねに鞭打つて後む可しとするも、予に於てはがうも遺憾とする所なし。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、しかし、その落ち着きには似ず、思いしかこの部屋の中だけはそこらじゅうに声を潜めた眼が光って周囲からのぞかれているよう気持がした。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「水晶幻想」は即物的な表現のうちに、素朴な唯物的実在の感覚と心理のニュアンスをいあわせた、というよりもむしろ配列した頭脳的な作品であった。
文芸時評 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
毎日まいにち煙管きせるよこくはへては悠長いうちやうではあるが、しか間斷かんだんなくなはをちより/\とつたり
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
山科やましな木幡こはたやまうまはあれどかちおもひかね 〔巻十一・二四二五〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
可愛かわゆき児の、何とて小親にのみはなつき寄る、はじめてが頬に口つけしはわれなるを、かいなくかれらるるものかは。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
空を仰ぐと、頭上には隆々たる大岩壁が、甲鉄のように、凝固した波を空にげ上げ、それ自らの重力に堪えがたいように、尖端が傾斜して
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
現に色を視、音を聞く以上は、この経験を綜合して我以外にげ出すと、抛げ出さざるとに論なく、色も音も依然として、一方では主観的事実であります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昔噺むかしばなしで行くと、どん粟と蜂と臼ぢやないか、——念入りにたくらんだな。畜生、人をめた野郎だ。行つて見よう、八」
というは、旅はつらい、難儀なんぎである、可愛かわいい子にはこの辛苦しんくめさせ、鍛錬たんれんさせよとの意味である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
でたくさんです。困苦欠乏こんくけつぼうにたえる精神がなによりも大切です。それはそうとして、ご自習をお始めください」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
会場の楽屋で、服の胸をはだけ、両手を椅子の背中へたらしたかっこうにこしかけている長野は、とめみてたちあがりもしなかった。
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
歿くなったわたくしの父が宴会へ行った帰りには無愛想な顔をしながらもきんとんの折を忘れずにわたくしに持って来て呉れたのをつい思い出しましたので。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
僕は老人らうじんに導かれて千八百八十八年に巴里パリイ歿くなつた全権大使ナホノブ、サメジマ君の墓をはからずも一ぱいした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
それからもう一つ、卓一がいうんですが、今までの自分というものに愛想が尽きたので、之を機会に信造にって、無口で真面目な人間に更生しようと考えた
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
くして、三日ののちに重蔵は死んだ。人間の運命は不思議なもので、彼は故郷こきょうの土とるべく、偶然にここへ帰って来たのであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「能く事わけを話したら渡した」とのみ。妻はおその様子まで詳しくきたかったらしいが自分の進まぬ風を見て、別に深くもたずねず、
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
銀杏返いちょうがえしもぐしや/\に、つかんでたばねた黒髪に、琴柱形ことじがたして、晃々きらきらほ月光に照映てりかへる。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ベアトリーチェはあたかもナブコッドノゾルの怒り(彼を殘忍非道となしたる)をしづめし時に當りてダニエルロのしゝ如くになしき 一三—一五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
たま/\冷水浴れいすゐよくしてかみ祷願たうぐわんせばかなら功驗こうけんあるしとぐるひとあり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
ナニその、胡麻和ごまあえのようなてめえつらめろい! さあ、どこにわっしてめえの紙入をったんだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「私ね。あとで、男娼の手にすりかえさせようかと思ったんです。はじめの計画は、そうだったの。男娼はよろこぶわ。暗闇で先生に頬ずりしてよ。めるわよ」
街はふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
もしも私が凍りついて動かぬ氷にさへなつて了へば——それはなつかしい死の無感覺である——假令げつけるやうに雨が降つても何ともあるまいに。
ぜにげては陰陽いんようさだめる、——それがちょうど六度続いた。おれんはその穴銭の順序へ、心配そうな眼をそそいでいた。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
