仲村渠
1905.10.03 〜 1951.12.04
著者としての作品一覧
明るい顔(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
なぜあんなに明るい顔をしてるんだらう。街角にあいた活動写真館の馬蹄‼をぬけ出ると、腹がへつて夕暮れで、何故スクリーンはああもはつきり映つて、ありあり生きてゐるのであらう。コーリン・ …
読書目安時間:約2分
なぜあんなに明るい顔をしてるんだらう。街角にあいた活動写真館の馬蹄‼をぬけ出ると、腹がへつて夕暮れで、何故スクリーンはああもはつきり映つて、ありあり生きてゐるのであらう。コーリン・ …
明るすぎる月(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
——悪いことがなければよいが 電柱のとつさき、工夫が云ふ ふん今夜は誰も苦情は云ふまいて。十分そこらの停電はな。 窓ぎは。若い薬剤師が云ふ やあ!まるで砂でも調合してるやうだよ。 …
読書目安時間:約2分
——悪いことがなければよいが 電柱のとつさき、工夫が云ふ ふん今夜は誰も苦情は云ふまいて。十分そこらの停電はな。 窓ぎは。若い薬剤師が云ふ やあ!まるで砂でも調合してるやうだよ。 …
蹠(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
円錐形のさきで僕ひとり。 街や河があつて人があるいてゐる 海があつて島や船がうごいてゐる 陸や山や不毛の地をもつてゐる円錐形の美しい側面。 雲や雨や飛行機や魚のある美しい空間。 ぼ …
読書目安時間:約1分
円錐形のさきで僕ひとり。 街や河があつて人があるいてゐる 海があつて島や船がうごいてゐる 陸や山や不毛の地をもつてゐる円錐形の美しい側面。 雲や雨や飛行機や魚のある美しい空間。 ぼ …
あなたの顔(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
——琉球の墓を見たことがあるか。むしろ蟇の如き石室なり。また、一小孤城の如きも見るべし。高き丈余にあまり、みな蒼苔をおび、海に向ひて寂然たり。むかし、さる物持ちの翁ありて、己が墓に …
読書目安時間:約1分
——琉球の墓を見たことがあるか。むしろ蟇の如き石室なり。また、一小孤城の如きも見るべし。高き丈余にあまり、みな蒼苔をおび、海に向ひて寂然たり。むかし、さる物持ちの翁ありて、己が墓に …
氏(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
氏は書を能くし 発句や謡をたしなみ就中たいてい柔道二段ぐらゐの腕まへあり 氏は毎朝東天遙拝のちラヂオ体操 たのまれて話の屑籠なども執筆なさるのだ 氏は氏の一挙手一投足は逸話となつて …
読書目安時間:約1分
氏は書を能くし 発句や謡をたしなみ就中たいてい柔道二段ぐらゐの腕まへあり 氏は毎朝東天遙拝のちラヂオ体操 たのまれて話の屑籠なども執筆なさるのだ 氏は氏の一挙手一投足は逸話となつて …
気象台風景(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
科学の蜘蝶が張つた整然たるアンテナの巣よ 蝟集する空中消息は豊麗な蝶々だ 見上げる額に 気象台の鋭角は颯爽たる意欲よ ああ空に向つて垂れる氷柱の先端 つき刺された空は円形の青地図を …
読書目安時間:約1分
科学の蜘蝶が張つた整然たるアンテナの巣よ 蝟集する空中消息は豊麗な蝶々だ 見上げる額に 気象台の鋭角は颯爽たる意欲よ ああ空に向つて垂れる氷柱の先端 つき刺された空は円形の青地図を …
郷愁(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
友よ肩をならべて街へゆかう 質屋をだして外套は僕らの肩によいおもさ 友よ腕をくめ 街は霧だ 燈火の美しくなる十二月 何だらう僕らを呼んでゐるものは? 友よ新しい気流が渡つてるにすぎ …
読書目安時間:約1分
