佐藤垢石
1888.06.18 〜 1956.07.04
“佐藤垢石”に特徴的な語句
激湍
漁
温
膾
囮
鮠
頗
蝗
蛆
異
揺曳
山女魚
沙魚
上
遡
虞
藻蝦
舁
翳
羚羊
浮木
抓
悉
恰
陽
錘
沸
簗
草鞋
虹鱒
楢
鱸
俄
下
鱒
蒼
鈎素
岩魚
魚籠
惹
鰍
何処
武尊
袷
尋
蚯蚓
榾火
所以
起
毛鈎
著者としての作品一覧
葵原夫人の鯛釣(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
葵原夫人は、素晴らしい意気込みである。頬に紅潮が漂って来た。 「では、いけませんか?」 と、念を押す。 「いけない、と言うことはありませんが、一体に婦人は舟に弱いものですからね」 …
読書目安時間:約17分
葵原夫人は、素晴らしい意気込みである。頬に紅潮が漂って来た。 「では、いけませんか?」 と、念を押す。 「いけない、と言うことはありませんが、一体に婦人は舟に弱いものですからね」 …
青鱚脚立釣(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
青鱚釣は例年八十八夜即ち五月上旬には釣れはじまる。江戸前三枚洲、ガン場、中川尻、出洲など大そうな賑わいである。また千葉方面では浦安、船橋なども人出が多く最近は周西方面まで遠征する人 …
読書目安時間:約3分
青鱚釣は例年八十八夜即ち五月上旬には釣れはじまる。江戸前三枚洲、ガン場、中川尻、出洲など大そうな賑わいである。また千葉方面では浦安、船橋なども人出が多く最近は周西方面まで遠征する人 …
秋の鮎(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
秋がくると食べものがおいしい。私のように冬でも夏でも年中川や海へ釣の旅をして、鮮しい魚を嗜んでいるものでも、秋がくると特に魚漿にうま味が出てくるのを感ずるのである。 殊に、今年の立 …
読書目安時間:約6分
秋がくると食べものがおいしい。私のように冬でも夏でも年中川や海へ釣の旅をして、鮮しい魚を嗜んでいるものでも、秋がくると特に魚漿にうま味が出てくるのを感ずるのである。 殊に、今年の立 …
泡盛物語(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
私は、昭和のはじめ、世の中が一番不景気の時代に失職してしまった。失職当時は幾分の余裕はあったのであるけれど、食を求めて徒食している間に、持ち金悉くをつかい果たしてしまったのである。 …
読書目安時間:約14分
私は、昭和のはじめ、世の中が一番不景気の時代に失職してしまった。失職当時は幾分の余裕はあったのであるけれど、食を求めて徒食している間に、持ち金悉くをつかい果たしてしまったのである。 …
アンコウの味(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
数日前ちょっと閑があったから、水戸の常盤公園へ観梅に出かけて行った。しかし、水戸は湘南地方と違い寒国であるから、梅のつぼみはいまなお固く、つえひく人の風情も浅かった。 けれども、ひ …
読書目安時間:約3分
数日前ちょっと閑があったから、水戸の常盤公園へ観梅に出かけて行った。しかし、水戸は湘南地方と違い寒国であるから、梅のつぼみはいまなお固く、つえひく人の風情も浅かった。 けれども、ひ …
石亀のこと(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
鮎は、毛鈎や友鈎で掛けるばかりでなく、餌に食いつくのは、誰も知っている。 私が少年のころ、父と共に利根川で用いていた毛鈎は、播州ものの甚だ粗末な出来であった。近年のように加賀鈎や土 …
読書目安時間:約2分
鮎は、毛鈎や友鈎で掛けるばかりでなく、餌に食いつくのは、誰も知っている。 私が少年のころ、父と共に利根川で用いていた毛鈎は、播州ものの甚だ粗末な出来であった。近年のように加賀鈎や土 …
石を食う(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
岩魚は、石を食う。石を餌にするわけではないが、山渓の釣り人に言わせると、一両日後に増水があろうという陽気のときには、必ず岩魚は石を食っている。岩魚の腹を割いて、胃袋から小石が出たな …
読書目安時間:約2分
岩魚は、石を食う。石を餌にするわけではないが、山渓の釣り人に言わせると、一両日後に増水があろうという陽気のときには、必ず岩魚は石を食っている。岩魚の腹を割いて、胃袋から小石が出たな …
海豚と河豚(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
鯨と名のつくものなら、大抵は食べたことがある。『大井川のくじらは、婦人にしてその味を知るなり』と、言うことからそれは別として山鯨、なめくじら、海豚に至るまで、その漿を舌端に載せてみ …
読書目安時間:約19分
鯨と名のつくものなら、大抵は食べたことがある。『大井川のくじらは、婦人にしてその味を知るなり』と、言うことからそれは別として山鯨、なめくじら、海豚に至るまで、その漿を舌端に載せてみ …
岩魚(新字新仮名)
読書目安時間:約26分
石坂家は、大利根川と榛名山と浅間火山との間に刻む渓谷に水源を持つ烏川とが合流する上州佐波郡芝根村沼之上の三角州の上に、先祖代々農を営む大地主である。この三角州は幕末、小栗上野が官軍 …
読書目安時間:約26分
石坂家は、大利根川と榛名山と浅間火山との間に刻む渓谷に水源を持つ烏川とが合流する上州佐波郡芝根村沼之上の三角州の上に、先祖代々農を営む大地主である。この三角州は幕末、小栗上野が官軍 …
烏恵寿毛(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
いよいよ、私は食いつめた。 昔、故郷の前橋中学へ通うころ、学校の近くに食詰横町というのがあった。五十戸ばかり、零落の身の僅かに雨露をしのぐに足るだけの、哀れなる長屋である。 住人は …
読書目安時間:約7分
いよいよ、私は食いつめた。 昔、故郷の前橋中学へ通うころ、学校の近くに食詰横町というのがあった。五十戸ばかり、零落の身の僅かに雨露をしのぐに足るだけの、哀れなる長屋である。 住人は …
うむどん(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
物が高くなって、くらしに骨が折れてきたのは私の家ばかりではあるまい。どこでも、同じであると思う。殊に、私の家庭のように田舎から出てきたものには、それが一倍身にこたえるのである。 家 …
読書目安時間:約4分
物が高くなって、くらしに骨が折れてきたのは私の家ばかりではあるまい。どこでも、同じであると思う。殊に、私の家庭のように田舎から出てきたものには、それが一倍身にこたえるのである。 家 …
越後の闘牛(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
越後と上州の国境をなす谷川岳と茂倉岳を結ぶ背面の渓谷に源を発し、八海山と越後駒ヶ岳の裾を北流して新潟県北魚沼郡川口村で信濃川に合する魚野川の川鮎は、近年にわかに都会人の食趣に、その …
読書目安時間:約12分
越後と上州の国境をなす谷川岳と茂倉岳を結ぶ背面の渓谷に源を発し、八海山と越後駒ヶ岳の裾を北流して新潟県北魚沼郡川口村で信濃川に合する魚野川の川鮎は、近年にわかに都会人の食趣に、その …
