)” の例文
酒にへてか、よろめく足元危く、肩には、古ぼけた縞の毛布ケツトをかけていたが、その姿から見ると、くるま夫ででもあろうか。年は女よりは三つばかり年長としかさに見えた。
もつれ糸 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
婦負めひすすきおしゆき宿やど今日けふかなしくおもほイはゆ 〔巻十七・四〇一六〕 高市黒人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
湖水の彼方むこうに連らなるのは信濃の名山八ヶ岳、右手めてに独り聳えているのは富士によく似た立科たてしな山、八ヶ岳おろしが吹くと見え、裾野の枯草皆びき、湖水の水さえ浪立って見える。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
汝生レテ予ノ面ヲ記セズ。死シテ予ノ夢ニ接セズ。王事もろキコトキヲ以テナリトイヘドモ、ソモソモマタ情ノあつまル所骨肉睽離けいりノ感ニ堪ヘザル也。書シテ以テ予ノかなしミヲ記ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
わがやどの尾花押し置く露に手触れ吾妹子わぎもこちらまくも見む (巻十、秋雑)
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
今日けふおもこゝろもらさんか明日あすむねうちうちけんかと、眞實まめなるひとほどこひるし、かるおもひの幾筋いくすぢはされしなるものから、糸子いとここゝろはるやなぎ、そむかずびかずなよ/\として
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ヒョットしたらお勢に愛想あいそを尽かさして……そして自家じぶんの方にびかそうと思ッて……それで故意わざおれを……お勢のいる処で我を……そういえばアノ言様いいざま、アノ……お勢を視た眼付き……コ、コ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
大野おほのが上に空高くびかひ浮ぶ旗雲はたぐもよ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
娓娓びびトシテ聴クベシ。遂ニ交ヲ締ス。既ニシテ余へいニ応ジ来ツテ藩学ヲ督シ兼テ政務ニ参ス。君時ニ過従ス。情好益〻密ナリ。為人ひととなり沈実ニシテ寡言。以テ重事ヲ托スベシ。書ニシテ窺ハザル所シ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大野が上に空高くびかひ浮ぶ旗雲はたぐもよ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)