“悪”のいろいろな読み方と例文
旧字:
読み方割合
わる31.7%
にく28.4%
18.4%
あし5.7%
4.8%
あく4.2%
2.1%
わり1.9%
わろ0.5%
にくし0.2%
にくみ0.2%
わるい0.2%
アク0.2%
ワル0.2%
われ0.1%
いずく0.1%
いた0.1%
いたづら0.1%
いや0.1%
0.1%
きらい0.1%
さが0.1%
さがな0.1%
つたな0.1%
はり0.1%
みだ0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
なんでも夜中よなかすぎになると、天子てんしさまのおやすみになる紫宸殿ししいでんのお屋根やねの上になんともれない気味きみわるこえくものがあります。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
非常に素直で内気な、どんな事があつても、余程意地くね悪い人でゝもなければ彼女をにくむことは出来ない程善良な人でありました。
背負ひ切れぬ重荷 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
ときどき手を合せて拝みたい気もちのするのも、しき情慾の奴隷どれいとなって、のたうち廻った思い出のなせる仕業しわざとのみはいえまい。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
すべて、私念わたくしといふ陋劣さもしい心があればこそ、人間ひと種々いろいろあし企画たくらみを起すものぢや。罪悪あしきの源は私念わたくし、私念あつての此世の乱れぢや。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
よもやこの人々が余の詩想を洞見どうけんしはしまいが、たださえ人の注視をわれ一人に集めて往来をって行くのはきまりがるいのに
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わしはその前刻さつきからなんとなくこの婦人をんな畏敬ゐけいねんしやうじてぜんあくか、みち命令めいれいされるやうに心得こゝろえたから、いはるゝままに草履ざうり穿いた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くむべきは吾一ではなくて少年を手伝つた人々である。彼等は彼等の謬見のために二人の将来ある人を葬り去つたことになるのだ。
番新「あらまア、可愛相に、小三さんがあの眼のわりい人を頼んでお金を持たしておまはんの様子を聞きによこしたのかも知れないよ」
けれど、下々の嗜める鱧の皮とあっては聞こえいとわろし、この日よりこの肴を『待宵の鱠』と命名せよ。と仰せられて、ご機嫌なみなみならずうるわしかったと伝う。
にらみ鯛 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
秀次ほの聞給ふて、此山の自滅の時来たるよなど、其にくしみふかゝりしなり
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
人をそねみ人をにくみて、たがいに寸分の余地をのこさず、力ある者は力をつくし、智恵ある者は智恵をたくましゅうし、ただ一片の不平心を慰めんがために孜々ししとして
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
私は、田舎の子の眼に見つめられる事にはなれっ子になって居たので格別間がわるいとも思わなかった。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
師匠ししょうさまがつらつら亀卜きぼく卦面かめんを案じまするに、すなわち、——富岳フガク鳳雛ホウスウマレ、五狂風キョウフウショウジ、喬木キョウボクアクツミイダイテライカル——とござりましたそうです
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御家人仲間で鼻ツマミのワルですッて。私がきいているのは悪名ばかり。顔を見たこともないのです。父のおかげで、お母さんは今の不幸に落ちこんだのだそうです。
まア寺男からおさんの子じゃア有るけれども眞達さんまでもわれえ事にそまりまして、それからおさん此の頃寺で賭博ばくちますと
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この孟子の書の開巻第一には梁恵王りょうけいおうとの問答が収録されているが、その中に「天下いずくにか定まらん」という恵王の問がある。孟子はそれに答えて「いつに定まらん」という。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
甘ったるいかるいくすぐる様な悲しみがいたずらの様に心の中にわき上って来る。うすやみの夕方そうっと誰かの名をよんで見たい様な気もする事もある。
と、乙姫が、いたづららしい微笑を含んで言ふ。
虹色の幻想(シナリオ) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
全く、奥様の為には廻合まわりあわせも好くない年と見えて、何かの前兆しらせのようにいやな夢ばかり御覧なさるのでした。女程心細いものは有ません。それを又た苦になさるのが病人のようでした。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
は悪で判然と明暸に意識された事でありますから、勢い悪の方すなわちきらいな事、いやなもの、は避けるようになるか、もしくはこれを叙述するにしても嫌いなように写します。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、筆のついでに、座中の各自てんでが、すききらい、その季節、花の名、声、人、鳥、虫などを書きしるして、揃った処で、ひとつ……何某なにがし……すきなものは、美人。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下郎は口のさがなきもの。放っておくと、ひとに知られたくないじぶんの密事みそかごとまで喋るようなことになろうとかんがえ、それで、思い切ってこんなことをやらかしたんだろうと……
さても富みておごらぬは大聖おほきひじりの道なり。さるを世のさがなきことばに、三六富めるものはかならずかだまし。
つたなくアントニーとクレオパトラの艦隊は敗北し共にのがれ帰つたが途中アントニーはクレオパトラが死んだといふ偽報ぎほうを聞いて自殺する。女王は時に三十八歳であつた。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
八重「半治はん誠にほめえはりいよう、ほれじゃアまねえよ、ふァたい此家ほゝているに、ほめえがほんなほとをひてや親分ほやぶんまねえよ、小兼ほはねはんにひまになってへえれってえ、ほれじゃア可愛ははひほうだアへえ」
「清明上巳節匆匆。江上花開人悪折。折残千樹稀一紅。絶無歌姫坐画舫。但有行李圧短篷。五月東山兵火発。(中略)金銀仏寺付一炬。荒涼只剰枯林叢。」〔清明上巳節匆匆タリ/江上花開ケバ人みだリニ折ル/折残ス千樹一紅稀ナリ/絶ヘテ歌姫ノ画舫ニ坐ス無シ/ダ行李ノ短篷ヲ
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)