縁談(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
私のように、長い年月諸国へ釣りの旅をしていると、時々珍しい話を聞いたり、また自らも興味のある出来ごとに誘い込まれたりすることもあるものだ。これから書く話も、そのうちの一つである。 …
読書目安時間:約15分
私のように、長い年月諸国へ釣りの旅をしていると、時々珍しい話を聞いたり、また自らも興味のある出来ごとに誘い込まれたりすることもあるものだ。これから書く話も、そのうちの一つである。 …
岡ふぐ談(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
今年は、五十年来の不作で、我々善良なる国民は来年の三月頃から七月頃にかけ、餓死するであろうという政府の役人の仰せである。そんなことなら爆弾を浴びて死んだ方がよかったというかも知れな …
読書目安時間:約8分
今年は、五十年来の不作で、我々善良なる国民は来年の三月頃から七月頃にかけ、餓死するであろうという政府の役人の仰せである。そんなことなら爆弾を浴びて死んだ方がよかったというかも知れな …
想い出(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
十五、六歳になってからは、しばらく釣りから遠ざかった。学校の方が忙しかったからである。 二十歳前後になって、またはじめた。 母と共に、二年続けて夏を相州小田原在、松林のこんもりとし …
読書目安時間:約8分
十五、六歳になってからは、しばらく釣りから遠ざかった。学校の方が忙しかったからである。 二十歳前後になって、またはじめた。 母と共に、二年続けて夏を相州小田原在、松林のこんもりとし …
蛙を食う岩魚(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
大きな山蜘蛛が、激しい溪流を、斜めに渡る姿を見た瞬間、水面にガバと音を立てて白泡の渦巻を残し、忽として蜘蛛が消え去る事がある。 水底に蟠踞する岩蔭から、岩魚が跳り出して喰ったのであ …
読書目安時間:約4分
大きな山蜘蛛が、激しい溪流を、斜めに渡る姿を見た瞬間、水面にガバと音を立てて白泡の渦巻を残し、忽として蜘蛛が消え去る事がある。 水底に蟠踞する岩蔭から、岩魚が跳り出して喰ったのであ …
香熊(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
このほど、友人が私のところへやってきて、君は釣り人であるから、魚類はふんだんに食っているであろうが、まだ羆の肉は食ったことはあるまい。もし食ったことがないなら、近くご馳走しようでは …
読書目安時間:約16分
このほど、友人が私のところへやってきて、君は釣り人であるから、魚類はふんだんに食っているであろうが、まだ羆の肉は食ったことはあるまい。もし食ったことがないなら、近くご馳走しようでは …
鰍の卵について(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
私の、山女魚釣りを習った場所は奥利根であった。この地元では春先、山女魚を釣るのに餌は鰍の卵と、山ぶどうの虫を餌に用いたのである。 しかし、この二つの餌のうち、鰍の卵の方が断然と成績 …
読書目安時間:約3分
私の、山女魚釣りを習った場所は奥利根であった。この地元では春先、山女魚を釣るのに餌は鰍の卵と、山ぶどうの虫を餌に用いたのである。 しかし、この二つの餌のうち、鰍の卵の方が断然と成績 …
河童酒宴(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
私の父親は、近村近郷きつての呑ん平であつた。いま、私も甚しい呑ん平である。子供のときから今日まで、六十余年の間呑み続けてきた。 母親は、少年の私が酒を呑むのを見ると、きつい叱言を喰 …
読書目安時間:約7分
私の父親は、近村近郷きつての呑ん平であつた。いま、私も甚しい呑ん平である。子供のときから今日まで、六十余年の間呑み続けてきた。 母親は、少年の私が酒を呑むのを見ると、きつい叱言を喰 …
ガラガラ釣(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
小田原の筑紫誠一氏から、海岸でガラガラの投げ込み釣が大そう面白いからやって来ないか、という手紙が来たので、十六日午後から行って見た。ガラガラ釣とは、リール竿の海釣である。金属で作っ …
読書目安時間:約3分
小田原の筑紫誠一氏から、海岸でガラガラの投げ込み釣が大そう面白いからやって来ないか、という手紙が来たので、十六日午後から行って見た。ガラガラ釣とは、リール竿の海釣である。金属で作っ …
河鱸遡上一考(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
鱸は八十八夜過ぎると、河に向うそうである。すると、かなり水温の低い頃から遡河をはじめるものと見える。 五月初旬というと、利根川は雪解水の出盛りである。分流江戸川へこの水が流れ込んで …
読書目安時間:約8分
鱸は八十八夜過ぎると、河に向うそうである。すると、かなり水温の低い頃から遡河をはじめるものと見える。 五月初旬というと、利根川は雪解水の出盛りである。分流江戸川へこの水が流れ込んで …
寒鮠の記(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
謹啓、余寒きびしくと申し上げ度く存じ候へ共、今年程暖かき例無之、お互に凌ぎよき春日に候。 さればにや、この頃鮒のみには無之冬寄致せし鮠、鰔などまでが俄かに巣離れの動作を見せ申しそぞ …
読書目安時間:約2分
謹啓、余寒きびしくと申し上げ度く存じ候へ共、今年程暖かき例無之、お互に凌ぎよき春日に候。 さればにや、この頃鮒のみには無之冬寄致せし鮠、鰔などまでが俄かに巣離れの動作を見せ申しそぞ …
寒鮒(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
静寂といおうか、閑雅といおうか、釣りの醍醐味をしみじみと堪能するには、寒鮒釣りを措いて他に釣趣を求め得られないであろう。 冬の陽ざしが、鈍い光を流れにともない、ゆるい川面へ斜めに落 …
読書目安時間:約3分
静寂といおうか、閑雅といおうか、釣りの醍醐味をしみじみと堪能するには、寒鮒釣りを措いて他に釣趣を求め得られないであろう。 冬の陽ざしが、鈍い光を流れにともない、ゆるい川面へ斜めに落 …
議会見物(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
議会中、一日くらいは傍聴席へはいってみるのも国民のつとめであろう。と考えるのだが、物臭ものにはなかなか思った通りにはゆかない。三年に一度か、五年に一度くらいしか、その機会をもたない …
読書目安時間:約8分
議会中、一日くらいは傍聴席へはいってみるのも国民のつとめであろう。と考えるのだが、物臭ものにはなかなか思った通りにはゆかない。三年に一度か、五年に一度くらいしか、その機会をもたない …
季節の味(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
物の味は季節によって違う。時至れば佳味となり、時去れば劣味となる。魚も獣も同じである。七、八両月に釣った鰔は、肉落ち脂去って何としても食味とはならない。十二月過ぎてからとった鹿は、 …
