“しん”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:シン
語句割合
18.8%
11.2%
9.7%
8.9%
8.4%
4.9%
4.7%
寂然2.8%
2.7%
2.6%
1.9%
1.9%
1.8%
1.7%
1.6%
1.5%
1.4%
1.4%
森然1.3%
1.1%
0.8%
0.6%
0.5%
0.4%
森閑0.4%
0.4%
0.3%
寂寞0.3%
0.3%
0.3%
0.3%
0.2%
0.2%
0.2%
眞實0.2%
粛然0.2%
0.2%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
寂寥0.1%
心臓0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
ヷ神0.1%
0.1%
0.1%
中子0.1%
中心0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
幽寂0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
森乎0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
深然0.1%
0.1%
無念0.1%
0.1%
0.1%
真個0.1%
真実0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
閑寂0.1%
閴寂0.1%
闃寂0.1%
0.1%
陰森0.1%
静寂0.1%
静粛0.1%
0.1%
0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
もの優しく肩が動くと、その蝋の火が、件の絵襖の穴をのぞく……その火が、洋燈ランプしんの中へ、𤏋ぱっと入って、一つになったようだった。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この夏もおたがひたび先や何かで久しくかほを合せなかつた二人、さて新秋になると、むかうはあた海で勉強べんけうして大につよくなつたと自しんを持ち
「おらあもういっそく(百)四五十もあげたぜ、そろそろひきあげて一杯やるとしようや、おらあもう躯のしんまで冷えきっちまった」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこをさかのぼると、自分のうつっている血をとおして、遠い大祖おおおやたちの神業かみわざと、国体のしんが、いつか明らかに、心に映じてくる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯の谷もここは山の方へはずれの家で、奥庭が深いから、はたの騒しいのにもかかわらず、しんとした藪蔭やぶかげに、細い、青い光物が見えたので。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しん澄み、心和やかにして、一片の俗情さえも、断じて自分を遮りえないという、こういう境地に辿りつかないでは、うそだと思います。
表門の潜戸くゞりどばかりをけた家中は空屋敷あきやしきのやうにしんとして居る。自分は日頃から腹案して居る歌劇オペラ脚本の第一頁に筆を下して見た。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
寂然しんと更けた纐纈城、耳を澄ませば地下に当って、物の呻くような音がする。人間の血を無限にむさぼる、血絞り機械の音である。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
むかししんの良臣は、匈奴きょうどの滅びざるうちは家を造らず、といいました。蜀外一歩出れば、まだ凶乱をうそぶく徒、諸州にみちている今です。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともしらぬ一同は、その日も帰らぬ源三郎を案じながらも、門之丞のことなどあれこれと話しあって、その晩は早くしんについた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
昭は一時、大いに威を振るい、大魏大将軍になり、また、しん王の九錫きゅうしゃくをうくるにいたって、ほとんど、帝位に迫るの勢威を示した。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『乍浦集』の原本は西暦千八百四十二年すなわち我が天保十三年壬寅の年英国の軍隊が南しんの諸州をこうし遂に香港ホンコンを割譲せしむるに至った時
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おこのがはらったのはずみが、ふとかたからすべったのであろう。たもとはなしたその途端とたんに、しん七はいやというほど、おこのにほほたれていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
海蛇うみへびられたとは、しんめうことだとおもつてりましたが、それがよく隱語いんご使つか伊太利人イタリーじんくせで、その書面しよめんではじめてわかりましたよ。
