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秘
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ひそ
ふりがな文庫
“
秘
(
ひそ
)” の例文
旧字:
祕
ソレハ妻ガコノ日記帳ヲ
秘
(
ひそ
)
カニ読ンデ腹ヲ立テハシナイカトイウヿヲ恐レテイタカラデアッタガ、今年カラハソレヲ恐レヌヿニシタ。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
が、大震災直後、かの甘粕大尉によつて大杉栄、伊藤野枝の殺害さるるや、出来星のルパシカ青年は忽ちにして影を
秘
(
ひそ
)
めてしまつた。
大正東京錦絵
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
「盟友、同志、雲の如く、その上、これは極内だが、御三家の俊傑、紀州
頼宣
(
よりのぶ
)
様、
秘
(
ひそ
)
かに御加担、近々事を挙げる運びになっている」
江戸の火術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
二人は何うかすると其の孰にも属しない
秘
(
ひそ
)
やかな世界を慾した。さう云ふ世界が又二人に取つて不安であるのは仕方のない事であつた。
草いきれ
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
『それも
駄目
(
だめ
)
だ』と
心
(
こゝろ
)
秘
(
ひそ
)
かに
思
(
おも
)
つてる
中
(
うち
)
、
愛
(
あい
)
ちやんは
兎
(
うさぎ
)
が
窓
(
まど
)
の
下
(
した
)
へ
來
(
き
)
たのを
知
(
し
)
り、
急
(
きふ
)
に
片手
(
かたて
)
を
伸
(
の
)
ばして
只
(
たゞ
)
當
(
あて
)
もなく
空
(
くう
)
を
掴
(
つか
)
みました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
▼ もっと見る
それだから
風呂
(
ふろ
)
に入つた時などに、
秘
(
ひそ
)
かにその
痂
(
かさぶた
)
を除いてみると、その下は依然として
爛
(
ただ
)
れて居つて深い
溝
(
みぞ
)
のやうになつてゐる。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
こよい
秘
(
ひそ
)
かな内詔を拝して涙にくれた。何事も時節であるから、もうしばらく時を待つがよい。自分には期するところがある。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
秘
(
ひそ
)
かに部屋を出て厩舎へ来てみると、そこには三人の牧夫が馬に鞍を置いていて、正勝にだけ秘密の話をすることはできなかったからである。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
直助がかの女を
秘
(
ひそ
)
かに
想
(
おも
)
つて居ることを、かの女はだん/\近頃知るやうになつて居た。だが、かの女はそのことを深く考へようとしなかつた。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
この悲哀は
華
(
はな
)
やかな青春の悲哀でもなく、単に男女の恋の上の悲哀でもなく、人生の
最奥
(
さいおう
)
に
秘
(
ひそ
)
んでいるある大きな悲哀だ。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「なさぬ仲やの。……」と、声を
秘
(
ひそ
)
めていって、「私、今はじめて聴かされた。そんなことがないか知らん思うとったんや。やっぱりそうやった」
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そのことについては、吾が友人帆村荘六も大いに知りたがっていたところだが、或る時
当
(
とう
)
の丘田医師から聞きだしたといって、
秘
(
ひそ
)
かに話してくれた。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
むしろあやされるような
秘
(
ひそ
)
やかな歓びが胸にあふれて、十七になる今日までかつて知らなかった一種のするどい快楽のような感じにとらえられるのであった。
合歓木の蔭
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
シャクが弟の屍体の傍に茫然と立っていた時、
秘
(
ひそ
)
かにデックの
魂
(
たましい
)
が兄の中に
忍
(
しの
)
び入ったのだと人々は考えた。
狐憑
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
いずれにしても我々は
慚愧
(
ざんき
)
に堪えぬ次第であると、私は心
秘
(
ひそ
)
かにこの人の
利溌
(
りはつ
)
さに驚いていたのであった。
幕末維新懐古談:26 店初まっての大作をしたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
秘
(
ひそ
)
かに自任しているよりも、低く自分の徳を
披露
(
ひろう
)
して、控目という徳性を満足させておきながら、欲念というような実際の弱点は、
一寸見
(
ちょっとみ
)
には見つからない程
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