読書目安時間:約7分
物の味は季節によって違う。時至れば佳味となり、時去れば劣味となる。魚も獣も同じである。七、八両月に釣った鰔は、肉落ち脂去って何としても食味とはならない。十二月過ぎてからとった鹿は、 …
鯨を釣る(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
僕は、大概の大物釣には経験を持っている。大鯛、ブリ、石鯛、マグロ、鮫などの猛勇も、僕の手に掛っては何れも降参しているのだが、まだ鯨だけは退治したことがない。 釣に趣味を持つからには …
読書目安時間:約16分
僕は、大概の大物釣には経験を持っている。大鯛、ブリ、石鯛、マグロ、鮫などの猛勇も、僕の手に掛っては何れも降参しているのだが、まだ鯨だけは退治したことがない。 釣に趣味を持つからには …
熊狩名人(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
先日、長野県下水内郡水内村森宮の原の雪野原で行なわれたラジオ映画社の「人食い熊」の野外撮影を見物に行ったとき、飯山線の森宮の原駅の旅館で、この地方きっての熊撃ちの名人に会った。そし …
読書目安時間:約10分
先日、長野県下水内郡水内村森宮の原の雪野原で行なわれたラジオ映画社の「人食い熊」の野外撮影を見物に行ったとき、飯山線の森宮の原駅の旅館で、この地方きっての熊撃ちの名人に会った。そし …
桑の虫と小伜(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
私の故郷の家の、うしろの方に森に囲まれた古沼がある。西側は、欅や椋、榎などの大樹が生い茂り、北側は、濃い竹林が掩いかぶさっている。東側は厚い桑園に続いていて、南側だけが、わずかに野 …
読書目安時間:約4分
私の故郷の家の、うしろの方に森に囲まれた古沼がある。西側は、欅や椋、榎などの大樹が生い茂り、北側は、濃い竹林が掩いかぶさっている。東側は厚い桑園に続いていて、南側だけが、わずかに野 …
小鰺釣(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
小アジ釣は誰にでもやれるのでファンが大分多い。それに沖合遠く漕ぎ出す必要がないから危険も少い訳である。横浜からも鶴見からも毎日乗合船が出て、一日一円五十銭程度であるから費用もかから …
読書目安時間:約2分
小アジ釣は誰にでもやれるのでファンが大分多い。それに沖合遠く漕ぎ出す必要がないから危険も少い訳である。横浜からも鶴見からも毎日乗合船が出て、一日一円五十銭程度であるから費用もかから …
香気の尊さ(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
釣り人が、獲物を家庭へ持ち帰って賑やかな団欒に接した時くらいうれしいことはないであろう。殊に、清澄な早瀬で釣った鮎には一層の愛着を感じる。メスのように小さい若鮎でも粗末にはできない …
読書目安時間:約2分
釣り人が、獲物を家庭へ持ち帰って賑やかな団欒に接した時くらいうれしいことはないであろう。殊に、清澄な早瀬で釣った鮎には一層の愛着を感じる。メスのように小さい若鮎でも粗末にはできない …
香魚と水質(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
食事が、必要から好厭に分かれ、さらに趣味にまで進んできたのは、既に五千年の昔であるのを古代支那人が料理書に記している。必要と好厭は、動物の世界にある共通の事実だが食品を耽味するとい …
読書目安時間:約8分
食事が、必要から好厭に分かれ、さらに趣味にまで進んできたのは、既に五千年の昔であるのを古代支那人が料理書に記している。必要と好厭は、動物の世界にある共通の事実だが食品を耽味するとい …
香魚の讃(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
緑樹のかげに榻(こしかけ)を寄せて、麥酒の満をひく時、卓上に香魚の塩焙があったなら涼風おのずから涎の舌に湧くを覚えるであろう。清泊の肉、舌に清爽を呼び、特有の高き匂いは味覚に陶酔を …
読書目安時間:約7分
緑樹のかげに榻(こしかけ)を寄せて、麥酒の満をひく時、卓上に香魚の塩焙があったなら涼風おのずから涎の舌に湧くを覚えるであろう。清泊の肉、舌に清爽を呼び、特有の高き匂いは味覚に陶酔を …
呉清源(新字旧仮名)
読書目安時間:約14分
呉清源は今や棋聖といつてよからう。 昭和二十六年四月初旬に於て対本因坊昭宇、橋本宇太郎八段との読売十番碁に、六勝二敗二持碁の成績であるが、吾々素人が見てもこの十番碁は、呉清源の勝に …
読書目安時間:約14分
呉清源は今や棋聖といつてよからう。 昭和二十六年四月初旬に於て対本因坊昭宇、橋本宇太郎八段との読売十番碁に、六勝二敗二持碁の成績であるが、吾々素人が見てもこの十番碁は、呉清源の勝に …
小伜の釣り(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
こうして私は、長い年月東西の国々を釣り歩いた。そして、五、六年前に、何十年ぶりかで故郷に帰り住むようになり、再び利根川の水に親しんだ。 もう、長男が十二、三歳になっていた。私が、亡 …
読書目安時間:約4分
こうして私は、長い年月東西の国々を釣り歩いた。そして、五、六年前に、何十年ぶりかで故郷に帰り住むようになり、再び利根川の水に親しんだ。 もう、長男が十二、三歳になっていた。私が、亡 …
木の葉山女魚(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
奥山へは、秋の訪れが早い。 都会では、セルの単衣の肌ざわりに、爽涼を楽しむというのに、山の村では、稗を刈り粟の庭仕事も次第に忙しくなってくる。栗拾いの子供らが、分け行く山路の草には …
読書目安時間:約3分
奥山へは、秋の訪れが早い。 都会では、セルの単衣の肌ざわりに、爽涼を楽しむというのに、山の村では、稗を刈り粟の庭仕事も次第に忙しくなってくる。栗拾いの子供らが、分け行く山路の草には …
採峰徘菌愚(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
篠秋痘鳴と山田論愚の二人が南支方向へ行くことになった。そこで私は、伊東斜酣と石毛大妖の二人を集めて、何か送別の催しをやろうではないか、という相談をはじめたのである。 なかなか、名案 …
読書目安時間:約13分
篠秋痘鳴と山田論愚の二人が南支方向へ行くことになった。そこで私は、伊東斜酣と石毛大妖の二人を集めて、何か送別の催しをやろうではないか、という相談をはじめたのである。 なかなか、名案 …
ザザ虫の佃煮(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
秋の蠅も、私には想い出の深い餌である。私の少年のころのある期間、父は忙しいので私の釣りの相談相手になれなかったことがある。私は、一人で竿から仕掛け、餌のことまで、才覚思案した。 上 …
読書目安時間:約5分
秋の蠅も、私には想い出の深い餌である。私の少年のころのある期間、父は忙しいので私の釣りの相談相手になれなかったことがある。私は、一人で竿から仕掛け、餌のことまで、才覚思案した。 上 …
さしみ(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
