正岡子規
1867.10.14 〜 1902.09.19
“正岡子規”に特徴的な語句
僅
或
鶯
抔
鯉
貫之
自
着
極
新
拵
悪
伎倆
棄
終
尽
此
詞
勝
毫
初
甚
霰
是
可被下
殆
鼠骨
虚子
蓼
由
旨
強
可有之
五月雨
分
雑
繃帯
彼
凝
如何
粥
妹
筍
考
東風
固
復
能
徒
因
著者としての作品一覧
あきまろに答ふ(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
「も」の字につきて質問に御答申候。「も」の字は元来理窟的の言葉にて、俳句などにては「も」の字の有無を以て月並的俗句なるか否かを判ずる事さへある位に候へども、さりとて「も」の字尽く理 …
読書目安時間:約4分
「も」の字につきて質問に御答申候。「も」の字は元来理窟的の言葉にて、俳句などにては「も」の字の有無を以て月並的俗句なるか否かを判ずる事さへある位に候へども、さりとて「も」の字尽く理 …
あきまろに答ふ(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
「も」の字につきて質問に御答申候。「も」の字は元来理屈的の言葉にて俳句などにては「も」の字の有無をもって月並的俗句なるか否かを判ずることさえあるくらいに候えども、さりとて「も」の字 …
読書目安時間:約4分
「も」の字につきて質問に御答申候。「も」の字は元来理屈的の言葉にて俳句などにては「も」の字の有無をもって月並的俗句なるか否かを判ずることさえあるくらいに候えども、さりとて「も」の字 …
曙覧の歌(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
余の初め歌を論ずる、ある人余に勧めて俊頼集、文雄集、曙覧集を見よという。それかくいうは三家の集が尋常歌集に異なるところあるをもってなり。まず源俊頼の『散木弃歌集』を見て失望す。いく …
読書目安時間:約26分
余の初め歌を論ずる、ある人余に勧めて俊頼集、文雄集、曙覧集を見よという。それかくいうは三家の集が尋常歌集に異なるところあるをもってなり。まず源俊頼の『散木弃歌集』を見て失望す。いく …
犬(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
○長い長い話をつづめていうと、昔天竺に閼伽衛奴国という国があって、そこの王を和奴和奴王というた、この王もこの国の民も非常に犬を愛する風であったがその国に一人の男があって王の愛犬を殺 …
読書目安時間:約3分
○長い長い話をつづめていうと、昔天竺に閼伽衛奴国という国があって、そこの王を和奴和奴王というた、この王もこの国の民も非常に犬を愛する風であったがその国に一人の男があって王の愛犬を殺 …
犬(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
長い/\話をつゞめていふと、昔天竺に閼迦衛奴国といふ国があつて、そこの王を和奴々々王といふた、此王も此国の民も非常に犬を愛する風があつたが、其国に一人の男があつて王の愛犬を殺すとい …
読書目安時間:約3分
長い/\話をつゞめていふと、昔天竺に閼迦衛奴国といふ国があつて、そこの王を和奴々々王といふた、此王も此国の民も非常に犬を愛する風があつたが、其国に一人の男があつて王の愛犬を殺すとい …
歌よみに与ふる書(旧字旧仮名)
読書目安時間:約33分
仰の如く近來和歌は一向に振ひ不申候。正直に申し候へば萬葉以來實朝以來一向に振ひ不申候。實朝といふ人は三十にも足らでいざ是からといふ處にてあへなき最期を遂げられ誠に殘念致し候。あの人 …
読書目安時間:約33分
仰の如く近來和歌は一向に振ひ不申候。正直に申し候へば萬葉以來實朝以來一向に振ひ不申候。實朝といふ人は三十にも足らでいざ是からといふ處にてあへなき最期を遂げられ誠に殘念致し候。あの人 …
歌よみに与ふる書(新字新仮名)
読書目安時間:約35分
仰のごとく近来和歌は一向に振い不申候。正直に申し候えば『万葉』以来、実朝以来、一向に振い不申候。実朝という人は三十にも足らでいざこれからというところにてあえなき最期を遂げられまこと …
読書目安時間:約35分
仰のごとく近来和歌は一向に振い不申候。正直に申し候えば『万葉』以来、実朝以来、一向に振い不申候。実朝という人は三十にも足らでいざこれからというところにてあえなき最期を遂げられまこと …
歌よみに与ふる書(新字旧仮名)
読書目安時間:約35分
歌よみに与ふる書 仰の如く近来和歌は一向に振ひ不申候。正直に申し候へば万葉以来実朝以来一向に振ひ不申候。実朝といふ人は三十にも足らで、いざこれからといふ処にてあへなき最期を遂げられ …
読書目安時間:約35分
歌よみに与ふる書 仰の如く近来和歌は一向に振ひ不申候。正直に申し候へば万葉以来実朝以来一向に振ひ不申候。実朝といふ人は三十にも足らで、いざこれからといふ処にてあへなき最期を遂げられ …
画(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
○十年ほど前に僕は日本画崇拝者で西洋画排斥者であった。その頃為山君と邦画洋画優劣論をやったが僕はなかなか負けたつもりではなかった。最後に為山君が日本画の丸い波は海の波でないという事 …
