木暮理太郎
1873 〜 1944.05.07
“木暮理太郎”に特徴的な語句
平
併
跟
眠
充
渉
禾本
顕
此処
瞰下
絶巓
可
其
其処
稍
幽
然
又
此
夫
匐
蔓
踰
及
誤
纔
可
中
搦
唯
覓
復
筋斗
其度毎
極
凭
攫
圭角
已
靄
竦
趁
能
了
流
許
尚
以
許
唯
著者としての作品一覧
秋の鬼怒沼(新字新仮名)
読書目安時間:約32分
大正九年十月十日。松本善二君と倶に、午前五時五分発の列車にて上野駅出発、九時二十七分日光着。馬返まで電車に乗り、午後二時三十分中禅寺湖畔、三時五十分湯元。板屋に泊る。 日光の町から …
読書目安時間:約32分
大正九年十月十日。松本善二君と倶に、午前五時五分発の列車にて上野駅出発、九時二十七分日光着。馬返まで電車に乗り、午後二時三十分中禅寺湖畔、三時五十分湯元。板屋に泊る。 日光の町から …
朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
寝覚の耳元へいきなりザアと大雨の降るような谷川の音が聞えた。目を開けると暁の色はまばらに繰り寄せた雨戸の間を洩れて、張り換えた障子に明るく映っている。宵の内に迷い込んだものと見えて …
読書目安時間:約26分
寝覚の耳元へいきなりザアと大雨の降るような谷川の音が聞えた。目を開けると暁の色はまばらに繰り寄せた雨戸の間を洩れて、張り換えた障子に明るく映っている。宵の内に迷い込んだものと見えて …
後立山は鹿島槍ヶ岳に非ざる乎(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
後立山という名は、黒部川の峡谷を隔てて立山の東に連亙している信越国境山脈中の一峰として、夙くから地誌地図等に記載され、一個の山体として取り扱われていたらしいにも拘わらず、元来が越中 …
読書目安時間:約16分
後立山という名は、黒部川の峡谷を隔てて立山の東に連亙している信越国境山脈中の一峰として、夙くから地誌地図等に記載され、一個の山体として取り扱われていたらしいにも拘わらず、元来が越中 …
美ヶ原(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
筑摩山脈の武石峠が日本アルプス殊に北アルプスの好展望地であることは、『山岳』五年三号の附録中村清太郎君筆の「冬季信州武石峠より望める日本アルプス略図」に依って世に紹介されてから、山 …
読書目安時間:約8分
筑摩山脈の武石峠が日本アルプス殊に北アルプスの好展望地であることは、『山岳』五年三号の附録中村清太郎君筆の「冬季信州武石峠より望める日本アルプス略図」に依って世に紹介されてから、山 …
越中劒岳(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
日本アルプスの大立物の中で、最後に登られてしかも今でも最も人気を集めている山は、恐らく立山連峰の劒岳であろう。この山は古来登山者絶無と称せられ、望見した姿も断崖と絶壁とで成り立った …
読書目安時間:約10分
日本アルプスの大立物の中で、最後に登られてしかも今でも最も人気を集めている山は、恐らく立山連峰の劒岳であろう。この山は古来登山者絶無と称せられ、望見した姿も断崖と絶壁とで成り立った …
大井川奥山の話(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
赤石山系の二大山脈即ち白峰山脈と赤石山脈とは、其北端に位する鳳凰山塊と共に、日本南アルプスと呼ばれている。此等の山脈は北アルプスと呼ばれている飛騨山脈よりは、概して高さに於て優って …
読書目安時間:約20分
赤石山系の二大山脈即ち白峰山脈と赤石山脈とは、其北端に位する鳳凰山塊と共に、日本南アルプスと呼ばれている。此等の山脈は北アルプスと呼ばれている飛騨山脈よりは、概して高さに於て優って …
奥秩父(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
秩父という名が大宮を中心とした所謂秩父盆地に限られていた時代には、武甲山や三峰山などが秩父の高山であるように思われていたのも無理ではない。今から約百年前の文政七、八年頃に出来上った …
読書目安時間:約11分
秩父という名が大宮を中心とした所謂秩父盆地に限られていた時代には、武甲山や三峰山などが秩父の高山であるように思われていたのも無理ではない。今から約百年前の文政七、八年頃に出来上った …
奥秩父の山旅日記(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間9分