人間は、だれしもおいしい物を食べているときが一番楽しいのではないかと思う。おいしい物といっても人の好みにより、人の舌の経験によって、いろいろちがうのであろうが、私はさしみをもっとも …
読書目安時間:約3分
人間は、だれしもおいしい物を食べているときが一番楽しいのではないかと思う。おいしい物といっても人の好みにより、人の舌の経験によって、いろいろちがうのであろうが、私はさしみをもっとも …
莢豌豆の虫(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
山女魚は貪食の魚で、昆虫とかその幼虫とか、魚類の卵、みみずなど、この魚の好んで食う餌は、殆ど数えることができないほど多い。けれど、この魚を釣るには、一方ならぬ苦労を重ねるのだ。 先 …
読書目安時間:約4分
山女魚は貪食の魚で、昆虫とかその幼虫とか、魚類の卵、みみずなど、この魚の好んで食う餌は、殆ど数えることができないほど多い。けれど、この魚を釣るには、一方ならぬ苦労を重ねるのだ。 先 …
猿ヶ京(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
このほど、元代議士生方大吉君の案内で東京火災保険の久米平三郎君と共に、上州と越後の国境にある三国峠の法師温泉の風景を探ったのである。途中、猿ヶ京の部落を過ぎたが、車中で生方君から人 …
読書目安時間:約6分
このほど、元代議士生方大吉君の案内で東京火災保険の久米平三郎君と共に、上州と越後の国境にある三国峠の法師温泉の風景を探ったのである。途中、猿ヶ京の部落を過ぎたが、車中で生方君から人 …
『七面鳥』と『忘れ褌』(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
『斉正、その方は七面鳥を持っているか』 鍋島斉正が登城したとき、将軍家定がだしぬけにこんな質問を発したから斉正は面喰らった。 『……』 『持っているじゃろう、一羽くれ』 『不用意に …
読書目安時間:約16分
『斉正、その方は七面鳥を持っているか』 鍋島斉正が登城したとき、将軍家定がだしぬけにこんな質問を発したから斉正は面喰らった。 『……』 『持っているじゃろう、一羽くれ』 『不用意に …
支那の狸汁(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
晋の時代である。燕の恵王の陵の近所に千年をへた古狸が棲んでいた。千年も寿命を保ったのであるから、神通力の奥義に達し、変化の術はなんでも心得ている。 大入道や一つ目小僧などに化けて、 …
読書目安時間:約5分
晋の時代である。燕の恵王の陵の近所に千年をへた古狸が棲んでいた。千年も寿命を保ったのであるから、神通力の奥義に達し、変化の術はなんでも心得ている。 大入道や一つ目小僧などに化けて、 …
しゃもじ(杓子)(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
二、三日前、隣村の老友が私の病床を訪れて、例の「しゃもじ」がまた出たという。 貴公が、出あったのか。 いや、僕ではない、近所の青年が度胆を抜かれよった。 さては、彼の狸め、今もって …
読書目安時間:約5分
二、三日前、隣村の老友が私の病床を訪れて、例の「しゃもじ」がまた出たという。 貴公が、出あったのか。 いや、僕ではない、近所の青年が度胆を抜かれよった。 さては、彼の狸め、今もって …
酒渇記(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
近年、お正月の門松の林のなかに羽織袴をつけた酔っ払いが、海豚が岡へあがったような容でぶっ倒れている風景にあまり接しなくなったのは年始人お行儀のために、まことに結構な話である。また露 …
読書目安時間:約19分
近年、お正月の門松の林のなかに羽織袴をつけた酔っ払いが、海豚が岡へあがったような容でぶっ倒れている風景にあまり接しなくなったのは年始人お行儀のために、まことに結構な話である。また露 …
酒徒漂泊(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
昨年の霜月のなかばごろ、私はひさしぶりに碓氷峠を越えて、信濃路の方へ旅したのである。山国の晩秋は、美しかった。 麻生豊、正木不如丘の二氏と共に、いま戸倉温泉の陸軍療養所に、からだの …
読書目安時間:約23分
昨年の霜月のなかばごろ、私はひさしぶりに碓氷峠を越えて、信濃路の方へ旅したのである。山国の晩秋は、美しかった。 麻生豊、正木不如丘の二氏と共に、いま戸倉温泉の陸軍療養所に、からだの …
春宵因縁談(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
はなしのはじめは三木武吉と頼母木桂吉の心臓の出来あんばいから語りだすことにしよう。 このほど、頼母木東京市長が急逝した。私としては、この人の死をきいて別段深く感慨にうたれたというわ …
読書目安時間:約15分
はなしのはじめは三木武吉と頼母木桂吉の心臓の出来あんばいから語りだすことにしよう。 このほど、頼母木東京市長が急逝した。私としては、この人の死をきいて別段深く感慨にうたれたというわ …
純情狸(新字新仮名)
読書目安時間:約20分
私に董仲舒ほどの学があれば、名偈の一句でも吐いて、しゃもじ奴に挑戦してみるのであったが、凡庸の悲しさ、ただ自失して遁走するの芸当しか知らなかったのは、返す返すも残念である。 さて、 …
読書目安時間:約20分
私に董仲舒ほどの学があれば、名偈の一句でも吐いて、しゃもじ奴に挑戦してみるのであったが、凡庸の悲しさ、ただ自失して遁走するの芸当しか知らなかったのは、返す返すも残念である。 さて、 …
食指談(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
蕎麥は、春蕎麥よりも秋蕎麥の方が、味香共に豊かであると昔からいわれているが、その理屈はともかくとして、このほど上州赤城の中腹室沢の金子豊君から贈って貰った秋蕎麥は、近年まれにおいし …
読書目安時間:約8分
蕎麥は、春蕎麥よりも秋蕎麥の方が、味香共に豊かであると昔からいわれているが、その理屈はともかくとして、このほど上州赤城の中腹室沢の金子豊君から贈って貰った秋蕎麥は、近年まれにおいし …
すっぽん(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
このほど、御手洗蝶子夫人から、 『ただいま、すっぽんを煮ましたから、食べにきませんか』 と、言うたよりに接した。 一体私は、年中釣りに親しんでいるので、いつも魚の鮮味に不自由したこ …
読書目安時間:約11分
このほど、御手洗蝶子夫人から、 『ただいま、すっぽんを煮ましたから、食べにきませんか』 と、言うたよりに接した。 一体私は、年中釣りに親しんでいるので、いつも魚の鮮味に不自由したこ …
巣離れの鮒(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
寒い冷たいとはいうが、もう春だ。そろそろと水が温んでくる。川や沼の面に生色ある光がただよって、いつの間にか堤防の陽だまりに霜ぶくれの土を破って芝芽が小さな丸い頭を突き出すと魚も永い …
読書目安時間:約3分
寒い冷たいとはいうが、もう春だ。そろそろと水が温んでくる。川や沼の面に生色ある光がただよって、いつの間にか堤防の陽だまりに霜ぶくれの土を破って芝芽が小さな丸い頭を突き出すと魚も永い …
