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顰
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ひそ
ふりがな文庫
“
顰
(
ひそ
)” の例文
眉を上げたり
顰
(
ひそ
)
めたりして、当惑の表情とも、不審の表情とも、恐怖の表情とも、それとも単に怜悧な熱心な注意の表情ともつかぬ
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
男は少しく眉を
顰
(
ひそ
)
めて、お杉の死顔を
凝
(
じっ
)
と眺めていた。市郎は念の為に脈を取って見たが、これも手当を施すべき
依頼
(
たのみ
)
は切れていた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
瑠璃子の前には、小姓か何かのように、力のないらしい青年は、極度の当惑に口を
噤
(
つぐ
)
んだまま、その
秀
(
ひい
)
でた
眉
(
まゆ
)
を、ふかく
顰
(
ひそ
)
めていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
其処
(
そこ
)
へ和上の縁談が伝はつたので
年寄
(
としより
)
仲間は皆眉を
顰
(
ひそ
)
めたが、
何
(
ど
)
う云ふ
運命
(
まはりあはせ
)
であつたか、
愈
(
いよ/\
)
呉服屋の娘の
輿入
(
こしいれ
)
があると云ふ
三日前
(
みつかまへ
)
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
夫婦は大層喜んだが、長野から
請待
(
しょうたい
)
した産科のお医者が、これまで四十の
初産
(
ういざん
)
は手掛けたことがないと云って、
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めたそうである。
蛇
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
そしてうっかりその身体にでも触れようものなら、棺桶人夫か道普請の土方にでも、触れられたように眉を
顰
(
ひそ
)
めているのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「なるほど」と博士は顔を
顰
(
ひそ
)
め、「これはこの私の誤まりじゃ……それでは私が訳してあげよう。文句はきわめて簡単じゃからの」
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
平次のことだから、今に何か掴んで來るだらう——と買ひ被つた人達も、次第に眉を
顰
(
ひそ
)
めて、この狂態を見ぬ振りするやうになりました。
銭形平次捕物控:013 美女を洗ひ出す
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ハテ、
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふ
女
(
をんな
)
だと
私
(
わたくし
)
は
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めたが、よく
見
(
み
)
ると、
老女
(
らうぢよ
)
は、
何事
(
なにごと
)
にか
痛
(
いた
)
く
心
(
こゝろ
)
を
惱
(
なや
)
まして
居
(
を
)
る
樣子
(
やうす
)
なので、
私
(
わたくし
)
は
逆
(
さか
)
らはない
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
談
(
はなし
)
がトンと
興
(
はず
)
まない。特に女中を
捉
(
つかま
)
へてキヤツ/\騒ぎ立てる支那人の
傍若無人
(
ばうじやくぶじん
)
さに、湯村は眉を
顰
(
ひそ
)
めてたゞガブ/\酒を
呷上
(
あふりあ
)
げて居る。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
現実の推移はいくらか癖づいた彼女の眉の
顰
(
ひそ
)
め方に魅力を増すに役立つばかりだ。いよいよ中年近い美人として冴え返って行く。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
雪様
(
ゆきさま
)
、
痛
(
いた
)
くはない。
血
(
ち
)
も
出
(
で
)
ぬ、
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めるほどもない。
突
(
つ
)
いて、
斬
(
き
)
つて、さあ、
小刀
(
こがたな
)
で、
此
(
こ
)
のなりに、……
此
(
こ
)
のなりに、……」
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
此処に
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めて語るは
児島惟謙
(
こじまゐけん
)
氏なり。顔も太く、腹も太く、
肝
(
きも
)
太く、のそり/\と眼をあげて見廻すは大倉喜八郎氏なり。
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
『
御城代樣
(
ごじやうだいさま
)
の
御容態
(
ごようだい
)
は、
先
(
ま
)
づお
變
(
かは
)
りがないといふところでございませうな。
癆症
(
らうしやう
)
といふものは
癒
(
なほ
)
りにくいもので。』と、
玄竹
(
げんちく
)
は
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
此の男を此の家へ逗留させる事に成っては何の様に不幸が来るかも知れぬと余は窃に眉を
顰
(
ひそ
)
めた、秀子も無論同じ思いの様だ。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
よく下民の
聚合
(
しゅうごう
)
する
寄席
(
よせ
)
などへ参ると、時々妙な所で
喝采
(
かっさい
)
する事があります。普通の人が
