“彼方”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
かなた44.3%
あちら12.5%
あなた12.3%
あっち10.4%
むこう6.8%
あつち6.0%
むかう1.2%
むかふ0.7%
あち0.6%
あのかた0.6%
(他:34)4.6%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
“彼方”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸80.6%
文学 > フランス文学 > 小説 物語44.2%
文学 > 日本文学 > 小説 物語15.6%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
ぷんびやう遲速ちそく彼方かなた難破船なんぱせんのためには生死せいし堺界わかれめかもれぬ
彼方かなたおと名高なだかきチヤーチの一軍いちぐん華々はな/″\しき勝敗しようはいけつせんことを。
「先程からお座敷ではお待兼でゐらつしやいますさうで御座いますから、すぐ彼方あちらへおいであそばしますやうに」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
誠にわたしもじれッたくって、漸くまア此の位出来ましたが、又材木などが差支さしつかえて…まア彼方あちらへお出で遊ばせ
彼は急に牀几を離れて五六歩いつあしむあし進行すすみゆきしが、彼方あなたよりも見付けて、逸早いちはやく呼びぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お鍋女郎じょろうふすま彼方あなたから横幅よこはばの広い顔を差出さしいだして、「ヘー」とモッケな顔付。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
今住んでいる新町へ去年の五月見に来た時、彼方あっちこっちにある竹やぶの中を歩き、こうまで美に溢れているものかと驚いた。
(新字新仮名) / 宮本百合子(著)
幸「若いしゅ、湯にも這入るだろうが、ゆっくり今夜泊って、旨い物でも食わせるから彼方あっち座敷つぼに居ねえ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そんなことうそよ、だましたってっているわ。」と、くるりと彼方むこういて、していきました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
他の雲は皆んな丸家根を越して、彼方むこうへ彼方へと行ってしまうけれど、あの雲だけが動かずに、じっと音楽堂を見下している。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
嗚呼ああ、私はどうしたら可からう! 若し私が彼方あつちつたら、貫一さんはどうするの、それを聞かして下さいな」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ゆかした……板縁いたえんうらところで、がさ/\がさ/\とおと發出しだした……彼方あつち
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、その引掴ひつつかんで、シイトをやゝとほくまで、外套ぐわいたう彼方むかうげた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
甲田は煙管きせるの掃除をし乍ら、生徒控所の彼方むかうの一學年の教室から聞えて來るオルガンの音を聞いて居た。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
其の彼方むかふに古ぼけた勾配の急な茅屋かややが二軒三軒と飛び/\に物悲しく見えた。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
彼方むかふは真の親切者が握つてゐるのだか狐狸が握つて居るのだが、妖怪変化、悪魔の類が握つてゐるのだか、何だか彼だかサッパり分らない黒闇〻こくあん/\の中を
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ると云っても六畳二室の家、唐紙一重に主人組しゅじんぐみ此方こち、客は彼方あちあたまき合わせである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼方あち此方こちも養蚕前の大掃除おおそうじ蚕具さんぐを乾したり、ばた/\むしろをはたいたり。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
『何だか知らないけれど、可厭な人ですねえ……あらッ、彼方あのかたを御覧なさいよ、可怖こわいわ。』
昇降場 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
ヂュリ そのやうなことをそちしたこそくさりをれ! はぢかしゃる身分みぶんかいの、彼方あのかたひたひにははぢなどははづかしがってすわらぬ。
第一、海及び海の彼方アナタの国土に対する信仰は、すべて、はる/″\と続く青空、及びその天に接するヤマの嶺にウツして考へられて行く様になつた。
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
トヲを出たばかりの幼さで、母は死に、父は疾んで居る太宰府へ降つて、ハヤくから、海の彼方アナタの作り物語りや、唐詩モロコシウタのをかしさを知りめたのが、病みつきになつたのだ。
死者の書 (旧字旧仮名) / 折口信夫釈迢空(著)
彼方こなた正太しようたさんかとてはしり、おつまどんおまへものらば此處こゝでおわかれにしましよ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
正太はあつとも言はず立止まりしままいつもの如くは抱きつきもせで打守るに、彼方こなたは正太さんかとて走り寄り、お妻どんお前買ひ物が有らばもう此処でお別れにしましよ、私はこの人と一処に帰ります
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
僕は碓氷うすいを越す時に——一昨日おとといだ——真実ほんとに寂しかったねえ。彼方あそこまでは何の気なしに乗って来たが、さあ隧道トンネルに掛ったら、旅という心地こころもちが浮いて来た。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼方あそこから私達を見張っている!