思はゞお花殿に力をそへかたき吾助を討取べしと其許心付れしならば其由悴に告て給るべし又此金子はわづかながらお花殿へしんじ申度とて金二百兩の包を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この言葉がしんをなしたのか、果然、その晩、季節はずれの暴風が一夜吹きつのった。そして眼の前の砂丘の上へ石の標柱を現出した。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
年忌の法会ほうえなどならばその人を思ひ出すとか、今にまぼろしに見ゆるとか、年月の立つのは早いものとか、彼人がしんでから外に友がないとか
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「耳の形のふくよかなことは。これは水耳すいじと申します。木耳もくじにしなければなりますまい。六しんを失い財帛ざいはく不足孤苦無援の木耳にね」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
白く谷川がさらさらとながれている。その辺は一面に小石や、砂利で、森然しんとして山に生い茂った木立が四境あたりを深くとざしている。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「『きみはずかしめらるればしんす』ということさえある。臣が君より上席に坐れば、とりもなおさず臣が君を辱めることになる」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
怪談を話す時には、いつもランプのしんを暗くし、幽暗ゆうあんな怪談気分にした部屋へやの中で、夫人の前に端坐たんざして耳をすました。
B それで其女そのをんなはね。わたしの一しんさゝげるひとはあなたよりほかにはないとかなんとかつてね。是非ぜひこのあはれなるもだえのすくつてくださいとかなんとかいたものだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
わが越後のごとく年毎としごと幾丈いくぢやうの雪をなんたのしき事かあらん。雪のためちからつくざいつひやし千しんする事、しもところておもひはかるべし。
しん少主せうしゆとき婦人ふじんあり。容色ようしよく艷麗えんれい一代いちだいしかしておびしたむなしくりやうあしともにもゝよりなし。常人じやうじんことなるなかりき。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、神聖の地域として、教主の宮川覚明が、許さない限りは寄り付くことの出来ない、この岩山の洞窟の入り口——そこの辺りには人気がなくて、森閑しんとして寂しかった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
武の長男のしんが王という家のむすめめとっていた。ある日武は他出して林児を留守居にしてあった。そこの書斎の庭に植えてある菊の花が咲いていた。
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
子曰く、しんや、吾が道、一以て之を貫くと。曾子曰く、と。子ず。門人問いて曰く、何の謂ぞやと。曾子曰く、夫子の道は、忠恕のみと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
と得意の一節寂寞しんとする。——酔えばあおくなる雪のおもてに、月がさすように電燈の影が沈むや。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
性理字義せいりじぎ』に曰く、『生死をもって論ずれば、生は気のしん、死は気のくつ。死の上について論ずれば、すなわち魂ののぼるは神となり、魄のおりるは鬼となる。 ...
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
……いま言ったように、しんのところにはっきりしないところがあって、殺されるまではわかっているが、どんな方法で殺られるかわからねえから防ぎがつかないのだ。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
八年春三月、工部尚書こうぶしょうしょ厳震げんしん安南あんなん使つかいするのみちにして、たちまち建文帝に雲南にう。旧臣なお錦衣きんいにして、旧帝すで布衲ふとつなり。しんたゞ恐懼きょうくして落涙とどまらざるあるのみ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しんぱつ、また、眼もとまらぬ一げきとつ、すべて見事な肉体のから演舞だった。史進は、声をらして、そののどから臓腑ぞうふを吐かんとするほどに身も疲れてしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この語はしんをなした。三島由紀夫は終戰とともに、非情な「殺人者」として登場したからである。もつともこの正體を世間が認識するまでには、相當の時日を必要とした。
それから追いおいに立身して、しん州の録事参軍ろくじさんぐんとなったが、風采も立派であり、談話も巧みであり、酒も飲み、まりも蹴る。それで職務にかけては廉直れんちょくというのであるから申し分がない。