私が始めて秩父の山々から受けた最も強い印象は、其色彩の美しいこと及び其連嶺の長大なることであった。水蒸気の代りに絹針でも包んだような上州名物の涸風が、木の葉色づく十月の半過ぎから雪 …
読書目安時間:約1時間9分
私が始めて秩父の山々から受けた最も強い印象は、其色彩の美しいこと及び其連嶺の長大なることであった。水蒸気の代りに絹針でも包んだような上州名物の涸風が、木の葉色づく十月の半過ぎから雪 …
尾瀬雑談(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
尾瀬の記事は既に書き尽されてあるから、この上の剰筆は真に蛇足であるに過ぎないが、敢て二、三の見聞をここに載せることにした。尤も雑談に花を咲かせる程の興味あるものでないことは予め御承 …
読書目安時間:約7分
尾瀬の記事は既に書き尽されてあるから、この上の剰筆は真に蛇足であるに過ぎないが、敢て二、三の見聞をここに載せることにした。尤も雑談に花を咲かせる程の興味あるものでないことは予め御承 …
尾瀬の昔と今(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
尾瀬の名は『会津風土記』に「小瀬峠陸奥上野二州之界」又は「小瀬沼在会津郡伊南郷縦八里横三里」として載っているのが古書に見られる最初である。此書は寛文六年に編纂されたもので、これに先 …
読書目安時間:約16分
尾瀬の名は『会津風土記』に「小瀬峠陸奥上野二州之界」又は「小瀬沼在会津郡伊南郷縦八里横三里」として載っているのが古書に見られる最初である。此書は寛文六年に編纂されたもので、これに先 …
思い出す儘に(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
陸地測量部で輯製二十万分一の地図を発行するようになったのは、『陸地測量部沿革誌』に拠れば明治十七年からで、これは伊能図を基礎とし、各府県調製の地図を参酌校訂して、全国の地図を作り、 …
読書目安時間:約11分
陸地測量部で輯製二十万分一の地図を発行するようになったのは、『陸地測量部沿革誌』に拠れば明治十七年からで、これは伊能図を基礎とし、各府県調製の地図を参酌校訂して、全国の地図を作り、 …
釜沢行(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
都門の春はもう余程深くなった。満目の新緑も濁ったように色が濃くなって、暗いまでに繁り合いながら、折からの雨に重く垂れている。其中に独り石榴の花が炎をあげて燃えている火のように赤い。 …
読書目安時間:約24分
都門の春はもう余程深くなった。満目の新緑も濁ったように色が濃くなって、暗いまでに繁り合いながら、折からの雨に重く垂れている。其中に独り石榴の花が炎をあげて燃えている火のように赤い。 …
嘉陵紀行(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
『嘉陵紀行』は徳川幕府の頃、三卿の一であった清水家の用人村尾正靖の著である。号を嘉陵と称した所から其記行文集を『嘉陵紀行』と唱えるが、実は後人の名付けたものである。非常に旅行が好き …
読書目安時間:約5分
『嘉陵紀行』は徳川幕府の頃、三卿の一であった清水家の用人村尾正靖の著である。号を嘉陵と称した所から其記行文集を『嘉陵紀行』と唱えるが、実は後人の名付けたものである。非常に旅行が好き …
木曾御岳の話(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
今日は懐古の夕だそうですから思いきり古い話をすることにしますが、私の古い山旅はただぶらぶら歩いていたのみで日記さえもつけない、ですから忘れてしまった方が多いのは残念ですが、しかし何 …
読書目安時間:約15分
今日は懐古の夕だそうですから思いきり古い話をすることにしますが、私の古い山旅はただぶらぶら歩いていたのみで日記さえもつけない、ですから忘れてしまった方が多いのは残念ですが、しかし何 …
木曽駒と甲斐駒(新字新仮名)
読書目安時間:約51分
矧川志賀先生の『日本風景論』(第三版)を読まれた人は、日本には火山岩の多々なる事という章の終りに、附録として「登山の気風を興作すべし」という一文が添えてあることを記憶されているであ …
読書目安時間:約51分
矧川志賀先生の『日本風景論』(第三版)を読まれた人は、日本には火山岩の多々なる事という章の終りに、附録として「登山の気風を興作すべし」という一文が添えてあることを記憶されているであ …
