“これ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:コレ
語句割合
36.4%
26.2%
10.9%
此女1.7%
此品1.5%
此娘1.3%
此金1.2%
此子0.8%
此人0.7%
0.7%
此処0.6%
0.6%
此者0.4%
0.4%
此刀0.4%
此家0.4%
此事0.3%
此放蕩子0.3%
此方0.3%
此書0.3%
此桶0.3%
此物0.3%
此紙0.3%
此肩0.3%
此裂0.3%
此詞0.3%
此髷0.3%
此児0.2%
此文0.2%
此盃0.2%
0.2%
0.2%
斯道0.2%
此器0.2%
此塔0.2%
此寺0.2%
此村0.2%
此男0.2%
此膝0.2%
此衣0.2%
親指0.2%
0.2%
0.1%
此兒0.1%
此劍0.1%
此薬0.1%
0.1%
家内0.1%
彦吉0.1%
此剣0.1%
此所0.1%
此處0.1%
此銭0.1%
0.1%
三吉0.1%
以上0.1%
0.1%
其薬0.1%
0.1%
商業0.1%
夜具0.1%
奥様0.1%
女房0.1%
0.1%
宗悦0.1%
実にチベット0.1%
少年0.1%
0.1%
0.1%
床間0.1%
彼女0.1%
恋人0.1%
惣吉0.1%
0.1%
0.1%
手巾0.1%
0.1%
指環0.1%
提灯0.1%
0.1%
斯娘0.1%
0.1%
是品0.1%
是娘0.1%
書面0.1%
0.1%
此丸0.1%
此像0.1%
此僧0.1%
此包0.1%
此城0.1%
此堂0.1%
此塩0.1%
此妹0.1%
此婦0.1%
此宮0.1%
此尼0.1%
此川0.1%
此帽0.1%
此店0.1%
此手拭0.1%
此拜0.1%
此板0.1%
此椀0.1%
此業0.1%
此泉0.1%
此皿0.1%
此秣0.1%
此箱0.1%
此臭0.1%
此舌0.1%
此船0.1%
此茶0.1%
此角0.1%
此議0.1%
此遊0.1%
此道0.1%
此音0.1%
此餅0.1%
此馬0.1%
此髯0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
片面0.1%
眉間0.1%
眼鏡0.1%
短艇0.1%
童子0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
貞藏0.1%
軍鶏0.1%
面部0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
国家統治ノ大権ハ朕カこれを祖宗ニケテ之ヲ子孫伝フル所ナリ朕及朕カ子孫ハ将来ノ憲法ノ条章じょうしょうしたがヒ之ヲ行フコトヲあやまラサルヘシ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
これえらい!……畫伯ぐわはく自若じじやくたるにも我折がをつた。が、御當人ごたうにんの、すまして、これからまた澁谷しぶやまでくゞつてかへるとふにはしたいた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はて、なんだ、とおもひながら、こゑけようとして、ひとしはぶきをすると、これはじめて心着こゝろづいたらしく、あらをんなかほげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「何が阿呆あほうかいな? はい、あんた見たいに利口やおまへんさかいな。好年配えいとしをして、彼女あれ此女これ足袋たびとりかえるような——」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
此品これはほんの志ばかりだ……また時が来て屋敷へ帰ることもあったら、相変らず屋敷へ来て貰いたい、此品これだけを納めて下さい
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此娘これ貴下あなた、(と隣に腰かけた、孫らしい、豊肌ぽってりした娘の膝を叩いて、)かんざしへ、貴下、立っていてちょいちょい手をお触りなさるでございます。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と手を合せて伏拝み何所どこの人だか知りませんから心のうちしきりと礼を云い、翌日あしたに成りますると此金これでお米を買うんだと云う
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鉄砲をかつがせたり調練をさせたりして、此子これはなんでも陸軍大将にすると力んでいるのもある。
きとほるやうに蒼白あをじろきがいたましくえて、折柄をりから世話せわやきにたりし差配さはいこゝろに、此人これ先刻さきのそゝくさをとこつまともいもとともうけとられぬとおもひぬ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
助「いゝや今が今というのではありません、行儀を覚えさせるため来月お出入やしきの筒井様の奥へ御奉公にあげる積りですから、これさがるまでゞいんです」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
織「えゝ御家来誠に恐入りましたが、一寸ちょっとお台を……何でも宜しい、いえ/\其様そんな大きな物でなくとも宜しい、これ/\其の包の大きな方を此処これへ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
