“あれ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:アレ
語句割合
彼女28.9%
26.8%
2.9%
彼男2.4%
彼娘1.9%
彼子1.9%
1.6%
1.6%
1.3%
1.3%
1.1%
彼品1.1%
彼所1.1%
彼金1.1%
暴風1.1%
彼人0.8%
彼犬0.8%
暴風雨0.8%
0.8%
0.8%
那女0.8%
阿礼0.8%
0.5%
彼児0.5%
彼処0.5%
阿禮0.5%
0.5%
0.5%
彼兒0.5%
彼刀0.5%
彼塔0.5%
彼妻0.5%
彼家0.5%
彼時0.5%
彼物0.5%
彼船0.5%
荒廃0.5%
平一郎0.3%
0.3%
0.3%
安礼0.3%
彼方0.3%
花里0.3%
阿連0.3%
一郎0.3%
九女八0.3%
人殺0.3%
0.3%
密書0.3%
0.3%
庫裡0.3%
弾丸0.3%
彼地0.3%
彼壺0.3%
彼嶺0.3%
彼望0.3%
彼札0.3%
彼獣0.3%
彼處0.3%
彼衣0.3%
彼香0.3%
指環0.3%
服礼0.3%
0.3%
欽吾0.3%
渠女0.3%
演説會0.3%
福助0.3%
英子0.3%
荒天0.3%
藤尾0.3%
言葉0.3%
連判状0.3%
那家0.3%
那麽0.3%
鉄砲0.3%
鹿子0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「では、赤橋どの、出陣の式の大床から、すぐそのまま立ち出でます。よろしく留守の事どもを。またおわずらいでも、彼女あれの身を」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれが修業に出た時分は、旦那さんも私もやはり東京に居た頃で、丁度一年ばかり一緒に暮したが……あの頃は、お前、まだ彼が鼻洟はな
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
山はあれ氣味で、吹おろす風が強かつた。道ばたの蕎麥の畑から山鳩が飛んだ。友達は直に身構へた。銃聲が山に響いてこだました。傷ついた鳩は少しさきの豆畑に落ちた。
山を想ふ (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
「きやつはいずれころされることになるであろう。磯五自身のためにも、みなのためにも、彼男あれは一日も早く殺したがよい」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それは勿論もちろん彼娘あれだッて口へ出してこそ言わないが何んでも来年の春を楽しみにしているらしいから、今唐突だしぬけに免職になッたと聞いたら定めて落胆するだろう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
何だとてそばへゆけば、まあ此処へお座りなさいと手を取りて、あの水菓子屋で桃を買ふ子がござんしよ、可愛らしき四つばかりの、彼子あれ先刻さつきの人のでござんす
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其翌日惣内に騙取かたりとらせしをあれ控居ひかへをる藤八がはからひにて金子はのこらず取もどし候間先妻里の不埓ふらちはあれども親類しんるゐ中故右金子の中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今の心のさまを察するに、たとえば酒に酔ッた如くで、気はあれていても、心は妙にくらんでいるゆえ、見る程の物聞く程の事が眼や耳やへ入ッても底の認識までは届かず
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
万葉歌の中にはスミレが出ているから、歌人かじんはこれに関心を持っていたことがわかる。すなわちその歌は、「春のにすみれみにとあれぞ、をなつかしみ一夜ひとよ宿にける」
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
集めて相談さうだんしける中長兵衞心付こゝろづき彼のくすりを猫にくはせてためしけるに何の事もなければ是には何か樣子やうすあるべし我又致方いたしかたあれ隨分ずゐぶん油斷ゆだんあるべからずとて又七を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
足柄あしがら彼面此面をてもこのもわなのかなるしづみあれひもく 〔巻十四・三三六一〕 東歌
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
彼品あれはトレード製の極上品なんだ。解剖刀メスよりも切れるんだから無くなると危険あぶないんだ。鞘に納めとかなくちゃ……」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
から、彼所あれから牛込見附うしごめみつけへ懸ッて、腹の屈托くったくを口へ出して、折々往来の人を驚かしながら、いつ来るともなく番町へ来て、例の教師の家を訪問おとずれてみた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
大勘定おほかんぢやうとて此夜このよあるほどのかねをまとめて封印ふういんことあり、御新造ごしんぞそれ/\とおもして、すゞり先程さきほど屋根やねやの太郎たらう貸付かしつけのもどり彼金あれが二十御座ござりました、おみねみね
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
時ならずして、なれも亦近づく暴風あれ先驅さきがけ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
