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窃
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ひそ
ふりがな文庫
“
窃
(
ひそ
)” の例文
旧字:
竊
其説に拠ると小十郎は何等の言をも発せずに終ったので、政宗は其夜
窃
(
ひそ
)
かに小十郎の家を
訪
(
と
)
うた。小十郎は主人の成りを
悦
(
よろこ
)
び迎えた。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「何う転んでも恨みを残さないというのが、君達の
所謂
(
いわゆる
)
、競争は競争、友情は友情だろうと思って、俺は心
窃
(
ひそ
)
かに敬服していたのだ」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
僕は
窃
(
ひそ
)
かに信じているんだが、その男自身も、彼の周囲の人達も、妙子が僕と結婚しようなどとは、毛頭考えていなかったに相違ない。
恐ろしき錯誤
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかるべき重箱の中に詰めた弁当が、例によって
窃
(
ひそ
)
かに風呂敷に包んだまま差廻されているのを、米友は無雑作に首根っ子へ結びつけ
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私が
窃
(
ひそ
)
かに、最も大切な根本的な或物が欠けているという不満を感ぜねばならないのは、まことに遺憾千万なことだと思います。
婦人指導者への抗議
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
二階へ上つてみると、奥の四畳半にぴち/\音がして、
窃
(
ひそ
)
やかな話声が籠つてゐた。
襖
(
ふすま
)
をあけると、男が四人車座に坐つてゐた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
孫十郎はやはり俺の運が向いて来たのだと
窃
(
ひそ
)
かにほほえんでいると、そのあくる日になっても、かの武士は姿をみせなかった。
半七捕物帳:42 仮面
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私も彼にばかり知つたかぶりをされるのは
窃
(
ひそ
)
かに快くなかつたので、彼の知らない範囲で、彼に答へを求めてやらうと考へた。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
此れ其友人門生等先師の墓標に文学博士の四字を記入せん事を
冀
(
こいねが
)
い其の訃を秘して
窃
(
ひそ
)
に学位授与の運動をなしたるによるものなりといえり。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
さて谷本博士は、『古事記』に、
品地別命
(
ほむじわけみこと
)
肥長比売
(
ひながひめ
)
と婚し、
窃
(
ひそ
)
かに伺えば、その
美人
(
おとめご
)
は
蛇
(
おろち
)
なり、すなわち
見
(
み
)
畏
(
かしこ
)
みて
遁
(
に
)
げたもう。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
この梅は支那と同様に果して日本にも天然に野生していたのか否か、私の
窃
(
ひそ
)
かに考える所では、元来梅は日本の固有種では無いと断じたい。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
兼てから二人の事に
就
(
つ
)
いて何くれとなく心配していた姉歯某とが、極力制止するをも
諾
(
き
)
かず、
窃
(
ひそ
)
かに旅費をこしらえて、単身人眼を避けつつ
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
窃
(
ひそ
)
かに世情を
視
(
み
)
るに、近来は政治の議論
漸
(
ようや
)
く
喧
(
かまびす
)
しくして、社会の公権即ち政権の受授につき、これを守らんとする者もまた取らんとする者も
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ところで今日も存在する入り口に近い一条の横穴——富士講中の
籠舎
(
こもりや
)
の附近に、その頃女の面作師が一人
窃
(
ひそ
)
かに籠っていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
出来合ひの聖母マリヤか架空の佳人を守護天使にして
窃
(
ひそ
)
かに溜息をまぎらす方が、むしろ絶望の息苦しさを多少ともまぬかれたに相違ないのだ。
狼園
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
他
(
ひと
)
の庭内に忍び入りたるものがかくまで平気に
睡
(
ねむ
)
られるものかと、吾輩は
窃
(
ひそ
)
かにその大胆なる度胸に驚かざるを得なかった。彼は純粋の黒猫である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
明年、
夷舶
(
いはく
)
の下田に
在
(
あ
)
るや、余、藩の人渋木生と
窃
(
ひそ
)
かに夷船を駕して海外に航せんことを謀り、事
覚
(
あら