細流の興趣(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
鮒釣りには季節によりいろいろの釣り方があるが、乗っ込み鮒ほど興趣が深いものはないのである。鮒党はこの本乗っ込みをどんなに首をのべて待っていたことであろう。白い玉浮木がフワフワと流れ …
読書目安時間:約2分
鮒釣りには季節によりいろいろの釣り方があるが、乗っ込み鮒ほど興趣が深いものはないのである。鮒党はこの本乗っ込みをどんなに首をのべて待っていたことであろう。白い玉浮木がフワフワと流れ …
戦場ヶ原の渓谷(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
山の緑は次第に濃くなる。そして、鱒が円々と肥って来る。奥日光、湯川と湯ノ湖の鱒釣がほんとうの季節となるのだ。 六千尺近い山腹に在る湖と、五千尺の戦場ヶ原を流れる溪流へ、宮内省帝室林 …
読書目安時間:約3分
山の緑は次第に濃くなる。そして、鱒が円々と肥って来る。奥日光、湯川と湯ノ湖の鱒釣がほんとうの季節となるのだ。 六千尺近い山腹に在る湖と、五千尺の戦場ヶ原を流れる溪流へ、宮内省帝室林 …
早春の山女魚(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
豊満な肉をおおった青銀色の鱗の底に、正しく並んだ十三個の斑点が薄墨ぼかしの紫を刷いたように、滑らかな肌から泛び出て、その美しさは形容の言葉がない。かがやき透るような円らかな眼、スマ …
読書目安時間:約3分
豊満な肉をおおった青銀色の鱗の底に、正しく並んだ十三個の斑点が薄墨ぼかしの紫を刷いたように、滑らかな肌から泛び出て、その美しさは形容の言葉がない。かがやき透るような円らかな眼、スマ …
増上寺物語(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
五千両の無心 慶応二年師走のある寒い昧暗、芝増上寺の庫裏を二人の若い武士が襲った。二人とも、麻の草鞋に野袴、革の襷を十字にかけた肉瘤盛り上がった前膊が露である。笠もない、覆面もしな …
読書目安時間:約21分
五千両の無心 慶応二年師走のある寒い昧暗、芝増上寺の庫裏を二人の若い武士が襲った。二人とも、麻の草鞋に野袴、革の襷を十字にかけた肉瘤盛り上がった前膊が露である。笠もない、覆面もしな …
鯛釣り素人咄(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
職業漁師でも遊釣人でも、鯛といえば、真鯛を指すのが常識である。真鯛に色、形ともによく似ているのに血鯛と黄鯛とがある。これは、真鯛に比べると気品も味も劣り、釣りの興趣も真鯛ほどではな …
読書目安時間:約12分
職業漁師でも遊釣人でも、鯛といえば、真鯛を指すのが常識である。真鯛に色、形ともによく似ているのに血鯛と黄鯛とがある。これは、真鯛に比べると気品も味も劣り、釣りの興趣も真鯛ほどではな …
鯛と赤蛸(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
瀬戸内海の鯛釣り漁師は、蛸の足を餌に使っている。 これは、甚だ有効であるという話だ。しかし、東京湾口あたりの鯛が、果たして蛸の足の餌に食いつくかどうか疑問であるし、三浦半島の鴨居あ …
読書目安時間:約3分
瀬戸内海の鯛釣り漁師は、蛸の足を餌に使っている。 これは、甚だ有効であるという話だ。しかし、東京湾口あたりの鯛が、果たして蛸の足の餌に食いつくかどうか疑問であるし、三浦半島の鴨居あ …
たぬき汁(新字旧仮名)
読書目安時間:約14分
伊勢へななたび熊野へさんど、と言ふ文句があるが、私は今年の夏六月と八月の二度、南紀新宮の奥、瀞八丁の下手を流れる熊野川へ、鮎を訪ねて旅して行つた。秋の落ち鮎には、さらにも一度この熊 …
読書目安時間:約14分
伊勢へななたび熊野へさんど、と言ふ文句があるが、私は今年の夏六月と八月の二度、南紀新宮の奥、瀞八丁の下手を流れる熊野川へ、鮎を訪ねて旅して行つた。秋の落ち鮎には、さらにも一度この熊 …
たぬき汁(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
伊勢へななたび熊野へさんど、という文句があるが、私は今年の夏六月と八月の二度、南紀新宮の奥、瀞八丁の下手を流れる熊野川へ、鮎を訪ねて旅して行った。秋の落ち鮎には、さらにも一度この熊 …
読書目安時間:約14分
伊勢へななたび熊野へさんど、という文句があるが、私は今年の夏六月と八月の二度、南紀新宮の奥、瀞八丁の下手を流れる熊野川へ、鮎を訪ねて旅して行った。秋の落ち鮎には、さらにも一度この熊 …
食べもの(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
私は、この三月七日に、故郷の村へ移り住んだ。田舎へ移り住んだからといって、余分に米が買えるわけではなし、やたらに野菜が到来するわけではない。 近い親戚の人々や、家内の者と相談し、麦 …
読書目安時間:約23分
私は、この三月七日に、故郷の村へ移り住んだ。田舎へ移り住んだからといって、余分に米が買えるわけではなし、やたらに野菜が到来するわけではない。 近い親戚の人々や、家内の者と相談し、麦 …
淡紫裳(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
この一文は昭和十四年四月、京城日報社の招きにより、将棋の名人木村義雄氏と共に、半島の各地を歩いた記録である。朝鮮半島の幹線は、いま複線工事をしているので、三十分以上も遅れて京城へ着 …
読書目安時間:約19分
この一文は昭和十四年四月、京城日報社の招きにより、将棋の名人木村義雄氏と共に、半島の各地を歩いた記録である。朝鮮半島の幹線は、いま複線工事をしているので、三十分以上も遅れて京城へ着 …
探巣遅日(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
もうそろそろ、もずが巣を営む季節が近づいてきた。私は毎年寒があけて一日ごとに日が長くなってくると、少年のころ小鳥の巣を捜すのに憂き身をやつしたのを思いだしてひとりでほほえむのである …
読書目安時間:約5分
もうそろそろ、もずが巣を営む季節が近づいてきた。私は毎年寒があけて一日ごとに日が長くなってくると、少年のころ小鳥の巣を捜すのに憂き身をやつしたのを思いだしてひとりでほほえむのである …
父の俤(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
手もとは、まだ暗い。 父は、池の岸に腹這いになって、水底の藻草を叉手で掻きまわしている。餌にする藻蝦を採っているのである。 藻の間を掬った叉手を、父が丘へほおりあげると、私は網の中 …
読書目安時間:約4分
手もとは、まだ暗い。 父は、池の岸に腹這いになって、水底の藻草を叉手で掻きまわしている。餌にする藻蝦を採っているのである。 藻の間を掬った叉手を、父が丘へほおりあげると、私は網の中 …
釣聖伝(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
幸田露伴博士は凝り屋で有名である。文学の方は本職であるから、別として、一般科学の知識に通暁して居て、家庭の道具でも、遊戯の機械でも自分の手でひねくって見なければ承知しない。 先生の …