私は眞實しんから愛した。その心持には今日でも變りがない。
雪をんな (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
二人ふたりは連れだって中二階の前まで来たが、母屋おもやでは浪花節なにわぶし二切ふたきりめで、大夫たゆうの声がするばかり、みんな耳を澄ましていると見えて粛然しんとしている。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「震災後二年を隔てゝ夏秋の交に及び、先生時邪に犯され、發熱劇甚げきじんにして、良醫交〻こも/″\きたしんし苦心治療を加ふれど効驗なく、年八十にして七月十八日溘然かふぜん屬纊ぞくくわう哀悼あいたうを至す」
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
しんと榮子は来ないけれど。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ここおい(七)これみぎす。婦人ふじんおほいわらふ。孫子そんしいはく、『約束やくそくあきらかならず、(八)申令しんれいじゆくせざるは、しやう罪也つみなり』と。た三れいしんしてこれひだりす。婦人ふじんおほいわらふ。
今までは注射しんを以て左の腕の静脈から血を採って居たが、今回だけは、僕の左の橈骨とうこつ動脈にガラス管をさしこみ、そのまゝゴムかんでつないで、僕の動脈から
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
はじめには越後の諸勝しよしようつくさんと思ひしが、越地ゑつちに入しのちとしやゝしんして穀価こくか貴踊きようし人心おだやかならず、ゆゑに越地をふむことわづかに十が一なり。しかれども旅中りよちゆうに於て耳目じもくあらたにせし事をあげて此書に増修そうしうす。
出る、ともう、そこらでふくろうの声がする。寂寥しんとした森の下を、墓所に附いて、薄暮合いに蹴込けこみ真赤まっかで、晃々きらきら輪が高く廻った、と思うと、早や坂だ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
活しながらに一枚〻〻皮を剥ぎ取れ、肉を剥ぎとれ、彼等が心臓しんを鞠として蹴よ、枳棘からたちをもて脊をてよ、歎息の呼吸涙の水、動悸の血の音悲鳴の声、其等をすべて人間ひとより取れ、残忍の外快楽なし
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
しんみりと、伝右衛門はいった。そして
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仏が寺門屋下に鴿はと蛇猪を画いてどんしんを表せよと教え(『根本説一切有部毘奈耶』三四)、その他蛇を瞋恚しんいの標識とせる事多きは、右の擬自殺の体を見たるがその主なる一因だろう
松太郎は、二十四といふとしこそ人並に喰つてはゐるが、生來の氣弱者、經驗のない一人旅に、今朝から七里餘の知らない路を辿つたので、心のしんまでも疲れ切つてゐた。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひたむきにしづけかりけり日の方や向日葵ひまはりしんけつくしたる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
致させしに胸先むねさきより小腹せうふくの邊りへ一二しんうついなや立所に全快致しけり勇右衞門は持病ぢびやうゆゑ寒暖かんだんに付ておこる時は急にをさまらぬ症なるに城富の鍼治しんぢにて早速快氣こゝろよくなりける故大いに喜び紙につゝみて金二百疋を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
暫時しばらく、三人は無言になつた。天も地もしんとして、声が無かつた。急に是の星夜の寂寞せきばくを破つて、父の呼ぶ声が丑松の耳の底に響いたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
丑松は唯単独ひとりになつた。急に本堂の内部なかしんとして、種々さま/″\の意味ありげな装飾が一層無言のなかに沈んだやうに見える。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
私はまた親睦会というから大方演じゅつ会のようなたちのもんかしらとおもったら、なアにやっぱりしんの好い寄席よせだネ。此度こんだ文さんも往ッて御覧な、木戸は五十銭だヨ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しんわりいてッたッて」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
きゝ吉兵衞不しんに思ひ御の如く幼少えうせうの時不※ふと怪我けがを致せしが其あとが今にのこり在しを娘が人さうかゝると人々が申せしとて平常つねに苦勞致しをりしが此度斯樣かやうの死を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