冬ごもりうらさびぬらし。隣りべは日のあたるよと、萩も枯れ萱も枯れぬと、よろしよと、見つつぬくもる、吾がぎごころ。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
四月に入ってから、ある日、伸子は楢崎の書斎でしゃべっていた。書斎の窓から田端の高台が見晴された。数日来風が強く、やっとその日いだ日光と風景であった。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「短イじけエもんは、仕方がね。オレがアごうしてやれね」
「秋の夜はげえ。化け物の来るのは丑満うしみつと決まっていらあ」
とりわけひだりの手がみぎの手より四すんながかったものですから、みの二ばいもあるつよゆみ
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
西多摩や造酒屋つくりざかや門櫓かどやぐらいかしく高く、棟さはに倉建てめ、殿づくり、朝日夕日の押し照るや、八隅かがやく。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かほ、其まなじり、其瞻視せんし、其形相ぎやうさう、一として情慾に非ざるものく、しかも猶美しかりき。
鉤摭こうせきして説を成し、上古にがっするを務め、先儒を毀訾きしし、以謂おもえらく我に及ぶなりと、更に異議を為して、以て学者を惑わす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その一人娘のバージニアが彼の病苦をやさしく慰めはしたものの、その後まもなく彼に先き立ってくなりました。
ガリレオ・ガリレイ (新字新仮名) / 石原純(著)
籠城ろうじょう中に戦死せしこと、三奈木みなぎより募られたる百人夫長が、陣中の流行病にてくなりしこと、甘木あまぎの商人が暗号を誤りて剣銃にて突かれしことなど
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
卒爾そつじにものを言わるる。もうい。何と仰せられてもそれがしはそれがし。互に言募れば止まりどころを失う。それがしは御相手になり申せぬ。」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
子、仲弓を謂う。曰く、犂牛りぎゅうあかくして且つ角よくば、用うることからんと欲すといえども、山川其れこれてんやと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
いや、そればかりじゃない、僕はこの十年というもの、まるで牡牛おうしみたいに汗水たらして、その借金をきれいにしたんだ。
おくのさんのように、あゝ遣って留守を守って固くして、亭主の借金しまでして、留守を守って居るようなら宜しいが、中々彼は守らんぜ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これがまた、たった一つった果物のような素晴らしい出来栄、歩めば大地の上に、歩一歩花が咲くのではないかと思われる位い、暗闇の中に置くと、かぐや姫のように、輝いたと云われる程の美しさです。
「此はお嬢様に」と婦人が取出とりだしたのは、十七八ずつもった丹波酸漿たんばほおずきが二本。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
千浪は大きく頷首うなずいて、髪から、かんざしを抜き取った。そして、大次郎の口もとから眼を離さずに、横ざまに片手をさし伸べて、行燈あんどん灯立ほたちをらした。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
村の鎮守の丁寧にらされた砂上などには、ほとんまつて老媼が孫の相手をして遊んで居るのが見あたる。
(新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
森さんが突然北京ペキンでおくなりになったのを私が新聞で知ったのは、去年の七月の朝から息苦しいほど暑かった日であった。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
何でも三十八年の間引続いて住職を勤め、延宝八年とかに九十二でくなつたといふから、随分達者な僧侶ばうさんだつたに相違ない。
大変な事が起ったのよ。智恵子さん。あたし、くなったツヤ子さんとおんなじお手紙を貴女に書くわ。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ある時八等書記がくなつたので、くるま代をはずむで貰つて、告別式の演説に出掛けて往つた。いつもの通り立板に水の弁舌で故人を褒め立ててゐると聴衆は変な顔をし出した。
彼は自らに問うた、——これは蔑みにれた心であらうか、それとも美に負けた心であらうか。
垂水 (新字旧仮名) / 神西清(著)
常にれないだけに、剣といへば、ろまんちっくな、而も潔白な感動の催すことが、屡だつたと思はれる。
橘曙覧評伝 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
馬を降りて、酔醒めに谷川の水を次々に飲んで一休みしてゐると、誰かゞそんなことを云つて私にレンズを向けた。私はシノンの恋人に扮してゐる私の妻に楯を持たせ、その妹につた居酒屋の娘の肩を抱いて、
出発 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
底野 いくら言ふことが堂々としてゝも、そのりぢや人が信用しないよ。却つて、奇麗なことを云ふ方が、物欲しさうだよ。坊主にお経料を訊ねると、へゝお思召でといふやうなもんだ。
運を主義にまかす男 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
牛さえいれば牛小屋で馬さえけば馬小屋だ。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
せんずれば馬もほとけの身なれどもやいとすゑられてけばかなしも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