読書目安時間:約5分
○十年ほど前に僕は日本画崇拝者で西洋画排斥者であった。その頃為山君と邦画洋画優劣論をやったが僕はなかなか負けたつもりではなかった。最後に為山君が日本画の丸い波は海の波でないという事 …
かけはしの記(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
浮世の病ひ頭に上りては哲学の研究も惑病同源の理を示さず。行脚雲水の望みに心空になりては俗界の草根木皮、画にかいた白雲青山ほどにきかぬもあさまし。腰を屈めての辛苦艱難も世を逃れての自 …
読書目安時間:約12分
浮世の病ひ頭に上りては哲学の研究も惑病同源の理を示さず。行脚雲水の望みに心空になりては俗界の草根木皮、画にかいた白雲青山ほどにきかぬもあさまし。腰を屈めての辛苦艱難も世を逃れての自 …
鎌倉一見の記(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
面白き朧月のゆふべ柴の戸を立ち出でゝそゞろにありけばまぼろしかと見ゆる往來のさまもなつかしながら都の街をはなれたるけしきのみ思ひやられて新橋までいそぎぬ。終りの列車なるにはや乘れと …
読書目安時間:約3分
面白き朧月のゆふべ柴の戸を立ち出でゝそゞろにありけばまぼろしかと見ゆる往來のさまもなつかしながら都の街をはなれたるけしきのみ思ひやられて新橋までいそぎぬ。終りの列車なるにはや乘れと …
寒山落木 巻一(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1時間4分
寒山落木 明治十八年ヨリ同二十五年マデ第一期 明治十八年夏郷里松山ニ歸ル○嚴嶋ニ遊ビ祭禮ヲ觀ル○九月上京 仝十九年夏久松定靖公ニ扈從シテ日光伊香保ニ行ク○九月歸京 仝廿年春腸胃ヲ病 …
読書目安時間:約1時間4分
寒山落木 明治十八年ヨリ同二十五年マデ第一期 明治十八年夏郷里松山ニ歸ル○嚴嶋ニ遊ビ祭禮ヲ觀ル○九月上京 仝十九年夏久松定靖公ニ扈從シテ日光伊香保ニ行ク○九月歸京 仝廿年春腸胃ヲ病 …
句合の月(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
句合の題がまわって来た。先ず一番に月という題がある。凡そ四季の題で月というほど広い漠然とした題はない。花や雪の比でない。今夜は少し熱があるかして苦しいようだから、横に寝て句合の句を …
読書目安時間:約7分
句合の題がまわって来た。先ず一番に月という題がある。凡そ四季の題で月というほど広い漠然とした題はない。花や雪の比でない。今夜は少し熱があるかして苦しいようだから、横に寝て句合の句を …
九月十四日の朝(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
朝蚊帳の中で目が覚めた。なお半ば夢中であったがおいおいというて人を起した。次の間に寝て居る妹と、座敷に寐て居る虚子とは同時に返事をして起きて来た。虚子は看護のためにゆうべ泊ってくれ …
読書目安時間:約3分
朝蚊帳の中で目が覚めた。なお半ば夢中であったがおいおいというて人を起した。次の間に寝て居る妹と、座敷に寐て居る虚子とは同時に返事をして起きて来た。虚子は看護のためにゆうべ泊ってくれ …
九月十四日の朝(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
朝蚊帳の中で目が覺めた。尚半ば夢中であつたがおい/\といふて人を起した。次の間に寝て居る妹と、座敷に寐て居る虚子とは同時に返事をして起きて來た。虚子は看護の爲にゆふべ泊つて呉れたの …
読書目安時間:約3分
朝蚊帳の中で目が覺めた。尚半ば夢中であつたがおい/\といふて人を起した。次の間に寝て居る妹と、座敷に寐て居る虚子とは同時に返事をして起きて來た。虚子は看護の爲にゆふべ泊つて呉れたの …
くだもの(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
植物学の上より見たるくだものでもなく、産物学の上より見たるくだものでもなく、ただ病牀で食うて見たくだものの味のよしあしをいうのである。間違うておる処は病人の舌の荒れておる故と見てく …
読書目安時間:約17分
植物学の上より見たるくだものでもなく、産物学の上より見たるくだものでもなく、ただ病牀で食うて見たくだものの味のよしあしをいうのである。間違うておる処は病人の舌の荒れておる故と見てく …
熊手と提灯(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
本郷の金助町に何がしを訪うての帰り例の如く車をゆるゆると歩ませて切通の坂の上に出た。それは夜の九時頃で、初冬の月が冴え渡って居るから病人には寒く感ぜられる。坂を下りながら向うを見る …
読書目安時間:約7分
本郷の金助町に何がしを訪うての帰り例の如く車をゆるゆると歩ませて切通の坂の上に出た。それは夜の九時頃で、初冬の月が冴え渡って居るから病人には寒く感ぜられる。坂を下りながら向うを見る …