友よ肩をならべて街へゆかう 質屋をだして外套は僕らの肩によいおもさ 友よ腕をくめ 街は霧だ 燈火の美しくなる十二月 何だらう僕らを呼んでゐるものは? 友よ新しい気流が渡つてるにすぎ …
果物屋の広告文(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
今晩は、みなさん。 とりわけ果実をお好きな御婦人がたに申し上げるのでございます。 手前のからだは今夜果物店をひろげたのでございます。この真夜中に瓦斯燈ひとつ点けずともはいこの通り手 …
読書目安時間:約2分
今晩は、みなさん。 とりわけ果実をお好きな御婦人がたに申し上げるのでございます。 手前のからだは今夜果物店をひろげたのでございます。この真夜中に瓦斯燈ひとつ点けずともはいこの通り手 …
月下市街図(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
月はひろげた市街地図をうすく青塗りにする 僕は白チオクのちいさい残粒 コロコロ市街双六の上を転つてゆく白い骰子 転し手もない上りもない悲しい骰子 月に 内臓の赤い花花をみんな食べら …
読書目安時間:約1分
月はひろげた市街地図をうすく青塗りにする 僕は白チオクのちいさい残粒 コロコロ市街双六の上を転つてゆく白い骰子 転し手もない上りもない悲しい骰子 月に 内臓の赤い花花をみんな食べら …
最後の手紙(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
氷になつて 午后一時A広場のまんなかで消えてしまう。 ◉ 贈つてもらつた独逸製の目醒し時計の中に隠れるから 燈台の尖へあがつていつて 海の方へ力いつぱい抛つてくれたまへ。 ◉ 太平 …
読書目安時間:約1分
氷になつて 午后一時A広場のまんなかで消えてしまう。 ◉ 贈つてもらつた独逸製の目醒し時計の中に隠れるから 燈台の尖へあがつていつて 海の方へ力いつぱい抛つてくれたまへ。 ◉ 太平 …
沈め(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
那覇港よその海民よ 剽悍な気魄いまやなし ああ美しい贈りものを! 尾類が紅いどくを文身こむだらうよ 人魚の肌へ 鮫を、比目魚を、いらぶう、海豚を 市をめぐつて海の族が酔うて痴れて酔 …
読書目安時間:約1分
那覇港よその海民よ 剽悍な気魄いまやなし ああ美しい贈りものを! 尾類が紅いどくを文身こむだらうよ 人魚の肌へ 鮫を、比目魚を、いらぶう、海豚を 市をめぐつて海の族が酔うて痴れて酔 …
詩と詩集(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
何よりも僕はその表題が好きだ。検温器と花。そつくりこの句を、この詩集のなかに挿入してもいゝ。すくなくとも駄作寡婦などを巻中においておくよりも。作者は短詩のための短詩はとらず、と云ふ …
読書目安時間:約2分
何よりも僕はその表題が好きだ。検温器と花。そつくりこの句を、この詩集のなかに挿入してもいゝ。すくなくとも駄作寡婦などを巻中においておくよりも。作者は短詩のための短詩はとらず、と云ふ …
白い独楽(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
白昼だから秋だから原つぱは白かつた 白昼だから秋だから空も白かつた 原つぱのまんなかでひとり 戸山学校の生徒が喇叭を吹いてゐた 赤いズボンはいて喇叭を吹いてゐた 白昼だから秋だから …
読書目安時間:約1分
白昼だから秋だから原つぱは白かつた 白昼だから秋だから空も白かつた 原つぱのまんなかでひとり 戸山学校の生徒が喇叭を吹いてゐた 赤いズボンはいて喇叭を吹いてゐた 白昼だから秋だから …
睡眠(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
絵具は雄弁にねむつてゐる 一水夫は港を想ふ夜! 珊瑚は沈んでゐる 夜。海のそこに朱 帆は死んでゐる 夜。帆桁に白 貨物船は錆びてゐる 夜。港のすみに黒 商店旗は垂れてゐる 夜。街上 …