縦横のはかりごとらざれども、慷慨こうがいの志はお存せり。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
夜雨やうあきさむうしてねむりらず残燈ざんとう明滅めいめつひとり思うの時には、或は死霊しりょう生霊いきりょう無数の暗鬼あんきを出現して眼中に分明なることもあるべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
末座にみ居る若侍等わかざむらひたちの亂れもせぬ衣髮をつくろふも可笑をかし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
わた越ゆと六騎がともは舟めてきほぎ連れ矢声あげにし (鮟鱇組)
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それからちょうど古ギリシアローマの名神に、蛇妖となり下ったものあるように、野槌も草野の神から悪鬼、次に上述通りの異態な蛇を指すと移ったものか。
妻は病牀にし児はうえくとうたった梅田雲浜うめだうんぴんの貧乏は一通りのものではなかった。
志士と経済 (新字新仮名) / 服部之総(著)
わがやどの尾花押し(み)置く露に手触れ吾妹子わぎもこちらまくも見む (巻十、秋雑)
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
婦負めひすすきおしゆき宿やど今日けふかなしくおもほイはゆ 〔巻十七・四〇一六〕 高市黒人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
赤い苺がびつしりつて居る。
壱岐国勝本にて (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
向ふの側にも柿の樹があツて、其には先ツぽの黄色になつた柿が枝もたわゝにツてゐた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あかすこし付きてへたる絹物のあはせの襟こそなまめかしけれ
かろきねたみ (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
何故なにゆえとは知らず、ことごとく身はえて、手に持つ燭を取り落せるかと驚ろきて我に帰る。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
車の轍でらされているこの道を、いつも二輪の荷車を曳いて、面白げに走る馬もどこにも見えない。
(新字新仮名) / ウィルヘルム・シュミットボン(著)
畑の中を、うねから畦へ、土くれから土くれへと、踏みつけ踏みつけ、まぐわのように、かため、らして行く。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
大巌おおいわの崖が薄黒く、目の前へ蔽被おっかぶさって、物凄ものすごうもなりましたので、ふんどしめ直すやら、膝小僧ひざっこぞうを合わせるやら、お船頭が、ほういほうい、と鳥のような懸声で、浜へ船をつけまして、正体のない嘉吉をぐる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どうも驚ろいちまう。私ならぐってやる」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と母親は火鉢の布巾ふきんげ出す。けれども、お勢は手にだも触れず、
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
然しこれを書き抜かないと、私のこの拙い感想の筆はげ棄てられなければならない。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
入札して開けてみたところが、みんな欲しかったとみえて七千円以下はありませんでしたよ。七千円から八千円位の間でしてね、結局、八千二百円の人に落ちました。あれを最後に廻わしたところなど、向うの人もなかなかれたもんですよ。
痀女抄録 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
みんなで楽しみにしていたその実がいくらたんとっても、残らず自分一人で食べてしまうから。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「蟻ぢやない。うして、天気のい時に、花粉をつて、雌蕊しずゐへ塗りけて置くと、今にるんです。ひまだから植木屋からいた通り、つてる所だ」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その垣には珊瑚樹さんごじゅの実が一面にっていて、葉越に隣の藁屋根わらやねが四半分ほど見えます。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お光は何思ったかそっと頬をでて見て、懐にしまった。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
真直まっすぐに行ッて、矗立千尺ちくりゅうせんせきくうでそうな杉の樹立の間を通抜けて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
もえ子 ねえ、野見さん、早く上るなら上つて頂戴よ。あたし、こんなりで、それや寒いのよ。
長閑なる反目 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
蔭間茶屋かげまぢゃや色子いろこ野郎やろう)風俗だの売女のりが、良家の子女にまで真似られて、大奥や柳沢閥の華奢かしゃをさえ、色彩のうすいものにした。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父親がくなると、すっかり羽を延してしまった秀吉は、やくざ者の仲間に入って久離きゅうり切られ、母と妹のお梅は、かなりの財産と一緒に、叔父に当る黒木長者の孫右衛門に引取られましたが、母が続いて亡くなった後は
