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閑
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かん
ふりがな文庫
“
閑
(
かん
)” の例文
一、病中
閑
(
かん
)
なるを幸ひ、諸雑誌の小説を十五篇ばかり読む。
滝井
(
たきゐ
)
君の「ゲテモノ」同君の作中にても
一頭地
(
いつとうち
)
を抜ける出来
栄
(
ば
)
えなり。
病牀雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それは
丁度
(
ちょうど
)
午前十時半ごろだった。この時刻には、
流石
(
さすが
)
の新宿駅もヒッソリ
閑
(
かん
)
として、プラットホームに立ち並ぶ人影も
疎
(
まば
)
らであった。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
とっぷりと暮れて六ツ半ともなれば、参詣の人影も絶え、ついで、屋敷の大扉はとざされてしまったので、あたりはひっそり
閑
(
かん
)
。
顎十郎捕物帳:17 初春狸合戦
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
トタン屋も来ない様になり、家の中は一層ひっそり
閑
(
かん
)
として、私が大股に縁側を歩く音が、気の引ける様に、お寺の様に高い天井に響く。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そしてどこの門の中も、人気が無いかのようにひっそり
閑
(
かん
)
としていて、敷きつめた小砂利の上に、太陽がチカ/\光っていた。
子をつれて
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
▼ もっと見る
津田の
明
(
あく
)
る
朝
(
あさ
)
眼を
覚
(
さ
)
ましたのはいつもよりずっと遅かった。家の
内
(
なか
)
はもう
一片付
(
ひとかたづき
)
かたづいた後のようにひっそり
閑
(
かん
)
としていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
老齢六十五、何十年来藩政をみて、また天下の
枢機
(
すうき
)
にも参じ、いま
致仕
(
ちし
)
して、
閑
(
かん
)
にあってもなお、かれはしみじみそう
喞
(
かこ
)
たずにはいられない。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渡り廊下でつづいた別棟に、お蓮様、丹波をはじめ道場の一派、われ
関
(
かん
)
せず
焉
(
えん
)
とばかり、ひっそり
閑
(
かん
)
と暮らしているんです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
巨大な旧式洋館の大沢子爵邸内の春の夜はヒッソリ
閑
(
かん
)
と静まり返って、階下玄関の
大時計
(
グランドファザー
)
のユックリユックリとした振子の音が冴え返っていた。
継子
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
閑
(
かん
)
中の
余技
(
よぎ
)
として
樂
(
たの
)
しむ
僕達
(
ぼくたち
)
の
棋戰
(
きせん
)
でさへ負けては
樂
(
たの
)
しからず、
惡
(
あく
)
手を
指
(
さ
)
したり
讀
(
よ
)
みの不足で
詰
(
つ
)
みを
逸
(
いつ
)
したりした時など
下手の横好き:―将棋いろいろ―
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
四境
閑
(
かん
)
にして呼吸の蜜よりも甘い時、
恍惚
(
こうこつ
)
として夢路に迷い入るの快味を味わうものにとっては、この世の歓楽などは物の数ではないとのこと。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
亀の遊ぶのを見たりとて面白くもなし
湊川
(
みなとがわ
)
へ行て見んとて堤を上る。昼なれば白面の
魎魅
(
りょうみ
)
も影をかくして軒を並ぶる小亭
閑
(
かん
)
として人の気あるは稀なり。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
一議
(
いちぎ
)
に及ばず、
草鞋
(
わらじ
)
を上げて、道を左へ
片避
(
かたよ
)
けた、足の底へ、草の根が
柔
(
やわらか
)
に、
葉末
(
はずえ
)
は
脛
(
はぎ
)
を隠したが、
裾
(
すそ
)
を引く
荊
(
いばら
)
もなく、
天地
(
てんち
)
閑
(
かん
)
に、虫の
羽音
(
はおと
)
も聞えぬ。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もう夕方で、閉館時間が迫って来て、見物達は大抵帰ってしまい、館内はひっそり
閑
(
かん
)
と静まり返っていた。
目羅博士の不思議な犯罪
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
琴平様の縁日の時は、多少賑うが、ふだんはいつもひっそり
閑
(
かん
)
としている。前が宮様で、その隣が公園だからでもあろう。私はあんな住心地の好いところを知らない。
芝、麻布
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
幸
(
さいわい
)
に私は一日の
閑
(
かん
)
を得たので、二三の兵卒を同道して、初対面のこの大伯父の寺を訪れたのである。老僧は八十有余の
善智識
(
ぜんちしき
)
であって、
最早
(
もう
)
五十年来、この寺の住職である。
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
八畳の書斎の中央に、一
閑
(
かん
)
張
(
ば
)
りの机を前にして父は端然と坐つてゐた。そして其眼はぢつと前方遠くを
見凝
(
みつ
)
めてゐた。机の上には一冊の和本と、綴ぢた
稿本