上へ返して押たる者と相見え爪印がさかさに成て居るはコリヤ如何の譯なりやと云ければ九助はハツトばかりにて一言の返答へんたふもなく只落涙らくるゐしづ俯向うつむいて居たるにぞ理左衞門は迫込せきこんでコリヤ何ぢや御重役方よりの御不しんなるぞおのれ何心なく押たのかたゞしゆび痛所いたみしよにても有てぎやくに押たるやコリヤ何ぢや/\とせき立れど九助は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
荷車は二頭の牛にかせる物ときまつて居るらしいが、牛はヒンヅ教でシヷ神しん権化ごんげである所から絶対に使役しない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
どいがえじゃございませんか。それからこいつが轆轤座ろくろざ切梁きりはり、ええと、こいつが甲板のしん、こいつがやといでこいつが床梁とこ、それからこいつが笠木かさぎ、結び、以上は横材でございます」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
寒気は骨のしんまで突き通す
サガレンの浮浪者 (新字新仮名) / 広海大治(著)
家からお米も炭も取り寄せ、火鉢ひばちの炭火でいた行平ゆきひら中子しんのできた飯をんで食べた。自炊をきらふ階下の亭主の当てこすりの毒舌を耳に留めてからは、私はたいがい乾餅ほしもちばかり焼いて食べてゐた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
家内中の口を奢らせぬようにする……と言うのが前の御寮さんの心掛けで、さすが大家の御寮さんは違うたもの……これならば蔵元屋の身代は万劫まんご末代、大磐石と中心しんから感心しておりました
太祖の詔、可なることはすなわち可なり、人情には遠し、これより先に洪武十五年こう皇后の崩ずるや、しんしんえん王等皆国に在り、しかれども諸王はしりてけいに至り、礼をえて還れり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それから三千ねんぜん往古わうこかんがへながら、しんくと、不平ふへい煩悶はんもん何等なんら小感情せうかんじやううかぶなく、われ太古たいこたみなるなからんやとうたがはれるほどに、やすらけきゆめるのである。
景公けいこう諸大夫しよたいふかうむかへ、ねぎられいし、しかのちかへつて(三二)しんかへる。すでにして穰苴じやうしよたつとんで大司馬たいしばす。田氏でんしもつ益〻ますますせいたつとし。
して——(女神じょしんは、まったくきておいでなさる。幽寂しんとした時、ふと御堂みどうの中で、チリンと、かすかな音のするのは、かんざしが揺れるので、その時は髪をでつけなさるのだそうで。)
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しんちゃんの所はどうおしだえ? お父さんは知らせた方がいとか云ってお出でだったけれど。」
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
の太祖の言は、まさに是れ太祖が胸中の秘を発せるにて、はやくよりこの意ありたればこそ、それより二年ほどにして、洪武三年に、そうこうていしゅくていしんたんの九子を封じて
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
暴風がしんをわたる森の胸をひらき
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
灰ばんだ土へしつかりと埋め込まれて森乎しんとしながら、死んでゐるやうな穏かさをもつてゐるからである。庭を愛するひとびとよ、枝や葉を見ないで根元が土から三四寸離れたところを見たまへ。
冬の庭 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
しんなんざそんでも、どうにか出來できんのか」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大成はちん姓の家からおさ珊瑚さんごという女をめとったが、大成の母のしんというのは、感情のねじれた冷酷な女で、珊瑚を虐待したけれども、珊瑚はすこしもうらまなかった。
珊瑚 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
長沮ちょうそ桀溺けつできならびて耕す。孔子之をぎり、子路をしてしんを問わしむ。長沮曰く、輿を執る者は誰と為すと。子路曰く、孔丘と為すと。曰く、是れ魯の孔丘かと。曰く、是なりと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
第二十一子しん王とし、第二十二子えいあん王とし、第二十三子けいとう王とし、第二十四子とうえい王とし、第二十五子𣟗王としたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しばらく彼も我も無念しんになって竿先を見守ったが、魚のあたりはちょっと途断とだえた。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しん皇后を除くため、張韜ちょうとうという廷臣ていしんと謀って、桐の木の人形に、魏帝の生年月日を書き、また何年何月地に埋むと、呪文を記して、わざと曹丕の眼にふれる所へ捨てた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時も高が風邪かぜなれど、東京、大阪、下の関と三度目のぶり返しなれば、存外ぞんぐわい熱も容易にはさがらず、おまけに手足にはピリンしんを生じたれば、女中などは少くとも梅毒患者ばいどくかんじや位には思ひしなるべし。