雲の日記(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
明治卅一年十二月十五日朝晴れて障子を開く。赤ぼけたる小菊二もと三もと枯芒の下に霜を帯びて立てり。空青くして上野の森の上に白く薄き雲少しばかり流れたるいと心地よし。われこの雲を日和雲 …
読書目安時間:約2分
明治卅一年十二月十五日朝晴れて障子を開く。赤ぼけたる小菊二もと三もと枯芒の下に霜を帯びて立てり。空青くして上野の森の上に白く薄き雲少しばかり流れたるいと心地よし。われこの雲を日和雲 …
恋(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
○昔から名高い恋はいくらもあるがわれは就中八百屋お七の恋に同情を表するのだ。お七の心の中を察すると実にいじらしくていじらしくてたまらん処がある。やさしい可愛らしい彼女の胸の中には天 …
読書目安時間:約4分
○昔から名高い恋はいくらもあるがわれは就中八百屋お七の恋に同情を表するのだ。お七の心の中を察すると実にいじらしくていじらしくてたまらん処がある。やさしい可愛らしい彼女の胸の中には天 …
権助の恋(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
夜半にふと眼をさますと縁側の処でガサガサガタと音がするから、飼犬のブチが眠られないで箱の中で騒いで居るのであろうと思うて見たが、どうもそうでない。音の工合が犬ばかりでもないようだ。 …
読書目安時間:約2分
夜半にふと眼をさますと縁側の処でガサガサガタと音がするから、飼犬のブチが眠られないで箱の中で騒いで居るのであろうと思うて見たが、どうもそうでない。音の工合が犬ばかりでもないようだ。 …
酒(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
○一つ橋外の学校の寄宿舎に居る時に、明日は三角術の試験だというので、ノートを広げてサイン、アルファ、タン、スィータスィータと読んで居るけれど少しも分らぬ。困って居ると友達が酒飲みに …
読書目安時間:約1分
○一つ橋外の学校の寄宿舎に居る時に、明日は三角術の試験だというので、ノートを広げてサイン、アルファ、タン、スィータスィータと読んで居るけれど少しも分らぬ。困って居ると友達が酒飲みに …
字余りの和歌俳句(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
短歌三十一文字と定まりたるを三十二文字乃至三十六文字となし俳諧十七字と定まりたるを十八字乃至二十二三字にも作る事あり。これを字餘りと云ふ。而して字餘りを用うるは例外の場合にて常に用 …
読書目安時間:約3分
短歌三十一文字と定まりたるを三十二文字乃至三十六文字となし俳諧十七字と定まりたるを十八字乃至二十二三字にも作る事あり。これを字餘りと云ふ。而して字餘りを用うるは例外の場合にて常に用 …
刺客蚊公之墓碑銘:柩に収めて東都の俳人に送る(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
田舎の蚊々、汝竹藪の奥に生れて、その親も知らず、昼は雪隠にひそみて伏兵となり、夜は臥床をくぐりて刺客となる、咄汝の一身は総てこれ罪なり、人の血を吸ふは殺生罪なり、蚊帳の穴をくぐるは …
読書目安時間:約1分
田舎の蚊々、汝竹藪の奥に生れて、その親も知らず、昼は雪隠にひそみて伏兵となり、夜は臥床をくぐりて刺客となる、咄汝の一身は総てこれ罪なり、人の血を吸ふは殺生罪なり、蚊帳の穴をくぐるは …
死後(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
人間は皆一度ずつ死ぬるのであるという事は、人間皆知って居るわけであるが、それを強く感ずる人とそれ程感じない人とがあるようだ。或人はまだ年も若いのに頻りに死という事を気にして、今夜こ …
読書目安時間:約14分
人間は皆一度ずつ死ぬるのであるという事は、人間皆知って居るわけであるが、それを強く感ずる人とそれ程感じない人とがあるようだ。或人はまだ年も若いのに頻りに死という事を気にして、今夜こ …
車上の春光(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
四月廿九日の空は青々と晴れ渡って、自分のような病人は寝て居る足のさきに微寒を感ずるほどであった。格堂が来て左千夫の話をしたので、ふと思いついて左千夫を訪おうと決心した。左千夫の家は …
読書目安時間:約7分
四月廿九日の空は青々と晴れ渡って、自分のような病人は寝て居る足のさきに微寒を感ずるほどであった。格堂が来て左千夫の話をしたので、ふと思いついて左千夫を訪おうと決心した。左千夫の家は …
従軍紀事(新字旧仮名)
読書目安時間:約24分
国あり新聞なかるべからず。戦あり新聞記者なかるべからず。軍中新聞記者を入るるは一、二新聞のためにあらずして天下国家のためなり兵卒将校のためなり。新聞記者にして已に国家を益し兵士を利 …
読書目安時間:約24分
国あり新聞なかるべからず。戦あり新聞記者なかるべからず。軍中新聞記者を入るるは一、二新聞のためにあらずして天下国家のためなり兵卒将校のためなり。新聞記者にして已に国家を益し兵士を利 …