北岳と朝日岳(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
日は忘れたが明治二十六年の八月であった、初めて木曾の御岳に登った時、兼てこの山は高さ一万七百尺、日本第二の高山であると地理書で教えられ、又近所の御岳講の講中で登山したことのある人の …
読書目安時間:約17分
日は忘れたが明治二十六年の八月であった、初めて木曾の御岳に登った時、兼てこの山は高さ一万七百尺、日本第二の高山であると地理書で教えられ、又近所の御岳講の講中で登山したことのある人の …
金峰山(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
秩父山塊の金峰山は、私の古い山旅の朧げな記憶の中では、比較的はっきりしている方である。此山の名を知ったのは小学校の何級であったか忘れたが、何でも暗射地図で甲州の北境に栗の毬殻に似た …
読書目安時間:約5分
秩父山塊の金峰山は、私の古い山旅の朧げな記憶の中では、比較的はっきりしている方である。此山の名を知ったのは小学校の何級であったか忘れたが、何でも暗射地図で甲州の北境に栗の毬殻に似た …
黒部川奥の山旅(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間33分
大正四年七月二十四日午後七時三十分、汽車にて上野発。翌朝九時二十分、魚津着。少許の準備と昼食の後十一時三十分、出立。暑さ甚し。途中屡々休憩して、午後二時三十分、前平沢。此処にて人夫 …
読書目安時間:約2時間33分
大正四年七月二十四日午後七時三十分、汽車にて上野発。翌朝九時二十分、魚津着。少許の準備と昼食の後十一時三十分、出立。暑さ甚し。途中屡々休憩して、午後二時三十分、前平沢。此処にて人夫 …
黒部川を遡る(新字新仮名)
読書目安時間:約44分
我国の一大峡流である黒部川の全貌が完全に世に紹介されるに至ったのは、誰が何と言っても、これは立山後立山両山脈の山々と其抱擁する谷々とに限りなき興味を有し、就中立山連峰と黒部峡谷とを …
読書目安時間:約44分
我国の一大峡流である黒部川の全貌が完全に世に紹介されるに至ったのは、誰が何と言っても、これは立山後立山両山脈の山々と其抱擁する谷々とに限りなき興味を有し、就中立山連峰と黒部峡谷とを …
黒部峡谷(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
地質学者の説に拠ると、今日普通に日本北アルプスの名で広く世に知られている飛騨山脈は、凡南十度西より東十度北即ち南南西から東北東に向って並走して居る数条の連脈から成っているということ …
読書目安時間:約26分
地質学者の説に拠ると、今日普通に日本北アルプスの名で広く世に知られている飛騨山脈は、凡南十度西より東十度北即ち南南西から東北東に向って並走して居る数条の連脈から成っているということ …
高原(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
八ヶ岳の裾野ほど高原に富んでいる所は、火山の多い我国にも稀であろうと思う。殊に蓼科山あたり迄を引括めた八ヶ岳火山群となれば、恐らく他に之と比肩す可きものはあるまい。井出ノ原や念場ヶ …
読書目安時間:約10分
八ヶ岳の裾野ほど高原に富んでいる所は、火山の多い我国にも稀であろうと思う。殊に蓼科山あたり迄を引括めた八ヶ岳火山群となれば、恐らく他に之と比肩す可きものはあるまい。井出ノ原や念場ヶ …
古図の信じ得可き程度(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
古図を閲覧するに当りて何人も抱く可き疑問は、其図が輯製の当時既に知られたる事実を、果して如何程まで広く採録せりや否やといえることなる可し。ここに所謂古図とは主として徳川時代に出版さ …
読書目安時間:約8分
古図を閲覧するに当りて何人も抱く可き疑問は、其図が輯製の当時既に知られたる事実を、果して如何程まで広く採録せりや否やといえることなる可し。ここに所謂古図とは主として徳川時代に出版さ …
鹿の印象(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
大井川奥の田代から入って三伏峠まで、十数日に亙る南アルプスの縦走を企てたことがある。大正三年の夏で、その二年前に友の一人が初めてこの山行を試み、雨の為に散々に悩まされた話を聞いてい …
読書目安時間:約7分
