ひそ)” の例文
とつぶやきながらひそかに胸を躍らした。本能的に用心深い足取りで、高い混凝土塀コンクリートべいを半まわりして、裏手の突角とっかくの処まで来た。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
妾はロダンさんの芸術をひそかながら、妾の心の奥底に感じることが出来ると同時に、この老いた彫刻家に妾は自分の心を与えることが出来たのです。
バルザックの寝巻姿 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
女は何もいわずにひそかにわらった。金は女のしたことではないかと思って聞いた。
五通 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
ベーコン卿の『シルヴァ・シルワルム』に、犬が犬殺しを識るは普通に知れ渡った事で、狂犬荒るる時ひそかに卑人を派して犬を殺さしむるに、かつて犬殺しを見た事もなき犬ども集り来て吠えはしると。
女は口もとをおおってひそかに笑った。柳は長揖ちょうゆうの礼をとっていった。
織成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)