願ったりかなったりで、この上もない結構な事でございますが、ただ彼人あれに困りますので。一さんは宗近家を御襲おつぎになる大事な身体でいらっしゃる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
パイロットではないだらうか、彼犬あれは臺所のドアが開け放してあるやうなことがあると、ロチスター氏の部屋の敷居しきゐのところまで上つて來るのは珍らしくないのだから。
むかし文覺もんがく荒法師あらほふしは、佐渡さどながされる船路みちで、暴風雨あれつたが、船頭水夫共せんどうかこどもいろへてさわぐにも頓着とんぢやくなく、だいなりにそべつて、らいごと高鼾たかいびきぢや。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あれは小説家だからともに医学を談ずるには足らないと云い、予が官職を以て相対する人は、他は小説家だから重事をたくするには足らないと云って、暗々裡あんあんりに我進歩をさまた
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あめなるやたかきみあれを。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「あヽ、那女あれだ……」と由三の胸は急にさざめき立った。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
阿礼あれの口述を筆録した筈の大安麻呂おおのやすまろの古事記においては、国号の場合にも、また大和一国の場合にも、同じヤマトの語に対して、旧に依りて「倭」の字を用い
国号の由来 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
夫人の変態性へんたいせいがこの手紙を書かせ、夫との夜の秘事に異常な刺戟しげきを与えたというのでした。——私のあれは、最後にこんなことをいたことを覚えています。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ここへ倅が帰って来ると不可いけませんから……。彼児あれは正直者ですから、ひとから嫌疑うたがいを受けて家捜やさがしをされたなどと聞くと、必然きっとおこるに相違ありませんから……。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
毎度馬をこころみて、向島を廻って上野の方にかえって来るとき、何でも土手のような処を通りながら、アヽ彼処あれが吉原かと心付こころづいて、ソレではこのまゝ馬にのって吉原見物をようじゃないかと云出いいだしたら
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
天皇は、當時諸家に傳わつていた帝紀と本辭とが、誤謬が多くなり正しい傳えを失しているとされ、これを正して後世に傳えようとして、稗田ひえだ阿禮あれに命じてこれを誦み習わしめた。
古事記:04 解説 (旧字新仮名) / 武田祐吉(著)
わしあれの片身に田舎へ連れて帰らしておもらい申しますわね。」と、姑も言い出した。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あれ東京こっちで早くこんな店でも出すようにならなけア……。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
カピ長 いや、はやるものははやくづるゝ。すゑたのみをみなからし、たゞ一粒ひとつぶだけのこった種子たね此土このよたのもしいは彼兒あればかりでござる。さりながら、パリスどの、言寄いひよってむすめこゝろをばうごかしめされ。
いや彼塔あれを作った十兵衛というはなんとえらいものではござらぬか、あの塔倒れたら生きてはいぬ覚悟であったそうな、すでのことにのみふくんで十六間真逆まさかしまに飛ぶところ、欄干てすりをこう踏み
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
(……彼妻あれも、母乳ちちが)
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『三、四年振りでしたねえ。矢つ張りずつと彼時あれから東京でしたか?』私は言つた。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『何だい彼物あれは、昌作さん?』と信吾が訊く。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あれよりもずっと立派な五本マストの帆船や大きな汽船が暴風しけくらって避難港をさがしている時でも、彼船あれは平気なんだからね。ところで君は船に乗った経験があるかい?
灰を被ったような古いクロムウェル街の家並は、荒廃あれきって、且つ蜿々えんえんと長く続いている。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「貧乏のせいか何んだか、その平一郎あれの一人前になる日に会われないような気がしきりにしましてね」
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
「それはもうそうでしょうともね。わたしもそういう気のするときはもう何度あったかもしれないけれど、しかしわたしにはまあ、平一郎あれがいたものだからどうにかやっては来たものの——」
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
この歌は宮人曲みやひとぶり二三なり。かく歌ひまゐ來て、白さく、「天皇おほきみの御子二四同母兄いろせの御子をなせたまひそ。もし殺せたまはば、かならず人わらはむ。あれ捕へて獻らむ」
最後いやはてに來ましし大穴牟遲の神、その菟を見て、「何とかも汝が泣き伏せる」とのりたまひしに、菟答へて言さく「あれ淤岐おきの島にありて、このくにに度らまくほりすれども、度らむよしなかりしかば、 ...