大井川奥の田代から入って三伏峠まで、十数日に亙る南アルプスの縦走を企てたことがある。大正三年の夏で、その二年前に友の一人が初めてこの山行を試み、雨の為に散々に悩まされた話を聞いてい …
四十年前の袋田の瀑(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
勿来関趾をたずね、鵜子岬に遊び、日和山に登って、漁船に賑う平潟の港内や、暮れ行く太平洋の怒濤を飽かず眺めた後、湾に臨んだ宿屋の楼上に一夜を明かして、翌日仙台からはるばると辿って来た …
読書目安時間:約9分
勿来関趾をたずね、鵜子岬に遊び、日和山に登って、漁船に賑う平潟の港内や、暮れ行く太平洋の怒濤を飽かず眺めた後、湾に臨んだ宿屋の楼上に一夜を明かして、翌日仙台からはるばると辿って来た …
紙魚こぼれ(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
大田蜀山人の『半日閑話』の中に「信州浅間岳下奇談」と題して次の記事が出ている。 九月(文化十二年)頃承りしに、夏頃信州浅間ヶ岳辺にて郷家の百姓井戸を掘りしに、二丈余も深く掘けれども …
読書目安時間:約4分
大田蜀山人の『半日閑話』の中に「信州浅間岳下奇談」と題して次の記事が出ている。 九月(文化十二年)頃承りしに、夏頃信州浅間ヶ岳辺にて郷家の百姓井戸を掘りしに、二丈余も深く掘けれども …
上州の古図と山名(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
古図には立派に記載されている山でも、今日では夫がどの山であるか、殆ど見当のつけようもない程不正確にあらわされているものがある。それで単に古図と今の図とを比較しただけでは、何とも判断 …
読書目安時間:約13分
古図には立派に記載されている山でも、今日では夫がどの山であるか、殆ど見当のつけようもない程不正確にあらわされているものがある。それで単に古図と今の図とを比較しただけでは、何とも判断 …
白馬岳(新字新仮名)
読書目安時間:約28分
今では日本北アルプスの名で広く世に知られている飛騨山脈は、加藤理学士の説に拠ると、凡そ南十度西より北十度東に向って並走せる数条の連脈から成っているものであるという。其連脈の一に白馬 …
読書目安時間:約28分
今では日本北アルプスの名で広く世に知られている飛騨山脈は、加藤理学士の説に拠ると、凡そ南十度西より北十度東に向って並走せる数条の連脈から成っているものであるという。其連脈の一に白馬 …
皇海山紀行(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
降りがちな天候は、十一月に入ってもからりと晴れた日は続かなかった。ことに土曜から日曜へかけてはよく降った。この意地悪い雨のために出鼻をくじかれて、出発はもう予定より三週間も遅れてし …
読書目安時間:約24分
降りがちな天候は、十一月に入ってもからりと晴れた日は続かなかった。ことに土曜から日曜へかけてはよく降った。この意地悪い雨のために出鼻をくじかれて、出発はもう予定より三週間も遅れてし …
渓三題(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
いつぞや秩父の長瀞見物に行って来た人が「どうもいい景色ですな、あんな所は山の中にもそう沢山はありますまい」というて、其話をして呉れたことがある。私は黙って夫を聞きながらも、始めてあ …
読書目安時間:約13分
いつぞや秩父の長瀞見物に行って来た人が「どうもいい景色ですな、あんな所は山の中にもそう沢山はありますまい」というて、其話をして呉れたことがある。私は黙って夫を聞きながらも、始めてあ …
秩父の奥山(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間1分
何の為に山へ登るか。自分は此稿を書こうとして、筆を持ったまま考に耽っていると、不図心の奥でひそやかな声がそう囁いた。 然し自分は今茲にそれを論じようとしていたのでは勿論ない。唯秩父 …
読書目安時間:約1時間1分
何の為に山へ登るか。自分は此稿を書こうとして、筆を持ったまま考に耽っていると、不図心の奥でひそやかな声がそう囁いた。 然し自分は今茲にそれを論じようとしていたのでは勿論ない。唯秩父 …
秩父のおもいで(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
秩父の数多い山の中で、高さに於ても姿に於ても、金峰山は一際すぐれて群を抜いている。御室から登る五十町の峻坂は、岩といい樹といい、如何にも山らしい感じを与えるので、決して飽きることの …