小園の記(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
我に二十坪の小園あり。園は家の南にありて上野の杉を垣の外に控へたり。場末の家まばらに建てられたれば青空は庭の外に拡がりて雲行き鳥翔る様もいとゆたかに眺めらる。始めてこゝに移りし頃は …
読書目安時間:約5分
我に二十坪の小園あり。園は家の南にありて上野の杉を垣の外に控へたり。場末の家まばらに建てられたれば青空は庭の外に拡がりて雲行き鳥翔る様もいとゆたかに眺めらる。始めてこゝに移りし頃は …
すゞし(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
「すゞし」といふ語は「すが/\し」のつゞまりたるにやと覚ゆれど、意義稍変りておもに気候に関して用うる事となり、「涼」の字をあてはむるやうにはなりぬ。月令には「涼風至白露降」といふを …
読書目安時間:約3分
「すゞし」といふ語は「すが/\し」のつゞまりたるにやと覚ゆれど、意義稍変りておもに気候に関して用うる事となり、「涼」の字をあてはむるやうにはなりぬ。月令には「涼風至白露降」といふを …
高尾紀行(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
旅は二日道連は二人旅行道具は足二本ときめて十二月七日朝例の翁を本郷に訪ふて小春のうかれありきを促せば風邪の鼻すゝりながら俳道修行に出でん事本望なりとて共に新宿さしてぞ急ぎける。 き …
読書目安時間:約3分
旅は二日道連は二人旅行道具は足二本ときめて十二月七日朝例の翁を本郷に訪ふて小春のうかれありきを促せば風邪の鼻すゝりながら俳道修行に出でん事本望なりとて共に新宿さしてぞ急ぎける。 き …
旅(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
○旅はなさけ、恥はかきずて、宿屋に著きて先づ飯盛女の品定め、水臭き味噌汁すすりながら、ここに遊君はありやといへば、ござりまする、片田舎とて侮り給はば思はぬ不覚を取り給ふべし、などい …
読書目安時間:約3分
○旅はなさけ、恥はかきずて、宿屋に著きて先づ飯盛女の品定め、水臭き味噌汁すすりながら、ここに遊君はありやといへば、ござりまする、片田舎とて侮り給はば思はぬ不覚を取り給ふべし、などい …
旅の旅の旅(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
汽笛一声京城を後にして五十三亭一日に見尽すとも水村山郭の絶風光は雲煙過眼よりも脆く写真屋の看板に名所古跡を見るよりもなおはかなく一瞥の後また跡かたを留めず。誰かはこれを指して旅とい …
読書目安時間:約11分
汽笛一声京城を後にして五十三亭一日に見尽すとも水村山郭の絶風光は雲煙過眼よりも脆く写真屋の看板に名所古跡を見るよりもなおはかなく一瞥の後また跡かたを留めず。誰かはこれを指して旅とい …
蝶(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
のぼる ○空はうらゝかに風はあたゝかで、今日は天上に神様だちの舞踏会のあるといふ日の昼過、白い蝶と黄な蝶との二つが余念無く野辺に隠れんぼをして遊んで居る。今度は白い蝶の隠れる番で、 …
読書目安時間:約4分
のぼる ○空はうらゝかに風はあたゝかで、今日は天上に神様だちの舞踏会のあるといふ日の昼過、白い蝶と黄な蝶との二つが余念無く野辺に隠れんぼをして遊んで居る。今度は白い蝶の隠れる番で、 …
土達磨を毀つ辞(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
汝もといづくの辺土の山の土くれぞ。急須となりて茶人が長き夜のつれづれを慰むるにもあらねば、徳利となりて林間に紅葉を焚くの風流も知らず。さりとて来山が腹に乗りて物喰はぬ妻と可愛がられ …
読書目安時間:約2分
汝もといづくの辺土の山の土くれぞ。急須となりて茶人が長き夜のつれづれを慰むるにもあらねば、徳利となりて林間に紅葉を焚くの風流も知らず。さりとて来山が腹に乗りて物喰はぬ妻と可愛がられ …
東西南北序(旧字旧仮名)
読書目安時間:約1分
鐵幹、歌を作らず。しかも、鐵幹が口を衝いて發するもの、皆歌を成す。其短歌若干首、之を敲けば、聲、釣鐘の如し。世人曰く、不吉の聲なりと。鐵幹自ら以て、大聲は俚耳に入らずと爲す。其長歌 …
読書目安時間:約1分
鐵幹、歌を作らず。しかも、鐵幹が口を衝いて發するもの、皆歌を成す。其短歌若干首、之を敲けば、聲、釣鐘の如し。世人曰く、不吉の聲なりと。鐵幹自ら以て、大聲は俚耳に入らずと爲す。其長歌 …
読書弁(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
大凡一個の人間の慾には一定の分量ある者と思はる。例へば甲なる者の慾心は百斤あるものならば、常に此分量を限りとして百斤より増すこともなく又減ずることなし。併し慾には種類ありて食慾色慾 …
読書目安時間:約10分
大凡一個の人間の慾には一定の分量ある者と思はる。例へば甲なる者の慾心は百斤あるものならば、常に此分量を限りとして百斤より増すこともなく又減ずることなし。併し慾には種類ありて食慾色慾 …
