“彼方”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
かなた43.0%
あちら13.6%
あっち12.7%
あなた11.4%
むこう6.7%
あつち5.4%
むかう1.0%
あち0.7%
むかふ0.6%
あのかた0.6%
アナタ0.5%
あそこ0.3%
かしこ0.3%
こなた0.3%
あッち0.2%
あツち0.2%
そなた0.2%
あれ0.1%
あすこ0.1%
あっ0.1%
あのはう0.1%
あのほう0.1%
あツチ0.1%
うしろ0.1%
うら0.1%
かのかた0.1%
かれかた0.1%
そっち0.1%
どなた0.1%
をち0.1%
をちかた0.1%
アチラ0.1%
アヂ0.1%
アーツチ0.1%
オチカタ0.1%
ヲチカタ0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
鯨の屍骸は、狂おしくはやい潮流に乗って、矢のように走り出したのだ。しかも、その方向は、はるか彼方かなたに浮ぶ氷山を目指している。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
「如何です、お差支えなかったら彼方あちらでお茶でも差上げたいと存じますが、ちょっと十五分ばかりお附合いになって下さいませんか」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
じゃアまアわっしと一緒においでなさい、どうせ彼方あっちへ帰るんですからお連れ申しましょう、其の代りお嬢様に少しおねげえがあるんでげす
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ぢや、ねいさんは何方どちらすきだとおつしやるの」と、妹は姉の手を引ツ張りながら、かほしかめてうながすを、姉は空の彼方あなた此方こなたながめやりつゝ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
わきの袋戸棚と板床の隅に附着くッつけて、桐の中古ちゅうぶるの本箱が三箇みっつ、どれも揃って、彼方むこう向きに、ふたの方をぴたりと壁に押着おッつけたんです。……
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
理髮店に歸ると、源助は黒い額に青筋立てて、長火鉢の彼方あつちに怒鳴つてゐた。其前には十七許りの職人が平蜘蛛ひらくもの如くうづくまつてゐる。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
開放あけはなした次の間では、静子が茶棚から葉鉄ブリキの罐を取出して、麦煎餅か何か盆に盛つてゐたが、それを持つて彼方むかうへ行かうとする。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ロミオ なう、しかってくださるな。此度こんどをんなは、此方こちおもへば、彼方あちでもおもひ、此方こちしたへば、彼方あちでもしたふ。以前さきのはさうでかった。
お前さん、あの、うちの耕地の彼方むかふにある森を知つておいでだらう。そしてその森のむかふの、広い草地もおほかたは知つておいでだらう。
ヂュリ そのやうなことをそちしたこそくさりをれ! はぢかしゃる身分みぶんかいの、彼方あのかたひたひにははぢなどははづかしがってすわらぬ。
第一、海及び海の彼方アナタの国土に対する信仰は、すべて、はる/″\と続く青空、及びその天に接するヤマの嶺にウツして考へられて行く様になつた。
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
彼方あそこへ行って金を預けて買出しをすれば大丈夫だと、うち云置いいおいて出て来たまゝ帰ってねえで、もとより家蔵いえくらを抵当にして借りた高利だから、借財方しゃくざいかたから責められ
さう云ふ人々の逸話も亦ここ彼方かしこの家庭に殘つてゐる。その人々の多くは小高い山腹の墓の下に眠つて居る。その家は或はなくなり、或は今に殘つて、其あとの人々を住まして居る。
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
彼方こなたは正太さんかとて走り寄り、お妻どんお前買ひ物が有らば最う此處でお別れにしましよ、私は此人と一處に歸ります、左樣ならとて頭を下げるに、あれ美いちやんの現金な
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
留めれば留めるほど、わめく。散々喚かして置いて、もう好い時分と成ッてから、お政が「彼方あッちへ」とあごでしゃくる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
して其の當座、兩人はこツそり其處らを夜歩きしたり、また何彼なにかと用にかこつけて彼方あツち此方こツちと歩き廻ツて、芝居にも二三度入ツた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
生憎あいにく其方そなたよろめける酔客すいかくよわごしあたり一衝撞ひとあてあてたりければ、彼は郤含はずみを打つて二間も彼方そなた撥飛はねとばさるるとひとしく、大地に横面擦よこづらすつてたふれたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