曰く、犂牛りぎゅうあかくして且つ角よくば、用うることからんと欲すといえども、山川其れこれてんやと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
×「殿様此者これくらい酔って居まして唯詰らねえことを云ってたんで出鱈まえで、唯茫然ぼんやり、変な話なんで、嘘を云ったんで」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
凡ソ事ハ名実相副あいそフヲ貴ブ。これ集ハ則然ラズ。むしろ名ニ反シテ実ニ従フ者ナリ。然リトイヘドモ余コレヲ能クストイフニ非ラズ。願ハクハ学バン矣。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「年に一度しか取り出すことを許されない刀だが、明日はその日だ——誰が此刀これをさすことやら」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「おっと親分、待ってもらおう、饗庭の屋敷は此家これじゃありませんぜ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのエー男女なんにょ同権たる処の道を心得ずんば有るべからず、しばらく男女同権はなしと雖も、此事これは五十百把の論で、先ず之をたきゞ見做みなさんければならんよ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
到底とてもこれに相續そうぞく石油藏せきゆぐられるやうなもの身代しんだいけふりとりてのこ我等われらなにとせん、あとの兄弟けうだい不憫ふびん母親はゝおやちゝ讒言ざんげん絶間たえまなく、さりとて此放蕩子これ養子やうしにと申うくひと此世このよにはあるまじ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
萱門かやもん押破おしやぶつて散々さん/″\下草したくさをおあらしになりましたとこ御胆力ごたんりき、どうも誠に恐入おそれいりました事で、今日こんにち御入来ごじゆらいなんともうもじつ有難ありがたことで、おほきにほまれに相成あひなります、何卒どうぞすみやかに此方これへ/\。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
此書これ有名いうめいなレウィス、キァロルとひとふでつた『アリス、アドヴェンチュアス、イン、ワンダーランド』をやくしたものです。邪氣あどけなき一少女せうぢよ夢物語ゆめものがたり滑稽こつけいうちおのづか教訓けうくんあり。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
手桶てをけをも其處そこ投出なげいだして一つは滿足まんぞくなりしが一つはそこぬけにりけり、此桶これあたゑなにほどからねど、身代しんだいこれがためにつぶれるかのやう御新造ごしんぞ額際ひたへぎは青筋あをすぢおそろしく、朝飯あさはんのお給仕きうじよりにらまれて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
信如は机の引出しから京都みやげにもらひたる、小鍛冶こかぢ小刀こがたなを取出して見すれば、よく利れそうだねへとのぞき込む長吉が顔、あぶなし此物これを振廻してなる事か。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「お前さん此紙これを読んで?……奇態なこともあるもんですね」
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
針目あらはにきぬれて、此肩これに担ぐか見る目もらし、安兵衛はお峯が暇を取らんと言ふにそれは以てのほか、志しは嬉しけれど帰りてからが女の働き、それのみか御主人へは給金の前借もあり
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あれを畳んで立てかけて置けばいにと一々もどかしう歯がゆくは思へども、此処にれが御座んす、此裂これでおすげなされと呼かくる事もせず、これも立尽して降雨袖にわびしきを
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その支度したく朝湯あさゆにみがきげてとしもこほあかつき、あたゝかき寢床ねどこうちより御新造ごしんぞ灰吹はいふきをたゝきて、これ/\と、此詞これ目覺めざましの時計とけいよりむねにひゞきて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かばあしにもとゞくべき毛髮かみを、あがりにかたくつめて前髮まへがみおほきくまげおもたげの、赭熊しやぐまといふおそろしけれど、此髷これ此頃このごろ流行はやりとて良家よきしゆ令孃むすめごあそばさるゝぞかし、色白いろしろ鼻筋はなすぢとほりて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『ハイ。来るにア来ましたども、弟の方のな許りで、此児これ(と顎で指して、)のなは今年ア来ませんでなす。それでハア、持つてなごあんさす。』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
みづから參館あがりて、とはおもへど、少しさゝはる事のありて今日明目自由のきかねば、おはこびの願ひましたきよしをお近のもとまで申おくりける、此文これを受とりたるお近が喜びより
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こう申しては失礼ですが此盃これがおもしろいとはお若いに似ずお目が高い、これは佳いものではないが了全りょうぜんの作で
