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立集
春は過ぎても、
初夏の日の長い、五月
中旬、
午頃の郵便局は
閑なもの。受附にもどの口にも他に
立集う人は一人もなかった。が、為替は直ぐ
手取早くは
受取れなかった。
容貌が能く音羽小町と
綽名にさるゝ程にてあれば
氏なくて玉の輿に乘る
果報愛度其日
消光の賣卜者の娘が大家の
嫁に成なら親父殿まで浮び上り
左團扇に成で有らうと然ぬだに口やかましきは
棟割長屋の
習慣とて老婆も
嚊も小娘もみな路次口に
立集ひ
姦と讀むじだらくの
口唇翻す
餞舌塒求むる小雀の
群立騷ぐ如くなり斯くとは