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与謝野寛
与謝野寛
1873.02.26 〜 1935.03.26
梅原良三郎氏のモンマルトルの画室(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
僕は僕の下宿の路次の 僕の薄暗い穴から出た。 そして直ぐ左隣の家の 硝子戸をそつと押して入つた。 階下の廊の左側の室から 門番のお上の顔が僕を見て微笑んだ、 僕の顔も微笑んだ。 僕 …
執達吏(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
(壱) 眞田保雄の事を此の十年来何かに附けて新聞雑誌で悪く書く。保雄は是と云つて私行上に欠点のある男でも無く、さりとて文学者としての彼の位置が然う文壇の憎悪を買ふ程に高くも無い。其 …
失楽(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
わが上に一切の事物を示す「失楽」よ、 過ぎゆく日の最後なる今日の「失楽」よ、 わが身の上の「失楽」よ、我は汝に叫ぶ、 「全く空し」と。 我は幽欝なる汝の栖所に圧込められ、 我は其処 …
素描(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
おれは朝から寝巻の KIMONO のまヽで絵具いぢりを続けて居た。午飯も外へ食ひに出ないでホテルの料理を部屋へ運ばせて済ませた。まづい物を描いて EXTATIQUE な気分になれる …
南洋館(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
緑の褪めた、 砂と塵挨だらけの、 水気のない、 いぢけた、倭い椰子の木立、 木伊乃にした、動かない天狗猿、 死んだ、みすぼらしい、ちつぽけな鰐、 くすんだ、黄土と CHOCOLAT …
巴里より(新字旧仮名)
読書目安時間:約5時間48分
予等は日夜欧羅巴に憬れて居る。殊に巴里が忘れられない。滞留期が短くて、すべて表面計りを一瞥して来たに過ぎない予等ですら斯うであるから、久しく欧洲の内景に親んだ人人は幾倍か此感が深い …
満蒙遊記:附 満蒙の歌(新字旧仮名)
読書目安時間:約3時間21分
日本人が先史時代から永久の未来に亘り、いろいろの意味で交渉の最も深い隣国の現状について、余りにも迂濶であるのは愧かしい事である。明治以来の応急の必要が、海外の知識と云へば、欧米の其 …
妄動(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
× われは曙にさまよふ影なり、 亡びんとする或物なり、 亡ぶるを否み難きものなり。 われは珊瑚の色したる灰なり、 暮れゆく春の竈場なり。 われは自ら憐んで描きぬ、 わななきて氷の上 …
“MONICO”(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
MONICO ! MONICO ! TRÉS JOLIIE ! 今夜もモニコで飲み明そ。 派手な巴里に住みながら、 MONMARTORE に住みながら、 一人で寝るのも気が利か …
蓬生(新字旧仮名)
読書目安時間:約22分
貢さんは門徒寺の四男だ。 門徒寺と云つても檀家が一軒あるで無い、西本願寺派の別院並で、京都の岡崎にあるから普通には岡崎御坊で通つて居る。格式は一等本座と云ふので法類仲間で幅の利く方 …
礼厳法師歌集(新字旧仮名)
読書目安時間:約57分
禮嚴法師歌集の初にしるしおく文。 一、今年八月十七日は父の十三囘忌辰なれば、かねて兄達に謀りて、父の歌集一巻を刷物とし、紀念のため、有縁の人人に供養せんは如何にと言へば、皆よしと言 …