“四辺”のいろいろな読み方と例文
旧字:四邊
読み方割合
あたり96.1%
しへん1.8%
そこいら0.7%
ぐるり0.4%
まわり0.4%
あた0.2%
まはり0.2%
よも0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
武士は四辺あたりをじっと見たがどうしても場所の見当がつかなかった。二人れの男が提燈ちょうちんを持って左の方から来た。武士は声をかけた。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
乗り移るやいな、船頭直に櫓を執り、熟地に向う、漁史膝を抱きて、四辺しへんを眺めながら、昨日一昨日の漁況は如何いかがなりしと問えば
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
それは酔漢よいどれの声でした。静な雪の夜ですから、濁った音声おんじょうはげしく呼ぶのが四辺そこいらへ響き渡る、思わず三人は顔を見合せました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
智恵無しの奴め大鍋おほなべ四辺ぐるりにそれッ位無駄がついてゐるでは無いか、それへ湯を廻して砂糖さへ甘くすれば十人前や二十人は浮いて来よう、何処でも皆なそうするのだお前のとこばかりではない
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
滑稽なことには、系図屋の身体の四辺まわりに、先刻さっきは無かつた暗い隙間がふんだんに散らかつてゐた。そして、肥つた女が振向きもせず物臭さうに薄暗い奥へ歩いて行く姿が見えた。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
櫓は、一杯の明るい日射しを受けて、ぽかぽかと暖かく、四辺あたりには、他に人影が見えなかった。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
冬の日の光は窓の玻璃ガラスを通して教へれた教室の内を物寂しく照して見せる。平素ふだんは何の感想かんじをも起させない高い天井から、四辺まはりの白壁まで、すべて新しく丑松の眼に映つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
また、メルチセデクのことや、雀共のことや、天窓から頭を出すと見える四辺よもの景色のことなど聞くと、屋根裏部屋は面白い所のように思われるのがあたりまえです。