あれ、恆は海道うみつぢを通して、通はむと思ひき。然れども吾が形を伺見かきまみたまひしが、いとはづかしきこと」とまをして、すなはち海坂うなさかきて、返り入りたまひき。
ここにわたの神の女豐玉とよたま毘賣の命、みづからまゐ出て白さく、「あれすでに妊めるを、今こうむ時になりぬ。こを念ふに、天つ神の御子、海原に生みまつるべきにあらず、かれまゐ出きつ」
一首の意は、今、参河の安礼あれさきのところをぎめぐって行った、あの舟棚ふなたなの無い小さい舟は、いったい何処にとまるのか知らん、というのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
いづくにか船泊ふなはてすらむ安礼あれさきこぎきし棚無たなな小舟をぶね 〔巻一・五八〕 高市黒人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
働き恐れ入り奉つる何卒彼方あれへ入らせらるゝ樣にとふすまを明れば上段に錦のしとねを敷前には簾を垂て天一坊が座を設たりやがて赤川大膳を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其後そののち又々評定所の白洲をひらかれ以前の如く老中方はじめ諸役人出座ありし時縁側えんがはひかへたる遠州榛原はいばら郡上新田村禪宗ぜんしう無量庵むりやうあん大源和尚だいげんをしやうすゝみ出彼方あれに罷仕る九郎兵衞と申者と何卒愚僧ぐそう掛合かけあひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
花里あれとても素人じゃアなし、多くのお客に肌身をゆるし可愛かわいゝのすべッたのと云う娼妓だ、いくらあゝ立派な口をきゝ、飽まで己らに情をたてると云ってゝも
あれもいや/\海上に連れられてく、イヤ/\仮令たとえつれられて行けばとて無事でいる気遣いはない、花里あれの性質はよッく知っているが、己らを袖にして生きてはいぬ、が
人形がおままごとに参加したのは、遠い対馬つしま阿連あれ村の例はあるが、一般にはずっと新しいことで、今ある姉様遊あねさまあそびに伴うてひろまったものらしい。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そういう中でも特色のあるのは対馬つしま阿連あれ村などに行なわれているという盆の十四日のボンドコであって、トコというのがやはり釜壇かまだんのことであった。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一郎あれは私の妹の子に相違ちがい御座いません。眼鼻立ちが母親に生きうつしで、声までが私共の父親にそっくりで御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だっておめえ団十郎なりたやだって、高田さんにそういったってじゃねえか、九女八あれが男だと、対手あいてにして好い役者だって——だから、お前が、女に生れたってことが
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ちん/\の御立腹とは違って、お顔の色が変ったと思うと、鼻の先でぴか/\サクーリは驚きました、ヘイ、私は始めて人殺あれを見ました、ヌーッというと血がブーッと吹き出しました
「いろいろ御親切に——ありがとうございます。あれも一度はお目にかかってお礼を申さなければならぬと、そう言い言いいたしておりましたのですが——お目にかかりまして本望でございましょう」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「わっしはまた、旦那が密書あれを読んでるのや、阿波の噂をしていたのを、あいつらが聞きとがめたのかと思って、すッかりきもを冷やしてしまいましたよ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「決ってらあな。伊兵衛は八百駒へ行ってて先であれになって借りて来たんだ。杖は荷になると見て預けて出た——どうでえ。」
「久しぶりじゃ、ちと庫裡あれへ。——渋茶なと進ぜよう。」
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(おのれ、不義もの……人畜生にんちくしょう。)と代官婆が土蜘蛛つちぐものようにのさばり込んで、(やい、……動くな、そのざまを一寸でも動いてくずすと——鉄砲あれだぞよ、弾丸あれだぞよ。)
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
同じ下宿するなら、遠方がよいというので、本郷辺へッて尋ねてみたが、どうも無かッた。から、彼地あれから小石川へ下りて、其処此処そこここ尋廻たずねまわるうちに、ふと水道町すいどうちょうで一軒見当てた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
彼壺あれはもうとうのむかしに、司馬道場に婿入りする源三郎の引出ものとして、江戸へ持たしてやってしまった!