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一朝これを降せる功これより大なるはなしとて石を刻んで盟を成したと『類函』に『華陽国志』を引いて居るが、かかる猛虎を殺した報酬に石を刻んで盟を成したばかりでは一向詰まらぬ
と云うので手水鉢ちょうずばちのそばで手を洗って居りますると、庭の植込うえごみの処に、はっきりとは見えませんが、頬骨のとがった小鼻の落ちました、眼の所がポコンとくぼんだこれからこれ胡麻塩交ごましおまじりひげが生えて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
誰れに操の独栖ひとりずみぞと問はゞ、斯道これにと答へんつま琴の優しき音色に一身を投げ入れて、思ひをひそめしは幾とせか取る年は十九、姿は風にもたへぬ柳の糸の、細々と弱げなれども
琴の音 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
左様さやうであらう、ソラ此器これ脈搏みやくはくくんだ、うだグウ/\るだらう。登「エヘヽヽヽくすぐつたうござりますな、左様さやうよこぱら器械きかいをおあてあそばしましては。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
奈良や京都はいざ知らず上野浅草芝山内、江戸にて此塔これに勝るものなし、殊更塵土に埋もれて光も放たず終るべかりし男を拾ひあげられて、心の宝珠たまの輝きを世に発出いだされし師の美徳
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
江戸では此寺これに越した場所はありませんでした。
言うまでも無く物寂ものさびた地だが、それでも近い村々に比べればまだしもよい方で、前にげた川上の二三ヶ村はいうにおよばず、此村これから川下に当る数ヶ村も皆この村には勝らないので
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
変なやつだと思いながら、お絃がヒョイとお妙を見ると、悪者と言ったのは此男これのことなのだろうとすぐ気がついたほど、お妙は、真青になって、木の葉が風に吹かれるようにふるえているのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
れははづかしさにおもてあかみて此膝これなるふみとりかくすべきか、づるはこゝろやましければなり、なにかはかくさん。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お上人様の御目にかゝつて三日四日の養生を直〻に願ふて来ましよ、御慈悲深いお上人様の御承知なされぬ気遣ひない、かならず大切だいじにせい軽挙かるはずみすなと仰やるは知れた事、さあ此衣これを着て家に引籠み
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
松「だって体裁きまりが悪くて成らねえんだ、親指これが感附きゃアねえか知ら」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
やがて頭巾を取ると総髪そうはつ撫付なでつけで、額には斯う疵がある、色黒くせい高く、これからこれ一抔いっぱいひげが生えているたくましい顔色がんしょくは、紛れもない水司又市でございますから、親の敵とすぐ討掛うちかかろうと思ったが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今までは何にも言わず辛抱してこれえにこれえて居たけれども、実に辛くてこらえ切れない事が度々たび/\あるよ、察して呉れや
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わし大概てえげえな事があっても父様にめんじてこれえていて、何一つ云った事はがんせん、わしも我儘ものでがんすが、家内うちわで物争いが出来て、おえいを離縁しては
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『ハイ。來るにア來ましたども、弟の方のな許りで、此兒これ(と顎で指して、)のなは今年ア來ませんでなす。それでハア、持つて來なごあんさす。』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『婆さんだつて其通りチャンと生きてゐる。ハヽヽ。兎に角弟の方も今年から寄越すさ。明日あすと明後日は休みで、四日から授業が始まる。その時此兒これと一緒に。』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
(劍に手を掛けて)乃公おれ胡弓こきう此劍これぢゃ、いま足下おぬしをどらせてせう。畜生ちくしゃう調子てうしあはす!
とはいへ、このくすりに、なん效力きゝめかったなら? すれば、明日あすあさとなって、結婚けっこんようでな? いや/\。……それは此劍これが(と懷劍を取り上げ)させぬ。……やい、其處そこにさうしてゐい。
さア/\此薬これをおつけ……此薬これはなよろひそでというて、なか/\売買ばいかひにないくすりだ……ちよいと其処それへ足をおし、けてるから…。乞「はい/\有難ありがたぞんじます。 ...
それ/\……みるか、……あと、あまつたのをおまへげるから此薬これつておかへり。乞「はい/\。主「エーまア血が大層たいそう流れるが、手拭てぬぐひしばらなければけない。乞 ...