徒歩旅行を読む(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
紀行文をどう書いたら善いかという事は紀行の目的によって違う。しかし大概な紀行は純粋の美文的に書くものでなくてもやはり出来るだけ面白く書こうとする即美文的に書こうとする、故に先ず面白 …
読書目安時間:約5分
紀行文をどう書いたら善いかという事は紀行の目的によって違う。しかし大概な紀行は純粋の美文的に書くものでなくてもやはり出来るだけ面白く書こうとする即美文的に書こうとする、故に先ず面白 …
夏の夜の音(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
時は明治卅二年七月十二日夜、処は上根岸の某邸の構内の最も奥の家、八畳の間の真中に病の牀を設けて南側の障子明け放せば上野おろしは闇の庭を吹いて枕辺の灯火を揺かす。我は横に臥したる体を …
読書目安時間:約3分
時は明治卅二年七月十二日夜、処は上根岸の某邸の構内の最も奥の家、八畳の間の真中に病の牀を設けて南側の障子明け放せば上野おろしは闇の庭を吹いて枕辺の灯火を揺かす。我は横に臥したる体を …
日光の紅葉(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
春の花は見るが野暮なり、秋の紅葉は見ぬが野暮なりと独り諺をこしらへて其言ひわけに今年は日光の紅葉狩にと思ひ付きぬ。先づ鳴雪翁をおとづれてしか/″\のよしをいへば翁病の床より飛び起き …
読書目安時間:約3分
春の花は見るが野暮なり、秋の紅葉は見ぬが野暮なりと独り諺をこしらへて其言ひわけに今年は日光の紅葉狩にと思ひ付きぬ。先づ鳴雪翁をおとづれてしか/″\のよしをいへば翁病の床より飛び起き …
俳諧大要(新字旧仮名)
読書目安時間:約1時間29分
ここに花山といへる盲目の俳士あり。望一の流れを汲むとにはあらでただ発句をなん詠み出でける。やうやうにこのわざを試みてより半年に足らぬほどに、その声鏗鏘として聞く者耳を欹つ。一夜我が …
読書目安時間:約1時間29分
ここに花山といへる盲目の俳士あり。望一の流れを汲むとにはあらでただ発句をなん詠み出でける。やうやうにこのわざを試みてより半年に足らぬほどに、その声鏗鏘として聞く者耳を欹つ。一夜我が …
俳句上の京と江戸(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
京都から『種ふくべ』という俳諧の雑誌を出すから、私にも何か一つ書けとの事でございました。昨年来俳句の流行につれて各地にその雑誌が出るようになりましたのに、昔からの都であった京都に何 …
読書目安時間:約15分
京都から『種ふくべ』という俳諧の雑誌を出すから、私にも何か一つ書けとの事でございました。昨年来俳句の流行につれて各地にその雑誌が出るようになりましたのに、昔からの都であった京都に何 …
俳句の初歩(新字旧仮名)
読書目安時間:約14分
客あり。草蘆を敲いて俳句を談ず。その標準は誤り、その嗜好は俗に、称揚する所の句と指斥する所の句と多くは彼此顛倒せり。予曰く、子の言ふ所、悉く予の感ずる所と相反す。予を以て見れば子の …
読書目安時間:約14分
客あり。草蘆を敲いて俳句を談ず。その標準は誤り、その嗜好は俗に、称揚する所の句と指斥する所の句と多くは彼此顛倒せり。予曰く、子の言ふ所、悉く予の感ずる所と相反す。予を以て見れば子の …
俳人蕪村(新字旧仮名)
読書目安時間:約53分
芭蕉新に俳句界を開きしよりここに二百年、その間出づる所の俳人少からず。あるいは芭蕉を祖述し、あるいは檀林を主張し、あるいは別に門戸を開く。しかれどもその芭蕉を尊崇するに至りては衆口 …
読書目安時間:約53分
芭蕉新に俳句界を開きしよりここに二百年、その間出づる所の俳人少からず。あるいは芭蕉を祖述し、あるいは檀林を主張し、あるいは別に門戸を開く。しかれどもその芭蕉を尊崇するに至りては衆口 …
俳人蕪村(新字新仮名)
読書目安時間:約55分
芭蕉新たに俳句界を開きしよりここに二百年、その間出づるところの俳人少からず。あるいは芭蕉を祖述し、あるいは檀林を主張し、あるいは別に門戸を開く。しかれどもその芭蕉を尊崇するに至りて …
読書目安時間:約55分
芭蕉新たに俳句界を開きしよりここに二百年、その間出づるところの俳人少からず。あるいは芭蕉を祖述し、あるいは檀林を主張し、あるいは別に門戸を開く。しかれどもその芭蕉を尊崇するに至りて …
墓(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
○こう生きて居たからとて面白い事もないから、ちょっと死んで来られるなら一年間位地獄漫遊と出かけて、一周忌の祭の真中へヒョコと帰って来て地獄土産の演説なぞは甚だしゃれてる訳だが、しか …
読書目安時間:約12分
○こう生きて居たからとて面白い事もないから、ちょっと死んで来られるなら一年間位地獄漫遊と出かけて、一周忌の祭の真中へヒョコと帰って来て地獄土産の演説なぞは甚だしゃれてる訳だが、しか …