佐兵衞夫婦は丁度生れたばかりの總領をくして、悲歎にくれて居る時だつたので、そのまゝ總領の乳母を留め置いて彌三郎を育てました。間もなく、めひのお絹を貰つて、跡取娘といふことにしたのです。
願わくは他日れて初心を忘るるなかれ。
将来の日本:02 序 (新字新仮名) / 田口卯吉(著)
僕はれ合いが嫌いだ。僕の手は乾いている。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
はら胸肉むなじゝ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
の腹あをき光をに負ひつつ、
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あはれそのほめきし、えもれゆく
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あはれそのうれひし、しぶく噴水ふきあげ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「抜地獄」と称するこの寮の秘密を、お露はき父から聞いて知っていたのである。
き高阪郡兵衛殿といい、また山県大蔵殿といい、いずれも随分真面目だのう」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女がキャッ! とはね上って、佐伯の背をぐりつけた。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
——その時は一度に人が随分要らなくなったので、とう/\ストライキになって、職工たちが夜中に工場へ押しかけて行って、守衛をブンぐって、そのコンヴェイヤーのベルトを滅茶苦茶にしてしまったことがありました。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
     ぶつ
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
ぶつウ」
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
——からして工面くめんのいゝ長唄ながうたねえさんが、煙管きせる懷劍くわいけんかまへて、かみいれおびからくと、十圓紙幣じふゑんしへい折疊をりたゝんではひつてる……えらい。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宿やど入口いりくち井戸川ゐどがはつて江戸川えどがはをなまつたやうな、いさゝかものしさうなながれがあつた。ふるはしかゝつてた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きいて当然のごとくに長国が不審を強め乍ら言いじった。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
何処どこへいらつしやるのよ。」と彼女がじるやうに云つた。
静物 (新字旧仮名) / 十一谷義三郎(著)
「だ、だん。なにをとんでもねえこと仰っしゃって。あっしゃあ、ごらんの通り、この夏の暑気しょきあたりで、うんうん、高い熱で唸って寝ている始末じゃござんせんか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青木 まず最初、卵が水面に触れたせつを考えましょう。水面の世界では、これが一つの点としか見えません、何しろ、水面より高いところも低い所も見えないのですから。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
正「へい、道理で彼奴あいつはお刀のをいいませんでした」
「余が自慢の犬、天下無敵の雷霆らいていづくる犬を曳いて、あの勝負庭の四隅よすみの柱を三度廻ってまいれ。そしてもとの犬舎いぬやへつないで戻ったら、余の腹立ちもゆるしてやる」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くしの歯を濡して、伝八郎は、近頃めっきり白髪しらがのふえた髪をでつけながら、
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
機嫌を損ねた将軍家の顔いろに恟々おどおどしながら御風呂女中が、衣服を着せ、髪をでつける。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母親はあちらむきになって、きながらいた。
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
やねおほいにし、其家にしとみし、よさゝうにすれば、日中に斗だのばいだのといふ星を見て、大なる光は遮られ、小さなる光はあらはれ、然るべき人は世にかくれ、つまらぬ者は時めき、そして、其戸をうかがへばげきとして其れ人し、三歳覿えず、凶なりといふやうになつてしまふ。
震は亨る (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
中で一寸注意をひいたのは、飯炊めしたきのお三の父親は、根津の大工で、重三郎に借りた金のことから、二年前大川へ身を投げて死に、お三はその借金をし崩しに拂ふために、給料のない一生奉公をさせられるのだといふことでした。
銭形平次捕物控:130 仏敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
単に神の子たるの名称を賜わる事ではない、実質的に神の子と為る事である、即ち潔められたる霊に復活体を着せられて光の子として神の前に立つ事である、而して此事たる現世に於てさるる事に非ずしてキリストが再び現われ給う時に来世に於て成る事であるは言わずして明かである、平和を愛し
地の上に時をみする何物も無きかと歎く草の青めば
註釈与謝野寛全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一切をみせんとせしわが憎み君に及びて破れけるかな
