此品これ)” の例文
此品これさへ頂けば何よりと帶の間から客の名刺をとり出して頂くまねをすれば、何時の間に引出した、お取かへには寫眞をくれとねだる
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此品これはほんの志ばかりだ……また時が来て屋敷へ帰ることもあったら、相変らず屋敷へ来て貰いたい、此品これだけを納めて下さい
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『あの目録にも見える通り、わしの作でも、此品これではないが、他の鉢金を斬っておる、おぬし、口ほどならば、これが斬れぬことはあるまいが』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを二個ふたつばかり買って帰って参りまして何心なく現任大臣に見せますと、此品これにおいもよし、非常に立派だから私にこれを分けてくれまいか。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
と云いつつ立って違いだなに載せて置いたる風呂敷包みとりおろし、結び目といて二束ふたつかねにせし書類かきものいだし、十兵衛が前に置き、我にあっては要なき此品これ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
此品これをとられてしまつてはすぐ食ふことが出来ない、自分と、三人の子供の命のくらは、今自分が座つて居る莚の下にある、生きたいと云ふ一念で、良人をつとは恐しい土蔵破りをまでした、その一念で
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
此品これ、欣々女史の帯とおなじれだそうです。」
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
千「其様そんなに仰しゃったって、慌てゝ不調法が有るといけません、他のお道具と違いまして、此品これが一枚毀れますとわたくし不具かたわになりますから」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私は別にほしい物がござんした、此品これさへ頂けば何よりと帯の間から客の名刺をとり出して頂くまねをすれば、何時いつの間に引出した、お取かへには写真をくれとねだる
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此品これをば汝は要らぬと云ふのか、といかりを底に匿して問ふに、のつそり左様とは気もつかねば、別段拝借いたしても、と一句迂濶うつかり答ふる途端、鋭き気性の源太は堪らず
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
すると、いやもう今日はとても駄目だ明日でないと。その息子のいうにはそれでは此品これはパーサンと言う者が上げたいと言ってよこしたからどうかゲロン・リンボチェにお上げ下さい。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
此品これじゃあないか?」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これ/\ぜんつてな……おしるあつくしてるがい……さア/\おべ/\剰余物あまりものではあるが、此品これ八百膳やほぜん料理れうりだから、そんなに不味まづいことはない、おあがり/\。
此品これをば汝はらぬと云うのか、といかりを底にかくして問うに、のっそりそうとは気もつかねば、別段拝借いたしても、と一句うっかり答うる途端、鋭き気性の源太はたまらず
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まへはどうするかねしくないかとはれて、わたしべつにほしいものがござんした、此品これさへいたゞけばなによりとおびあひだからきやく名刺めいしをとりしていたゞくまねをすれば、何時いつ引出ひきだした
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「さよう此品これは幾ら幾らです。」「そんならこれを私に売って下さるまいか」とこう出かけると「いや値段ねだんまれば売らんこともない。」「それじゃどの位まで負けて下さるか。」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すきでございますから三度も続けて召上る位で、誠に大悦びでいらっしゃいました……此品これは誠に詰らんものでございますが、此のお菓子は東京とうけいから参りましたから何卒どうぞ召上って
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と云ひつゝ立つて違棚に載せて置たる風呂敷包とりおろし、結び目といて二束ふたつかねにせし書類かきものいだし、十兵衞が前に置き、我にあつては要なき此品これの、一ツは面倒な材木きしな委細くはしい当りを調べたのやら
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
はいにもつくしましたが、此品これわたくし秘蔵ひざうでございますから、此品これだけはうも売却はなすことが忌嫌いやでございますから、只今たゞいまもつて麪桶めんつうがはりに傍離そばはなさずに使つてります。
此品これをばやってこの源太が恩がましくでも思うと思うか、乃至ないしはもはや慢気のきざしててんからなんのつまらぬものと人の絵図をも易く思うか、取らぬとあるに強いはせじ、あまりといえば人情なき奴
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
亥太郎さんが此品これを持っていると云うのは不思議でございますな、この煙草入たばこいれは皮は高麗こうらい青皮せいひ趙雲ちょううん円金物まるがなもの後藤宗乘ごとうそうじょうの作、緒締おじめ根附ねつけはちぎれて有りませんが、これは不思議な品で
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
オイオイ此品これでも持って行かねえでどうするつもりだ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
えゝ此品これは(と盆へ載せた品を前へ出し)なんぞと存じましたが、御案内の通りで、下屋敷しもやしきから是までまいる間には何か調とゝのえます処もなく、殊に番退ばんひけからを見て抜けて参りましたことで
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
友「そうとも/\、此品これこそ何よりの証拠、わしが確かに証人でござります」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
れもまた一役ひとやくで、悉皆すっかり出来た処で此品これを持ち、高崎たかさき前橋まえばしの六斎市さいいちの立ちまする処へ往って売るのでございますが、前橋は県庁がたちまして、大分だいぶ繁昌でございまして、只今はなお盛んで有りますが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)