幸「今日は其の催促じゃアないよ、の時ぎりでお目にかゝらないから、これが心配して」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
幸「今日はお開帳へまいって、人込で逆上のぼせたから平清ひらせいで支度をして、帰りがけだが、今夜は柳島へ泊るつもりで、近所を通るついでに、これが親方に近付になりたいと云うから、お邪魔に寄ったのだ」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
僅かな金でも……腹アたっちゃアいけない、取ったと云うのではない、是には何か理由いりわけの有る事だろうと思うが、今帰って、家内これやかましく小言を申して居る処で
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はなはだ失礼で何うしたら宜かろうなんて、家内これが云いますから、なに失礼な訳は無い、覚えておとっさんのお手助けに成れば結構だ、鼻緒を縫っておでのようだが、それも時々休みが有るようだ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彦吉これがここにいるために言いにくいのなら彦吉これにはしばらく店の方へ出てもらいましょう、といきり立つのでございます。
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「それにしても彦吉これが幽霊というわけでもあるまいに、なにもお前さんが彦吉までを怖がることもないだろうにね」
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
此剣これのために、父鉄斎とは幽明ゆうめいさかいを異にし、恋人栄三郎を巷に失った不離剣ふりけん……去年こぞの秋以来眼を触れたこともなく
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「サ! 骨をけずってやる。此剣これでヨ、ガジガジとナ……ヘヘヘヘ、来いッ野郎ッ……」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おゝそれからう、コレ伊丹いたみなにみな此所これい。伊「へい/\。登「かみこれだけのお道具だうぐ何日いつにかお集めになつたのだ。伊「へえー、これなんまうすもので。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ナニ心配する事はない、コレ井上ゐのうへ此所これい、ついで其方そのはうつかはすから。井上「有難ありがたうはぞんじますが、何分なにぶん裸体はだかになりますのをはゞかりますで、生憎あいにく今日けふ下帯したおびめてまゐりませぬから。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
只今たゞいま此處これにてのろはるべくもあり、ゆるさるべくもある手前てまへ所行しょぎゃう告發こくはつもし、辯解べんかいつかまつりませう。
領主 この書面しょめんにてそう申條まうしでうあかりったり、情事じゃうじ顛末てんまつをんな死去しきょ報告しらせまた貧窮ひんきうなる藥種屋やくしゅやより毒藥どくやく買求かひもとめてそれを持參じさんし、此處これなるをんなはかなかにて自殺じさつなさん底意そこいまで、明白めいはく相成あひなったわ。
此の通り徳利とくりを提げて来た、一升ばかり分けてやろう別に下物さかなはないから、此銭これで何ぞすきな物を買って、夜蕎麦売よそばうりが来たら窓から買え
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
早「欠伸い止せよ……これは少しだがの、われえ何ぞ買って来るだが、夜更よふけで何にもねえから、此銭これ一盃いっぺい飲んでくんろ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
怖々こわ/″\庭を見る途端に、叢雲むらくもれて月があり/\と照り渡り、す月影で見ると、生垣を割って出ましたのは、頭髪かみは乱れて肩に掛り、頭蓋あたま打裂ぶっさけて面部これからこれへ血だらけになり
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と駈出してにげる途端母親おふくろが止め様としたはずみ、田舎では大きな囲炉裏が切ってあります、上からは自在が掛って薬鑵やかんの湯がたぎって居た処へもろかえりまして、片面これからこれへ熱湯を浴びました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
助「それが間違いで、先刻せんこく三吉これに、親方に願いたい事があるからうちに御座るか聞いて来いと申付けたのを間違えて、親方に来てくださるように申したとの事でございます」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「心臓捕りの」物語は、すなわち以上これで終りである。人工の巨人の運命や、博士と看護婦との成行や、本田捨松の其後に就いては、機会おりを見ていずれ語ることにしよう。要するに夫れは後日ものがたりである。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これつい不便ふべんな事は、其昔そのむかし朝夕あさいふ往来わうらいして文章を見せ合つた仲間の大半は、はじめから文章をもつて身をたてこゝろざしの人でなかつたから、今日こんにちでは実業家じつげふかつてるのも有れば工学家こうがくかつてるのも有る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それから私は左の手でその噛まれた右の足の疵口きずぐちを押えてジーッとして居ると、其薬これが犬に噛まれた時の一番良い薬であると言って、ある老婆は薬を施してくれたから
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
うね/\とうすひかみづすぢかげえない船脚ふなあしなみ引残ひきのこされたやうなのが、あたままるとがどうながくうねり、あし二つにわかれて、たとへば(これ)がよこの(はち)の向合むかひあつて、みづうみなかばりやうしてうか