読書目安時間:約3分
幸田露伴博士は凝り屋で有名である。文学の方は本職であるから、別として、一般科学の知識に通暁して居て、家庭の道具でも、遊戯の機械でも自分の手でひねくって見なければ承知しない。 先生の …
釣った魚の味(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
釣りは、主人が釣りそのものを楽しむということと共に、獲物の味を家族に満喫させるところに一層の興味がある。 ところが、獲物を釣り場に棄ててきたり、無意味に人に呉れたりする釣り人を見受 …
読書目安時間:約3分
釣りは、主人が釣りそのものを楽しむということと共に、獲物の味を家族に満喫させるところに一層の興味がある。 ところが、獲物を釣り場に棄ててきたり、無意味に人に呉れたりする釣り人を見受 …
釣場の研究(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
釣人の気質にはいろいろある。けれど大別すると、大量に魚を釣りたい、その目的のためには他人の迷惑も顧みない、という人と、釣れぬでもよし、若し釣れれば運がいいのだ、一日水に親しんだだけ …
読書目安時間:約6分
釣人の気質にはいろいろある。けれど大別すると、大量に魚を釣りたい、その目的のためには他人の迷惑も顧みない、という人と、釣れぬでもよし、若し釣れれば運がいいのだ、一日水に親しんだだけ …
弟子自慢(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
私に、どこかうまい釣場へ連れて行ってくれと申し込んでくる人があると、私はその人を自分の弟子の数のうちへ勘定する。だから私に師匠顔されるのを嫌だと思う人は、私のところへ同行を申し込ん …
読書目安時間:約8分
私に、どこかうまい釣場へ連れて行ってくれと申し込んでくる人があると、私はその人を自分の弟子の数のうちへ勘定する。だから私に師匠顔されるのを嫌だと思う人は、私のところへ同行を申し込ん …
東京湾怪物譚(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
観音崎と富津岬とが相抱いた東京湾口は、魚の楽園らしい。どんな魚でもゐる。それは餌が豊富であるのと、潮の流れが生きてゐるためであると思ふ。 浦賀港から二三里三浦半島の突端の方へ寄つた …
読書目安時間:約6分
観音崎と富津岬とが相抱いた東京湾口は、魚の楽園らしい。どんな魚でもゐる。それは餌が豊富であるのと、潮の流れが生きてゐるためであると思ふ。 浦賀港から二三里三浦半島の突端の方へ寄つた …
道具と餌と天候(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
釣道具の呼称については解釈のつかぬものが多い。大概の釣人は知らぬがままに買っているのである。たとえばテグスの何毛柄とか、鈎の何厘とかいったように、何を基準としているか見当のつかぬの …
読書目安時間:約3分
釣道具の呼称については解釈のつかぬものが多い。大概の釣人は知らぬがままに買っているのである。たとえばテグスの何毛柄とか、鈎の何厘とかいったように、何を基準としているか見当のつかぬの …
盗難(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
私は、娘を盗まれたことがある。そのときのやるせなさと、自責の念に苛まれた幾日かの辛さは、いまでも折りにふれてわが心の底によみがえり、頭が白らけきる宵さえあるのである。 結婚後、五、 …
読書目安時間:約16分
私は、娘を盗まれたことがある。そのときのやるせなさと、自責の念に苛まれた幾日かの辛さは、いまでも折りにふれてわが心の底によみがえり、頭が白らけきる宵さえあるのである。 結婚後、五、 …
利根川の鮎(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
これは、私が十八、九歳のころ考えたことである。そして今もなお、それを想っているのである。 六十歳といえば、人生の峠の頂を過ぎた。しかし、まだ我が人生の旅は遠くいつまでもいつまでも寂 …
読書目安時間:約10分
これは、私が十八、九歳のころ考えたことである。そして今もなお、それを想っているのである。 六十歳といえば、人生の峠の頂を過ぎた。しかし、まだ我が人生の旅は遠くいつまでもいつまでも寂 …
利根の尺鮎(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
私は利根川の水に生まれ、利根川の水に育った。 利根川の幽偉にして、抱擁力の豊かな姿を想うと、温かき慈母のふところに在るなつかしさが、ひとりでに胸へこみあげてくる。私は、幼いときから …
読書目安時間:約13分
私は利根川の水に生まれ、利根川の水に育った。 利根川の幽偉にして、抱擁力の豊かな姿を想うと、温かき慈母のふところに在るなつかしさが、ひとりでに胸へこみあげてくる。私は、幼いときから …
飛沙魚(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
この頃は、一盃のむと途方もなく高値な代金を請求されるので、私ら呑ん平にはまことに受難時代である。そのために月に一回、せいぜい二回も縄暖簾を、くぐることができれば幸福の方であるが、五 …
読書目安時間:約4分
この頃は、一盃のむと途方もなく高値な代金を請求されるので、私ら呑ん平にはまことに受難時代である。そのために月に一回、せいぜい二回も縄暖簾を、くぐることができれば幸福の方であるが、五 …
濁酒を恋う(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
遠からず酒の小売値段は、いままでの倍額となるらしい。つまり、一升三円であったものが六円ということになるのだろう。 だから、晩酌を二合ずつやった者は、一合にへらさなければ勘定が合わな …
読書目安時間:約7分
遠からず酒の小売値段は、いままでの倍額となるらしい。つまり、一升三円であったものが六円ということになるのだろう。 だから、晩酌を二合ずつやった者は、一合にへらさなければ勘定が合わな …
瀞(新字新仮名)
読書目安時間:約30分
南紀の熊野川で、はじめて鮎の友釣りを試みたのは、昭和十五年の六月初旬であった。そのときは、死んだ釣友の佐藤惣之助と老俳優の上山草人と行を共にしたのである。 私らは、那智山に詣でた。 …
読書目安時間:約30分
南紀の熊野川で、はじめて鮎の友釣りを試みたのは、昭和十五年の六月初旬であった。そのときは、死んだ釣友の佐藤惣之助と老俳優の上山草人と行を共にしたのである。 私らは、那智山に詣でた。 …
蜻蛉返り(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
私は、呑んべえであるから、酒の肴にはいつも苦労する。うるか、惣太鰹の腸の叩き。まぐろのいすご、鱸の腹膜、このわた、からすみ、蜂の子、鮭の生卵、鰡の臍、岩魚の胃袋、河豚の白精など、舌 …
読書目安時間:約7分
私は、呑んべえであるから、酒の肴にはいつも苦労する。うるか、惣太鰹の腸の叩き。まぐろのいすご、鱸の腹膜、このわた、からすみ、蜂の子、鮭の生卵、鰡の臍、岩魚の胃袋、河豚の白精など、舌 …
那珂川の鱸釣り(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