読書目安時間:約7分
秩父の数多い山の中で、高さに於ても姿に於ても、金峰山は一際すぐれて群を抜いている。御室から登る五十町の峻坂は、岩といい樹といい、如何にも山らしい感じを与えるので、決して飽きることの …
秩父の渓谷美(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
いつも五月、一年中でのよき日である五月になると、私は秩父の山や谷を思い出すことが避け難い一の習慣のようになっている。恐らく秩父の自然に、私などのよく歩いた時と今とでは、人工的に加え …
読書目安時間:約10分
いつも五月、一年中でのよき日である五月になると、私は秩父の山や谷を思い出すことが避け難い一の習慣のようになっている。恐らく秩父の自然に、私などのよく歩いた時と今とでは、人工的に加え …
秩父宮殿下に侍して槍ヶ岳へ(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
荒模様であった空は、夜が明けると少し穏になって、風は強いが雨脚は疎になった。七月二十四日の朝である。松本駅前の旅館に泊っていた槇君と私とは、駅に向って馳せ集る夥しい人の群に、それは …
読書目安時間:約20分
荒模様であった空は、夜が明けると少し穏になって、風は強いが雨脚は疎になった。七月二十四日の朝である。松本駅前の旅館に泊っていた槇君と私とは、駅に向って馳せ集る夥しい人の群に、それは …
峠(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
峠は「たむけ」の音便であるといわれている。そしてそれが山脈又は丘陵を横断する通路の最高所に与えられた名であることは、峠路即ち上り下りの路を坂と呼んでいることから推して疑いないようで …
読書目安時間:約9分
峠は「たむけ」の音便であるといわれている。そしてそれが山脈又は丘陵を横断する通路の最高所に与えられた名であることは、峠路即ち上り下りの路を坂と呼んでいることから推して疑いないようで …
登山談義(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
八月二十日於霧ヶ峰「山の会」講演大意、後補筆 昔からお談義を聞かせるのは大抵老人と極っているようで「またお談義か、うんざりするな」というようなことは、日常見聞する所であります。事実 …
読書目安時間:約17分
八月二十日於霧ヶ峰「山の会」講演大意、後補筆 昔からお談義を聞かせるのは大抵老人と極っているようで「またお談義か、うんざりするな」というようなことは、日常見聞する所であります。事実 …
利根川水源地の山々(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間22分
ここに利根川水源地というのは、大略西は宝川笠ヶ岳の支脈と、東は武尊山の支脈とに依りて限られた利根川上流の地域を指したものである。此地方の山は割合に高度が低いので、谷は深く木立は繁っ …
読書目安時間:約1時間22分
ここに利根川水源地というのは、大略西は宝川笠ヶ岳の支脈と、東は武尊山の支脈とに依りて限られた利根川上流の地域を指したものである。此地方の山は割合に高度が低いので、谷は深く木立は繁っ …
那須、尾瀬、赤城、志賀高原(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
那須火山群は、広漠たる那須ヶ原の北端に在って、南北に長い連嶺をなし、所謂那須の五岳を含む山塊を総称したものである。五岳とは南の黒尾谷岳から順に北へ南月山、茶臼岳、朝日岳及び北肩は下 …
読書目安時間:約14分
那須火山群は、広漠たる那須ヶ原の北端に在って、南北に長い連嶺をなし、所謂那須の五岳を含む山塊を総称したものである。五岳とは南の黒尾谷岳から順に北へ南月山、茶臼岳、朝日岳及び北肩は下 …
南北アルプス通説(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
日本本島中部の大山脈である赤石山系、木曾山脈及び飛騨山脈は、今日普通に日本アルプスの名で呼ばれている。この名は明治の初年に主として飛騨山脈に足を踏み入れた外国人によって創唱されたも …
読書目安時間:約11分
日本本島中部の大山脈である赤石山系、木曾山脈及び飛騨山脈は、今日普通に日本アルプスの名で呼ばれている。この名は明治の初年に主として飛騨山脈に足を踏み入れた外国人によって創唱されたも …
二、三の山名について(新字新仮名)