読書目安時間:約1分
絵具は雄弁にねむつてゐる 一水夫は港を想ふ夜! 珊瑚は沈んでゐる 夜。海のそこに朱 帆は死んでゐる 夜。帆桁に白 貨物船は錆びてゐる 夜。港のすみに黒 商店旗は垂れてゐる 夜。街上 …
すらんらん集(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
煙突を眺めるのが好きなひとがゐた。 天気がよいと煙突ばかりを数へてチヨオクでいたづらしながら歩いてゐるとたいへん楽しかつた。又煙突に裂かれる気流のぐあひや、獰猛な煤煙とその方向。及 …
読書目安時間:約5分
煙突を眺めるのが好きなひとがゐた。 天気がよいと煙突ばかりを数へてチヨオクでいたづらしながら歩いてゐるとたいへん楽しかつた。又煙突に裂かれる気流のぐあひや、獰猛な煤煙とその方向。及 …
銭湯より帰る(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
仔どもや金貸しや先生や役人や痩せたのも太いのもいつしよくたに 汗や膏や表皮を流す裸のとき 裸の楽しいときをへてさてふたゝび湯水のなかを産れるとき 豹縞馬の身のやうな美しい毛皮なし …
読書目安時間:約1分
仔どもや金貸しや先生や役人や痩せたのも太いのもいつしよくたに 汗や膏や表皮を流す裸のとき 裸の楽しいときをへてさてふたゝび湯水のなかを産れるとき 豹縞馬の身のやうな美しい毛皮なし …
頂上(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
植物はとほくけぶる外輪山の緑のいろ。 ここはたゞ白昼 玉座の怒る噴煙である。 生ものとては火口に飛び交ふ燕のむれだ 断崖の影にかくれて 燕窩にならぶ幼い卵だ飛翔の夢だ お、晴れるぞ …
読書目安時間:約1分
植物はとほくけぶる外輪山の緑のいろ。 ここはたゞ白昼 玉座の怒る噴煙である。 生ものとては火口に飛び交ふ燕のむれだ 断崖の影にかくれて 燕窩にならぶ幼い卵だ飛翔の夢だ お、晴れるぞ …
月あかり(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
青いおほきい船にのつてゆかう。 ほんとうに痩せてしまつたぼくの肩 あたらしい紺飛白ばかり匂ひがたかいよ。 月あかりは胸から背なへぬけてしまつた ほそながい影ひとつぼくのうしろへ映つ …
読書目安時間:約1分
青いおほきい船にのつてゆかう。 ほんとうに痩せてしまつたぼくの肩 あたらしい紺飛白ばかり匂ひがたかいよ。 月あかりは胸から背なへぬけてしまつた ほそながい影ひとつぼくのうしろへ映つ …
某(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
初夏ともなれば百円ぐらゐのパナマ帽がいたについて見ばえのある風格をみよ ちと遊びに来給へと名刺をくれるのだ 名刺といへばかれもまた一流の名士にして普く 八方に疎通してあますところは …
読書目安時間:約1分
初夏ともなれば百円ぐらゐのパナマ帽がいたについて見ばえのある風格をみよ ちと遊びに来給へと名刺をくれるのだ 名刺といへばかれもまた一流の名士にして普く 八方に疎通してあますところは …
濡れる展望(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
北方に何ごとぞ 雲雲を引具して空を急いだ 街 街は雨の喪服 街はとほい 街は沈む アンテナは潜望鏡をまねて雲を観た 北方に何ごとぞや? 欅は丘で街を観た 欅は終日雲を迎へて雲を送つ …
読書目安時間:約1分
北方に何ごとぞ 雲雲を引具して空を急いだ 街 街は雨の喪服 街はとほい 街は沈む アンテナは潜望鏡をまねて雲を観た 北方に何ごとぞや? 欅は丘で街を観た 欅は終日雲を迎へて雲を送つ …
ねがひ(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
あなたの白い手 冷くならんだ五指の甲でこの頬が打たれたい 落葉に敲かれるシルクハツトは悲しげである 凛乎と美しい反りで悲しげである 一座の花形美少女の平手に敲かれる道化役の頬より悲 …