私は、ふた昔それ以上も久しい前、水戸に浪人していたことがあった。毎日、なすこともないのであるから、釣りにばかり耽っていた。千波沼の、おいかわ釣り。那珂川上流の、鮎の友釣り。那珂川下 …
読書目安時間:約8分
私は、ふた昔それ以上も久しい前、水戸に浪人していたことがあった。毎日、なすこともないのであるから、釣りにばかり耽っていた。千波沼の、おいかわ釣り。那珂川上流の、鮎の友釣り。那珂川下 …
夏釣日記(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
二日の昼過ぎ、生駒翺翔先生と将棋の木村名人と私と、大鯛釣を志して伊豆の網代温泉へ着いた。宿の窓から吹き入る南風が涼しい。海は、随分静かである。眼の下の海水浴場で、男の子の黒い体と、 …
読書目安時間:約3分
二日の昼過ぎ、生駒翺翔先生と将棋の木村名人と私と、大鯛釣を志して伊豆の網代温泉へ着いた。宿の窓から吹き入る南風が涼しい。海は、随分静かである。眼の下の海水浴場で、男の子の黒い体と、 …
鯰(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
私は、鯰の屈託のない顔を見ると、まことに心がのんびりとするのである。私もあんな顔の持ち主に生まれてくればよかったな、と思うくらいである。 小さな丸い眼、大きな口、下顎の出た唇、左右 …
読書目安時間:約6分
私は、鯰の屈託のない顔を見ると、まことに心がのんびりとするのである。私もあんな顔の持ち主に生まれてくればよかったな、と思うくらいである。 小さな丸い眼、大きな口、下顎の出た唇、左右 …
楢の若葉(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
いま、想いだしても、その時のことがはっきりと頭に浮かび、眼にも描かれる。 三十五、六年前の四月二十四日のひる前であった。私は十二、三歳の少年。父は三十七、八歳。溢れるような元気に満 …
読書目安時間:約4分
いま、想いだしても、その時のことがはっきりと頭に浮かび、眼にも描かれる。 三十五、六年前の四月二十四日のひる前であった。私は十二、三歳の少年。父は三十七、八歳。溢れるような元気に満 …
入社試験(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
私は、明治四十三年四月二十三日の午前十時ごろ、新聞記者を志望して、麹町区有樂町にある報知新聞社の応接間に、私の人物試験をやりにくる人を待っていた。これより先、学校の先輩である詩人で …
読書目安時間:約5分
私は、明治四十三年四月二十三日の午前十時ごろ、新聞記者を志望して、麹町区有樂町にある報知新聞社の応接間に、私の人物試験をやりにくる人を待っていた。これより先、学校の先輩である詩人で …
にらみ鯛(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
悲しき副膳のお肴 万延元年の四月の末の方、世はもう、青葉に風が光る初夏の候であった。 京都所司代酒井若狭守忠義は、月並みの天機奉伺として参内した。ご用談が、予定以上に長くなって、灯 …
読書目安時間:約14分
悲しき副膳のお肴 万延元年の四月の末の方、世はもう、青葉に風が光る初夏の候であった。 京都所司代酒井若狭守忠義は、月並みの天機奉伺として参内した。ご用談が、予定以上に長くなって、灯 …
母の匂い(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
母はいつも、釣りから戻ってきた父をやさしくいたわった。子供心に、私はそれが何より嬉しかった。 やはり、五月はじめのある朝、父と二人で、村の河原の雷電神社下の釣り場へ若鮎釣りを志して …
読書目安時間:約2分
母はいつも、釣りから戻ってきた父をやさしくいたわった。子供心に、私はそれが何より嬉しかった。 やはり、五月はじめのある朝、父と二人で、村の河原の雷電神社下の釣り場へ若鮎釣りを志して …
榛名湖の公魚釣り(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
榛名湖の公魚釣りは非常に繁盛である。 十二月中旬から釣れはじめたのであるが、二月一杯は釣れるであろう。例年からみると魚の育ちが大そうよろしく、四寸五分乃至五寸、平均五匁はある。 毎 …
読書目安時間:約2分
榛名湖の公魚釣りは非常に繁盛である。 十二月中旬から釣れはじめたのであるが、二月一杯は釣れるであろう。例年からみると魚の育ちが大そうよろしく、四寸五分乃至五寸、平均五匁はある。 毎 …
美音会(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
十一月二十七日夜六時頃、先輩の生駒君と一緒に有楽座の美音会へ行ってみる。招待席は二階正面のやや左に寄った所を三側ばかり取ってあるが、未だ誰も見えていない。しかし、他の席は殆ど満員と …
読書目安時間:約6分
十一月二十七日夜六時頃、先輩の生駒君と一緒に有楽座の美音会へ行ってみる。招待席は二階正面のやや左に寄った所を三側ばかり取ってあるが、未だ誰も見えていない。しかし、他の席は殆ど満員と …
姫柚子の讃(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
このほど、最上川の支流小国川の岸辺から湧く瀬見温泉へ旅したとき、宿で鰍の丸煮を肴に出してくれた。まだ彼岸に入ったばかりであるというのに、もう北羽州の峡間に臨むこの温泉の村は秋たけて …
読書目安時間:約15分
このほど、最上川の支流小国川の岸辺から湧く瀬見温泉へ旅したとき、宿で鰍の丸煮を肴に出してくれた。まだ彼岸に入ったばかりであるというのに、もう北羽州の峡間に臨むこの温泉の村は秋たけて …
氷湖の公魚(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
トルコ人ほど水をよく飲む国民はない。水玉を一献舌端に乗せて、ころがすと、その水はどこの井戸、どこの湖水から汲んだものかをいい当てるほど、水に趣味をもっている。 わが国にも大そう水に …
読書目安時間:約3分
トルコ人ほど水をよく飲む国民はない。水玉を一献舌端に乗せて、ころがすと、その水はどこの井戸、どこの湖水から汲んだものかをいい当てるほど、水に趣味をもっている。 わが国にも大そう水に …
冬の鰍(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
冬の美味といわれるもののうち鰍の右に出るものはなかろう。 肌の色はダボ沙魚に似て黝黒のものもあれば、薄茶色の肌に瓔珞のような光沢を出したのもあるが、藍色の肌に不規則な雲型の斑点を浮 …
読書目安時間:約3分
冬の美味といわれるもののうち鰍の右に出るものはなかろう。 肌の色はダボ沙魚に似て黝黒のものもあれば、薄茶色の肌に瓔珞のような光沢を出したのもあるが、藍色の肌に不規則な雲型の斑点を浮 …
鱒の卵(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
秋がくると、山女魚は鱒の卵を争って食うのである。わが故郷、奥利根川へ注ぐ渓流には落ち葉を浮かせて流れる浅瀬に、鱒の産卵場を見ることができるのだ。これを、鱒が掘りについたという。 日 …
読書目安時間:約4分
