“幽寂”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
ゆうじゃく68.8%
いうせき6.3%
さび6.3%
しずか6.3%
しん6.3%
ゆうじやく6.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
自ら信ずるにもかかわらず、幽寂ゆうじゃくきょうに於て突然婦人に会えば、一種うべからざる陰惨の鬼気を感じて、えざるものあるは何ぞや。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余曰く余は既に禁錮を必期ひつきる也、然れ共さいはひに安んぜよ、法律はつひに余を束縛すること六月以上なる能はざるなり、つや牢獄のうち幽寂いうせきにしてもつとも読書と黙想とに適す
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
雨はやみ、風は起らず、鳥も歌わない、虫も鳴かねば、水音も聞えぬ、一行のきょうじ声が絶えると、しんとして無声、かくも幽寂さびしき処が世にもあろうかと思われた。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
子供と一緒に近くにある禅宗の寺院おてらを訪ねた時、幽寂しずかな庭に添うた廻廊で節子を思い出したことを書きつけたところもあった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
して——(女神じょしんは、まったくきておいでなさる。幽寂しんとした時、ふと御堂みどうの中で、チリンと、かすかな音のするのは、かんざしが揺れるので、その時は髪をでつけなさるのだそうで。)
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
○塩入村の茅舎竹籬ぼうしやちくりを見、左に蘆葭ろかの茂れるを見ながら一折して、終に南に向つて去る。このあたりは河水東西に流れて両岸の地もまた幽寂ゆうじやく空疎なれば、三秋月を賞するのところとして最も可なり。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)