中島敦（なかじまあつし）

1909.05.05 〜 1942.12.04

“中島敦”に特徴的な語句

何処（どこ） 有（も） 溢（あふ） 黥（いれずみ） 己（おれ） 執拗（しつよう） 独逸（ドイツ） 俺（おれ） 洩（も） 己（おのれ） 痩（や） 跣足（はだし） 哂（わら） 朝（ちょう） 自（みずか） 辿（たど） 乞（こ） 髭（ひげ） 能（よ） 羊歯（しだ） 僅（わず） 忽（たちま） 其処（そこ） 逞（たくま） 酷（ひど） 寐（ね） 堪（たま） 繋（つな） 惧（おそ） 其（そ） 曰（いわ） 成人（おとな） 云々（うんぬん） 途（みち） 後（うしろ） 麺麭（パン） 斯（か） 眩（まぶ） 咎（とが） 滑稽（こっけい） 在（あ） 智慧（ちえ） 厭（いと） 執（と） 歓（よろこ） 遣（つか） 床（ゆか） 覗（のぞ） 後（あと） 懼（おそ）

著者としての作品一覧

和歌でない歌（旧字旧仮名）
読書目安時間：約7分
遍歴 ある時はヘーゲルが如萬有をわが體系に統べんともせし ある時はアミエルが如つゝましく息をひそめて生きんと思ひし ある時は若きジイドと諸共に生命に充ちて野をさまよひぬ ある時はヘ …

盈虚（新字新仮名）
読書目安時間：約15分
衛の霊公の三十九年と云う年の秋に、太子蒯聵が父の命を受けて斉に使したことがある。途に宋の国を過ぎた時、畑に耕す農夫共が妙な唄を歌うのを聞いた。 既定爾婁豬 盍帰吾艾豭 牝豚はたしか …

盈虚（旧字旧仮名）
読書目安時間：約15分
衞の靈公の三十九年と云ふ年の秋に、太子蒯聵が父の命を受けて齊に使したことがある。途に宋の國を過ぎた時、畑に耕す農夫共が妙な唄を歌ふのを聞いた。 既定爾婁豬 盍歸吾艾豭 牝豚はたしか …

河馬（旧字旧仮名）
読書目安時間：約8分
河馬の歌 うす紅くおほに開ける河馬の口にキャベツ落ち込み行方知らずも ぽつかりと水に浮きゐる河馬の顏郷愁も知らぬげに見ゆ この河馬にも機嫌・不機嫌ありといへばをかしけれどもなにか笑 …

かめれおん日記（旧字旧仮名）
読書目安時間：約40分
蟲有蚘者。一身兩口、爭相齕也。遂相食、因自殺。 ——韓非子——博物教室から職員室へ引揚げて來る時、途中の廊下で背後から「先生」と呼びとめられた。 振返ると、生徒の一人——顏は確かに …

環礁：――ミクロネシヤ巡島記抄――（旧字旧仮名）
読書目安時間：約1時間13分
寂しい島 寂しい島だ。 島の中央にタロ芋田が整然と作られ、その周圍を蛸樹やレモンや麺麭樹やウカル等の雜木の防風木が取卷いてゐる。その、もう一つ外側に椰子林が續き、さてそれからは、白 …

環礁：――ミクロネシヤ巡島記抄――（新字新仮名）
読書目安時間：約1時間14分
寂しい島 寂しい島だ。 島の中央にタロ芋田が整然と作られ、その周囲を蛸樹やレモンや麺麭樹やウカルなどの雑木の防風木が取巻いている。その、もう一つ外側に椰子林が続き、さてそれからは、 …

狐憑（旧字旧仮名）
読書目安時間：約10分
ネウリ部落のシャクに憑きものがしたといふ評判である。色々なものが此の男にのり移るのださうだ。鷹だの狼だの獺だのの靈が哀れなシャクにのり移つて、不思議な言葉を吐かせるといふことである …

狐憑（新字新仮名）
読書目安時間：約10分
ネウリ部落のシャクに憑きものがしたという評判である。色々なものがこの男にのり移るのだそうだ。鷹だの狼だの獺だのの霊が哀れなシャクにのり移って、不思議な言葉を吐かせるということである …