墓(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
○斯う生きて居たからとて面白い事も無いから、一寸死んで来られるなら一年間位地獄漫遊と出かけて、一周忌の祭の真中へヒヨコと帰つて来て地獄土産の演説などは甚だしやれてる訳だが、併し死に …
読書目安時間:約12分
○斯う生きて居たからとて面白い事も無いから、一寸死んで来られるなら一年間位地獄漫遊と出かけて、一周忌の祭の真中へヒヨコと帰つて来て地獄土産の演説などは甚だしやれてる訳だが、併し死に …
初夢(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
(座敷の真中に高脚の雑煮膳が三つ四つ据えてある。自分は袴羽織で上座の膳に着く。)「こんなに揃って雑煮を食うのは何年振りですかなア、実に愉快だ、ハハー松山流白味噌汁の雑煮ですな。旨い …
読書目安時間:約10分
(座敷の真中に高脚の雑煮膳が三つ四つ据えてある。自分は袴羽織で上座の膳に着く。)「こんなに揃って雑煮を食うのは何年振りですかなア、実に愉快だ、ハハー松山流白味噌汁の雑煮ですな。旨い …
花枕(旧字旧仮名)
読書目安時間:約14分
神の工が削りなしけん千仞の絶壁、上平に草生ひ茂りて、三方は奇しき木の林に包まれ、東に向ひて開く一方、遙の下に群れたる人家、屈曲したる川の流を見るべし。此處に飛び來れるは、さゝやかに …
読書目安時間:約14分
神の工が削りなしけん千仞の絶壁、上平に草生ひ茂りて、三方は奇しき木の林に包まれ、東に向ひて開く一方、遙の下に群れたる人家、屈曲したる川の流を見るべし。此處に飛び來れるは、さゝやかに …
煩悶(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
時は午後八時頃、体温は卅八度五分位、腹も背も臀も皆痛む、 アッ苦しいナ、痛いナ、アーアー人を馬鹿にして居るじゃないか、馬鹿、畜生、アッ痛、アッ痛、痛イ痛イ、寝返りしても痛いどころか …
読書目安時間:約4分
時は午後八時頃、体温は卅八度五分位、腹も背も臀も皆痛む、 アッ苦しいナ、痛いナ、アーアー人を馬鹿にして居るじゃないか、馬鹿、畜生、アッ痛、アッ痛、痛イ痛イ、寝返りしても痛いどころか …
人々に答ふ(新字旧仮名)
読書目安時間:約44分
歌の事につきては諸君より種々御注意御忠告を辱うし御厚意奉謝候。なほまた或諸君よりは御嘲笑御罵詈を辱うし誠に冥加至極に奉存候。早速御礼かたがた御挨拶可申上之処、病気にかかり頃日来机に …
読書目安時間:約44分
歌の事につきては諸君より種々御注意御忠告を辱うし御厚意奉謝候。なほまた或諸君よりは御嘲笑御罵詈を辱うし誠に冥加至極に奉存候。早速御礼かたがた御挨拶可申上之処、病気にかかり頃日来机に …
病牀苦語(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
○この頃は痛さで身動きも出来ず煩悶の余り精神も常に穏やかならんので、毎日二、三服の痲痺剤を飲んで、それでようよう暫時の痲痺的愉快を取って居るような次第である。考え事などは少しも出来 …
読書目安時間:約23分
○この頃は痛さで身動きも出来ず煩悶の余り精神も常に穏やかならんので、毎日二、三服の痲痺剤を飲んで、それでようよう暫時の痲痺的愉快を取って居るような次第である。考え事などは少しも出来 …
病牀瑣事(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
○我ながらなが/\しき病に飽きはてゝ、つれ/″\のやるかたなさに書読み物書くを人は我を善く勉めたりといふ。日頃書などすさめぬ人も長き病の牀には好みて小説伝記を読み、あるはてにはの合 …
読書目安時間:約3分
○我ながらなが/\しき病に飽きはてゝ、つれ/″\のやるかたなさに書読み物書くを人は我を善く勉めたりといふ。日頃書などすさめぬ人も長き病の牀には好みて小説伝記を読み、あるはてにはの合 …
病牀譫語(新字旧仮名)
読書目安時間:約16分
◎政治家とならんか、文学者とならんか、我は文学者を択ばん。政治家の技能はその局に当りその地位を得るに非ざれば見れず。その局に当りその地位を得るは一半は材能により一半は年歯による。た …
読書目安時間:約16分
◎政治家とならんか、文学者とならんか、我は文学者を択ばん。政治家の技能はその局に当りその地位を得るに非ざれば見れず。その局に当りその地位を得るは一半は材能により一半は年歯による。た …
病牀六尺(新字旧仮名)
読書目安時間:約2時間56分
○病床六尺、これが我世界である。しかもこの六尺の病床が余には広過ぎるのである。僅かに手を延ばして畳に触れる事はあるが、蒲団の外へまで足を延ばして体をくつろぐ事も出来ない。甚だしい時 …
読書目安時間:約2時間56分
○病床六尺、これが我世界である。しかもこの六尺の病床が余には広過ぎるのである。僅かに手を延ばして畳に触れる事はあるが、蒲団の外へまで足を延ばして体をくつろぐ事も出来ない。甚だしい時 …
再び歌よみに与ふる書(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
