-
トップ
>
-
見越
樽を
張子で、鼠色の大入道、金銀張分けの大の
眼を、行燈
見越に
立はだかる、と縄からげの貧乏
徳利をぬいと突出す。
「もとは
柳橋にいた奴だよ、今は、
駒形堂の傍に、
船板塀に
見越の
松と云う寸法だ、しかも、それが
頗るの美と来てるからね」と小声で云って
笑顔をした。
愛ちやんは
彼等の
石盤を
見越せる
程近くに
居たので、
全然それが
分りました、『
併しそれは
何うでも
關はないわ』と
密かに
然う
思ひました。
碧潭の
氣一脈、
蘭の
香を
吹きて、
床しき
羅の
影の
身に
沁むと
覺えしは、
年經る
庄屋の
森を
出でて、
背後なる
岨道を
通る
人の、ふと
彳みて
見越したんなる。