往来ゆきゝ)” の例文
旧字:往來
何んな類ひの私達の往来ゆきゝでもどちらかのうちの誰でもが気にもしなかつたのであるが、そしてまた私達にしろ平気であつたのだが
江戸の町にいふ店下たなしたを越後に雁木がんぎ(又はひさし)といふ、雁木の下広くして小荷駄こにだをもひくべきほどなり、これは雪中にこのひさし下を往来ゆきゝためなり。
一しきり渡場わたしばへ急ぐ人の往来ゆきゝも今ではほとんど絶え、橋の下に夜泊よどまりする荷船にぶね燈火ともしび慶養寺けいやうじの高い木立こだちさかさに映した山谷堀さんやぼりの水に美しく流れた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
此の裏手はずっと崖になって、くだると谷中新幡随院しんばんずいいんの墓場此方こちらはお馬場口になって居りますから、人の往来ゆきゝは有りません。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これが夏なら街路にはもう人の往来ゆきゝもあろうし、こんな叫び声が聞えたら、あすこ、こゝの別荘からたちまち多勢の人が飛んで来ようが、今は季節外れの十二月で
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
かく、君は瀬川君と師範校時代から御一緒ではあり、日頃親しく往来ゆきゝもして居られるやうだから、君に聞いたら是事このことは一番好く解るだらう、斯う思ひましてね。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
代助はかるはこが、軌道レールうへを、苦もなくすべつてつては、又すべつてかへる迅速な手際てぎはに、軽快の感じを得た。其代り自分とおなみちを容赦なく往来ゆきゝする外濠線そとぼりせんくるまを、常よりは騒々しくにくんだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
午前三時の事だから、人の往来ゆきゝはない。そのうち病院横町の裏へ来ると、一軒の家の高い窓から明りのさしてゐるのが、猩々の目に付いた。それがレスパネエ夫人の住んでゐた第四層屋の窓であつた。
往来ゆきゝしぬ。あさましき物
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
江戸の町にいふ店下たなしたを越後に雁木がんぎ(又はひさし)といふ、雁木の下広くして小荷駄こにだをもひくべきほどなり、これは雪中にこのひさし下を往来ゆきゝためなり。
っては別に往来ゆきゝもない処で、人目にかゝる気遣いはないからというので、是から合図をして藪蔭へくゞり込み
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
嗜好物は、(デーモンス・ネクター)と称ばるゝ酒なり。中世紀前半頃より、陸に城を構へ、往来ゆきゝの旅人を拉して、屋上からその生血を吸ひて餌食となせり。
鬼の門 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
学校の違う間も互に往来ゆきゝはしていたのでいわば親譲りの友人だった。
(前にもいへり)往来ゆきゝみちにも掘あげありて山をなすゆゑ、春雪のこほるにいたれば、この雪の山に箱梯はこばしごのごとくだんつくりて往来のたよりとす。
丈助は忍んで小三郎の跡を躡けてまいり、四辺あたりを見まするとパッタリ往来ゆきゝも絶えました様子ゆえ、うしろから声をかけ
日頃は彼が万十郎達と往来ゆきゝしてさへ、何しろ服部は名うての壮士で懲役へ行くのを自慢にしてゐる人物なんだから——とたいもお葉も好い顔はしなかつたのに
サクラの花びら (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
根岸刑事は相変らず教会の前を往来ゆきゝしながら考えた。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
(前にもいへり)往来ゆきゝみちにも掘あげありて山をなすゆゑ、春雪のこほるにいたれば、この雪の山に箱梯はこばしごのごとくだんつくりて往来のたよりとす。
寒くなると人の往来ゆきゝは少のうなります、酒臭き人の往逢ゆきあう寒さかなという句がありますが、たま/\通る人を見てもめぐみを受けようと思う様な人はさっぱり通りません。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此ふゞきは晴天せいてんにもにはかにおこり、二日も三日も雪あれしてふゞきなる事あり、往来ゆきゝもこれがためにとまること毎年なり。
往来ゆきゝもとよりなし、山国の事でございますから木に当る風音かざおとと谷川の水音みずおとばかりドウードッという。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此ふゞきは晴天せいてんにもにはかにおこり、二日も三日も雪あれしてふゞきなる事あり、往来ゆきゝもこれがためにとまること毎年なり。
頃は向島の花見時、一方口いっぽうぐちの枕橋近辺に其れとなく見張って居りますので、往来ゆきゝの人は立止りますくらい、文治は遥か離れて向島より知らせの来るのを待受けて居ります。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
贔屓というを名にして仕事を云付け、屡々しば/″\往来ゆきゝして親しく出入でいりをさせようとしたが、此方こっちで親しまないので余計な手間料を払ったり、不要な道具を注文したりして恩を
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
向うは往来おうらい三叉みつまたになっておりまして、かたえは新利根しんとね大利根おおとねながれにて、おりしも空はどんよりと雨もよう、かすかに見ゆる田舎家いなかや盆灯籠ぼんどうろうの火もはや消えなんとし、往来ゆきゝ途絶とだえて物凄ものすご
往来ゆきゝも途絶えて物淋しい所へ、大の男がいきなりヌッとあらわれましたので、幸兵衞はぎょっとしてげようと思いましたが、女を連れて居りますから、度胸を据えてお柳をかばいながら
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其の時空は少し雪模様になってひゅう/\と風が吹き往来ゆきゝも止った様子、当今なれば巡査がポカアリ/\廻られて居るから飛込む事は出来ませんが、人通りのないのをさいわい欄干に手を掛けて
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
往来ゆきゝの者は驚きました。