)” の例文
旧字:
よもやこの人々が余の詩想を洞見どうけんしはしまいが、たださえ人の注視をわれ一人に集めて往来をって行くのはきまりがるいのに
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さあそれと聞いてからは、子供心に気味がるくって、その晩などはついに寝られなかった。私の実際に見たのではこんな事がある。
子供の霊 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
俄盲目にはかめくらかんるいけれども、もらつた手拭てぬぐひきず二重ふたへばかりいて、ギユツとかためますと、くすり効能かうのう疼痛いたみがバツタリ止まりました。
やわらかい木のたきぎで炊いたものより堅木かたぎの方が良く出来ます。それに水車でいたお米は水分を含んでいて味もるしえ方もすくのうございます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
またほかの書生がこんな事に出会ったりなどして、如何いかにも気味がるかったから、安値やすくってよかったが、とうとう御免こうむったのであった。
怪物屋敷 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
あだかの字の形とでも言おうか、その中央なかの棒が廊下ともつかず座敷ともつかぬ、細長い部屋になっていて、妙にるく陰気で暗いところだった。
女の膝 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
この度の選挙に既に多数の医師の候補者が現れているのはやや不自然のきらいはありますがるくない現象であると思います。
選挙に対する婦人の希望 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
るいことをして、帰つて来たばかりのところへ、こんな夜更けによび出されるのを不審に思つた、不安心な様子でした。
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「うす気味のるい色をして、こわばった顔をしていました。そして私が近寄って行くと、急に、かくれてしまうのでした」
黄色な顔 (新字新仮名) / アーサー・コナン・ドイル(著)
これはあたくしの父が、幼いころの気味のるかったことという、談話はなしのおりにききましたことです。場処は通油町とおりあぶらちょうでした。
人魂火 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
常々心臓がるくて近年は家から一歩も出ない主人である。この寒さに麻痺まひでもおこしてたおれているのではなかろうか——常にはこの不安があった。
(新字新仮名) / 楠田匡介(著)
また昨十一年には一高旅行部の浜田君の一行が藤原から水長沢を遡って之に登られた。此路は水長沢がるい谷で、一日に登り詰めることは不可能である。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
彼は東京のH大学の文科にいたころから、演劇サークル員だったが、二年前肺をるくして郷里にかえり、それからずッと文化団体支部員で働いていたのだ。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
『こちらへてから床几しょうぎこしをかけるのはこれがはじめてじゃが、なかなかるい気持きもちいたさんな……。』
彼はこの頃、持病の不眠症がこうじた結果、頭が非常にるくなっている事を自覚していた。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
良ッちゃんが、あんな男の嫁さんになるかと、思うただけで、背中がゾコゾコッとするわ。蜈蚣むかでと、蚯蚓みみずと、毛虫とが、一緒に襟元に飛びこんだみたいよ。おう、気色きしょくる。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
と大江山課長は自分のことが問題にされているんだと早合点はやがてんして、きまにいった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼も初めての事なので、薄気味るく、うとうとしていると、最早もう夜も大分更けて、例の木枯こがらしの音が、サラサラ相変らず、きこえる時、突然に枕許まくらもとの上の呼鈴べるが、けだだましく鳴出なりだしたので
死体室 (新字新仮名) / 岩村透(著)
始終うちを外の放蕩三昧ほうとうざんまい、あわれなかないを一人残して家事の事などはさら頓着とんじゃくしない、たまに帰宅すれば、言語もののいいざま箸のろしさてはしゃくの仕方がるいとか、琴を弾くのが気にくわぬとか
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
その時ばかりは、そんな気が少しも出ない、何というてよいか、益々ますます薄気味がるいので、此度こんどは手で強く払って歩き出してみた、が矢張やっぱり蝶は前になり後になりして始終私の身辺に附いて来る
白い蝶 (新字新仮名) / 岡田三郎助(著)
ナポリ、ポンペイ等の記事も同様である。それ等の郵便を予自身に郵便局へおもむいてさし立てなかつたのが過失であつた。人気にんきるいナポリの宿の下部ギヤルソンに托しために故意に紛失ふんじつされたのであつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「それはそれは、遅くなって御免ごめんなさい、何しろこんな所へ居なすっちゃ、身体からだるいから私が背負しょって行ってうちへ帰りましょう」といいながら、手に持っていた、薬瓶くすりびんをその岩の上に置いて
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
可哀さうに私だつてまだ気が狂ふには間があります、なにね清さん詰まらない事なのよ、そりやあさうと清さん今夜は別に用がないならゆっくり遊んでおいでなさいなと、さすがにきまるげな処へ
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ああ私は遂に第四階級の偏見に囚われてしまった。けれども Into the people と云う言葉を熱愛する私には致し方がない。第四階級の文学は意地るでもあれば、気狂じみても居る。