午前中
秘
(
ひそ
)
かに男装した姉さんが、近所の子供に金をくれて夜の九時頃局へ持って行かせたのですよ。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
女の子なんか、
鰻
(
うなぎ
)
ならメソッコみたいなもので話にならぬと——それからまた声を
秘
(
ひそ
)
めていった。
旧聞日本橋:06 古屋島七兵衛
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
けれどもその喜びのうちには悲しみも
秘
(
ひそ
)
んでいたに相違なかった。そしてそれは私達にも同様に。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
而して、芸術論が屡々余りに空言に終ること多い理由は、芸術家でない人に芸術的制作を可能ならしめんとする意向を知つてか知らないでか
秘
(
ひそ
)
めてゐることそれである。
芸術論覚え書
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
私は、その「木兎」を単に観賞の理由で彼から借り受けて置いたところが、同居のRという文科大学生が
秘
(
ひそ
)
かに持出して街のカフエーに遊興費の代償に差押えられている。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
夜が更け、空が霽れ、蒼褪めはてた経験の貴さと冷たい霊性のなやみを染々と身に嗅ぎわけて、哀傷のけものは今深い闇のそこひからびやうびやうと声を
秘
(
ひそ
)
めて鳴き続ける。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
それと独機の爆弾のために起っている火事とで、ワルシャワの街は
煌々
(
こうこう
)
と明るかった。イワノウィッチは、中隊長の目を盗んで、
秘
(
ひそ
)
かにワジェンキの営舎を抜け出たのである。
勲章を貰う話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
アレは、
新田
(
あらた
)
さん、貴君が
秘
(
ひそ
)
かに作つて生徒に歌はせたのだと云ふ事ですが、
真実
(
ほんたう
)
ですか。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
胸中深く
秘
(
ひそ
)
められた心臓は、外気に
晒
(
さら
)
されても、何喰わぬ顔して動き続けて居る。君! 全く心臓は
曲物
(
くせもの
)
だよ。「ハートはままにされない」と誰かゞ言ったが、全くその通りだ。
恋愛曲線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
そして
加之
(
しかのみならず
)
、事実を興味深く粉飾するために、何の小説にも一様に、
護謨
(
ゴム
)
靴の刑事と、お
高祖頭巾
(
こそずきん
)
の賊とが現れ、色悪と当時称せられた姦淫が事件の裏に
秘
(
ひそ
)
んでいるのに極まっていた。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
そしてそれがまごうかたなく自分の
秘
(
ひそ
)
かに欲していた情景であることを知ったとき、彼の心臓はにわかに鼓動を増した。彼はじっと見ていられないような気持でたびたび眼を
外
(
そ
)
らせた。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
それは愉しい
一刻
(
ひととき
)
には違いなかった。夜更けの海辺の道を見知らぬ美しい女と肩を並べて歩くなどという
秘
(
ひそ
)
かな喜びは、病気が約束した短い一生にとってはまことに貴ぶ可きものなのだ。
ひとりすまう
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
一時
(
いっとき
)
、にんじんは、口をきくことができない。この
秘
(
ひそ
)
かな
悦
(
よろこ
)
び、握っているこの手、ほとんど力まかせに
縋
(
すが
)
っているこの手、それがすべてどこかへ飛んで行ってしまうような気がするのだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
後には
変貌
(
へんぼう
)
の山にも(九の二)、ゲッセマネの園にも(一四の三三)、
秘
(
ひそ
)
かなる祈りの場に三人の愛弟子を伴い給いましたが、今はまだそのような信頼をかけるべき者は一人もいないのです。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
こんな状態ではと、わたしはその時既に
秘
(
ひそ
)
かに思つたのだ。聟が第二の
息子
(
むすこ
)
となつて、
年老
(
としと
)
つて行く義父に涙のこぼれるやうな世話をしてくれる。かういふ美しい光景をわたしは幾つか見て来た。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
これは修羅の世を抜けいでて寂光の土にいたるという何ものかの
秘
(
ひそ
)
やかな
啓
(
あか
)
しなのでもあろうか。それでは自分も一応は浄火の
界
(
さかい
)
を過ぎて、いま凉道蓮台の
門
(
かど
)
さきまで
辿
(
たど
)
りついたとでも云うのか。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