読書目安時間:約56分
この一篇は昭和三年六月十日、霧の旅会創立第十周年紀念大会の席上で述べた話の原稿を纏めて、改訂増補したものであるが、もとより未定稿であって、ほんの一寸した思い付を述べたに過ぎない、謂 …
読書目安時間:約56分
この一篇は昭和三年六月十日、霧の旅会創立第十周年紀念大会の席上で述べた話の原稿を纏めて、改訂増補したものであるが、もとより未定稿であって、ほんの一寸した思い付を述べたに過ぎない、謂 …
日本アルプスの五仙境(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
これから私が茲に述べようとする日本アルプスの仙境というのは、其処に仙人が住んでいたとか、又は現に住んでいるらしいとかいう訳で、仙境と称するのでは勿論ありません。単に仙人でもいそうな …
読書目安時間:約11分
これから私が茲に述べようとする日本アルプスの仙境というのは、其処に仙人が住んでいたとか、又は現に住んでいるらしいとかいう訳で、仙境と称するのでは勿論ありません。単に仙人でもいそうな …
初めて秩父に入った頃(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
当初、山を愛好する一部の人々の間にのみ行われていた登山が、一般世間からは物ずきの骨頂と蔑視されながらも、勇敢に口や筆で夫等の人々が宣伝につとめた努力は報いられて、次第に同好者を獲得 …
読書目安時間:約6分
当初、山を愛好する一部の人々の間にのみ行われていた登山が、一般世間からは物ずきの骨頂と蔑視されながらも、勇敢に口や筆で夫等の人々が宣伝につとめた努力は報いられて、次第に同好者を獲得 …
八ヶ峰の断裂(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
八ヶ峰というのは、鹿島槍ヶ岳と五竜岳との間にある山稜の一大断裂に名付けられた称呼であって、峰とは呼ばれているが実は隆起した地点ではない。此断裂の特色は山稜が歪なU字形にくびれて、越 …
読書目安時間:約6分
八ヶ峰というのは、鹿島槍ヶ岳と五竜岳との間にある山稜の一大断裂に名付けられた称呼であって、峰とは呼ばれているが実は隆起した地点ではない。此断裂の特色は山稜が歪なU字形にくびれて、越 …
初旅の大菩薩連嶺(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
大正七年の秋の末に初めて黒岳山から大菩薩峠に至る大菩薩山脈の主要部を縦走した時の山旅は、おかしい程故障が多かった。これは余り暢気に構えて必要の調査を怠ったり、地図を信用し過ぎたり、 …
読書目安時間:約19分
大正七年の秋の末に初めて黒岳山から大菩薩峠に至る大菩薩山脈の主要部を縦走した時の山旅は、おかしい程故障が多かった。これは余り暢気に構えて必要の調査を怠ったり、地図を信用し過ぎたり、 …
針木峠の林道(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
針木峠は人も知る如く、明治九年に新道が開鑿され、数年の後にそれが再び破壊されてしまってからは、籠川の河原や雪渓を辿ることなしに峠を通過することは殆んど不可能であった。若し之を避けて …
読書目安時間:約4分
針木峠は人も知る如く、明治九年に新道が開鑿され、数年の後にそれが再び破壊されてしまってからは、籠川の河原や雪渓を辿ることなしに峠を通過することは殆んど不可能であった。若し之を避けて …
春の大方山(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
南アルプスの二、三の山が東京から望まれることが確実となったので、外にも尚お、遠い大井川奥の空から煤煙の都東京をこっそり覗いている山が或は有るかも知れない。夫を探し出すには東から眺め …
読書目安時間:約16分
南アルプスの二、三の山が東京から望まれることが確実となったので、外にも尚お、遠い大井川奥の空から煤煙の都東京をこっそり覗いている山が或は有るかも知れない。夫を探し出すには東から眺め …
笛吹川の上流(東沢と西沢)(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
笛吹川は秩父街道最奥の部落である広瀬附近から上流になると子酉川と呼ばれている。広瀬から稍や爪先上りの赤土道を、七、八町も行くと、原中に一本の大きな水楢か何かの闊葉樹が生えている側で …
読書目安時間:約10分