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「私は東京へ来て、商業これに取り着くまでには、田町で大道に立って、庖丁ほうちょうを売ったこともあるぞえ。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
隅「さ、寒いから夜具これを」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
奥様これ、どこへござらっしゃる。」
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
国に女房子を置放おきぱなしにした罰が一緒に報って来て私は女房これのかの字を受けたと見えて痳病りんびょうと来ました、これがまた二度めの半病床はんどやと来てつことが出来ませんで
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「どんなお子さまでしょうと毎日お噂をしていたんでございますよ。それにどうしましょう、こんなにお可愛くて——これが今日こそ行って見ましょうときかないんでございますよ。」
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
新「奥方心配せんでもよろしい、何も驚く事はありません、宗悦これが無礼を云い悪口たら/\申して捨置きがたいから、一打ひとうちに致したのであるから、其の趣を一寸かしらへ届ければ宜しい」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
実にチベットこれは美術の進歩して居らぬ国であるからこの像などもない人間が作ったもので詰らない遣り方に出来て居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
よって最後の試み、としてたった今、少年これに人を殺させた——すなわち殺された者は、客僧、御身おみじゃよ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あっしも、これのいる前で、一つ皆さんにいてもらいたいです」鶴さんはあおくなって言った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「どうでござんすか。あすこも出て来たきり、これが厭がるもんだで、一向音沙汰おとさたなしで……。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
殿「其の方が久しく参らん内にわし役替やくがえを仰せ付けられて、かみより黄金を二枚拝領した、何うだ床間これにある、悦んでくれ」
梅若七兵衛 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もう毎日のように彼女これが訊くのです。⦅どうして、あなたのお友達はいらっして下さらないのでしょう?⦆ってね。
「分ってるよ、恋人これだろう」
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
母「はい、薬は有ったが惣吉これがにいい付けて置いたら、あわてゝ、包の中へ入れて置いたのを置いてめえりまして」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此頃の明け暮れ思ひを碎くに理由わけあり、花ちらす吹雪の風は此處に憂からねど、嬉しき使ひは此これにのりて來にけり、父は有名の某省次官どの、家は内福の聞え高き
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
世間からは私までが夜叉やしやのやうに謂はれる、私がまた其れが死ぬよりもらかツたんですけれども、これがゐてゝ見りや、貴方、豈夫まさかに別れることも出來ないじやありませんか。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
新さん、手巾これでね、汗を取ってあげるんですがね、そんなに弱々しくおなんなすった、身体から絞るようじゃありませんか。ほんとに冷々ひやひやするんですよ。
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「自分のお金の高が判らないなんて、そんな鈍間のろまなおじさまじゃないでしょう、はっきり正直にいうものよ、これだけはいっていたんでしょう。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「じゃ指環これは、いちど、君のお腹の中をくぐッたの」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「旦那、まことに申しかねますが、提灯これをちょッと持っていて下さいませんか……どうも尾籠びろうなお話ですが、すこし小用がつかえまして……」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
子賤しせんう。君子なるかな、かくのごときの人。魯に君子者無くんば、いずくんぞこれを取らんと。——公冶長篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「私もネ、何を倹約しても斯娘これには掛けたいと思いまして……どうして、貴方、この節では母親おっかさんの言うことなぞを聞きやしません。何ぞと言うと私の方がやりこめられる位です」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その間孜孜ししとして之をつとめば、まさに事として成らざるなかるべし。老禅の一語、実に虚しからざる也、古人学業終身を期せんのみ。汝等深く思うてこれを勉めよ。
洪川禅師のことども (新字新仮名) / 鈴木大拙(著)
それは/\お気の毒なことだ、貴方あなた以前もとはお旗下はたもとかね。乞「いえ/\。主「ンー……南蛮砂張なんばんすばり建水みづこぼしは、是品これ遠州ゑんしう箱書はこがきではないかえ。 ...