註釈与謝野寛全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
署長は大きな帳面を引き出して、親指の腹をめあげ䑛めあげページっていたが、
つきて見むこことを手もて数へてこれの手鞠を
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
がすふみれ/\がちて明日あす記念かたみ名殘なごり名筆めいひつ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夜、うつくしい魂はいて、
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
だが、見つめていると、あかい一面の雲のような花の層に柔かい萌黄もえぎいろの桃の木の葉が人懐ひとなつかしく浸潤にじみ出ているのに気を取りされて、蝙蝠傘こうもりがさをすぼめて桃林へ入って行った。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「紀州紀州」竈馬こおろぎのふつづかにくあるのみ。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
手に触ると、よし蛇のきぬともらばれ、熱いと云っても月はいだく。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ゑてゆむ湿しめに、
茴香 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
と、明は優しく、人つこい。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあそんならよかつた。私は今裏へ胡瓜を蒔いて置きましたのい。見てゝ御覽なさい。今に芽が出て、だん/″\に延びて行きますけ。去年千葉で澤山らせたでせう。私はこれからあれが大きくなるのを樂しみにして、毎朝出て見ますのい。」
胡瓜の種 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
「ほんにが生きしたごとある!」
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
それが過ぎてくなるといふこと
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「君子には三つのおそれがある。天命を畏れ、長上を畏れ、聖人の言葉を畏れるのである。小人は天命を感知しないのでそれを畏れない。そして長上にれ、聖人の言葉をあなどる。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
劉琦りゅうきは、前の妻ちん夫人の腹であり、次男劉琮りゅうそうは、さい夫人のした子である。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……「どさくさ紛れだ。」「なあに久し振りだから関はない。」などゝ繰り返しながら、ピエロオにつたやうな陰鬱な、悲惨な、それでゐて莫迦に愉快なやうな気持に追はれながら、素直な叔母を付け込むで出放題な文句を能弁に口走つて、
白明 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
緑色素を有する菜類、即ちの類を與へざれば、家鷄は多く不活溌に陷る。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
これをアヌンチヤタの一種近づくべからずるべからざる所ありしに比ぶれば、もとより及ぶべくもあらねど、かの捉へ難き過去の幻影には、最早この身近き現在の形相ぎやうさうしりぞくる力なかりしなり。
「日本家屋には滅多にない秘密の通路でも発見する気だろう」とか「床から壁から天井まで、一尺四方ずつにでも区切って、め廻るように調べて居るだろう」と噂されましたが、事実は大違い、糸子の部屋に籠った花房一郎は、電気蓄音機を聞いたり、新聞を読んだり、煙草たばこを吸ったり、一向取り止めの無い顔をして暮してしまいました。
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ふねがぎいぎいるとあまりいい心地こころもちはしないね
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ここに吾が族といづれか多きといふことを知らむと、かく言ひしかば、欺かえてみ伏せる時に、吾その上を蹈みて讀み度り來て、今つちに下りむとする時に、吾、いましは我に欺かえつと言ひをはれば、すなはち最端いやはてに伏せる鰐、あれを捕へて、悉に我が衣服きものを剥ぎき。
——実際ウイルレム一世のくなつたのは、その一八八八年であつた。
ぐろうと思えば訳は無いけれども、シカシそんな疎暴そぼうな事も出来ない」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「なぜ黙てゐるの。——おや! 立つてこつちへ来てご覧よ。垣根の間から立派なおやしきが見えるよ。さつき赤ん坊のいてゐたおやしきだ。たくさんあかりがついてゐる。随分ひろびろしたお庭だ。もう赤ん坊は欷いてゐない。きつとお乳をんでゐるんだね。」
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
ここにその國主こにきし一二かしこみてまをしてまをさく、「今よ後、天皇おほきみの命のまにまに、御馬甘みまかひとして、年のに船めて船腹さず、柂檝さをかぢ乾さず、天地のむた、退しぞきなく仕へまつらむ」とまをしき。
「あら。アさん、何を言っているのよ。今時急にそんな事……。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
我が希望の湧くところ、我が最後をかくるところ、この故郷こそ我に対して、我が今日の牢獄を厭はしむる者なれ、もしわれに故郷なかりせば、もしわれにこの想望なかりせば、我は此獄室をもて金殿玉楼と思ひしつゝ