)
われて捕えらる。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
……五月といえば、二カ月さきのことであったが、それまでこの戦争が続くだろうか、と正三は
窃
(
ひそ
)
かに考え
耽
(
ふけ
)
った。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
この「人言を」の歌は、皇女が高市皇子の宮に居られ、
窃
(
ひそ
)
かに穂積皇子に接せられたのが
露
(
あら
)
われた時の御歌である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
盗まれし人之を知り、多勢集まり居て山姥が我子を盗みしことを大音に
罵
(
ののし
)
り恥しむるときは、
窃
(
ひそ
)
かに小児を連れ来り、其家の傍に捨て置き帰るといへり
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
たとえ少数の商人が、巧智に
長
(
た
)
けた眼を
窃
(
ひそ
)
かに働かして旅人の財布を軽めるにもせよ。「奈良」の人々は決して劇しい生活の準備などはしないでしょう。
「奈良」に遊びて
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
欧化気分がマダ残っていたとはいえ、沼南がこの極彩色の夫人と衆人環視の中でさえも
綢繆
(
ちゅうびゅう
)
纏綿
(
てんめん
)
するのを苦笑して
窃
(
ひそ
)
かに沼南の名誉のため
危
(
あやぶ
)
むものもあった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
訴たえることは出来ず、母からは取返えすことも出来ないなら、
窃
(
ひそ
)
かに自分で弁償するより外の手段はない。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
殊に奸夫幸兵衞と申合わせ
窃
(
ひそ
)
かに半右衞門を殺した大悪非道な女じゃによって、最早半右衛門の妻でない、半右衛門の妻でなければ長二郎のために母でない
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ただ、今、一般に一片の冷笑をもってよばるる探偵ものは、いかなる構造のもとに嘲罵されながらしかも
窃
(
ひそ
)
かに愛読されつつあるかをここに顧みる必要がある。
探偵小説の芸術性:――文学のメカニズム――
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
が然し、僕は
窃
(
ひそ
)
かに、此の一対は恐らく最も幸福な夫婦になるかも知れぬと思って、彼等の前途を祝した。
感傷主義:X君とX夫人
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
鳥は一ト声も音を聞かせず、皆どこにか隠れて
窃
(
ひそ
)
まりかえッていたが、ただおりふしに人をさみした
白頭翁
(
しじゅうがら
)
の声のみが、
故鈴
(
ふるすず
)
でも鳴らすごとくに、響きわたッた。
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
社会はお前を
褒
(
ほ
)
めあげて、お前に、お前が心
窃
(
ひそ
)
かに恥じねばならぬような過大な報償を贈ってよこす。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
三百枚といふ大数には驚いた。毎日一枚宛書くとして十カ月分の状袋である。十カ月先きのことはどうなるか甚だ
覚束
(
おぼつか
)
ないものであるのにと
窃
(
ひそ
)
かに心配して居つた。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
中川家の客席は人少くして淋しけれども広海子爵は結句他人を交えぬがよしと心
窃
(
ひそ
)
かに悦ぶ所あり。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
文三が食事を済まして縁側を廻わり
窃
(
ひそ
)
かに奥の間を
覗
(
のぞ
)
いて見れば、お政ばかりでお勢の姿は見えぬ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
終生浮ぶ
瀬
(
せ
)
のなき
凌辱
(
りょうじょく
)
を
蒙
(
こうむ
)
りながら、なお儒教的教訓の圧制に余儀なくせられて、
窃
(
ひそ
)
かに愛の欠乏に泣きつつあるは、妾の境遇に比して、その幸不幸
如何
(
いか
)
なりやなど
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
例えば父母の間のそのような行為を、心中
窃
(
ひそ
)
かに
窺窬
(
きゆ
)
するだけでも、甚しい冒涜であると思った。
澪標
(新字新仮名)
/
外村繁
(著)
またその梅を折る人も物を盗むは悪い事と知りながらそれを金に
代
(
か
)
えようというわけでもなく、
多寡
(
たか
)
が梅の花の一枝位だから折ってやれと、
窃
(
ひそ
)
かに折り取ろうとしていると
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ミルクホールを出されるときの元手は、お父さまとお母さまとが
窃
(
ひそ
)
かに
工面
(
くめん
)