『じやあその返事次第、歌舞伎座へ是娘これを連れて、ゆくとしやう。お前の方でも手ぬかりなく』
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
『ウーム、自害したと書面これにはある』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俺か、俺はこれに一ぱいならして賣るのよ。
佃のわたし (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
此丸これが夏あられの降って来る時分に当って、その霰を防ぐところの戦闘用具である。一体チベットにおいては、修験者の事をンガクバ(真言者しんごんしゃという意味)と言うて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
この釈迦牟尼仏はシナで拵えたのでなくって、インドから一旦シナに伝わり、シナからチベットに伝わったので、もと此像これはインドのビシュカッマー(仏工師ぶっこうし)が作ったのでございます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そういう坊主は一体何の役に立つだろうかという疑いが起りましょうが、此僧これがチベットでなかなか要用なんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「それだけがお頼みで今度また帰って来る時にお目に掛りましょう。此包これは全くらぬから」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すなわち此城これはそのいわゆる遊牧民の襲撃を防ぐために備えてある城と見える。そこには税品を取り立てる所もあるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その後ラサ府に着いていろいろの人にくわしく尋ねて見ますと、その時聞いた話が全く事実であったから、ここに此堂これを見た因縁でその奇怪なるお話をいたしましょう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
此塩これは薬にもなるとかで、風邪をひいた時などあるいはその他の病気の時分は、その塩を呑み湯でも飲みますとじきに治ると申して居りますがいかにも妙な薬です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「母もなくなりますし、残っていた養母も去年なくなりました。木からおちた柿のように、ほんとの一人ぼっち——けれど此妹これがいてくれたので……」
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
貴公の方で此婦これの実家へ貰いにけば話も早くまとまって、少しも手間の要らんこっちゃ、見合も何も要らん訳じゃが、何うか
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此宮これはポタラより西少し南に当り、キーチュ河岸かしにある林の中に建てられたる大いなる宮殿である。新たに建てられたところの離宮であって夏の間はいつも此宮ここにお住いなされます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ところが大よろこびでさっそくその事を自分の宅の大蔵大臣に報知した。此尼これは実は前大蔵大臣の内縁の奥様であったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
この川がすなわちマブチャ・カンバブというのでガンジス川のみなもとを成して居る。此川これが南の方に流れて行ってプランというチベットとインドとの国境の山都さんとに流れて行くのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
其毛それでもってこしらえて肩までおおわるところの帽子を一つくれたです。此帽これは新しければ二十五円位、古いのでも棄売すてうりにして十円以上の物であると後で他の人から聞いたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
此店これが拝領地であったとかいうことでありました(並木と吾妻橋との間に狭い通りがあって、並木の裏通りになっている。これは材木町といって材木屋がある)
手拭てぬぐひいか、……ければる……これ/\古手拭ふるてぬぐひしてんな、……ソレ此手拭これしばるがい、アレサかなくつてもいやな、……ければふる手拭てぬぐひるよ……。
是非ぜひ此文これ御覽ごらんなされて、一寸ちよつとなにとかふてくだされ、よう姉樣ねえさま、よう姉樣ねえさま、おねがひ、此拜これ、とて紅葉もみぢはす可憐いぢらしさ、なさけふかき女性によしやうの、此事これのみにてもなみだ價値あたひはたしかなるに
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
長「これ千代、それ道具棚にある糊付板を此処こゝへ持って来い……さ何う云う訳で此板これを道具棚へ置いた」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
甲「うん何だと、何が何うしたと、此椀これを何う致すよ、只勘弁しろたって、泥ぽっけにした物が喰えるかい」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
夫までの道中いやなりいやなり、とても辛棒なりがたきは泥草履つかんで追從の犬つくばひ、それで成りあがりて醫は仁術と勿躰ぶる事穢なし、今は此業これもやめにせん、やめになすべし
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ある神下かみおろし(わが国の修験者やまぶしのごとき者)が此泉これは龍の口であるからこの泉が破裂するとチベット国中が海になってしまう。だから寺を建てて塞いで置かなければならんといったそうです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
どうもしからん奴だて手前は何か気でも違ったか、狂気致したに相違ない、此皿これは一枚こわしてさえも指一本を切るという大切な品を、二拾枚一時いちじに砕くというのは実に怪しからん奴だ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ある宿屋に着いてその宿屋から秣草すなわち小麦わら、麦藁、豆の木などを買うて馬にやらなければならない。ところが此秣これがなかなかチベットでは高価たかいのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「ホイ! こうしちゃアいられねえ。作爺さくじいさんに頼んで、此箱これを預かってもらおうと思って来たんだ」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
