“寂”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
さび39.5%
せき12.7%
さ12.7%
しん10.5%
じゃく5.9%
さみ5.5%
しず3.6%
さびし1.7%
じやく1.7%
しづ1.0%
ひっそ0.9%
しづか0.6%
ひっ0.6%
シヅ0.4%
しずか0.4%
セキ0.4%
ひ0.3%
ひつ0.3%
ひつそ0.3%
さぶ0.1%
しゞま0.1%
ひそ0.1%
ひっそり0.1%
わび0.1%
サブ0.1%
ジャク0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
恋もなしにそんな老人と一生寂(さび)しく暮すことにでもなれば、尚更(なほさ)ら悲しいぢやないか。君だつてそれは悲しいに違ひないんだからね。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
本丸に入ると、さすがに国境七城の主城だけのものはあって、城中はかなり広く、守兵二千余人を容(い)れながらなお寂(せき)たるものがある。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔風の瓦葺(かわらぶ)きの屋根、寂(さ)びた白壁などが並んだ落ち付いた町並みと、柳原あたりの(この辺は昔もあまり立派な町並みではなかったが)
酒場は突然、寂(しん)として水底の静けさに変つた。人々は奴の反感を購ふことを極度に怖れてゐた。多くの村人は奴の債務者であつた。
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
心なしか、暮れかけている泥湖(どろうみ)の水の光も、孤城の影も、何となく寂(じゃく)として、雨の霽(は)れ間(ま)を身に迫る湿(しめ)っぽい風が蕭々(しょうしょう)と吹き渡っていた。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『これから大阪までいても、何處(どこ)ぞへ泊らんなりまへんよつてな。……大阪から家(うち)へは寂(さみ)しいよつて、私(わたへ)もうよう去(い)にまへんがな。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
たしかに、そしておそらくは人にものを教えるという生活の影響であろう、あの頃にはなかった寂(しず)かなおちついた品がついていた。
日本婦道記:小指 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「内じゃお客様が多いから、離れた処で、二室(ふたま)借りておくけれど、こんな時はお隣が空室(あきま)だと寂(さびし)いのね。ほほほほほ、」
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寂(じやく)たる森(もり)の中(なか)深(ふか)く、もう/\と牛(うし)の聲(こゑ)して、沼(ぬま)とも覺(おぼ)しき泥(どろ)の中(なか)に、埒(らち)もこはれ/″\牛(うし)養(やしな)へる庭(には)にさへ紫陽花(あぢさゐ)の花(はな)盛(さかり)なり。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その寂(しづ)かな村落にもく/\と黒く黄(きいろ)い烟(けむ)が立昇つて、ばち/\と木材の燃え出す音! 続いて、寺の鐘、半鐘の乱打、人の叫ぶ声、人の走る足音!
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
お互に痛くないように大造(たいそう)な剣幕で大きな声で怒鳴(どなっ)て掴合(つかみあ)い打合(うちあ)うだろう。爾(そ)うするとその辺の店はバタ/\片付けて戸を締めて仕舞うて寂(ひっそ)りとなる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
雪は、窓を掠(かす)めて、サラ/\、サラ/\と微(かすか)な音を立てる……辛うじて心で聞取れるやうな寂(しづか)な響であツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
神楽坂(かぐらざか)へかかると、寂(ひっ)りとした路(みち)が左右の二階家に挟まれて、細長く前を塞(ふさ)いでいた。中途まで上(のぼ)って来たら、それが急に鳴り出した。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
唯、心寂(シヅ)かな精進によつて、待つべき神興を考へて居たらしい。彼は、感謝の念を持ち易かつた。彼は、すぐれて印象的な叙景詩にも進んだ。
沖はよく和(な)ぎて漣(さざなみ)の皺(しわ)もなく島山の黒き影に囲まれてその寂(しずか)なるは深山(みやま)の湖水かとも思わるるばかり、足もとまで月影澄み遠浅(とおあさ)の砂白く水底(みなそこ)に光れり。
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
大風をつき拔く樣な鋭聲(トゴエ)が、野面(ヅラ)に傳はる。萬法藏院は、實に寂(セキ)として居た。山風は物忘れした樣に、鎭まつて居た。
死者の書 (旧字旧仮名) / 折口信夫、釈迢空(著)
勝又が名を言うと「山けえ」と老人らしい声がしたがそのまま寂(ひ)ッそりとする。「御馳走さまで」と、案内者は水の礼を述べて、いよいよ裾野の中へ入る。
雪中富士登山記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
出窓の前の青桐(あをぎり)を透(とほ)して屋根庇(やねひさし)の陰に、下座敷の寂(ひつ)そりした障子(しやうじ)の腰だけが見えた。其処(そこ)からは時々若夫人の声が響いて、すぐに消えるのだつた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
神楽坂(かぐらざか)へかゝると、寂(ひつそ)りとした路(みち)が左右の二階家(にかいや)に挟(はさ)まれて、細長(ほそなが)く前(まへ)を塞(ふさ)いでゐた。中途迄上(のぼ)つて来(き)たら、それが急に鳴り出(だ)した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
屡々(しばしば)、自分で何をかいたのか呆(あき)れる有様。近頃の句一つ。自嘲(じちょう)。歯こぼれし口の寂(さぶ)さや三ッ日月。やっぱり四五日中にそちらに行ってみたく思うが如何(いかが)? 不一。黒田重治。太宰治様。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
娘の書斎は倉と母屋の間にはさまつて、昼間でも薄暗く、縁の下まで伸びてゐる泉水に鯉の跳ねる音が寂(しゞま)を破るだけの静けさだつた。
繰舟で往く家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
しかし、この何となく落着きのない、しかも最早決して迷わない羊達は何の前にその方陣を組んだであろうかを考える時、私達は寂(ひそ)かにほほ笑ませられるのである。
「壇」の解体 (新字新仮名) / 中井正一(著)
ほぼ三十里あまりもゆくと、山が重なりあって、山の気が爽(さわ)やかに肌に迫り、寂(ひっそり)として人の影もなく、ただ鳥のあさり歩く道があるばかりであった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
……やつれた束ね髪ででもありましょうか、薄暗い行燈(あんどん)のもとに筆をとっている、ゆかしい、あわれな、寂(わび)しい姿が、何となく、なつかしく目に映る。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山の端(ハ)に鴨群(アヂムラ)騒ぎ行くなれど、我は寂(サブ)しゑ。君にしあらねば(同——万葉巻四)
叙景詩の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)