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
何でも彼嶺あれさえ越せばと思って、前の月のある朝ひど折檻せっかんされたあげくに、ただ一人思い切って上りかけたのであった。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何か知らんと思いまして同行の人に尋ねますと、彼望あれ
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「だが待てよ、あの高札が惑信の本尊じゃあねえかな。と、彼札あれあ誰が建てた? それに、それに、この御呪文は女筆おんなのてだぞ。ううむ、恨むか、燃えるか、執念の業火だ、いや、こりゃあいかさま無理もねえて。」
早速何かといって尋ねますと彼獣あれはチベット語に「ドンヤク」とて山ヤクという非常に恐ろしいもので大きさは通常のヤクの二倍半あるいは三倍、背の高さはおよそ七しゃく、しかし象ほどはない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
さひはひ、彼處あれゆる白色巡洋艦はくしよくじゆんやうかん、あれは何國いづこ軍艦ぐんかんで、何處どこから何處どこしての航海中かうかいちうかはわからぬが、一應いちおうかのふねたすけをもとめては如何どうだらう。
彼衣あれを取っておくれよ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊に下顎したあごと上顎から二本ずつ曲った美しい牙が出て居る。で麝香じゃこうへそにあるというような説がありますけれどもそうではなく、彼香あれは陰部即ち睪丸こうがんのうしろにふくれ上って付いて居るです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「どうでしょうか、昨日の指環あれは」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああああ、うまうまと入ったわ——女の学校じゃと云うに。いや、この構えは、さながら二の丸の御守殿とあるものを、さりとてはうらやましい。じゃが、女に逢うには服礼あれ利益ましかい。袴に、洋服よ。」
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遼邈之地とほくはるかなるくになほ未だ王沢うつくしびうるほはず、遂にむらに君有り、あれひとこのかみ有り、各自おの/\さかひを分ちて、もつて相凌躒しのぎきしろふ。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
心細いから、欽吾あれがあのまま押し通す料簡りょうけんなら、藤尾に養子でもして掛かるよりほかに致し方がございません。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
有繋さすが渠女あれは約束の妻とも云ひかねて当座のがれの安請合をしたが其後間もなく御当人が第一に失恋を歌ふやうになつてからはプイと何所どこへか隠れて了つた。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
「明日の演説會あれに差支えるから、我ん張らう。」
一九二八年三月十五日 (旧字旧仮名) / 小林多喜二(著)
福助あれがもう来ます時分、ここにいらっしゃると見落しますよ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「私は丸で英子あれのことは構わないでいるものですから、どういう気持ちでいるのだかさっぱり分りませんが、でも此の節は始終橋本さんをお訪ねしているようです。」
運命のままに (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
折々、ひどい荒天あれの日など、妹たちは彼を引き止めようとすることもあつた。その時、彼は一種特別なゑみを浮かべながら、快活といふよりも、寧ろ嚴肅にかう云つた——
藤尾あれも実は可哀想かわいそうだからね。そう云わずに、どうかしてやって下さい」と云う。甲野さんはひじを立てて、手の平でひたいを抑えた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ヘエ! そんな言葉あれがあったのかね。じゃ私も八重ちゃんの洋傘パラソルでも盗んでドロンしちゃおうかなア。」
放浪記(初出) (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ドーブレクは連判状あれを持っていてこそ、力もありますが、あれがなくてはドーブレクの存在がございません。その時、その時こそドーブレクが、哀れな姿となって自滅します。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
『ア、那家あれが小川のうちですね。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『僕は貴女に然う言はれると、心苦しいです。誰だつての際の場処に居たら、那麽あれ位の事をするのは普通あたりまへぢやありませんか?』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
(おのれ、不義もの……人畜生にんちくしょう。)と代官婆が土蜘蛛つちぐものようにのさばり込んで、(やい、……動くな、そのざまを一寸でも動いてくずすと——鉄砲あれだぞよ、弾丸あれだぞよ。)
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
薪に油をそそぐは罪、鹿子あれ鹿子あれでも、その親に、受けた恩義は捨てられぬ。はて困つた、三合の、小糠はなぜに持たなんだと、思はず漏らす溜め息に。ヘヘヘヘヘ旦那御退屈でござりませう。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)