(
かうほん
)
とが載せてあつた。
父の死
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
ここでグラリと肉附きのよい躯を、左の方へ蜒らせて、腰のつがいの軟かさを示し、眼を細くしてウットリ
閑
(
かん
)
と、民弥の顔に見入りかけたが、ハッと気がついて少し赧くなり
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
中から出て來たのは、少し古くなつた
桐柾
(
きりまさ
)
の箱で、その
蓋
(
ふた
)
を取ると、中に納めてあるのは、その頃
明人
(
みんじん
)
の
飛來
(
ひらい
)
一
閑
(
かん
)
といふ者が作り始めて、大變な流行になつて來た一
閑張
(
かんばり
)
の
手筐
(
てばこ
)
。
銭形平次捕物控:020 朱塗りの筐
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
どの部屋の窓のカーテンも皆下りてひっそり
閑
(
かん
)
としている。たま/\わが隣室にはタイプライターを打つ音が響いている。この隣室にもタイピスト一人出て来ているものかも知れぬ。
丸の内
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「おかしいねえ、いやにひっそり
閑
(
かん
)
としているねえ」と、他の一人は腹立たしげに云った、「いかにも何でも、本船の難儀に気づかぬわけはあるまい、先程、たしか、自分は見たが」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
口を
糊
(
こ
)
せんとすれば、学を脩むるの
閑
(
かん
)
なし、学を脩めんとすれば、口を糊するを得ず。一年三百六十日、脩学、半日の閑を得ずして身を終るもの多し。道のために遺憾なりというべし。
学問の独立
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
戦後その身の
閑
(
かん
)
なるがために
所謂
(
いわゆる
)
脾肉
(
ひにく
)
の
嘆
(
たん
)
に
堪
(
た
)
えず、
折柄
(
おりから
)
渡来
(
とらい
)
したる日本人に対し、もしも日本政府にて
余
(
よ
)
を
雇入
(
やといい
)
れ
彼
(
か
)
の
若年寄
(
わかどしより
)
の
屋敷
(
やしき
)
のごとき
邸宅
(
ていたく
)
に居るを得せしめなば
別
(
べつ
)
に
金
(
かね
)
は望まず
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
松吟庵
(
しょうぎんあん
)
は
閑
(
かん
)
にして
俳士
(
はいし
)
髭
(
ひげ
)
を
撚
(
ひね
)
るところ、五大堂は
寂
(
さ
)
びて
禅僧
(
ぜんそう
)
尻
(
しり
)
をすゆるによし。いわんやまたこの時金風
淅々
(
せきせき
)
として天に
亮々
(
りょうりょう
)
たる
琴声
(
きんせい
)
を聞き、細雨
霏々
(
ひひ
)
として
袂
(
たもと
)
に
滴々
(
てきてき
)
たる
翠露
(
すいろ
)
のかかるをや。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そしてどこの門の中も、人氣が無いかのやうにひつそり
閑
(
かん
)
としてゐて、敷きつめた小砂利の上に、太陽がチカ/\光つてゐた。
子をつれて
(旧字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
帆村が続いて外に飛び出して見ると、蠅男は何処へ行ったものか影も姿もなく、戸外には唯ひっそり
閑
(
かん
)
とした
黒暗暗
(
こくあんあん
)
たる闇ばかりがあった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
第一線に近い岡崎を退き、わざと浜松に、
閑
(
かん
)
をめでて、大坂のことなど耳から遠い顔をしていた家康は、ことしになって、よく
狩猟
(
かり
)
に出ていた。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そう、
粗忽
(
そこつ
)
だから修業をせんといかないと云うのよ、忙中
自
(
おのずか
)
ら
閑
(
かん
)
ありと云う
成句
(
せいく
)
はあるが、閑中自ら忙ありと云うのは聞いた事がない。なあ苦沙弥さん」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
停車場
(
ステイション
)
に
演劇
(
しばい
)
がある、町も村も引っぷるって
誰
(
たれ
)
が角兵衛に
取合
(
とりあ
)
おう。あわれ人の中のぼうふらのような
忙
(
せわ
)
しい稼業の
児
(
こ
)
たち、今日はおのずから
閑
(
かん
)
なのである。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ひっそり
閑
(
かん
)
としたものですから、七兵衝は炭団を
肴
(
さかな
)
に、また煙草をのみはじめ、座敷の中を見るとはなしに見まわしているうち、なんとなく無常の感というものにでも打たれたように
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
鎌倉河岸の三國屋は、ひつそり
閑
(
かん
)
と、無氣味なほど靜まり返つてをりました。錢形平次と八五郎が乘込んで行くと、不承/\に迎へたのは、手代の丈太郎といふ、拔目の無い感じの三十男です。
銭形平次捕物控:187 二人娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
京都清遊の後、居士はたちまち
筆硯
(
ひっけん
)
に
鞅掌
(
おうしょう
)
する
忙裡
(
ぼうり
)
の人となった。けれども
閑
(
かん
)
を得れば旅行をした。「旅の旅の旅」という紀行文となって『日本』紙上に現われた旅行はその最初のものであった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
