あれ)” の例文
くるしみかろんずるとか、なんにでも滿足まんぞくしてゐるとか、甚麼事どんなことにもおどろかんとふやうになるのには、あれです、那云あゝい状態ざまになつてしまはんければ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其翌日惣内に騙取かたりとらせしをあれ控居ひかへをる藤八がはからひにて金子はのこらず取もどし候間先妻里の不埓ふらちはあれども親類しんるゐ中故右金子の中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まあ君あれを見給へ。そら、復浪が來た。馬がころぶぞ。そうら、……處が輾ばないんだ。矢張平氣で以て進んで來る。僕は今急に函館が好になつたよ。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あれ造物者ざうぶつしやが作ツた一個の生物せいぶつだ………だから立派に存在している………とすりや俺だツて、何卑下ひげすることあ有りやしない。然うよ、此うしてゐるのがう立派に存在の資格があるんだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
まあ君あれを見給へ。そら、復浪が来た。馬がころぶぞ。そうら、……処が輾ばないんだ。矢張平気で以て進んで来る。僕は今急に函館が好になつたよ。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
固めたる人數の篝火かゞりびなるべし此人數は凡そ千人餘ならんとまた一方を見渡し深川新地の端より品川沖まで燈火ともしびの見るは何舟なりやと問ふ大膳あれこそ白魚しらうを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何卒どうぞ閣下かくかこれをおください。』と、ニキタは前院長ぜんゐんちやうまへつて丁寧ていねいふた。『あれ閣下かくかのお寐臺ねだいで。』と、かれさらあたらしくおかれた寐臺ねだいはうして。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
きつと見渡し大いに驚き大膳殿品川宿の方に當り火のひかりみゆるがあれを何とか思るゝやと問へば大膳是を見てあれこそは縁日抔えんにちなどの商人の燈火ともしびならんといふに山内くび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
院長ゐんちやうをはりとひには赤面せきめんして。『いや、あれ病人びやうにんです、しか面白おもしろ若者わかもので。』とこたへた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
那時あのときソラ、貴君の前に「むべ山」があつたでせう? あれが私の十八番おはこですの。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)