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
める所に限って喝采するから妙であります。
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一高を化して常識の府となさんとする忌むべき傾向を
孕
(
はら
)
んでいる。たとえばいわゆる演説家とクリスチャンの増加するのは私は眉を
顰
(
ひそ
)
める。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
将校は不審さうに眉を
顰
(
ひそ
)
めて、それを読み
下
(
くだ
)
してゐたが、暫くすると腹の底から
揺
(
ゆす
)
り上げるやうに笑ひ出した。手紙にはかう書いてあつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そのあかるい
黛
(
まゆ
)
が、ふと義貞に、ゆうべのある一ときに
顰
(
ひそ
)
めた黛を思い出させた。たましいは人形にうちこまれ、彼女は人間に返っている。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
梭櫚
(
しゆろ
)
の毛を植ゑたりやとも見ゆる
口髭
(
くちひげ
)
を
掻拈
(
かいひね
)
りて、
太短
(
ふとみじか
)
なる
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
むれば、聞ゐる妻は
呀
(
はつ
)
とばかり、
刃
(
やいば
)
を踏める心地も為めり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
御
掛
(
かけ
)
なされて御たすけ下さる樣に願に
罷
(
まか
)
り出しと云ければ
可睡齋
(
かすゐさい
)
は
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
め夫は如何樣の儀なるやと
言
(
いは
)
るゝに三五郎は九助が是までの
事柄
(
ことがら
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
紋太夫が受取って、眉を
顰
(
ひそ
)
めながら「はて、大とは」と首を傾げたとき、額田采女がふと振返って、「奥がばかに静かではないか」と云った。
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
我胸には慈愛に感ずる情みち/\たれば、彼人々の一たび
顰
(
ひそ
)
めることあるときは、
徑
(
たゞち
)
に我世の光を蔽はるゝ如く思ひなりぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
陽春三月の花の
天
(
そら
)
に
遽然
(
きよぜん
)
電光
閃
(
きら
)
めけるかとばかり眉打ち
顰
(
ひそ
)
めたる老紳士の
面
(
かほ
)
を、見るより早く
彼
(
か
)
の一客は、殆ど
匍
(
は
)
はんばかりに腰打ち
屈
(
かが
)
めつ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
殊に兄の
女
(
むすめ
)
を妻室にするに至っては、不倫の甚だしきものであった。心ある者は
何人
(
たれ
)
も眉を
顰
(
ひそ
)
めたが、皆元親の思惑を憚って口にはしなかった。
八人みさきの話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
三吉は何か思い当ることが有るかして、すこし
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めた。
流許
(
ながしもと
)
の方から塩水を造って持って来て、それを妻に
宛行
(
あてが
)
った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ぼくが改まって、「金沢君、お願いがあるんだけれど」と切り出すと、「え、なんだい」彼はおおげさに
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
親戚の者から縁談を勧める事もあったが、自分が汚らわしいという風に
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めるので、自分の前でそんな話を持出す人も後には全くなくなった。
私の貞操観
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
池田 いや、このたびの殿の御乱行には、彼らの中の心ある
士
(
もの
)
は、みな眉を
顰
(
ひそ
)
めておるのだ。聞こえたとてかまわん。
稲生播磨守
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
若しも世に無政府主義といふ名を聞いただけで眉を
顰
(
ひそ
)
める樣な人が有つて、其人が他日彼の無政府主義者等の所説を調べて見るとするならば、屹度
所謂今度の事:林中の鳥
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
なんだかモーターがブルンブルンと廻っているような音も聞え、ポスポスという
喞筒
(
ポンプ
)
らしい音もします。イヤに
騒々
(
そうぞう
)
しいので、私は
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めました。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その側から
掻巻
(
かいまき
)
をかかげ、入り込もうとしている久米八は、さぞ自分が残した、
温
(
ほの
)
かみに眉を
顰
(
ひそ
)
めることであろう。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
と取合う気色も見えぬに、茶一杯
饗応
(
もてな
)
されぬ助役は
悄然
(
すごすご
)
として元
来
(
き
)
し道に
取
(
とっ
)
てかえしぬ、正兵衛は後見送りて、
皺苦茶
(
しわくちゃ
)
の眉根を
顰
(