牛人（新字新仮名）
読書目安時間：約10分
魯の叔孫豹がまだ若かった頃、乱を避けて一時斉に奔ったことがある。途に魯の北境庚宗の地で一美婦を見た。俄かに懇ろとなり、一夜を共に過して、さて翌朝別れて斉に入った。斉に落着き大夫国氏 …

鏡花氏の文章（新字新仮名）
読書目安時間：約7分
日本には花の名所があるように、日本の文学にも情緒の名所がある。泉鏡花氏の芸術が即ちそれだ。と誰かが言って居たのを私は覚えている。併し、今時の女学生諸君の中に、鏡花の作品なぞを読んで …

夾竹桃の家の女（新字旧仮名）
読書目安時間：約8分
午後。風がすつかり呼吸を停めた。 薄く空一面を蔽うた雲の下で、空気は水分に飽和して重く淀んでゐる。暑い。全く、どう逃れようもなく暑い。 蒸風呂にはひり過ぎた様なけだるさに、一歩一歩 …

悟浄出世（新字新仮名）
読書目安時間：約38分
寒蝉敗柳に鳴き大火西に向かいて流るる秋のはじめになりければ心細くも三蔵は二人の弟子にいざなわれ嶮難を凌ぎ道を急ぎたもうに、たちまち前面に一条の大河あり。大波湧返りて河の広さそのいく …

悟浄歎異：―沙門悟浄の手記―（新字新仮名）
読書目安時間：約25分
昼餉ののち、師父が道ばたの松の樹の下でしばらく憩うておられる間、悟空は八戒を近くの原っぱに連出して、変身の術の練習をさせていた。 「やってみろ！」と悟空が言う。「竜になりたいとほん …

山月記（新字新仮名）
読書目安時間：約12分
隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。いくばくもなく官を退いた後 …

山月記（旧字旧仮名）
読書目安時間：約12分
隴西の李徴は博學才穎、天寶の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、性、狷介、自ら恃む所頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかつた。いくばくもなく官を退いた後は、 …

十年（新字新仮名）
読書目安時間：約3分
十年前、十六歳の少年の僕は学校の裏山に寝ころがって空を流れる雲を見上げながら、「さて将来何になったものだろう。」などと考えたものです。大文豪、結構。大金持、それもいい。総理大臣、一 …

セトナ皇子（仮題）（新字新仮名）
読書目安時間：約4分
メムフィスなるプタの神殿に仕うる書記生兼図案家、常にウシマレス大王に変らざる忠誠を捧ぐる臣、メリテンサ。謹んで之を記す。この物語の真実なることを、あかしし給う神々の御名は、鷹神ハト …

章魚木の下で（新字新仮名）
読書目安時間：約5分
南洋群島の土人の間で仕事をしていた間は、内地の新聞も雑誌も一切目にしなかった。文学などというものも殆ど忘れていたらしい。その中に戦争になった。文学に就いて考えることは益々無くなって …

弟子（新字新仮名）
読書目安時間：約48分
魯の卞の游侠の徒、仲由、字は子路という者が、近頃賢者の噂も高い学匠・陬人孔丘を辱しめてくれようものと思い立った。似而非賢者何程のことやあらんと、蓬頭突鬢・垂冠・短後の衣という服装で …

斗南先生（新字新仮名）
読書目安時間：約45分
雲海蒼茫佐渡ノ洲 郎ヲ思ウテ一日三秋ノ愁 四十九里風波悪シ 渡ラント欲スレド妾ガ身自由ナラズ ははあ、来いとゆたとて行かりょか佐渡へだな、と思った。題を見ると、戯翻竹枝とある。 そ …

虎狩（新字新仮名）
読書目安時間：約49分
私は虎狩の話をしようと思う。虎狩といってもタラスコンの英雄タルタラン氏の獅子狩のようなふざけたものではない。正真正銘の虎狩だ。場所は朝鮮の、しかも京城から二十里位しか隔たっていない …

南島譚：01 幸福（新字新仮名）
読書目安時間：約11分
昔、此の島に一人の極めて哀れな男がいた。年齢を数えるという不自然な習慣が此の辺には無いので、幾歳ということはハッキリ言えないが、余り若くないことだけは確かであった。髪の毛が余り縮れ …