貫之は下手な歌よみにて古今集はくだらぬ集に有之候。其貫之や古今集を崇拝するは誠に気の知れぬことなどと申すものゝ実は斯く申す生も数年前迄は古今集崇拝の一人にて候ひしかば今日世人が古今 …
読書目安時間:約4分
貫之は下手な歌よみにて古今集はくだらぬ集に有之候。其貫之や古今集を崇拝するは誠に気の知れぬことなどと申すものゝ実は斯く申す生も数年前迄は古今集崇拝の一人にて候ひしかば今日世人が古今 …
古池の句の弁(新字旧仮名)
読書目安時間:約25分
客あり。我草廬を敲きて俳諧を談ず。問ふて曰く。 古池や蛙飛びこむ水の音芭蕉 の一句は古今の傑作として人口に膾炙する所、馬丁走卒もなほかつこれを知る。しかもその意義を問へば一人のこれ …
読書目安時間:約25分
客あり。我草廬を敲きて俳諧を談ず。問ふて曰く。 古池や蛙飛びこむ水の音芭蕉 の一句は古今の傑作として人口に膾炙する所、馬丁走卒もなほかつこれを知る。しかもその意義を問へば一人のこれ …
ベースボール(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
○ベースボールに至りてはこれを行う者極めて少くこれを知る人の区域も甚だ狭かりしが近時第一高等学校と在横浜米人との間に仕合ありしより以来ベースボールという語ははしなく世人の耳に入りた …
読書目安時間:約11分
○ベースボールに至りてはこれを行う者極めて少くこれを知る人の区域も甚だ狭かりしが近時第一高等学校と在横浜米人との間に仕合ありしより以来ベースボールという語ははしなく世人の耳に入りた …
墨汁一滴(新字旧仮名)
読書目安時間:約2時間33分
病める枕辺に巻紙状袋など入れたる箱あり、その上に寒暖計を置けり。その寒暖計に小き輪飾をくくりつけたるは病中いささか新年をことほぐの心ながら歯朶の枝の左右にひろごりたるさまもいとめで …
読書目安時間:約2時間33分
病める枕辺に巻紙状袋など入れたる箱あり、その上に寒暖計を置けり。その寒暖計に小き輪飾をくくりつけたるは病中いささか新年をことほぐの心ながら歯朶の枝の左右にひろごりたるさまもいとめで …
牡丹句録:子規病中記(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
左の一篇は客月痼疾平かならざりし病苦の中、子規子の手記になりたる日記なり。巻頭に中村不折氏の牡丹園と一輪の牡丹との絵画あり。其牡丹赫奕として紅燃えんとするものあり、子規子の墨痕亦た …
読書目安時間:約2分
左の一篇は客月痼疾平かならざりし病苦の中、子規子の手記になりたる日記なり。巻頭に中村不折氏の牡丹園と一輪の牡丹との絵画あり。其牡丹赫奕として紅燃えんとするものあり、子規子の墨痕亦た …
万葉集巻十六(旧字旧仮名)
読書目安時間:約8分
萬葉集は歌集の王なり。其歌の眞摯に且つ高古なるは其特色にして、到底古今集以下の無趣味無趣向なる歌と比すべくもあらず。萬葉中の平凡なる歌といへども之を他の歌集に插めば自ら品格高くして …
読書目安時間:約8分
萬葉集は歌集の王なり。其歌の眞摯に且つ高古なるは其特色にして、到底古今集以下の無趣味無趣向なる歌と比すべくもあらず。萬葉中の平凡なる歌といへども之を他の歌集に插めば自ら品格高くして …
万葉集を読む(旧字旧仮名)
読書目安時間:約11分
四月十五日草廬に於いて萬葉集輪講會を開く。議論こも/″\出でゝをかしき事面白き事いと多かり。文字語句の解釋は諸書にくはしければこゝにいはず。只我思ふ所をいさゝか述べて教を乞はんとす …
読書目安時間:約11分
四月十五日草廬に於いて萬葉集輪講會を開く。議論こも/″\出でゝをかしき事面白き事いと多かり。文字語句の解釋は諸書にくはしければこゝにいはず。只我思ふ所をいさゝか述べて教を乞はんとす …
明治卅三年十月十五日記事(新字旧仮名)
読書目安時間:約20分
余が病体の衰へは一年一年とやうやうにはなはだしくこの頃は睡眠の時間と睡眠ならざる時間との区別さへ明瞭に判じ難きほどなり。睡さめて見れば眼明かにして寝覚の感じなく、眼を塞ぎて静かに臥 …
読書目安時間:約20分
余が病体の衰へは一年一年とやうやうにはなはだしくこの頃は睡眠の時間と睡眠ならざる時間との区別さへ明瞭に判じ難きほどなり。睡さめて見れば眼明かにして寝覚の感じなく、眼を塞ぎて静かに臥 …
飯待つ間(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
余は昔から朝飯を喰わぬ事にきめて居る故病人ながらも腹がへって昼飯を待ちかねるのは毎日の事である。今日ははや午砲が鳴ったのにまだ飯が出来ぬ。枕もとには本も硯も何も出て居らぬ。新聞の一 …
読書目安時間:約4分
余は昔から朝飯を喰わぬ事にきめて居る故病人ながらも腹がへって昼飯を待ちかねるのは毎日の事である。今日ははや午砲が鳴ったのにまだ飯が出来ぬ。枕もとには本も硯も何も出て居らぬ。新聞の一 …
病(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
○明治廿八年五月大連湾より帰りの船の中で、何だか労れたようであったから下等室で寝て居たらば、鱶が居る、早く来いと我名を呼ぶ者があるので、はね起きて急ぎ甲板へ上った。甲板に上り著くと …