笛吹川は秩父街道最奥の部落である広瀬附近から上流になると子酉川と呼ばれている。広瀬から稍や爪先上りの赤土道を、七、八町も行くと、原中に一本の大きな水楢か何かの闊葉樹が生えている側で …
冬の山(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
都大路に木枯が音ずれて、街路樹の梢が日に増しあらわになりまさる頃になると、濁りがちな空の色も流石に冴えて、武蔵野をめぐる山々の姿が、市中からも鮮に望まれる日が多くなる。雪の富士、紫 …
読書目安時間:約8分
都大路に木枯が音ずれて、街路樹の梢が日に増しあらわになりまさる頃になると、濁りがちな空の色も流石に冴えて、武蔵野をめぐる山々の姿が、市中からも鮮に望まれる日が多くなる。雪の富士、紫 …
望岳都東京(新字新仮名)
読書目安時間:約1時間1分
むかし太田道灌が始めて江戸城を築いた時、城上に間燕の室を置て之を静勝軒と名付け、東は江戸湾を望み西は富士秩父の連嶺を軒端に眺めた所から、東を泊船亭と曰い西を含雪斎と曰うたとのことで …
読書目安時間:約1時間1分
むかし太田道灌が始めて江戸城を築いた時、城上に間燕の室を置て之を静勝軒と名付け、東は江戸湾を望み西は富士秩父の連嶺を軒端に眺めた所から、東を泊船亭と曰い西を含雪斎と曰うたとのことで …
マル及ムレについて(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
本稿は昭和十一年十一月十五日霧の旅会で催した集会の席上に於て述べたもので、謂わば私の物ずきな地名穿鑿の際にふと思い付いた考に過ぎないのであるが、山名や地名などを考証する場合、時とし …
読書目安時間:約30分
本稿は昭和十一年十一月十五日霧の旅会で催した集会の席上に於て述べたもので、謂わば私の物ずきな地名穿鑿の際にふと思い付いた考に過ぎないのであるが、山名や地名などを考証する場合、時とし …
三国山と苗場山(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
大正二、三年の頃、東京から見える山のスケッチを作る為に、強い北西の風が吹く晴れた冬の日には、よく愛宕山の塔や浅草の凌雲閣に上って、遠い雪の山の姿に見入りながら、新しい印象や古い記憶 …
読書目安時間:約13分
大正二、三年の頃、東京から見える山のスケッチを作る為に、強い北西の風が吹く晴れた冬の日には、よく愛宕山の塔や浅草の凌雲閣に上って、遠い雪の山の姿に見入りながら、新しい印象や古い記憶 …
山と村(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
アーヴィングの『スケッチブック』を初めて読んだとき、リップ・ヴァン・ウィンクルの話の冒頭に、カツキル連山が季節の移り更りや天候の変る毎に、いや実に一日の中でも刻々に不思議な色やら形 …
読書目安時間:約10分
アーヴィングの『スケッチブック』を初めて読んだとき、リップ・ヴァン・ウィンクルの話の冒頭に、カツキル連山が季節の移り更りや天候の変る毎に、いや実に一日の中でも刻々に不思議な色やら形 …
山の今昔(新字新仮名)
読書目安時間:約43分
我国に於て山登りが始められたのは何時頃からであるか、元より判然たることは知る由もないが、遡って遠く其源を探って見ると、狩猟を以て生活の資を得ていた原始民族に依りて、恐らく最初の山登 …
読書目安時間:約43分
我国に於て山登りが始められたのは何時頃からであるか、元より判然たることは知る由もないが、遡って遠く其源を探って見ると、狩猟を以て生活の資を得ていた原始民族に依りて、恐らく最初の山登 …
山の魅力(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
夏の登山が今日のように盛になったのは、色々の原因があるにしても、山が何かしらん人の心をしっかりと捉えずには置かない、強い魅力を持っている為である。人真似であろうが流行かぶれであろう …
読書目安時間:約8分
夏の登山が今日のように盛になったのは、色々の原因があるにしても、山が何かしらん人の心をしっかりと捉えずには置かない、強い魅力を持っている為である。人真似であろうが流行かぶれであろう …
“木暮理太郎”について
木暮 理太郎(こぐれ りたろう、1873年12月7日 - 1944年5月7日)は、日本の登山家。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“木暮理太郎”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)