葵原夫人の鯛釣あおいはらふじんのたいつり
葵原夫人は、素晴らしい意気込みである。頬に紅潮が漂って来た。 「では、いけませんか?」 と、念を押す。 「いけない、と言うことはありませんが、一体に婦人は舟に弱いものですからね」 「いえ、それでしたら御心配いりませんわ。私、もう五、六年も毎 …