読書目安時間:約8分
○明治廿八年五月大連湾より帰りの船の中で、何だか労れたようであったから下等室で寝て居たらば、鱶が居る、早く来いと我名を呼ぶ者があるので、はね起きて急ぎ甲板へ上った。甲板に上り著くと …
闇汁図解(旧字旧仮名)
読書目安時間:約3分
一、時は明治卅二年十月二十一日午後四時過、處は保等登藝須發行所、人は初め七人、後十人半、半はマー坊なり。 一、闇汁の催しに群議一決して、客も主も各物買ひに出づ。取り殘されたる我ひと …
読書目安時間:約3分
一、時は明治卅二年十月二十一日午後四時過、處は保等登藝須發行所、人は初め七人、後十人半、半はマー坊なり。 一、闇汁の催しに群議一決して、客も主も各物買ひに出づ。取り殘されたる我ひと …
夢(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
○先日徹夜をして翌晩は近頃にない安眠をした。その夜の夢にある岡の上に枝垂桜が一面に咲いていてその枝が動くと赤い花びらが粉雪のように細かくなって降って来る。その下で美人と袖ふれ合うた …
読書目安時間:約1分
○先日徹夜をして翌晩は近頃にない安眠をした。その夜の夢にある岡の上に枝垂桜が一面に咲いていてその枝が動くと赤い花びらが粉雪のように細かくなって降って来る。その下で美人と袖ふれ合うた …
夜寒十句(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
虚子を猿楽町に訪ひて夜に入りて帰途に就く。小川町に出づるに男女竪にも横にも歩行きて我車ややもすれば人に行き当らんとする様なり。彼等の半は両側の夜店をあさり行くにぞある。考へて見れば …
読書目安時間:約2分
虚子を猿楽町に訪ひて夜に入りて帰途に就く。小川町に出づるに男女竪にも横にも歩行きて我車ややもすれば人に行き当らんとする様なり。彼等の半は両側の夜店をあさり行くにぞある。考へて見れば …
四百年後の東京(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
都会の中央、絶壁屏風の如く、緑滴り水流れ、気清く神静かに、騒人は月をここに賞し、兇漢は罪をここに蔵す、これを現今の御茶の水の光景とす。紅塵万丈の中この一小閑地を残して荒涼たる山間の …
読書目安時間:約5分
都会の中央、絶壁屏風の如く、緑滴り水流れ、気清く神静かに、騒人は月をここに賞し、兇漢は罪をここに蔵す、これを現今の御茶の水の光景とす。紅塵万丈の中この一小閑地を残して荒涼たる山間の …
ランプの影(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
病の牀に仰向に寐てつまらなさに天井を睨んで居ると天井板の木目が人の顔に見える。それは一つある節穴が人の眼のように見えてそのぐるりの木目が不思議に顔の輪廓を形づくって居る。その顔が始 …
読書目安時間:約5分
病の牀に仰向に寐てつまらなさに天井を睨んで居ると天井板の木目が人の顔に見える。それは一つある節穴が人の眼のように見えてそのぐるりの木目が不思議に顔の輪廓を形づくって居る。その顔が始 …
ラムプの影(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
病の牀に仰向に寐てつまらなさに天井を睨んで居ると天井板の木目が人の顔に見える。それは一つある節穴が人の眼のやうに見えてそのぐるりの木目が不思議に顔の輪郭を形づくつて居る。其顔が始終 …
読書目安時間:約5分
病の牀に仰向に寐てつまらなさに天井を睨んで居ると天井板の木目が人の顔に見える。それは一つある節穴が人の眼のやうに見えてそのぐるりの木目が不思議に顔の輪郭を形づくつて居る。其顔が始終 …
わが幼時の美感(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
極めて幼き時の美はただ色にありて形にあらず、まして位置、配合、技術などそのほかの高尚なる複雑なる美は固より解すべくもあらず。その色すらなべての者は感ぜず、アツプ(美麗)と嬉しがらる …
読書目安時間:約6分
極めて幼き時の美はただ色にありて形にあらず、まして位置、配合、技術などそのほかの高尚なる複雑なる美は固より解すべくもあらず。その色すらなべての者は感ぜず、アツプ(美麗)と嬉しがらる …
“正岡子規”について
正岡 子規(まさおか しき、1867年10月14日(旧暦慶応3年9月17日)- 1902年(明治35年)9月19日)は、日本の俳人、歌人、国語学研究家。子規は筆名で、本名は正岡 常規(まさおか つねのり)。幼名を處之助(ところのすけ)といい、後に升(のぼる)と改めた。
俳句、短歌、新体詩、小説、評論、随筆など多方面にわたり創作活動を行い、日本の近代文学に多大な影響を及ぼした、明治を代表する文学者の一人である。
(出典:Wikipedia)
俳句、短歌、新体詩、小説、評論、随筆など多方面にわたり創作活動を行い、日本の近代文学に多大な影響を及ぼした、明治を代表する文学者の一人である。
(出典:Wikipedia)
“正岡子規”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)