車上の春光しゃじょうのしゅんこう
四月廿九日の空は青々と晴れ渡って、自分のような病人は寝て居る足のさきに微寒を感ずるほどであった。格堂が来て左千夫の話をしたので、ふと思いついて左千夫を訪おうと決心した。左千夫の家は本所の茅場町にあるので牡丹の頃には是非来いといわれて居たから …