此娘これ)” の例文
「どう致しまして、手前方こそ佐治さんにはいろ/\お世話樣になりまして、此間此娘これの病氣の時も一方ならぬ御厄介を掛けました」
此娘これ貴下あなた、(と隣に腰かけた、孫らしい、豊肌ぽってりした娘の膝を叩いて、)かんざしへ、貴下、立っていてちょいちょい手をお触りなさるでございます。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実は此娘これが嫁入の引出物にといふ積りで、はやくからお願ひ致しましたのですが、これも御覧の通りの妙齢としごろになりました。
親一人子一人、他に頼りのないものでございます、今此娘これを不具に致しましては、明日あすから内職を致すことが出来ませんから、何卒どうぞ御勘弁遊ばして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その奥の座敷では、造酒が、お妙を仲に長庵と対座たいざして、「此娘これが、脇坂殿よりお話のあった——」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それに、忘れていましたけれど、此娘これは近々田舎の親戚へ行くことになっていますし——。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
當主たうしゆ養子やうしにて此娘これこそはいへにつきての一粒ひとつぶものなれば父母ちゝはゝなげきおもひやるべし、やまひにふしたるはさくらさくはるころよりとくに、それより晝夜ちうやまぶたあはするもなき心配しんぱいつかれて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それではお前此娘これの一生も可愛さうだし、また一人ツぽちになつた、私は誰が養ひますえ、お前は今でもたくさん家に、財産ものがあるとお思ひか知らないが、さうさう居喰も出来ないよ。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
近頃手に入し無比の珍品、名畫も此娘これの爲には者數ものかずならぬ秘藏、生附うまれつきとはいへおとなしすぎるとは學校に通ひし頃も、今ことの稽古にても、近所の娘が小言の引合は何時も此家こちらの御孃樣との噂聞に附
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
修「ムヽー……私の姪に当る此のお藤ねえ、日頃貴方の事ばかり誉めて居ますが、少し年は取って居りますけれども、貴方此娘これを貰ってくれませんか」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
當主は養子にて此娘これこそは家につきての一粒ものなれば父母が歎きおもひやるべし、病ひにふしたるは櫻さく春の頃よりと聞くに、夫れよりの晝夜まぶたを合する間もなき心配に疲れて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此娘これも世が世ならばお旗下のお嬢さまといわれる身の上だが、運の悪いというものは仕方がないもので、此のお賤が二歳ふたつの時、其のお屋敷がじきに改易に成ってしまい
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
当主は養子にて此娘これこそは家につきての一粒ものなれば父母がなげきおもひやるべし、病ひにふしたるは桜さく春の頃よりと聞くに、それよりの昼夜まぶたを合する間もなき心配に疲れて
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おりはあゝいう場所でござって、碌々お礼も申上げることが出来んで、屋敷へ帰っても此娘これが又どうか早うお礼に出たいと申しまして、実に容易ならん御恩で、実にかたじけない事で
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とてしたいて歎息たんそくこゑらすに、どうもなんとも、わし悉皆しつかい世上せじやうことうとしな、はゝもあのとほりのなんであるので、三方さんばう四方しはうらちことつてな、第一だいいち此娘これせまいからではあるが
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御当家のお道具係を勤めさえすれば三年で三拾両下さるとは莫大の事ゆえ、それを戴いてわたしを助けたいと申すのを、わたくしも止めましたけれども、此娘これってと申して御当家さまへ参りましたが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は悉皆しツかい世上の事に疎しな、母もあの通りの何であるので、三方四方埓も無い事に成つてな、第一は此娘これの氣が狹いからではあるが、否植村も氣が狹いからで、何うも此樣な事になつて仕舞つたで
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我は悉皆しツかい世上せじやうの事にうとしな、母もあの通りの何であるので、三方四方らちも無い事に成つてな、第一は此娘これの気が狭いからではあるが、いや植村も気が狭いからで、どうもこんな事になつてしまつたで
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)