何事やらむと
立佇
(
たちと
)
まれば慌しく
四隣
(
あたり
)
を見まはし、鮮やかなる和語に声を
秘
(
ひそ
)
めつゝ、御頼み申上げ度き一儀あり。
枉
(
ま
)
げて吾が寝泊りする処まで御足労賜はりてむやと、ひたすらに三拝九拝する様なり。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と私は
秘
(
ひそ
)
かに期しているところを
突如
(
いきなり
)
指されて尠からず
面食
(
めんくら
)
った。
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
考えれば、皆壺の骨に根本の罪が
秘
(
ひそ
)
むのであった。
職工と微笑
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
彼
(
かれ
)
に(おくりもの)が
秘
(
ひそ
)
めてある。
銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
秘
(
ひそ
)
かに
製造
(
せいざう
)
されつゝあるのである。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
灌木の茂みに
秘
(
ひそ
)
む細かい光線が
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
秘
(
ひそ
)
かに咲くは
夜顏
(
よるがほ
)
か
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
(ひとは御主君の軍略の才のみ知って、経済的な御頭脳は余り認めないが……経済といわず、この君に対しては、
秘
(
ひそ
)
か
事
(
ごと
)
は少しもできない)
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は心中
秘
(
ひそ
)
かに、少し美し過ぎるように思って聴いていたが、その時に既に心中に疑惑が根ざしていた。
併
(
しか
)
し声は
蔑
(
あなど
)
るべからずいい声である。
仏法僧鳥
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
かの女を手荒そうに取り扱って、その
些細
(
ささい
)
な近況からも、実人生の試験をするように細心な見張りを隠しながら、
秘
(
ひそ
)
かに母の力を培わしている。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
岩佐又兵衞か、菱川師宣か、——それとも狩野某といふ御用繪師の、金の誘惑に打ち負けての
秘
(
ひそ
)
かなすさびか。
銭形平次捕物控:209 浮世絵の女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
秘
(
ひそ
)
かにその機会を
窺
(
うかが
)
っている中に、一日たまたま
郊野
(
こうや
)
において、向うからただ一人歩み来る飛衛に
出遇
(
であ
)
った。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そして、彼は
秘
(
ひそ
)
かに喜平のその肉の仮面を肉づきのままに引き
剥
(
は
)
ぐべく、
爪
(
つめ
)
を研ぎ澄ましているのだった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
青木は何か初な恋人同士の
秘
(
ひそ
)
やかな気分で、三四子と青年の踊り出して行くのを二度も三度も見送つた。
二つの失敗
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
それで、
胎
(
はら
)
の子を、胡魔化しようもないので、若い二人は
秘
(
ひそ
)
かに会って泣きながら相談した。いい智恵も見付からぬ
裡
(
うち
)
に、女の身体はだんだんと隠せない程、変ってくる。
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
さうかと思ふと又心から人を見くびりせせら笑ひ影の影から
操
(
あや
)
かし
瞞
(
たぶ
)
らかすやうな、一度聴いたら逃れる事も忘れる事も出来ない、何かの深い執念と怪しい魔力を
秘
(
ひそ
)
めた
声音
(
こわね
)
である。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
信長に対する報告が早かったので、信雄が次男になったのである。信雄は凡庸の資であるが、信孝は、相当の人物である。長ずるに及んで、
秘
(
ひそ
)
かに不遇をかこって居たのも無理はない。
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その私が、もう十六にも七にもなって、自分にもわからぬある不思議な力にひかれて、何ものかを
憬
(
あこが
)
れもとめたことに、何か重大な罪悪でも
秘
(
ひそ
)
んでいたと、父や叔父は言うのであるか。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
“秘”の意味
《名詞》
(ヒ) 秘密
(ヒ) 計り知れない奥深いところ。秘儀、奥義。
(出典:Wiktionary)
秘
常用漢字
小6
部首:⽲
10画
“秘”を含む語句
秘密
神秘
秘蔵
秘伝
秘訣
秘奥
秘事
秘術
内秘
秘中
秘法
秘帖
秘蹟
秘戯
心秘
秘藏
秘密室
秘曲
秘蔵娘
秘書
...