此臭これはチベット人にはよい臭いとしてがれて居るのですけれども私共には非常に厭な臭いである。本堂を出ますとその両側にまた堂があっていろいろの仏像が飾ってある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
此舌これは山ヤクの子供の舌であるというて居りましたがそれでもなかなか大きいものである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「おい大変だぞ。此船これ空船からふねなんだ。人っ子一人居やしない」
此茶これはチベットでは非常によくこしらえて居ります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
おほせとほりにまゐりましたらまた以前いぜんみちましたがしやお間違まちがひでは御座ございますまいか此角これ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
女房かみさん料簡れうけんぢやあ、廓外そとて——それこそ新橋しんばしなぞは、近來きんらい吉原よしはらおの大勢おほぜいつてるから——彼處等あすこらつて待合まちあひでもすれば、一番いちばん間違まちがひいとおもつたのだが、此議これまたそのむすめ大反對だいはんたい
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これも日本の子供と同じでその飛び越える間にもし一人が繩に引っ掛かってつまずくと、今度は自分が繩持なわもちになって其繩それを廻すことにして居るです。此遊これは男の子ばかりではない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
此道これは間道であって一体公道を行くには東へ進んで行かねばならんのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
あたかも極楽世界で樹の枝に吹く風の声が正法の声と聞かれるごとく、此音これもやはり仏法の音楽を奏でて居るかのごとく感じて、我が心もだんだんと深い霊妙なる境涯に入りました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
仕方しかたがない……しく此餅これみんなさらんでの……さアうか不味つまらない物だが子供衆こどもしうげてください。
「うむ! たしかにそうだ。源三郎様は、此馬これにめされて、遠乗りに出られたはず」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それで仕方なく立派でもない髯がその時に残りまして今まで存して居るので、此髯これがすなわちチベット土産みやげなんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
鰻飯は西洋料理の媒酌ばいしゃくとなり、西洋料理は金の時計の手引きとなり、これよりかれに移り、一より十に進み、一進また一進、段々限りあることなし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これこれ部屋へやなかるのはたれだ、たれるんだ、これ。」
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
返ラヌ道ト成ヌルコソかなシケレ、セメテこれニテ腹切テ四手しでノ山トヤランノ御供スベシ、急ギ介錯セヨト有シカバ、後見ノ男申様まうすやうハ、合戦ノ御負おんまけハ疑ナシ、敗軍ノ兵ドモ昨日今日引モ切ラズ馳セ参候
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と駈出してにげる途端母親おふくろが止め様としたはずみ、田舎では大きな囲炉裏が切ってあります、上からは自在が掛って薬鑵やかんの湯がたぎって居た処へもろかえりまして、片面これからこれへ熱湯を浴びました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
れから寝ようと思って雨戸を締めようという所へ、土手の生垣を破って出たのは土手の甚藏、頭脳は破れて眉間これからこれへ掛けて血は流れ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちょっと、眼鏡これへ目を当ててごらんなさい。梅ヶ辻から野中の観音のほうへうねっている一筋道を、桃色の日傘でゆくがたの女がありまさ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恐らく誰かが短艇これに乗って、賊から遁がれようとしたのだろう。しかるに不幸にも賊に見つかって鉄砲で撃たれて海へ落ちたのだろう。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「わしは童子これがわるいので何ごとも楽しいとは思いませぬ。」
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)
これ好日こうじつ日あたたかに風さむし
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そいつを、いつだか、黙ってねけなんねえごとがあって、饒舌しゃべったくって饒舌ったくってなんねえのを、これえてこれえていだら、話がたまって、ほっぺた打裂ぶっちあけてしまったのだとや。
再度生老人 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「よっぽど、これへきてるんだ」
円朝花火 (新字新仮名) / 正岡容(著)
斯んなに詳しく家毎人毎に就て調べたのは、実に翁自身も始めてなので、これまで議会や世間へ向て訴へて来た悲惨は、事実の百分一にも足らなかつたことに驚いて仕舞はれた。
大野人 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
男部屋の杉戸をしずかに閉って懐中から出して抜いたのは富五郎を殺害せつがいして血に染まったなり匕首あいくち、此の貞藏があっては敵討の妨げをする一人だから、貞藏これから片付けようというので
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
軍鶏これを寄越せって謂うんですか。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
怖々こわ/″\庭を見る途端に、叢雲むらくもれて月があり/\と照り渡り、す月影で見ると、生垣を割って出ましたのは、頭髪かみは乱れて肩に掛り、頭蓋あたま打裂ぶっさけて面部これからこれへ血だらけになり
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)