働き恐れ入り奉つる何卒彼方あれへ入らせらるゝ樣にとふすまを明れば上段に錦のしとねを敷前には簾を垂て天一坊が座を設たりやがて赤川大膳を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それでも母様かあさま私は何処へか行くので御座りませう、あれ彼方あすこに迎ひの車が来てゐまする、とて指さすを見れば軒端のきばのもちの木に大いなるくもの巣のかかりて
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
香り高い茸がゾクゾクと出て居るので段々彼方あっちへ彼方へと行くと小川に松の木の橋がかかって居た
悲しめる心 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
彼方あのはうの學問は始終忠義を主とし、武士となるの仕立にて、學者風とは大いに違ひ申候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
「もう一ツのお召縮緬ちりめんの方におヨ、彼方あのほうがお前にゃア似合うヨ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
西洋人にる進物の見立をして貰ふには、長く居る金田君に限ると思つてね、彼方あツチ此方こツちとブロードウヱーの商店を案内して貰つた帰り、夜も晩くなるし、腹もいたから、僕は何の気なしに
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その途端、女房はキャッと叫んだ、見るとその黒髪を彼方うしろ引張ひっぱられる様なので、女房は右の手を差伸さしのばして、自分の髪を抑えたが、そのまま其処そこへ気絶してたおれた。
因果 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
と先に立ちて行く後より、高田も入りて見るに、壁の彼方うらにも一室あり。畳を敷くこと三畳ばかり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
請出す事もかなはず一日々々と申延置のべおきうち彼方かのかたにては流れ買に賣拂うりはらふと申事に御座候然るに十八ヶ年以前國許くにもとに在し時同家中の新藤市之丞と申者若氣わかげ過失あやまりにて同藩の娘と不義に及びしこと役人共の耳にいり主家しゆかの法に依て兩人とも一命を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
島路を彼方かれかたへ遣わしては如何いかゞとの仰せに助七は願うところとすみやかに媒酌を設け、龜甲屋方へ婚姻の儀を申入れました処、長二郎も喜んで承知いたしたので、文政五午年うまどし三月一日いちにちに婚礼を執行とりおこな
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まアお前彼方そっち引込ひきこんで、わしが勘弁出来ぬ、本当なればお隅が先へ立って追出すというが当然あたりまいだが、こういう優しげな気性だから勘弁というお隅の心根エ聞けば、一度は許すが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ゆるされしかば夫々に改名かいめいして家來分となりにけるまづ紺屋五郎兵衞は本多源右衞門ほんだげんゑもん呉服屋又兵衞は南部權兵衞なんぶごんべゑ蒔畫師の三右衞門は遠藤森右衞門米屋六兵衞は藤代要人ふぢしろかなめと各々改名に及びたり中にも呉服屋又兵衞は武州入間いるま郡川越に有徳うとく親類しんるゐあれば彼方どなたか御同道下さらば金千兩位は出來しゆつたいすべしといふにより山内伊賀亮は呉服屋又兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いや彼方をちに 見ゆる家群いへむら
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
彼方をちかた赤土はにふ小屋をやこさめとこさへれぬ身に我妹わぎも 〔巻十一・二六八三〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「あゝあたし彼方アチラから廻る電車に乗りたかつたのに……」
分らないもの (新字旧仮名) / 中原中也(著)
フン! 他人フト辛口カラグヂきグシマネ自分のめしの上のハイホロガネガ。十年も後家立デデ、彼方アヂ阿母オガだの此方コヂ阿母オガだのガラ姦男マオドコしたの、オドゴトたド抗議ボコまれデ、年ガラ年中きもガヘデだエ何なるバ。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
「今なオコさん、ボーちやが隣り下駄屋から——あれ何言ふか、野球ベース手袋な、あれお主婦カミさに出して貰ふ彼方アーツチ駆けたで。わたし内帰ろ言ふても駆けた、えゝのか。勉強ベーキヨせんで。」
耕二のこと (新字旧仮名) / 中原中也(著)
だから、沖縄とは正反対になつて居るが、海阪ウナザカ彼方オチカタには、神でもあり、悪魔でもある所のものの国があると考へたのが、最初なのだ。
出雲国造神賀詞の「彼方ヲチカタの古川岸、此方の古川岸に、生ひ立てる、若水沼ワカミヌマのいや若えにみ若えまし、スヽぎ振るをどみの水の、いやをちにみをちまし……」
若水の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)