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
子曰く、吾一日なんじたちに長ぜるを以て(対えずして)むことなかれ、(なんじたち)つねに則ち(人皆)吾を知らずという、なんじたちを知りて(用うる)あらば則ち何をかさん。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
アカア良オくウアらんで
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ここにそのあらき浪おのづからぎて、御船え進みき。
静坐やゝ久し、無言の妙漸く熟す。暗寂の好味まさに佳境に進まんとする時、破笠弊衣の一老叟らうそうわが前に顕はれぬ。われほ無言なり。彼も唇を結びて物言はず。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「なにしろ早急のことで——」と大野順平が取りすためにおもい口をいた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
二の酉や十二階き空の青
異版 浅草灯籠 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
時に豊玉姫八尋やひろ大熊鰐わに化為りて
「あの男はどうなったかしら」とのうわさ、よく有ることで、四五人集って以前の話が出ると、消えてくなった者の身の上に、ツイ話が移るものである。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
泉のくにの血にけば、
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
お辞儀をして見せても去らぬ。敷台へ前脚をかけ、頻に尾を振り、いた。
蓮花図 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
念吉 いや、もうぢきだ。そうら、向うに門が見える。象のき声が聞えるだらう。まだ起きないでいゝ。
犬は鎖に繋ぐべからず (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
土は枇杷びはいろ はへく。
たまに立止って、どちらへ進もうかと木立の繁みのなかを見廻すのだが、そんな時でも稀に名も知らぬ小鳥が奇妙なき声をするのを耳にとらえるくらいのもので、蝉の声すらもまったく聴えなかった。
植物人間 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
彼は嗚咽き出した。北は何も言へなかつた。
二人の男 (新字旧仮名) / 島田清次郎(著)
紫の包を抱えて、長い柄の蝙蝠傘こうもりがさを持って出て行く後姿が私は好くってらなかったから、いつも其時刻には何喰わぬ顔をして部屋の窓から外を見ていると、雪江さんは大抵は見られているとは気が附かずに
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
同時に堪え難い空腹に襲われかけている事に気が付いたので、傍に落ちていた帯を締め直すや否や、右手を伸ばして、生温かい牛乳の瓶を握りつつ、左手でバタをすくった焼麺麭パンを掴んでガツガツと喰いはじめた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その上へ肉を入れてまた上をジャガ芋で包んでよくらして玉子の黄身を刷毛はけで塗ってバターを中匙一杯位中央まんなかへ載せておいてテンピで二十分ほど焼くのです」玉江嬢「そういうお料理で玉子の黄身を使ったら残った白身を雪のお菓子にしたり今のブランマンチに致しますとちょうどよいのでございますね。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
まじいにあひ見る事のつれなきに
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
四連音符をつゞけ
〔われらが書に順ひて〕 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
昔赤瀬の村に住んでいたやすという者は、すがめのみにくい女であって男に見捨てられ、うらんでこの淵に身を投げて主になった。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
めてまらず、姓名きいてもいはずに。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
鉄の桶でもぶつけられたように、八雲は前へよろめいた。左右からも前からも、途端に、物の具の固い腕が、彼女のよやかな腕くびをつかみあげて、
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もも長に 宿さむを。
また、「まがなしみらくはしけらくさらくは伊豆の高嶺たかね鳴沢なるさはなすよ」(三三五八或本歌)などでも東歌的動律だが、この方には繰返しが目立つのに、鎌倉の歌の方はそれが目立たずに快い音のあるのは不思議である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
やすらかに平準らされしこころは
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
葉子は一人ひとりの男をしっかりと自分の把持はじの中に置いて、それがねこねずみでもぶるように、勝手にぶって楽しむのをやめる事ができなかったと同時に、時々は木村の顔を一目見たばかりで、虫唾むしずが走るほど厭悪けんおの情に駆り立てられて、われながらどうしていいかわからない事もあった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
