病牀雑記びょうしょうざっき
一、病中閑なるを幸ひ、諸雑誌の小説を十五篇ばかり読む。滝井君の「ゲテモノ」同君の作中にても一頭地を抜ける出来栄えなり。親父にも、倅にも、風景にも、朴にして雅を破らざること、もろこしの餅の如き味はひありと言ふべし。その手際の鮮かなるは恐らくは …