ゆう)” の例文
風琴ふうきん楽を和してゆうなる処のみ神の教会ならざるを知れり、孝子家計の貧を補わんがために寒夜に物をひさぐ処これ神の教会ならずや
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
転じて大阪(中の島)の監獄にゆうせらるるや、国事犯者として、普通の罪人よりも優待せられ、未決中は、伝告者でんこくしゃ即ち女監の頭領となりて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
そんな面倒めんどう手続てつづきんであってさえも、ゆうからけんに、肉体にくたいのないものから肉体にくたいのあるものに、うつかわるには、じつ容易よういならざる御苦心ごくしん
木像、しんあるなり。神なけれども霊あって来りる。山深く、里ゆうに、堂宇廃頽はいたいして、いよいよ活けるがごとくしかるなり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一つ 親王の御罰ぎょばつは、ひとえに宮のおごりをこらす聖衷せいちゅうに存するを、私怨しえんをふくんで、これを囹圄れいごゆうす。罪の七。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山茶花はすこしゆうにさびしすぎますが、白の大輪で八重なのが、ありしお姿をしのばせるかとも思います。
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
幕府方には尊王攘夷説の根源を断つために京都の主上をゆうし奉ろうとする大きな野心がある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
呼べばこだまは返せども、雲はゆうにして彼はこたへず。歯咬はがみして貫一は後を追ひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
日蔭ひかげゆうに笑む白い花もあわれ、曇り日に見る花のやわらかに落ちついた色も好いが、真夏の赫々かくかくたる烈日を存分受けて精一ぱい照りかえす花の色彩の美は何とも云えぬ。彼は色が大好きである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
無礼な挙動を振舞ふるまって得意がるが、これは表は善で、裏は悪なりという前提にとらわれたるより起こる誤解であって、幽明ゆうめいの区別を論ずる者が、ゆうとかあんとか称すれば、それだけで悪感をいだき
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
うつや鉦皷しやうこりつゆう
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
げんゆうとにわかれてりましても、人情にんじょうにかわりはなく、先方せんぽう熱心ねっしんならこちらでもツイその真心まごころにほだされるのでございます。
丁々坊は熊手をあつかい、巫女みこは手綱をさばきつつ——大空おおぞらに、しょう篳篥ひちりきゆうなるがく奥殿おくでんに再び雪ふる。まきおろして
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほかの女御にょごたちの御消息は絶えてない。いずれはみな他家にゆうせられておわそうが、何とか共にここの御座ぎょざはべって、おうえの憂さをおなぐさめするようには計ろうてもらえぬか
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木像もくざうしんあるなり。しんなけれどもれいあつてきたる。山深やまふかく、さとゆうに、堂宇だうう廃頽はいたいして、いよ/\けるがごとしかなり
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ただ竜神りゅうじんはどこまでもこちらの世界せかいもの人間にんげん世界せかいものであるから、ゆうからけんへのうつりかわりの仕事しごとはまことに困難こんなんで、ながなが歳月としつきようやくのことでモノになったのじゃ。
林泉、いちニ近ク、ゆうさらニ幽
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
六十余州よしう往来わうらいする魔物まもの風流ふうりうおもふべく、はたこれあるがために、闇川橋やみがはばしのあたり、やまそびえ、はなふかく、みちゆうに、みづはや風情ふぜいるがごとく、能楽のうがくける、まへシテと段取だんどりにもる。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)