“ひそ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ヒソ
語句割合
28.8%
22.8%
15.6%
9.8%
8.8%
7.5%
1.6%
1.0%
砒素1.0%
0.5%
0.5%
0.4%
乾反0.3%
祕所0.2%
0.2%
潜伏0.2%
秘所0.2%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「実はそこに、自分を裸体はだかにさせない気持がひそんでいるからさ。見たまえ、夢中になって踊っている人間は皆ムキ出しの人間だ——」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男は少しく眉をひそめて、お杉の死顔をじっと眺めていた。市郎は念の為に脈を取って見たが、これも手当を施すべき依頼たのみは切れていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「微行も微行、一切、人目を怖れるひそかな途中だ。わけてここは諸国の者の出入りのはげしい港町。はやくせい。仔細しさいはあとで話すから」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何う転んでも恨みを残さないというのが、君達の所謂いわゆる、競争は競争、友情は友情だろうと思って、俺は心ひそかに敬服していたのだ」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
啓太郎は今日まで、ひそかに中村と鈴木とを尊敬して居たけれど、沼倉が来てから後は、二人はちっともえらくないような気がし出した。
小さな王国 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
が、大震災直後、かの甘粕大尉によつて大杉栄、伊藤野枝の殺害さるるや、出来星のルパシカ青年は忽ちにして影をひそめてしまつた。
大正東京錦絵 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
それで私は心ひそかに覚悟をめたのでございます。そうして当日は、乗物をも用いず辰の口のお役宅まで、お伺いしたのでございました。
正雪の遺書 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ヂュリ おゝ、パリスどのと祝言しうげんをせうほどなら、あのたふうへからんでい、山賊やまだち跳梁はびこ夜道よみちけ、へびくさむらひそめいともはッしゃれ。
十万の少年奴隷をさいなむ、酷使、栄養不良、疾病、砒素ひそ、阿片、銃殺……しかも、天下にこれを救おうとする者は一人も居ない。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
死と云ふものが渠等をすべて呑み下し、一たび生れた兒をまた呑んでしまう鬼子母神の腹のやうに、ひそんでゐた死の影が段段と大きく脹れて來て、渠の心の闇と合した。
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
妾はロダンさんの芸術をひそかながら、妾の心の奥底に感じることが出来ると同時に、この老いた彫刻家に妾は自分の心を与えることが出来たのです。
バルザックの寝巻姿 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
ある夜玄機は例の如く、ともしびもとに眉をひそめて沈思していたが、ようやく不安になって席を起ち、あちこち室内を歩いて、机の上の物を取っては、またすぐに放下しなどしていた。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そはわがうたの祕所ひそなれば
駱駝の瘤にまたがつて (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
縮却項暗嗟吁 くび縮却ちぢめ ひそかに嗟吁さう
僧堂教育論 (新字新仮名) / 鈴木大拙(著)
たゞ二つ三つ記臆きおくとゞまつてるのはかゝ平和へいわあひだにも不運ふうんかみこのふね何處いづこにか潜伏ひそんでつたとえ、ふねのメシナ海峽かいけういでんとするとき一人ひとり船客せんきやく海中かいちゆうげて無殘むざん最後さいごげたこと
此の海老屋へ来てひそんでいたから手前が助かって来た事を知ったのだ、し知らずに己が吾妻橋から飛こんで仕舞ったら手前は跡で此の方に身を任せて、線香一本で義理をたて了簡りょうけんだろう
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし、この何となく落着きのない、しかも最早決して迷わない羊達は何の前にその方陣を組んだであろうかを考える時、私達はひそかにほほ笑ませられるのである。
「壇」の解体 (新字新仮名) / 中井正一(著)
と思うと、怒れる神のひたいの如く最早真闇まっくらに真黒になって居る。妻児さいじの顔は土色になった。草木も人も息をひそめたかの様に、一切の物音は絶えた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
二三度、呼び交わしたのち、雛妓とわたくしはだんだん声をひそめて行った。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しばらくして頭を上げて右の手で煙管を探ッたが、あえて煙草をもうでもなく、顔の色は沈み、眉はひそみ、深く物を思うていである。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
暗黒くらきに住みなれたものは、暗黒くらきに物を見ると同じ事で、不自然なる境におかれたる少年は何時いつしかその暗き不自然の底にひそんで居る黒点を認めることが出来たのだろうと思います。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
故にいやしくも粋を立抜かんとせば、文里がなびかぬ者を遂に靡かす迄に心をひそかに用ひて、而して靡きたる後に身を引くを以て最好の粋想とすべし。