“失踪”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
しっそう89.2%
しつそう9.5%
なくな1.4%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
近藤巡査が行方不明になったという奇怪なうわさが町に流布るふされた時、ある者は彼がどこかへ失踪しっそうしたのではないか、と疑った。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
そこでみんな初めて慌てだし、手をまわして捜したのであるが、十日と経ち三十日と経っても消息がなく、とうとう失踪しっそうということがはっきりした。
おれの女房 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
晩年は藤森とかいう自分の血すじのおいを近づけていたが、その甥は鉱山かなんかに手を出し、失敗して、それきり失踪しっそうしてしまったそうである。
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
広海屋、その人までが、わが子の失踪しっそうに、平生の落ちつきをなくして、何やら、荒々しく、癇癪かんしゃくごえで叫び立てているのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
と、彼の失踪しっそうを後から聞いた景行は、目附の者に、なぜその背を、弓でも鉄砲でもで、撃ち止めてしまわなかったかを詰問なじった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お利榮は四十二三の愚痴ぐちつぽい女で、夫の急死と娘の失踪しつそう顛倒てんだうし、何を訊いてもしどろもどろですが、主人の前身に就ては、
「さうぢやらう、学士になるか、高利貸になるかと云ふ一身の浮沈の場合に、何等の相談もんのみか、それなり失踪しつそうして了うたのは何処どこが親友なのか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
師岡氏未亡人は忌日に參詣して、壽阿彌の墓の失踪しつそうを悲み、寺僧に其所在を問うてまなかつた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
十有六年の心裡しんりの経過、歴々浮び来つて無量の感慨おさゆべくもあらず、だ燃え立つ復讐ふくしうの誠意、幼き胸にかき抱きて、雄々しくも失踪しつそうせる小さき影を、月よ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
お北の説明はハキハキして居ります。が、それだけの事情はよく判つても、それが乙松の失踪しつそうや、伊之助の殺された事と、何の關係があるか、容易に見當も付きません。
それから上野は落ちます、良人は宇都宮うつのみやからだんだん函館はこだてまでまいり、父は行くえがわからなくなり、弟は上野で討死うちじにをいたして、その家族も失踪なくなってしまいますし
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)