秋がくると、山女魚は鱒の卵を争って食うのである。わが故郷、奥利根川へ注ぐ渓流には落ち葉を浮かせて流れる浅瀬に、鱒の産卵場を見ることができるのだ。これを、鱒が掘りについたという。 日 …
魔味洗心(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
二、三日前、隣村の嘉平老が、利根川で蜂鱒を拾った。鱒を拾うというのは妙な話であるが利根川では珍しいことではない。 蜂鱒というのは、蜂を食って眼をまわした鱒をいうのである。一体、鱒科 …
読書目安時間:約13分
二、三日前、隣村の嘉平老が、利根川で蜂鱒を拾った。鱒を拾うというのは妙な話であるが利根川では珍しいことではない。 蜂鱒というのは、蜂を食って眼をまわした鱒をいうのである。一体、鱒科 …
水垢を凝視す(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
鮎が水垢をなめて育つのは誰でも知っている。人間に米や麦が必要であるのと同じようなものだ。 しかし、水垢のないところでも、鮎は育つ。田圃の用水にも、溜池にも棲んで大きくなる。甚しいの …
読書目安時間:約10分
鮎が水垢をなめて育つのは誰でも知っている。人間に米や麦が必要であるのと同じようなものだ。 しかし、水垢のないところでも、鮎は育つ。田圃の用水にも、溜池にも棲んで大きくなる。甚しいの …
水垢を凝視す(新字旧仮名)
読書目安時間:約10分
鮎が水垢をなめて育つのは誰でも知つてゐる。人間に米や麦が必要であるのと同じやうなものだ。 しかし、水垢のないところでも、鮎は育つ。田園の用水にも、溜池にも棲んで大きくなる。甚しいの …
読書目安時間:約10分
鮎が水垢をなめて育つのは誰でも知つてゐる。人間に米や麦が必要であるのと同じやうなものだ。 しかし、水垢のないところでも、鮎は育つ。田園の用水にも、溜池にも棲んで大きくなる。甚しいの …
水と骨(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
人は常識的には、太平洋へ注ぐ表日本の川の水温よりも、日本海へ注ぐ裏日本の川の水温方が低いであろうと、考えるにちがいない。 ところが、実際は日本海へ注ぐ川の方が平均高い水温を持ってい …
読書目安時間:約11分
人は常識的には、太平洋へ注ぐ表日本の川の水温よりも、日本海へ注ぐ裏日本の川の水温方が低いであろうと、考えるにちがいない。 ところが、実際は日本海へ注ぐ川の方が平均高い水温を持ってい …
水の遍路(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
それからというもの、私は暇さえあれば諸国を釣り歩いた。渓流、平野の川、海、湖水。どこであろうと、嫌うところなく釣りを楽しんだ。 故郷上州の水は、殊に親しみ深い。我が家の近くを、奥深 …
読書目安時間:約7分
それからというもの、私は暇さえあれば諸国を釣り歩いた。渓流、平野の川、海、湖水。どこであろうと、嫌うところなく釣りを楽しんだ。 故郷上州の水は、殊に親しみ深い。我が家の近くを、奥深 …
ミミズ酒と美女(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
梅雨の、わが庭に蚯蚓が這いだしてきた。一匹は南に向かい、一匹は西に行く。一体、蚯蚓はどこを目当てに這って行くのであろう。 それはともかく、蚯蚓は釣りにはなくてはならぬ餌である。私は …
読書目安時間:約3分
梅雨の、わが庭に蚯蚓が這いだしてきた。一匹は南に向かい、一匹は西に行く。一体、蚯蚓はどこを目当てに這って行くのであろう。 それはともかく、蚯蚓は釣りにはなくてはならぬ餌である。私は …
みやこ鳥(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
この正月の、西北の風が吹くある寒い朝、ちょっとした用事があって、両国橋を西から東へわたったことがあった。 橋のたもとから十五、六歩足を運んだ時、ふと水の上へ眼をやった。すると、大川 …
読書目安時間:約15分
この正月の、西北の風が吹くある寒い朝、ちょっとした用事があって、両国橋を西から東へわたったことがあった。 橋のたもとから十五、六歩足を運んだ時、ふと水の上へ眼をやった。すると、大川 …
雪代山女魚(新字新仮名)
読書目安時間:約19分
奥山の仙水に、山女魚を釣るほんとうの季節がきた。 早春、崖の南側の陽だまりに、蕗の薹が立つ頃になると、渓間の佳饌山女魚は、俄に食趣をそそるのである。その濃淡な味感を想うとき、嗜欲の …
読書目安時間:約19分
奥山の仙水に、山女魚を釣るほんとうの季節がきた。 早春、崖の南側の陽だまりに、蕗の薹が立つ頃になると、渓間の佳饌山女魚は、俄に食趣をそそるのである。その濃淡な味感を想うとき、嗜欲の …
夜の黒鯛(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
品川沖道了杭夜の黒鯛釣は、夏の暑熱を凌ぐにこれほど興味豊かな遊びはない。焼けつく都塵を避けて品川、金杉、築地、月島、神田川などの舟宿へ行けば午後三時頃からもう舟は出漁の準備をしてい …
読書目安時間:約3分
品川沖道了杭夜の黒鯛釣は、夏の暑熱を凌ぐにこれほど興味豊かな遊びはない。焼けつく都塵を避けて品川、金杉、築地、月島、神田川などの舟宿へ行けば午後三時頃からもう舟は出漁の準備をしてい …
老狸伝(新字新仮名)
読書目安時間:約24分
大寒に入って間もない頃、越後国岩船郡村上町の友人から、野狸の肉と、月の輪熊の肉が届いた。久し振りの珍品到来に、家内一同大いに喜んだのである。 越後岩船郡は新潟県の東北にあり、越後山 …
読書目安時間:約24分
大寒に入って間もない頃、越後国岩船郡村上町の友人から、野狸の肉と、月の輪熊の肉が届いた。久し振りの珍品到来に、家内一同大いに喜んだのである。 越後岩船郡は新潟県の東北にあり、越後山 …
わが童心(新字新仮名)
読書目安時間:約29分
二、三日前、紀州熊野の山奥に住む旧友から、久し振りに手紙がきた。 ——拝啓、承り候えば、貴下も今回、故郷上州へ転住帰農遊ばされ候由、時節柄よき才覚と存じ上申候。 小生もここ熊野なる …
読書目安時間:約29分
二、三日前、紀州熊野の山奥に住む旧友から、久し振りに手紙がきた。 ——拝啓、承り候えば、貴下も今回、故郷上州へ転住帰農遊ばされ候由、時節柄よき才覚と存じ上申候。 小生もここ熊野なる …
“佐藤垢石”について
佐藤 垢石(さとう こうせき、1888年(明治21年)6月18日 - 1956年(昭和31年)7月4日)は、日本のエッセイスト、釣りジャーナリスト。本名は佐藤 亀吉(さとう かめきち)。号の「垢石」とは釣り用語である。鮎は水中の石の表面につく水コケを食用とするが、鮎釣り師はこの水ごけを「垢」と呼び、垢の食べ跡を観察して魚の所在を判定するという。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“佐藤垢石”と年代が近い著者
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
今年で没後X百年
ジェーン・テーラー(没後200年)
山村暮鳥(没後100年)
黒田清輝(没後100年)
アナトール・フランス(没後100年)
原勝郎(没後100年)
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット(没後100年)
郡虎彦(没後100年)
フランツ・カフカ(没後100年)