もしこれらの人かりせば今日の社会は依然たる太古の社会にして、今日の人民はただかのタタールの曠原こうげんに野獣をい、アラビアの砂漠に駱駝らくだを駆るの人民なるべし。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
あたりを片付け鉄瓶てつびんに湯もたぎらせ、火鉢ひばちも拭いてしまいたる女房おとま、片膝かたひざ立てながらあらい歯の黄楊つげくし邪見じゃけん頸足えりあしのそそけをでている。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
篠田は語りつづく「人間のもつとも耻づかしいのは、虚言うそを吐くことです、喧嘩けんくわすることです、まけることです」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
〔譯〕ぜんは必ず事をし、けいは必ず人をづく。歴代れきだい姦雄かんゆうの如き、其ぬすむ者有り、一時亦能く志をぐ。畏る可きの至りなり。
我亡きのち我の無罪を証し給うものは神である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
わたくしが、あんまり青年にしてはさらされ過ぎてると言うと、彼は薩摩絣さつまがすりの着物に片手を内懐に入れて、「十四より酒飲み慣れてきょうの月です」と、それが談林の句であるとまでは知らないらしく、ただこの句のりのような感慨を愛して空を仰いで言った。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
お身の乱暴な矢はその人心におびえを射こみ、動揺を起こし、大事の曙光しょこうに一まつの黒き不安をすってしまった! もし向後こうご渭山いやまの城に妖異のある場合はいよいよ家中の者に不吉を予感さするであろう。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてその間何時も糸は紡ぎ出してゐて、それを二重に——三重に——それをよせ集めてひつつけ、普通の綱のやうにしてひ合はせる。
然るにも拘わらず、まがい物ならぬ本物の印伝皮でめしこしらえた贅沢きわまる煙草入がころがっていましたものでしたから、いかで退屈男の逃すべき!
ある夜眼が醒めて寝がえりをしてみると、人といっしょに寝ているような気がしたが、しかし、これは蒲団がはげて落ちたからであろうと思って、手をやってでてみると、毛がもじゃもじゃと触った。
酒友 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
東京の日比谷公園全体を一大温室にして、中に熱帯地方のパーム類、タコノキ類、羊歯しだ類、蘭類、サボテン類などをはじめとして種々な草木をえ込んで、内部を熱帯地にぞらえ、中でバナナも稔ればパインアップルも稔り
領主 (耳を澄ましながら窓を離れ、高殿に近寄り)、そうだ確かに短ホ調だ、ああ短ホ調がっている。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
奥様はくたぶれて、乾いた草のようにしおれて了いました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
蝉のき声を耳にしながら凝乎じっと断崖の草の上に寝転んで、海を眺めたり空を眺めたり、また横手の墓場に眼をやりながら死んだ妻のことなぞをとりとめもなく考えていることが、その頃の私には一番に楽しい気持がしていたのであった。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「果断より来たる者あり、より来たる者あり、勇より来たる者あり。義と智をあわせてしかして来たる者あるは上なり。いたずらに勇のみなる者し」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その時その帰途、山地の路上広く一面、実に足の踏み入れ処もないほど、上の地耳、すなわち地クラゲが繁殖していた事に出逢ったが、陣々相らび簇々相薄まりそのさかんなることまことに空前の盛観であってよくもかく殖えたものかなと目を瞠らしめた。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
それ見イ、僕は是れで三年配達をつてるが、肩は曲がる、血色はくなる、記憶力は衰へる、僕はツクヅク夜業の不衛生——と云ふよりもむしろ一個の罪悪であることを思ふよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
そのめなめとしたつま先が快よく蹠に当って、座布団と、奈世の全身の重みの間におかれたわしの蹠から次第に精気の様なものが、上へ上へと登って行き、そんな夜はほのぼのとした肌恋しさを覚える。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
孔子対えて曰く、子、政を為すにんぞ殺すことを用いん、子、善を欲せばすなわち民善からん、君子の徳は風なり、小人の徳は草なり、草はこれに風をくわ(加)うるとき必ずす。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
ひだを作るのにを持った女などが、何でもないことで、とりわけ重宝がられた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
更に「し人を殺すをたしなまざる者有らば、天下の民皆くびを引いてこれを望まん、誠にかくの如くんば民のこれに帰するほ水のひくきに就くが如し、沛然はいぜんとして誰かくこれをふせがん」と答えているが
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
然しながら、以上三人のフランスの粗探しが、二世紀に渉って、皮肉混じりの警告を発したって、愛書家の病がそれでおる筈もない。
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
ときにはもう幾度いくたび勝負しやうぶをした揚句あげくつちのついてのこぼれたやつをけづしたりしてあそびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
