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御當人
是は
偉い!……
畫伯の
自若たるにも
我折つた。が、
御當人の、すまして、これから
又澁谷まで
火を
潛つて
歸ると
言ふには
舌を
卷いた。
拜するに目と
頬の間に
凶相顯はれ中々以て
高貴の
相貌にあらず拙者の
勘考には御證據の品は實ならんが
御當人は
贋者なりと決したり依て天下の爲再吟味を
と
言つたと
言ふ——
眞個か
知らん、いや、
嘘でない。
此は
私の
内へ
來て(
久保勘)と
染めた
印半纏で、
脚絆の
片あしを
擧げながら、
冷酒のいきづきで
御當人の
直話なのである。