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ちょうど、子爵とそのばばあとの間に挟まる、柱にもたれた横顔が婦人おんなに見える西洋画家は、フイと立って、真暗まっくらな座敷の隅へ姿を消した。真個しんに寐入っていたのでは無かったらしい。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これはどうもならぬそのやうに茶利ちやりばかり言はで少し真実しんの処を聞かしてくれ、いかに朝夕てうせきを嘘の中に送るからとてちつとは誠も交るはづ良人おつとはあつたか
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
兄のしんは、大斧をよくつかい、弟のしん方天戟ほうてんげきの妙手として名がある。兄弟しめし合わせて、彼を挟み討ちに
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しん王以下は、永楽えいらくに及んで藩に就きたるなれば、しばらくきて論ぜざるも、太祖の諸子をほうじて王となせるもまた多しというべく
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しんの首をななめしげて嫣然えんぜん片頬かたほに含んだお勢の微笑にられて、文三は部屋へ這入り込み坐に着きながら
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
山は朝霧なお白けれど、秋の空はすでに蒼々あおあおと澄み渡りて、窓前一樹染むるがごとくくれないなる桜のこずえをあざやかにしんいだしぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
すでにして大夫たいふ鮑氏はうしかうこくぞくこれみ、景公けいこうしんす。景公けいこう穰苴じやうしよ退しりぞく。しよやまひはつしてす。田乞でんきつ田豹でんへうこれつてかうこくうらむ。
忠義堂の前には四ながれのばんがつるされ、堂上には三層の星辰台がみえ、三聖の神像をなかに、二十八宿しゅく、十二宮しん星官ほしがみたちの像も二列にならんでまつられている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
話柄が途切れてしんとすると、暑さが身に沁みて、かんかん日のあたる胴の間に、折り重なっていぎたなく寝そべった労働者の鼾が聞こえた。
かんかん虫 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
老先生が眼鏡を掛て、階下したで牛肉を切つて居る間は、奧の二階は閑寂しんとして居る。そこには先生の書籍ほんが置並べてある。机の上には先生の置き忘れた金錢かねがある。
にわかに閴寂しんとした家の内の空気は余計に捨吉の心をいらいらさせた。小父さんから姉さんから下女までも動いて行っている中で、黙ってそれを視ている訳には行かなかった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
岸本は節子と一緒に石を敷きつめた墓地の一区域へと出た。そこまで行くと人足達の姿も高い墓石に隠れて、唯土でも掘り起すらしい音が闃寂しんとした空気にひびけて伝わって来ていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と幸三郎は飲めない酒を飲んでグッスリ寝付きますと、温泉場も一時(午前)から三時までの間は一際しんと致します。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それにもかかわらず邸内が陰森しんとして物寂しく、間ごとにともされた燭台の灯も薄茫然うすぼんやりと輪を描き、光の届かぬ隅々には眼も鼻もない妖怪あやかしが声を立てずに笑っていそうであり
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
相変らず静寂しんとしている。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
敷石のぱっとあかるい、静粛しんとしながらかすかなように、三味線さみせんが、チラチラ水の上を流れて聞える、一軒大構おおがまえの料理店の前を通って、三つ四つ軒燈籠の影に送られ、御神燈の灯に迎えられつつ
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼にいわれたとおり、大悟たいごまなこをふさいで、もう生きる気も捨て、死ぬ気もすて、颯々と夜を吹くかぜと小糠星こぬかぼしの中に、骨のしんまで、冷たくなってしまったもののようであった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
善庵は次男かくをして片山氏をがしめたが、格は早世した。長男正準せいじゅんでて相田あいだ氏をおかしたので、善庵の跡は次女の壻横山氏しんいだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)