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
散々喚かして置いて、もう好い時分と成ッてから、お政が「彼方あッちへ」とあごでしゃくる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「おお、そうだっけ」、と阿母かあさんの奥様は想出したように私の方を向いて、「荷物がまだ其儘でしたっけね。今案内させますから、彼方あッちへ行って荷物の始末でもなさい。雪江、お前一寸ちょっと案内してお上げ。」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
して其の當座、兩人はこツそり其處らを夜歩きしたり、また何彼なにかと用にかこつけて彼方あツち此方こツちと歩き廻ツて、芝居にも二三度入ツた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
流の彼方あツち此方こツちで、うかすると燦爛たる光を放つ……霧は淡い雲のやうになツて川面を這ふ……向ふの岸に若いをんなが水際に下り立ツて洗濯をしてゐたが、正面まともに日光を受けて、着物をしぼしづくは、まるで水晶のやうにきらめく。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
さう云ふ人々の逸話も亦ここ彼方かしこの家庭に殘つてゐる。
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
『この間からいちど訪ねとう思ってな、やっと出向いて来たのじゃよ。いつも御馳走になるで、きょうはさかなだけは持参しようと、芹摘せりつみを始めたが、芹は少い、たでばかりじゃ。赤蓼あかたでが、ほれ、そこにも彼方かしこにも』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茶寮にはのはひり、石いくつ水うつあひだ、彼方そなた見て、もの言ひてます物ごしのあはれ、よくぞ似る妻が母刀自、子らにもけだし。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
彼は郤含はずみを打つて二間も彼方そなた撥飛はねとばさるるとひとし
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あれ彼方あすこに迎ひの車が来てゐまする、とて指さすを見れば軒端のきばのもちの木に大いなるくもの巣のかかりて
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その一つは私が大変赤い着物を着て松茸がりに山に行った、香り高い茸がゾクゾクと出て居るので段々彼方あっちへ彼方へと行くと小川に松の木の橋がかかって居た、私が渡り終えてフット振向とそれは大蛇でノタノタと草をないで私とはあべこべの方へ這って行く
悲しめる心 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
彼方あのはうの學問は始終忠義を主とし、武士となるの仕立にて、學者風とは大いに違ひ申候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
「もう一ツのお召縮緬ちりめんの方におヨ、彼方あのほうがお前にゃア似合うヨ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
西洋人にる進物の見立をして貰ふには、長く居る金田君に限ると思つてね、彼方あツチ此方こツちとブロードウヱーの商店を案内して貰つた帰り、夜も晩くなるし、腹もいたから、僕は何の気なしに
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
例の死霊が善光寺ぜんこうじまいる絵と変って、その途端、女房はキャッと叫んだ、見るとその黒髪を彼方うしろ引張ひっぱられる様なので、女房は右の手を差伸さしのばして
因果 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
と先に立ちて行く後より、高田も入りて見るに、壁の彼方うらにも一室あり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしはこの巨大なる枯樹のあるがために、単調なる運河の眺望が忽ち活気を帯び、彼方かたたの空にかすむ工場の建物を背景にして、ここに暗欝なる新しい時代の画図をつくり成している事を感じた。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
島路を彼方かれかたへ遣わしては如何いかゞとの仰せに助七は願うところとすみやかに媒酌を設け、龜甲屋方へ婚姻の儀を申入れました処、長二郎も喜んで承知いたしたので
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
母「まアお前彼方そっち引込ひきこんで、わしが勘弁出来ぬ、本当なればお隅が先へ立って追出すというが当然あたりまいだが、こういう優しげな気性だから勘弁というお隅の心根エ聞けば、一度は許すが、今度彼様あんな挙動まねエすればぐ追出すからそう思え」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いや彼方をちに 見ゆる家群いへむら
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
彼方をちかた赤土はにふ小屋をやこさめとこさへれぬ身に我妹わぎも 〔巻十一・二六八三〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「あゝあたし彼方アチラから廻る電車に乗りたかつたのに……」
分らないもの (新字旧仮名) / 中原中也(著)