ひそ
)
め、ああ厄払い厄払い。
厄払い
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「マア!」と言うて人のいい細君は眉を
顰
(
ひそ
)
めた、私も
敵
(
かたき
)
ながらこの話を聞いては、あんまりいい気もしなかった。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
文三は恐ろしい
顔色
(
がんしょく
)
をしてお勢の
柳眉
(
りゅうび
)
を
顰
(
ひそ
)
めた
嬌面
(
かお
)
を
疾視付
(
にらみつ
)
けたが、恋は
曲物
(
くせもの
)
、こう疾視付けた時でも
尚
(
な
)
お「美は美だ」と思わない訳にはいかなかッた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
わたくしは言問橋や
吾妻橋
(
あずまばし
)
を渡るたびたび眉を
顰
(
ひそ
)
め鼻を
掩
(
おお
)
いながらも、むかしの追想を喜ぶあまり
欄干
(
らんかん
)
に身を
倚
(
よ
)
せて濁った水の流を眺めなければならない。
水のながれ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
又かと眉を
顰
(
ひそ
)
めた者も多かったなかに、度々同じ段に座って又七の意地の悪い
高調
(
たかちょう
)
に悩まされた覚えのある雷門の杵屋竹二郎は、自分の弟子の
地
(
じ
)
ではあり
助五郎余罪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
見るより光代は眉を
顰
(
ひそ
)
めて顔を
背
(
そむ
)
けぬ。辰弥と善平とはややしばし
囁
(
ささや
)
き合いて、終りは互いに打ち笑えり。光代は知らぬ振りしてただよそをのみ見つめぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
……ああ、由玄どの、今あなたは
眉
(
まゆ
)
をお
顰
(
ひそ
)
めなされましたな。いえ、よく分つてをります、美麗だなどと大それた物の言ひやう、さぞやお耳に
障
(
さわ
)
りませう。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
暴れる時は、天地の軸が歪みそうで、天帝の眉さえ
顰
(
ひそ
)
む程だが、必ずあとに、休止と云うものが従っている。
対話
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
而
(
そし
)
て小田夫妻は極めて平穏に、平和に暮して居るように見えました。ただ道子が
不相変
(
あいかわらず
)
若い男達と交際して居た事は、或る人達の眉を
顰
(
ひそ
)
めさせて居たのです。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
顏は煙に咽びながら、眉を
顰
(
ひそ
)
めて、空ざまに
車蓋
(
やかた
)
を仰いで居りませう。手は
下簾
(
したすだれ
)
を引きちぎつて、降りかゝる火の粉の雨を防がうとしてゐるかも知れませぬ。
地獄変
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
伯父は
幾分
(
いくぶん
)
か眉を
顰
(
ひそ
)
めてその
思慮無
(
はしたな
)
きを
疎
(
うと
)
んずる色あれども伯母なる人は
親身
(
しんみ
)
の
姪
(
めい
)
とてその
心根
(
こころね
)
を哀れに思い
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
けれど、この旅人の眉を
顰
(
ひそ
)
めた愛想のなさが、私を心安くしたのだつた。彼が私に手を振つて行かせようとしたときも、自分の場所に留つてゐてかう云つた——
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
女の許へ通ふといふ事は、近代の人の考へでは、村の若衆を外にしては、眉を
顰
(
ひそ
)
めてよい淫風であつた。
鶏鳴と神楽と
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
観る者
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めて「かかることは曹長にても事足りなん箱を
毀
(
こぼ
)
つに少佐殿の手を労するはいと恐れ多し」
従軍紀事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「いやな病気らしいのです。私どもも困っているのでございますよ。」と、眉を
顰
(
ひそ
)
めた。その頬は冷やかな、あまり小さな病人をいたわりそうにも思えなかった。
或る少女の死まで
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
その護衛のかたがたの中には急に眼を見張りあるいは
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めてその近よるものが何を言い出すかといったような緊張と不安の表情を正直に露出する人もあった。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
果
(
はて
)
しなき
今昔
(
こんじやく
)
の感慨に、瀧口は柱に
凭
(
よ
)
りしまゝしばし茫然たりしが、
不圖
(
ふと
)
電
(
いなづま
)
の如く胸に感じて、想ひ起したる小松殿の言葉に、
顰
(
ひそ
)
みし眉動き、沈みたる
眼閃
(
ひら
)
めき
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
泉原は
煤
(
すす
)
けた薄暗い部屋の光景を思出して眉を
顰
(
ひそ
)
めたが、そこへ帰るより他にゆくところはなかった。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
顰
漢検1級
部首:⾴
24画
“顰”を含む語句
顰蹙
一顰
顰面
一顰一笑
打顰
顰笑
一顰一蹙
嬌顰
詩史顰
面顰
顰縮面