南島譚：02 夫婦（新字新仮名）
読書目安時間：約15分
今でもパラオ本島、殊にオギワルからガラルドへ掛けての島民で、ギラ・コシサンと其の妻エビルの話を知らない者は無い。 ガクラオ部落のギラ・コシサンは大変に大人しい男だった。其の妻のエビ …

南島譚：03 雞（新字新仮名）
読書目安時間：約18分
南洋群島島民のための初等学校を公学校というが、或る島の公学校を参観した時のこと、丁度朝礼で新任の一教師の紹介が行われている所にぶつかった。其の新しい先生はまだ如何にも若々しく見える …

光と風と夢（新字新仮名）
読書目安時間：約2時間38分
一八八四年五月の或夜遅く、三十五歳のロバァト・ルゥイス・スティヴンスンは、南仏イエールの客舎で、突然、ひどい喀血に襲われた。駈付けた妻に向って、彼は紙切に鉛筆で斯う書いて見せた。「 …

プウルの傍で（新字新仮名）
読書目安時間：約34分
グラウンドではラグビイの選手達が練習をしていた。彼等は黒地に黄色の、縞のユニフォオムを着けていた。それは何となく蜂のような感じを与えた。次から次へと球を渡しながら、十人ばかり横に並 …

木乃伊（新字新仮名）
読書目安時間：約9分
大キュロスとカッサンダネとの息子、波斯王カンビュセスが埃及に侵入した時のこと、その麾下の部将にパリスカスなる者があった。父祖は、ずっと東方のバクトリヤ辺から来たものらしく、いつまで …

名人伝（新字新仮名）
読書目安時間：約12分
趙の邯鄲の都に住む紀昌という男が、天下第一の弓の名人になろうと志を立てた。己の師と頼むべき人物を物色するに、当今弓矢をとっては、名手・飛衛に及ぶ者があろうとは思われぬ。百歩を隔てて …

名人伝（旧字旧仮名）
読書目安時間：約12分
趙の邯鄲の都に住む紀昌といふ男が、天下第一の弓の名人にならうと志を立てた。己の師と頼むべき人物を物色するに、當今弓矢をとつては、名手・飛衞に及ぶ者があらうとは思はれぬ。百歩を隔てて …

文字禍（新字新仮名）
読書目安時間：約13分
文字の霊などというものが、一体、あるものか、どうか。 アッシリヤ人は無数の精霊を知っている。夜、闇の中を跳梁するリル、その雌のリリツ、疫病をふり撒くナムタル、死者の霊エティンム、誘 …

妖氛録（新字新仮名）
読書目安時間：約10分
口数の寡い、極く控え目勝ちな女であった。美人には違いないが、動きの少い、木偶の様な美しさは、時に阿呆に近く見えることがある。この女は、自分故に惹起される周囲の様々な出来事に、驚きの …

李陵（新字新仮名）
読書目安時間：約1時間8分
漢の武帝の天漢二年秋九月、騎都尉・李陵は歩卒五千を率い、辺塞遮虜鄣を発して北へ向かった。阿爾泰山脈の東南端が戈壁沙漠に没せんとする辺の磽确たる丘陵地帯を縫って北行すること三十日。朔 …

狼疾記（新字新仮名）
読書目安時間：約47分
養其一指、而失其肩背、而不知也、則為狼疾人也。 ——孟子——スクリインの上では南洋土人の生活の実写がうつされていた。眼の細い・唇の厚い・鼻のつぶれた土人の女たちが、腰にちょっと布片 …

翻訳者としての作品一覧

罪・苦痛・希望・及び真実の道についての考察（旧字旧仮名）
読書目安時間：約3分
眞實の道は一本の繩——別に高く張られてゐるわけではなく、地上からほんの少しの高さに張られてゐる一本の繩を越えて行くのだ。それは人々がその上を歩いて行くためよりも、人々がそれに躓くた …

“中島敦”について

中島 敦（なかじま あつし、1909年〈明治42年〉5月5日 - 1942年〈昭和17年〉12月4日）は、日本の小説家。代表作は『山月記』『光と風と夢』『弟子』『李陵』など。第一高等学校、東京帝国大学を卒業後、横浜高等女学校の教員勤務のかたわら小説執筆を続け、パラオ南洋庁の官吏（教科書編修書記）を経て専業作家になるも、同年中に持病の喘息悪化のため33歳で病没。死後に出版された全集は毎日出版文化賞を受賞した。
(出典:Wikipedia)