“往来”のいろいろな読み方と例文
旧字:往來
読み方割合
ゆきき42.0%
おうらい37.8%
わうらい6.2%
ゆきゝ4.0%
みち2.8%
ゆきか1.4%
とおり1.2%
おもて0.8%
そと0.6%
いきき0.4%
ゆきかい0.4%
いきかい0.2%
おうれえ0.2%
おおかん0.2%
まち0.2%
まちどおり0.2%
ゆきかえり0.2%
ゆきかよい0.2%
ゆきかよひ0.2%
ゆきく0.2%
ゆきもどり0.2%
ゆさき0.2%
リュウ0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
迫った岡はその辺で谷間たにあいのような地勢を成して、更に勾配こうばいの急な傾斜の方へと続いて行っている。丁度他に往来ゆききの人も見えなかった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あるのことです。わたしは、やはりこうして一人ひとりさびしく往来おうらいうえっていました。けれど、いぬ一ぴきその姿すがたせなかったのです。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おれは時々こんな空想を浮べながら、ぼんやり往来わうらい人音ひとおとを聞いてゐる。が、いつまでたつても、おれの所へは訪問に来る客がない。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何んな類ひの私達の往来ゆきゝでもどちらかのうちの誰でもが気にもしなかつたのであるが、そしてまた私達にしろ平気であつたのだが
とりこにしてある沢山の植木——ほうかえでが、林のように茂っている庭の向うが、往来みちになっていて、そこで、数人の者が斬合っていた。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こう、途絶え途絶え、ちらほらこの処を往来ゆきかう姿は、あたかも様々の形した、切れ切れの雲が、動いて、そのおもてを渡るにひとしい。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
逃げ出すんだ……なんでもいいから俺の云う通りにしなさい。往来とおりに自動車が待たしてあるから、それに乗るんだよ、大急ぎ大急ぎ……
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
あまはげしい往来中わうらいなかではいかず、とつて衆人ひとに立たぬければ不可いかぬから、入口はいりぐち横町よこちやうけ、おもてはうは三四けんの所をこまかい格子作かうしづくりこしらへ、往来おもてはう看板かんばんけました。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それはお困りでございますね。お見受けすれば門附け衆、なるほどこんな寒空に、往来そとを流してはたまりますまい、きっと冷えたのでございましょう」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それがサ……この画をSさんが僕に描いてくれた時分は、お互に山の上に居て、他に話相手も少いしネ、毎日のようによく往来いききしましたッけ。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その恐ろしい山々のつらなりのむこうは武蔵むさしの国で、こっちの甲斐かいの国とは、まるで往来ゆきかいさえ絶えているほどである。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そういっても濃く真っ青に晴れぬいた空の下をからかぜが吹きまくるか、どッちにしても、乾いた、凍てたみちの上の往来いきかいの音が浮足立ってひびくのである。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
あの巨大でっけえ森のある明神さまの、彼処あすこに隠れているのかえ、人の往来おうれえもねえくれえとこだから定めて不自由だんべえ、彼処は生街道なまかいどうてえので、松戸へン抜けるに余程ちけえから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
横筋違よこすじかい往来おおかんば突抜けて行きます。号外と同じ事で、この触声おらびごえの調子一つで売れ工合が違いますし、情婦おなごの出来工合が違いますケニ一生懸命の死物狂いで青天井を向いておらびます。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
というて、往来まちで遊ばせるのはあぶない。ことに、このごろのように石やかわらが飛んで、何どき騒ぎが持ち上がらんともわからんときに、餓鬼どもを道路みちで遊ばせておくのは、よろしくないでな。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
妙にひっそりとした往来まちどおりであって、歩いている人影もまばらである。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もっとも、最初さいしょべつわたくしをおみやまつるまでのはなしわけではなく、時々ときどきおもしては、野良のらへの往来ゆきかえりわたくしはか香花こうげ手向たむけるくらいのことだったそうでございますが、そののち不図ふととしたこと動機どうきとなり
寝床の敷いてある六畳の方になると、東側に六尺の袋戸棚ふくろとだながあって、そのわき芭蕉布ばしょうふふすまですぐ隣へ往来ゆきかよいができるようになっている。
変な音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これなりはずに行くなんて、それはお前かへつて善くないから、矢張やつぱり逢つて、ちやんと話をして、さうして清く別れるのさ。この後とも末長く兄弟で往来ゆきかよひをしなければならないのだもの。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
葦の屋のうなひ処女のおくつきを往来ゆきくと見れば音のみし泣かゆ。
万葉の手古奈とうなひ処女 (新字旧仮名) / 杉田久女(著)
文化のたくは此の島村しまむらにも及んで、粗末ながら小学校のもうけがある。お光八つにもなると路が遠いにつれもないからよせと父母ふたおやの拒むも聞かないで、往来ゆきもどり一里の路を日々弁当さげて通う。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
黒雲の中を往来ゆさきして、手招てまねぎをするのが、遠い処に見えましたとさ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
灯の河の大街アヴェニウを横断したり眠ってる往来リュウを過ぎたり、エッフェルが見えたり見えなくなったり、遠くの町を明るい電車が走っていたりとどまっていたり——とにかくぶうとセエヌを渡って、昼ならば