“閑”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
ひま55.7%
かん20.4%
しづ6.2%
しず5.5%
のど4.2%
しずか2.4%
しづか1.4%
のどか1.4%
いとま0.3%
0.3%
(他:6)2.2%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
夜は一時か二時に寝、朝は朝で女中よりも先に起き出る幾は、昼間のひまな時刻にはごろりと居間の暗い片隅で横になり、直ぐにいびきを立てた。
鳥羽家の子供 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
別にこれという意味はなかったのだけれど、恰度ちょうどその方向が、帰りみちになっていたせいもあり、又、彼の「ひま」がそうさせたのだ。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
では何をするかと言えば、K君やS君に来てもらってトランプや将棊しょうぎひまをつぶしたり、組み立て細工ざいく木枕きまくらをして
手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
第一線に近い岡崎を退き、わざと浜松に、かんをめでて、大坂のことなど耳から遠い顔をしていた家康は、ことしになって、よく狩猟かりに出ていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敷き棄てた八反はったん座布団ざぶとんに、ぬしを待つ温気ぬくもりは、軽く払う春風に、ひっそりかんと吹かれている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
松吟庵しょうぎんあんかんにして俳士はいしひげひねるところ、五大堂はびて禅僧ぜんそうしりをすゆるによし。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あしのちかづくと、またこの長汀ちやうていかぜさわやかに吹通ふきとほして、人影ひとかげのないものしづかさ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つくづくと眺めてあれば、しづかなる入江のさまや、苫舟にのぼる煙も、風けばぐに一すぢ、ほそぼそとしばしのぼれり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つくづくと眺めてあれば、しづかなる入江のさまや、苫舟にのぼる煙も風ければぐに一すぢほそぼそとしばしのぼれり。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「敵の人数色黒み備しずかにして勢い殊之外ことのほか見事也。間近になると拍子を揃え太鼓を鳴らし大筒を打立うちたて黒烟を立てて押寄す」
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
緑草直ちに門戸に接するを見、樹林の間よりは青煙しずかに巻きて空にのぼるを見る、樵夫しょうふの住む所、はた隠者の独座して炉に対するところか。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「お、悪かったな。こころない問いつめなどして。……いやしかし、ここは泣くにはしずか。……むりもない。人眼もなし、こころゆくまでお泣きなされ」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菜の花のかをりと、河内和泉の、一圓に黄色にぬりつぶした中に、青い道路のある、のどけさと、ゆたけさとをもつ田舍が、すぐ目にくるのだつた。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
それは春の日のことで、霞める浦輪うらわには、寄せる白波のざわざわという音ばかり、磯の小貝は花のように光っているのどかさだった。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
絶壁の上のかえでの老樹も手に届くばかりに参差しんしと枝を分ち、葉を交えて、鮮明に澄んでのどかな、ちらちらとした光線である。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
通を曲って横町へ出て、なるべく、話の為好しいしずかな場所を選んで行くうちに、何時か緒口いとくちが付いて、思うあたりへ談柄だんぺいが落ちた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この弟宮も、しごくしずかさがではあったが、父皇の遠謀によるおいいつけと、また兄宮大塔の下にもよくその命に従って、
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「つまり、しずかであれば、人が山を見。忙しければ、人は山に見られているということなので」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うしたみせ端近はしぢかは、おくより、二階にかいより、かへつて椅子いすしづかであつた——
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とほりまがつて横町へて、成るく、はなし為好しいしづかな場所を撰んで行くうちに、何時いつ緒口いとくちいて、思ふあたりへ談柄だんぺいが落ちた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しづかさや岩にしみ入る蝉の声
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
のどかな線で、発車するまでの間を、車掌がその辺の子供と巫山戯ふざけていたり、ポールの向きを変えるのに子供達が引張らせてもらったりなどしている。
路上 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
春日ののどかなる趣は、ありふれた小鳥のさえずりよりも、雞の鳴声よりも、かえってこの雉子の声において深められたかの感がある。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
清々冷々の玄風げんぷうを迎へ、たいしづかに心のどかにして、冥思を自然の絶奥ぜつおくに馳せて
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
「武蔵は、この辺の土地が、好きだった。それは自分の生れ故郷の景色と、この辺の景色がよく似ているからであった。いとまがあると、岩殿山へ遊びに来て、幼い日のことを思い出していた」
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほど経て窻をおと
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
話柄が途切れてしんとすると、暑さが身に沁みて、かんかん日のあたる胴の間に、折り重なっていぎたなく寝そべった労働者の鼾が聞こえた。
かんかん虫 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
荻生さんが心配して忙しい郵便事務のすきをみて、わざわざ弥勒みろくまで出かけて行くと、清三はべつに変わったようなところもなく、いつも無性ぶしょうにしている髪もきれいに刈り込んで、にこにこして出て来た。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
宗吉はかくてまた明神の御手洗みたらしに、更に、氷にとじらるる思いして、悚然ぞっと寒気を感じたのである。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
コックスが肥後か肥前の王五十万石を領すといえるは忠広なる事疑いなくこの人勇武なるのみならず外人に接する礼にならい世辞目なき才物たりしと見ゆ。
左枝の、支える側から流れてゆく、跫音あしおとのみが高く、この一座はあまりにもひっそりとしていた。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)