“幽”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
かす60.3%
かすか30.1%
ゆう3.1%
かそ1.7%
いう1.3%
しず0.8%
ゆか0.4%
ユウ0.4%
か0.2%
かく0.2%
かすみ0.2%
くら0.2%
ひそ0.2%
ふか0.2%
ほの0.2%
ゆかし0.2%
カク0.2%
カソ0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
都会育ちの先生が、よくもこれほど細かに、濃淡の幽(かす)かな変化までも見のがさずに、山や野や田園の風物を捉えられたものだと思う。
歌集『涌井』を読む (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
謁見室には只(ただ)一人宮相だけが残っていた。夜と昼との境目の、微妙な灰色の外光を、窓から幽(かすか)に受けながら、彼は思いに沈んでいる。
闘牛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
風琴(ふうきん)楽を和して幽(ゆう)なる処のみ神の教会ならざるを知れり、孝子家計の貧を補わんがために寒夜に物を鬻(ひさ)ぐ処これ神の教会ならずや
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「雪祭」幽(かそ)けきかも、忠(きよし)はうれしきかも。その窓に富士を見さけて、狩野(かの)の瀬に月を仰ぎて、豊かなる心ばえやなほも、ほのぼのと朝夜あらし。
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
……時(とき)に靡(なび)きかゝる雲(くも)の幽(いう)なるさへ、一天(てん)の銀河(ぎんが)に髣髴(はうふつ)として、然(しか)も、八甲田山(かふださん)を打蔽(うちおほ)ふ、陸奥(みちのく)の空(そら)は寂(さび)しかつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
私は氏の部屋を辞して自分の部屋で暫くやすむ——幽(しず)けさや、昼寝枕(まくら)にまつわる蚊——こんな「句」のようなものを詠んで麻川氏の寂し相な眼つきを想(おも)った。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その居宅は田鶴見子爵の邸内に在りて、裏門より出入(しゆつにゆう)すべく、館(やかた)の側面を負ひて、横長に三百坪ばかりを木槿垣(もくげがき)に取廻して、昔形気(むかしかたぎ)の内に幽(ゆか)しげに造成(つくりな)したる二階建なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
庭ハ幽(ユウ)ニシテ夕(ユウベ)ニハ接ス五湖ノ賓(ヒン)
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幽(か)そけくも底力ある、あやしい調べが、忍びやかに脳底に刺し徹(とお)る……
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
幽(かく)り宮(みや)月(つき)のかげせしひと夜ゆゑ恋ひつゝわびぬこの年頃を(残紅)
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ああ、幽(かすみ)に見ゆる観世音の額の金色(こんじき)と、中を劃(しき)って、霞の畳まる、横広い一面の額の隙間から、一条(ひとすじ)たらりと下っていた。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
往々雨の丘より丘に移るに当たりて、あるいは近くあるいは遠く、あるいは幽(くら)くあるいは明らかに
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
二三度、呼び交わしたのち、雛妓とわたくしはだんだん声を幽(ひそ)めて行った。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「K君、幽(ふか)い谷だね。」と私は筋違に向ひ合つて居る友達の方を見て言出した。「景色が好いなんていふところを通越して、可畏(おそろ)しいやうな谷だね。」
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
池は玉(ぎょく)もて張りたらんやうに白く湿める水の面(も)に、静に魚の溌(は)ぬる聞こえて、瀲灔(ちらちら)と石燈籠の火の解くるも清々(すがすが)し。塀を隔てて江戸川縁(べり)の花の林樾(こずえ)は一刷(ひとはけ)に淡く、向河岸行く辻占売の声幽(ほの)かなり
巣鴨菊 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
独(ひと)り宮のみは騒げる体(てい)も無くて、その清(すずし)き眼色(まなざし)はさしもの金剛石と光を争はんやうに、用意深(たしなみふか)く、心様(こころざま)も幽(ゆかし)く振舞へるを、崇拝者は益々懽(よろこ)びて、我等の慕ひ参らする効(かひ)はあるよ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其と共に現(ウツ)し身にとつては恐しいが、常にある親しみを持たれてゐると期待の出来る此幽(カク)り身(ミ)の人々が、恩寵の来訪をすると思ふ様になつたのである。
此が十分二十分とは言はない間、見上げて居た高台の崖の側面の村の全面に動いた物の、唯一つである。かう思うて来ると、島の社会の幽(カソ)けさに、心のはりつめて来るのが感じられる。
雪の島:熊本利平氏に寄す (新字旧仮名) / 折口信夫(著)