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御當地
呼二
階へ上り三人
膝を
突合せしに彦三郎は
聲を
潜め御家内樣御聞下されても
相成申さずと
直と
壁の
際へ寄り私は
大坂堂島の彦三郎と申者なるが
昨夜御當地へ
到着致し
未宿も取らず夜の明るを
上我々は上方者にて
御當地に知人もなく
止事を得ず御山内に
住居仕つり候と申立るを大岡
殿呵々と笑はれ
白痴め知人なしとて宿屋もあり
汝等が罪は明白に
知れて居るぞ
江尻に於て
小野田幸之進を
引誘納涼に出し歸り
懸船中より
直に吉原の
燈籠を見物せんと
勸めけるに吉之助は
御當地始めての事なれば吉原は
別して
不案内ゆゑ
堅く
辭退此日は
漸々宿へ歸り番頭傳兵衞に此事を
話ければ傳兵衞
首を