して下さつたのださうだけれど、家を継いでゐられるお兄さまはいつまでも解けて下さらなかつた。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
窃
(
ひそ
)
かにその夜は涙を流しましたが実に女房を持った坊さんほど気の毒なものはないです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
窃
(
ひそ
)
かに人夫等の
相談
(
さうだん
)
するを聞けば皆
感歎
(
かんたん
)
し曰く、之れ
文珠
(
もんじゆ
)
菩薩の恩恵にして、世人未知の菩薩が探検一行によりて、世に
顕
(
あら
)
はれ出でんと欲するの
志
(
こころざし
)
は、一行をして日々晴天に
逢
(
あ
)
はしめ
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
お文さんの涙につりこまれて眼を伏せると、
窃
(
ひそ
)
かな哀感が私の胸にしみた。
念仏の家
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
待網を掛けて
雑魚
(
ざこ
)
を捕り
窃
(
ひそ
)
かに寺へ
持帰
(
もちかえ
)
って
賞玩
(
しょうがん
)
するのだ、この事
檀家
(
だんか
)
の告発に
依
(
よ
)
り師の坊も
捨置
(
すておき
)
がたく、十分に
訓誡
(
くんかい
)
して
放逐
(
ほうちく
)
しようと思っていると、当人の方でも
予
(
あらかじ
)
めその
辺
(
あたり
)
の消息を知り
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
おとなしい娘を手に入れることが出来るのかと心中
窃
(
ひそ
)
かに喜んだのだが、それ程物堅い親子が
揃
(
そろ
)
って来るとなると、松源での初対面はなんとなく壻が
岳父
(
しゅうと
)
に
見参
(
げんざん
)
すると云う風になりそうなので
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
宛
(
まる
)
で身体の大きい赤坊です、声を放ッて泣て居ます目「
何
(
ど
)
れ行て見よう、だが
己
(
おれ
)
の逢て居る間、外で物音をさせては
了
(
いけ
)
ないよ」と注意を与え目科は先ず抜足して牢の所に寄り
窃
(
ひそ
)
かに内を窺い見る
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
新仏
(
しんぼとけ
)
の○○村の
豪家
(
ごうか
)
○○氏の娘の霊である、何か
故
(
ゆえ
)
のあって、
今宵
(
こよい
)
娘の霊が来たのであろうから、お前
達
(
だち
)
も
後々
(
のちのち
)
の
為
(
た
)
めに
窃
(
ひそ
)
かにこれを見ておけと告げて、彼等徒弟は、そっと
一室
(
ひとま
)
に隠れさしておき
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
渠
(
かれ
)
は涼風の
来
(
きた
)
るごとに念仏して、心
窃
(
ひそ
)
かに学生の好意を
謝
(
しゃ
)
したりき。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わたくしはこの手洗いに仏を刻んである因縁を
窃
(
ひそ
)
かに考えて見て、清きが故なお浄かろうとする意図を床しく思うた。茶庭では燈籠は木のうしろにいても、手洗いは
上手
(
かみて
)
に立たなければならなかった。
庭をつくる人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
窃
(
ひそ
)
かに企てていたのに、なんと云う罰せられようだ。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
平三は母の顔を
窃
(
ひそ
)
かに見た。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
曩
(
さき
)
の
夜
(
よ
)
、母から十日の内には死ぬと云い聞かされた時には、彼は心
窃
(
ひそ
)
かにお葉というものを頼みにしていた。が、それも
希望
(
のぞみ
)
の綱が切れた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
曲がった所に城の番兵が五人守備している筈である。曲がり角まで来た時に老師は
窃
(
ひそ
)
かに足を止め、数馬の方へ振り返った。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あたかも輿論に敵して
窃
(
ひそ
)
かにこれを犯すことなれば、その事はすべて人間の大秘密に属して、言う者もなく聞く者もなく
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その妃親臣を呼び、
窃
(
ひそ
)
かに従い行かしめ、
何時
(
いつ
)
でもわが夫浴するを見ばその腰巻を取り帰ってわれに渡せと命じた。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
窃
常用漢字
中学
部首:⽳
9画
“窃”を含む語句
窃盗
剽窃
窃々
窃取
心窃
窃視
窃笑
窃盜
窃窕
強窃盗
窃比我於老彭
露窃
窃眇
窃盗狂者
窃盗狂
窃盗事件
窃書
窃伺
尚窃
小窃偸
...