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ふりがな文庫
“
密
(
ひそ
)” の例文
いよ/\城の運命が
幾何
(
いくばく
)
もないことを悟って、八歳になる嫡男と六歳になる姫君とを、
乳人
(
めのと
)
に預けて
密
(
ひそ
)
かに或る方面へ落してやった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「微行も微行、一切、人目を怖れる
密
(
ひそ
)
かな途中だ。わけてここは諸国の者の出入りの
繁
(
はげ
)
しい港町。はやくせい。
仔細
(
しさい
)
はあとで話すから」
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鬼のような深山は、赤外線利用の技術を悪用して、それまでにも、人の寝室を
密
(
ひそ
)
かに写真にとっては、打ち興じていたという
痴漢
(
ちかん
)
です。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ことによると、戸締りをする
以前
(
いぜん
)
から
密
(
ひそ
)
かに這入っておって……うフフフ、そも何者がこの屋敷へひそかにはいっておるというのじゃ?
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼女
(
かのぢよ
)
は
喜
(
よろこ
)
びも
心配
(
しんぱい
)
も、たゞそのためにのみして
書
(
か
)
き
入
(
い
)
れた
努力
(
どりよく
)
の
頁
(
ページ
)
をあらためて
繰
(
く
)
つてみて
密
(
ひそ
)
かに
矜
(
ほこ
)
りなきを
得
(
え
)
ないのであつた。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
▼ もっと見る
職業柄人見知りなんかはしてゐられないし、又さういふことにかけては
密
(
ひそ
)
かに自信を持つてゐた房一も、少したぢたぢとなつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
夜の中に通り
拔
(
ぬ
)
け
流石
(
さすが
)
晝中は人目を
憚
(
はゞか
)
り
密
(
ひそ
)
かに彼の盜み取し二百兩の金にて
宿場
(
しゆくば
)
の
飯盛
(
めしもり
)
女を揚げて日を暮し夜に入るを待て其處を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
密
(
ひそ
)
かに忠次を呼び入れて、「汝の策略は最も妙、それ故に他に洩れるのを慮って偽り怒ったのだ」と云って秘蔵の
瓢箪板
(
ひょうたんいた
)
の忍び
轡
(
ぐつわ
)
を与えた。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
脱ぐ沓の重なると読めるは女の
密
(
ひそ
)
かに男の
辺
(
ほと
)
りに寄る時ははきたる沓を脱げば、自ずから重なりて脱ぎ置かるるなりというた。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは
彼等
(
かれら
)
の
石盤
(
せきばん
)
を
見越
(
みこ
)
せる
程
(
ほど
)
近
(
ちか
)
くに
居
(
ゐ
)
たので、
全然
(
すつかり
)
それが
分
(
わか
)
りました、『
併
(
しか
)
しそれは
何
(
ど
)
うでも
關
(
かま
)
はないわ』と
密
(
ひそ
)
かに
然
(
さ
)
う
思
(
おも
)
ひました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
また一方、毒瓦斯の出ない工場にはまた色々別の危険が潜伏していて、そうして
密
(
ひそ
)
かに犠牲者の油断のすきを狙って爪を
研
(
と
)
いでいるであろう。
KからQまで
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
或る日、ナポレオンは侍医を
密
(
ひそ
)
かに呼ぶと、古い太鼓の皮のように光沢の消えた腹を出した。侍医は彼の
傍
(
そば
)
へ、恭謙な
禿頭
(
はげあたま
)
を近寄せて
呟
(
つぶや
)
いた。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
鳥居甲斐守は組下の目明し下っ引を追いまわして昨年暮から
密
(
ひそ
)
かに大探索を続けておりまするが、まだ確かな手掛りはない様子でございます。
顎十郎捕物帳:01 捨公方
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
年少不良の徒の歌に、私は
屡
(
しばしば
)
、飛びあがる様に新しくて、強い気息を聴いて、
密
(
ひそ
)
かに
羨
(
うらや
)
み喜んだ事も、挙げよとなら若干の例を示す事が出来る。
歌の円寂する時
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
ことに今日は神尾主膳から仕掛けて行って、敵を引張り出そうとする形勢が
歴々
(
ありあり
)
と見えるから、能登守のために
密
(
ひそ
)
かに心配する者もありました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし
私
(
わたし
)
は
決定的
(
けつていてき
)
でなかつた。
行
(
い
)
くなら一
人
(
り
)
やつた
方
(
ほう
)
がいゝと
私
(
わたし
)
は
密
(
ひそ
)
かに
思
(
おも
)
つてゐた。I
子
(
こ
)
を
番
(
ばん
)
してついて
行
(
い
)
くやうなことは
私
(
わたし
)
には
出来
(
でき
)
なかつた。
微笑の渦
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
自分が
曾
(
かつ
)
て知っていた、或いは本で読んだことのある、
乃至
(
ないし
)
は噂に聞いたことのある誰かれの顔を——それら