釣の道でも(岡)とがつくとかろんぜられる。銑吉のも、しかもその岡惚れである。その癖、夥間なかまで評判である。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「くれなゐの八入やしほの衣朝な朝なるとはすれどいや珍しも」(巻十一・二六二三)がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
不圖、旅人は面白い事を考出して、そつと口元に笑を含んだ。紙屑を袂から出して、紙捻こよりを一本ふと、それで紙屑を犬の尾にゆはへつけた。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「そればっかりじゃない。事件ことの起りが三月の十一日じゃろう。それから十二、十三と三日もっとるのに下手人がわからんとは余りにも手ぬるいちゅうて、大目付から矢の催促じゃ」
頭の上にはうまそうな菓物くだもの累々るいるいと枝をたわわに結実っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分ながら何のための「しかし」だかまだ判然せざるうちにこうせんを越されてはいよいよ「しかし」の納り場がなくなる、「しかしあまり人通りの多い所ではエー……アノーまだれませんから」とようやく一方の活路を開くや否や「いえ、あの辺の道路は実に閑静なものですよ」とすぐ通せん坊をされる
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うして又、ヒステリーにったんでしょう。」と、冬子は不意に顔をげた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
学芸にれず、奥妙なる宗教に養はれざる平民の趣味には、謡曲は到底応ずることを得ざるなり。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
頼めば二つ返事で引受けて呉れるとばかり思っていたから、親戚の者が連れて行こうとした時にも、言わでもの広言迄吐いて拒んだのだが、こう断られて見ると、何だか先生夫婦にあざむかれたような気がして、腹が立ってらなかった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
にもこそなれ、其方そなたには
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
んぞ此に在るか? 此れあに久しく留るけんや。すみやかに我に従つて出でよ。」
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ここにその総てを記すことはし得ぬところであるが、各島々に渉り特に変態と思うものだけを摘録する。
本朝変態葬礼史 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
○真に自分と合一し得た者を得たと云う点に於て、自分は、罪と罰の、ロージャを羨む。
「禰宜様宮田」創作メモ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
つぎ硯友社けんいうしやるにいて、第二の動機だうきとなつたのは、思案外史しあんがいし予備門よびもん同時どうじ入学生にふがくせい相識あいしつたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
が、かほおぼえず、をしむらくはかなかつたのは、ちゝのなくなつために血迷ちまよつたばかりでない。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
左大臣がくなったので、右が左に移って、按察使あぜち大納言で左大将にもなっていた玉鬘夫人の弟が右大臣に上った。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
しかかれしばらく一せん銅貨どうくわれてたのでこゝろわづか不足ふそくかんじたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一度門閥の味をめた奴は電信でないと世の中が渡れないと見えて、学校のおかげで不相当の位置を作つたものは再び女房のお庇にすがつて位置を高めやうとする。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
小者こものの事なので、頼朝は、そうかと、気にもかけない容子で、いつもの朝の如く、りんどうの鞍へまたがって、野へ駒を調らしに出た。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに速須佐の男の命、その御佩みはかし十拳とつかの劒を拔きて、その蛇を切りはふりたまひしかば、の河血にりて流れき。
ペツポのをぢは生れつき兩の足痿えたる人なり。
たけなる髪をうしろに結びて、りたるきぬへたる帯、やつれたりとも美貌びばうとはが目にも許すべし。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
来年は、どうでもしてしやすかんない、御隠居様。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「金一郎様逝去き今は?」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
木はあしが風に靡くやうにぎ倒され、人は倒れる家の下に圧しつぶされないやうに気狂ひのやうに野原へ逃げようとしたが、震へる地上に足場を失つて、つまずき倒れた。
そのペン先がいかにも使いらされて、柔かな幅をもっている、平均に力が入って、くっきりとした明晰な書体だが穏和なふくらみの添っているその字は、峯子に正二を思い出させた。
今朝の雪 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
かゝる時、まこと爽かに、いつかは彼もめるべき