葬式彦だけはけろり
閑
(
かん
)
とこれだけは片時も離さない屑籠を背にてすりに腰かけてはだけたお美野の裾前を覗き込むように、例の「かんかんのう、きうのれす——」でも
低声
(
こごえ
)
に唄っているのだろう。
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
父の
閑
(
かん
)
は
奉天
(
ほうてん
)
の令で、公平の人物として名高かった。
岷山の隠士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そのとき彼は多少の
閑
(
かん
)
でも心にあったのか。
短冊
(
たんざく
)
を手に何か書きかけていたが、立騒ぐ周囲を見て「すべては運命というもの。俄に何の用心やある」
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
新聞屋になって、
糺
(
ただす
)
の
森
(
もり
)
の奥に、哲学者と、
禅居士
(
ぜんこじ
)
と、若い坊主頭と、古い坊主頭と、いっしょに、ひっそり
閑
(
かん
)
と暮しておると聞いたら、それはと驚くだろう。
京に着ける夕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
水曜日は諸学校に授業あるに
関
(
かゝは
)
らず、私塾
大抵
(
たいてい
)
は休暇なり。予は
閑
(
かん
)
に乗じ、庭に
出
(
い
)
でて
彼
(
か
)
の竹藪に赴けり。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのうちに一行は見る見るうちに室を出ていって、あとはヒッソリ
閑
(
かん
)
として機会は逃げてしまったのだ。
俘囚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
丹波をはじめ十五人の道場のものどもが、いまだに顔を出さないのみか、さほど広くもなさそうなこの
寮
(
りょう
)
が、イヤにヒッソリ
閑
(
かん
)
として、どこにその連中がいるのか、そのけはいすらもないことです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ひつそり
閑
(
かん
)
と鎭まり返つて居るのでした。
銭形平次捕物控:262 綾の鼓
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
として彼は今日も、舶載の支那鉢に、ひと株の福寿草を移し植え、それを卓の
春蘭
(
しゅんらん
)
とならべて、みずから入れた茶を
喫
(
きっ
)
しながら、ひとり
閑
(
かん
)
を養っていた。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
春は過ぎても、
初夏
(
はつなつ
)
の日の長い、五月
中旬
(
なかば
)
、
午頃
(
ひるごろ
)
の郵便局は
閑
(
かん
)
なもの。受附にもどの口にも他に
立集
(
たちつど
)
う人は一人もなかった。が、為替は直ぐ
手取早
(
てっとりばや
)
くは
受取
(
うけと
)
れなかった。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
敷き棄てた
八反
(
はったん
)
の
座布団
(
ざぶとん
)
に、
主
(
ぬし
)
を待つ
間
(
ま
)
の
温気
(
ぬくもり
)
は、軽く払う春風に、ひっそり
閑
(
かん
)
と吹かれている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
同じ警察署の
夜更
(
よふ
)
けである。今夜は事件もなく、署内はヒッソリ
閑
(
かん
)
としていた。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
真夜中の江戸は、うそのようにヒッソリ
閑
(
かん
)
としています。折りから
満潮
(
みちしお
)
とみえまして、ザブーリ、ザブリ、橋
杭
(
ぐい
)
を洗う水音のみ、寒々とさえわたって、杭の根に、真白い水の花がくだけ散っている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
けれどお前達に心配させてはなるまいから、これからは孔明も折々には
閑
(
かん
)
を愛し身の養生にも努めることにしよう
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おおいと云う声が白く光る路を、春風に送られながら、のそり
閑
(
かん
)
と行き尽して、
萱
(
かや
)
ばかりなる突き当りの山にぶつかった時、一丁先きに動いていた四角な影ははたと留った。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私
(
わし
)
も今日は、こうして一人で留守番だが、
湯治場
(
とうじば
)
の橋一つ越したこっちは、この通り、ひっそり
閑
(
かん
)
で、人通りのないくらい、修善寺は大した人出だ。親仁はこれからが稼ぎ時ではないのかい。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「中は、ひっそり
閑
(
かん
)
としてまっせ」
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
閑
(
かん
)
の身境、
寂
(
じゃく
)
の心境。やはり人間には、尊いものに相違ございません。けれど、まったくの閑人となっては、その
効
(
かい
)
もありません。
空寂
(
くうじゃく
)
というべきです。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“閑”の意味
《名詞》
(ひま)やるべきことがなく、時間を持て余していること。
(出典:Wiktionary)
閑
常用漢字
中学
部首:⾨
12画
“閑”を含む語句
長閑
閑寂
閑話休題
等閑
森閑
一閑張
閑静
閑人
閑古鳥
閑散
閑居
閑々
小閑
閑話
静閑
空閑
閑暇
閑却
閑雅
閑日月
...