漸
(
ようや
)
く
密
(
ひそ
)
やかに薄れ隠れようとしている
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
併しそれがいつも
密
(
ひそ
)
かに計画して、巧みに実施せられるので、世間には只ぼんやりした流言が伝はつてゐる丈で、証拠や事実の挙げられたことは無い。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
そうでなくとも堂々と押しかけてきて一門を承知させたことになっていて、大昔の神々のごとく
夜陰
(
やいん
)
密
(
ひそ
)
かに
通
(
かよ
)
ってきて後に露顕したものではなかった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
太虚この劇の流行を聞き、丁度南昌に来れる龔芝麓と共に、
密
(
ひそ
)
かに
歌伶
(
かれい
)
を其の家に召し、夜半之を演ずるを
観
(
み
)
る。
八宝飯
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
もしいつはりと
思
(
おも
)
はれなば、
例
(
れい
)
の
宿直
(
とのゐ
)
にとて
家
(
いへ
)
を
出
(
い
)
でて、
試
(
こゝろ
)
みにかへり
來
(
き
)
て、
密
(
ひそ
)
かに
伺
(
うかゞ
)
うて
見
(
み
)
らるべし、と
云
(
い
)
ふ。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
平次殿の
仰
(
おっしゃ
)
る通り、風呂場には
強
(
したた
)
かに血の付いた、
袷
(
あわせ
)
が一枚、
盥
(
たらい
)
につけてありました。これは御厚志に
酬
(
むく
)
ゆるために、
密
(
ひそ
)
かに申上げる。万事御内聞に——
銭形平次捕物控:238 恋患い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ところで、私は家内の育児の手際、殊にその気持ちのありどころに対しては、
密
(
ひそ
)
かに深い注意を払ってきた。
盗難
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
……伊東はその朝、検視の折、武太郎の無残に切断された右
大腿部
(
だいたいぶ
)
の内側に銃砲による
弾痕
(
だんこん
)
を
密
(
ひそ
)
かに発見して、急に口を
噤
(
つぐ
)
んでしまったことを思い合わせた。
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
内に深く残忍の想を
潜
(
ひそ
)
め、外又恐るべく悲しむべき
夜叉相
(
やしゃそう
)
を浮べ、
密
(
ひそ
)
やかに
忍
(
しの
)
んで参ると斯う云うことじゃ。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
○今日諸侯の処しよう、これも愚考の所、在邸の節
密
(
ひそ
)
かに建白致し候えども、囚奴の言、政府何ぞ信用あらん。しかし知己のために一言して併せて高論を乞う。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
大英国は
羨
(
うらや
)
むべき国よなど
密
(
ひそ
)
かに思ひ申し
候
(
さふらふ
)
。この
甲板
(
かふばん
)
へ
藁蒲団
(
わらぶとん
)
敷き詰めて
角力
(
すまふ
)
の催しなどもありしよしに
候
(
さふらふ
)
。私の室
附
(
づき
)
の山中は五人抜きの勝利を得し
由
(
よし
)
に
候
(
さふらふ
)
。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
けれど矢っ張り妙な恥かしさから、彼の書いた手紙には、裏の裏にやっと遣る瀬なさを
密
(
ひそ
)
めたが、忙しい世の中では表てだけ読んで、ぽんと丸められて仕舞った。
舌打する
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
維新前国禁を犯して
密
(
ひそ
)
かに米国に航し、同地に於て
基督
(
キリスト
)
教の感化を受けたのであるから、日本武士の精神と
基督
(
キリスト
)
教の信仰とを併有する一種精神上の勇者であった。
新島先生を憶う:二十回忌に際して
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
隅田のご前を前後に守り、七福神組の連中が、目立たぬ旅の装いをして、
密
(
ひそ
)
かに歩いて行くのであった。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「恋をするものの
密
(
ひそ
)
かな気息であり、天上の星の音楽である。」と云う言葉のようなものがありました。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そうして、そういう冷やかな態度を取らなければ満足の出来ない自分を
密
(
ひそ
)
かに悲しみはしなかったか。
自己の肯定と否定と
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
この古い琴の
音色
(
ねいろ
)
には
幾度
(
いくたび
)
か人の胸に
密
(
ひそ
)
やかな
漣
(
さざなみ
)
が起った事であろう。この道具のどれかが己をそういう目に
遇
(
あ
)
わせてくれたなら、どんなにか有難く思ったろうに。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
密
(
ひそ
)
かに目を注けてあやしんで居たものゝ、それでも単身柳橋の酒楼に馳向うとは夢にも思わなかった。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
臣
伏
(
ふ
)
して祖訓を
覩
(
み
)
るに
云
(
い
)
えることあり、
朝
(
ちょう