読書目安時間:約1分
あなたの白い手 冷くならんだ五指の甲でこの頬が打たれたい 落葉に敲かれるシルクハツトは悲しげである 凛乎と美しい反りで悲しげである 一座の花形美少女の平手に敲かれる道化役の頬より悲 …
母はとほい(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
障子はあけなくとも アンテナは光つてゐようぞ 母よ三郎はおめざが欲しい 二十三にもなつたので自転車ものりたくない 朝は街のすみにも光つてゐますが 母よ三郎はおめざが欲しい …
読書目安時間:約1分
障子はあけなくとも アンテナは光つてゐようぞ 母よ三郎はおめざが欲しい 二十三にもなつたので自転車ものりたくない 朝は街のすみにも光つてゐますが 母よ三郎はおめざが欲しい …
舳(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
帆柱は美しい雲をあげてゐた 帆は裂かれて。 風は栗いろの額を洗つてゐた 髪を飛ばして。 ああ傾く水平線にあらはれる初めての島! 魚は舳にとんでコロンブスの襤褸を飾つた。 …
読書目安時間:約1分
帆柱は美しい雲をあげてゐた 帆は裂かれて。 風は栗いろの額を洗つてゐた 髪を飛ばして。 ああ傾く水平線にあらはれる初めての島! 魚は舳にとんでコロンブスの襤褸を飾つた。 …
冒険(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
騒しい仔猿たちいね こちらをむいて雌はしばしの憩ひ おれは些少の空地に椅子をだしておれのうへに満天の星座 おれが空気を呼吸すればかれらも天の青い層をとほして賑やかに息づくかに見える …
読書目安時間:約1分
騒しい仔猿たちいね こちらをむいて雌はしばしの憩ひ おれは些少の空地に椅子をだしておれのうへに満天の星座 おれが空気を呼吸すればかれらも天の青い層をとほして賑やかに息づくかに見える …
水浴び(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
海水から金が採れるといふが地球全表面その三分の二の海から幾噸の金がにぎれるか 濡れ手に千金それを湯水のやうに浪費せばたのしからん 水のやうに金をつかふいや躯いつぱい水を流せば水はぜ …
読書目安時間:約1分
海水から金が採れるといふが地球全表面その三分の二の海から幾噸の金がにぎれるか 濡れ手に千金それを湯水のやうに浪費せばたのしからん 水のやうに金をつかふいや躯いつぱい水を流せば水はぜ …
港に沈んだ鉄片の希望(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
浚渫船はいづこの海を浚つてゐるのだらう 鉄片は沈んで沈んで港の底 眇の眸を覗かせるよ ああ気なげな空想を抱いてゐるぞ ねそべつた比目魚が吐きだす泡にぶらさがり ゆらゆら海面に昇つて …
読書目安時間:約1分
浚渫船はいづこの海を浚つてゐるのだらう 鉄片は沈んで沈んで港の底 眇の眸を覗かせるよ ああ気なげな空想を抱いてゐるぞ ねそべつた比目魚が吐きだす泡にぶらさがり ゆらゆら海面に昇つて …
無機物地帯(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
鉄橋を渡れば展けてゆく膨大な地帯。 海を埋めて 粗野な街をひろげてゆく健康な三角洲を けなげな犯罪が花畑のやうに美しいほとりを 堀割の麗しい濁流に沿ひて 鮮な溺死体を迎へ 涼しい肥 …
読書目安時間:約1分
鉄橋を渡れば展けてゆく膨大な地帯。 海を埋めて 粗野な街をひろげてゆく健康な三角洲を けなげな犯罪が花畑のやうに美しいほとりを 堀割の麗しい濁流に沿ひて 鮮な溺死体を迎へ 涼しい肥 …
“仲村渠”と年代が近い著者
きょうが誕生日(12月14日)
成沢玲川(1877年)
今月で生誕X十年
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)