第四階級の文学 (新字新仮名) / 中野秀人(著)
と、アンドレイ、エヒミチはるかったとうような顔付かおつきう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ところが、その延長で舞台でも眠るる癖がありました。
(新字旧仮名) / 喜多村緑郎(著)
ありし雛遊ひなあそびのこゝろあらたまらずあらたまりし姿すがたかたちにとめんとせねばとまりもせでりやうさん千代ちいちやんと他愛たあいもなき談笑だんせふては喧嘩けんくわ糸口いとぐち最早もう来玉きたまふななにしにんお前様まへさまこそのいひじらけに見合みあはさぬかほはつ二日目ふつかめ昨日きのふわたしるかりし此後このご
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この弟は学校で、おれに代数と算術を教わる至って出来のわるい子だ。その癖渡くせわたりものだから、生れ付いての田舎者よりも人がるい。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
牛を飼っても食物がるければ牛乳の質が粗悪になる。馬を飼っても豚を飼っても食物の良否でその体質が変化する。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
新「だって、きまりがりいな、これはほんの私の心許りでございますから、貴方あとでお茶請ちゃうけでも買って下さいまし」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ここも同じく、人の手のはいった様子がないので、草やつる伸放題のびほうだい、入って行くのも一寸ちょっと気味がるいほどであった。
怪物屋敷 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
「あの塔の光りが何んだか、見届けていらつしやい。もしる者でもゐたら、これで打つておしまひなさい」
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
娘はついにその俳優やくしゃたねを宿して、女の子を産んだそうだが、何分なにぶんにも、はなはだしい難産であったので、三日目にはその生れた子も死に、娘もそののち産後の日立ひだちるかったので
因果 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
無言だまっていろと口をかためられたのですから、薬売りは一人で気味るがりながら、そのうちまことにはないようと祈ったり、そんな馬鹿馬鹿ばかばかしいことがありようはないと思ったりして
糸繰沼 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その晩中、気色るそうにしていたが、翌朝あくるあさは、何時いつものように働いていた。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
蝶は人の霊魂たましいであるというようなことが、深く頭脳にあったので、何だか急に神経が刺戟されて、心臓の鼓動も高ぶった、自分は何だか気味のるいので、すそのあたりを持って、それを払うけれど
白い蝶 (新字新仮名) / 岡田三郎助(著)
何となく陰気なところで、静かな夜に、隣室から、苦しそうな病人の呻吟うめきごえが聞えてきたり、薄暗い廊下を白い棺桶が通って行ったりして、まことに気味のるいものだが、弟はその病院の二階にある解剖室で
死体室 (新字新仮名) / 岩村透(著)
私が弟への手紙のはしに書きつけやり候歌、なになればろく候にや。あれは歌に候。この国に生れ候私は、私らは、この国をで候こと誰にか劣り候べき。物堅き家の両親は私に何をか教へ候ひし。
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「ウフッ。気色のりい……ホントかいそれあ」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
るい事なんか為てはかんよ。』
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
それから英語の教師に古賀こがとか云う大変顔色のるい男が居た。大概顔のあおい人はせてるもんだがこの男は蒼くふくれている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ソーダ松魚の中でもマンダラというのは一層血身が多くって味のるいものです。魚屋は両方ともソーダ松魚といって売りますけれども味は大層違います。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
わっち初音屋はつねやにいる安てえ者ですが、此の土地にいて親方を知らねえと云うのは本当に外聞げえぶんりいくれえのもので、吉原でも日本橋でも何処の川通りだって
三軒が皆とおしのようになっていて、その中央なかの家の、立腐たちぐされになってる畳の上に、木のちた、如何いかにも怪し気な長持ながもちが二つ置いてある、ふたは開けたなりなので、気味なかのぞいて見ると
怪物屋敷 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
口のるい、うはさの好きな人達は
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
中にはおれより背が高くって強そうなのが居る。あんな奴を教えるのかと思ったら何だか気味がるくなった。名刺めいしを出したら校長室へ通した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのほか色々のお料理に出来ますけれども食べ慣れないお方は気味をるがって召上らないようです。西洋人は一週間に一度お薬のつもりで食べる人が多いそうです
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
飯「そんな事を云うと孝助がるがります、孝助折角の思召おぼしめし、御免をこうむって此方こちらへ来い」
下女はるいところへぶつかった。愛嬌が退いて不安が這入る。愛嬌が附焼刃つけやきばで不安が本体だと思うのは偽哲学者である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と云われて丈助はきまりにオズ/\しながら這入って参り