)
に正臣無く、内に奸悪あらば、
則
(
すなわ
)
ち親王兵を訓して命を待ち、天子
密
(
ひそ
)
かに諸王に
詔
(
みことのり
)
し、鎮兵を統領して之を討平せしむと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
するとそこでは平素から
不逞
(
ふてい
)
の志をいだいていた
壮丁
(
そうてい
)
たちが、
密
(
ひそ
)
かに銃器の手入れや竹槍の用意やをしている。近藤巡査とその同僚たちとは直ちに彼らをひっ捕えた。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
伯夷叔斉
(
はくいしゅくせい
)
も
太公
(
たいこう
)
も群衆に逆らった心の独立は
好
(
よ
)
みすべきであるが、もし二人の兄弟が
武王
(
ぶおう
)
に反対して、
密
(
ひそ
)
かに出版物を
播
(
ま
)
き散らしたり、あるいは
隠
(
いん
)
に徒党を組んだり
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
伝七郎の
失踪
(
しっそう
)
は父や兄達にとってたいへんな打撃だったのだろう、あの翌朝から
密
(
ひそ
)
かに手分けをして、八方へ追手を出すとともに、城下町をずいぶん捜し廻ったらしい
恋の伝七郎
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
豊雄を
密
(
ひそ
)
かに招きて、此の事よくしてよとて袈裟をあたふ。豊雄これを
懐
(
ふところ
)
に隠して
閨房
(
ねや
)
にいき、庄司今はいとま
三八一
たびぬ、
三八二
いざたまへ、出で立ちなんといふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
私は
密
(
ひそ
)
かにその日数で、その玩具がどの程度にお気に入ったかを占うバロメーターにしていた。
解説 趣味を通じての先生
(新字新仮名)
/
額田六福
(著)
自由主義を唱道してしかして
密
(
ひそ
)
かに権略を事とする者あり、進歩主義を仮装してしかして陰に功利を貪る者あり、理よろしく永久平和を唱うべき者また国防論を草するあり
近時政論考
(新字新仮名)
/
陸羯南
(著)
暗い町を肩を並べて歩き乍ら、稀なる
往来
(
ゆきき
)
の人に遠慮を
為
(
し
)
い/\、
密
(
ひそ
)
めた声も時々高くなる。
札幌
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私の自負が私の
平生
(
へいぜい
)
に希望している内生の満足を意味するのでなくて、他人に私の微弱な自我をわざと誇張し、見せびらかそうとする痩我慢であるのを深く
密
(
ひそ
)
かに
愧
(
は
)
じている。
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
今迄数回の通告に応諾の意を表さなかった
貴女
(
あなた
)
は当然制裁を甘受せねばなりません、明夜十時三十分を期して
密
(
ひそ
)
かに、戸外へ出て一丁東の四辻まで来て下さい、この命令に従うことが
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
此の節は、旦那の出らるゝ前に、
密
(
ひそ
)
かに
蟇口
(
がまぐち
)
の内を診察いたしおき候。買ひし物を
釣好隠居の懺悔
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
「まァ
密
(
ひそ
)
かに。荒立ては万事が破滅、密かに……頼む……これ、後生じゃ、頼む」
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
泳ぎ回る者でもいるように頭の中がぐらぐらする葉子には、殺人者が凶行から目ざめて行った時のような底の知れない気味わるさが感ぜられた。葉子は
密
(
ひそ
)
やかにその部屋を抜け出して戸外に出た。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
殿様お
泊番
(
とまりばん
)
の
夜
(
よ
)
に、源次郎が
密
(
ひそ
)
かにお國の
許
(
もと
)
へ忍び込み、
明日
(
みょうにち
)
中川にて殿様を舟から突落し殺そうとの
悪計
(
わるだく
)
みを、
私
(
わたくし
)
が
立聞
(
たちぎゝ
)
をした所から、争いとなりましたが、
此方
(
こちら
)
は悲しいかな草履取の身の上
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
単身越年を
為
(
な
)
さんと決するや、
妻
(
さい
)
これを
憂
(
うれ
)
い
独
(
ひと
)
り
密
(
ひそ
)
かに急行、小児を郷里の父母に托して登山し来るに就きては、幾分心を労することもあるなるべし、その結果妻は十一月上旬に至り、
甚
(
いた
)
く逆上し
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)
(新字新仮名)
/
野中至
(著)
然し、各自は
密
(
ひそ
)
かにさう思つてゐたにしても、クラス全體に行き
亘
(
わた
)
つてゐる群衆心理はそれを
容易
(
たやす
)
く征服した。そして或る一點へ進まうとする根強い力が既に
兆
(
きざ
)
してゐるのをみんなは意識してゐた。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
“密”の意味
《名詞・形容動詞》
ひそかな様。隠密。
関係が深い様。親密。
ぎっしりと詰まっている様。一定の枠の中に多くのものが集まる様。
きめこまかい様。綿密。
新型コロナウイルスの流行下において、避けるべきとされる「密接」、「密閉」、「密接」のこと。3密。
(出典:Wiktionary)
密
常用漢字
小6
部首:⼧
11画
“密”を含む語句
秘密
密々
密告
密接
密通
内密
密着
祕密
密夫
親密
隠密
密会
密書
密語
密偵
稠密
密林
精密
密集
密貿易
...